2021年1月16日土曜日

顔面神経麻痺②  〜+αで考える〜

 前回、口を酸っぱくベル麻痺という病名を安易につけないでください、と言いました


では実際、何に気をつけて診察するかというと、

顔面神経麻痺 + α です


前回の一周回って・・・を詳しくした感じです


+αがなければ、ベル麻痺の可能性が高まります


ベル麻痺は膝神経節のHSV1の再活性化により、神経の炎症や浮腫が起こり、

腫脹した神経が骨性の神経管内で圧迫され、虚血と絞扼、浮腫の悪循環に陥り、

神経障害が増悪する病態と考えられています


顔面神経の解剖のポイント


①側頭骨の中の骨性の顔面神経管の中を通る

 ⇨狭いので、神経が浮腫むと虚血に陥りやすい

  外傷で骨が折れると、神経も障害を受けることがある

  骨メタで神経も障害されることがある


②顔面神経は運動神経だけではなく、副交感神経や感覚神経成分を含む

 その細胞体は膝神経節にある

 ⇨膝神経節にHSV1やVZVが眠っていて、再活性化をきたす

  神経が損傷や脱髄が起こった後に、回復の過程で神経線維同士での

  接触伝導や異所性興奮、迷入再生がおこると、

  病的連合運動(synkinesis):口を動かすと、目をつむってしまうなど

  Croccodile tears:食事の際に涙が出る




末梢性顔面神経麻痺+αを探しましょう


特にVZVの頻度は多いので、皮疹のチェックは念入りにしましょう

そして、皮疹が後から出現するパターンもあるので、毎日チェックしましょう


顔や首に怪我がある人は注意が必要です

実は転倒した際に、側頭骨骨折を伴っていたり、

傷から破傷風菌が入った可能性があります




難聴やめまいがあれば、AICA梗塞やVZVを疑います
何度も再発しているようなら顔面神経鞘腫を疑います


頭痛があれば、無菌性髄膜炎パターンになっていることが多いので、
髄液検査を行い、髄膜炎かどうかを確かめます

VZVに伴うものが多いので、抗ウイルス薬は必須ですが、
ライム病も原因になり得ます

腫瘍や血液疾患(特に白血病)があれば、癌性髄膜炎の病態も考慮するので、
細胞診を出す必要があります


まとめ

・顔面神経の解剖を理解すると、臨床に応用できる

⇨顔面神経管という細くて長い骨性の管の中を通るので、浮腫に弱い


・ベル麻痺以外の病気を見逃さないためには、+αに注目する

⇨特に皮疹や内耳症状に注意 


・顔面神経麻痺に頭痛があれば、積極的にルンバールを

⇨鑑別はかなり膨大だが、アシクロビルは必須

 

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