2020年7月5日日曜日

過換気後無呼吸 〜まだ慌てるような時間じゃない〜

ある日の救急外来(一部症例は加筆・修正してあります)

50歳 女性 主訴:吐き気、全身の痺れ

Profile:特記すべき既往なし
現病歴:来院当日、午前中に暑い中、農作業をしていた
    しゃがんだ体勢から立ち上がった時に、フラフラして吐き気があった
    家族が熱中症だと思って、本人に水をかけた
    その後、「寒い、寒い」と寒気を訴えて、
    ハアハアと呼吸が早くなってきたため、救急車要請し救急搬送となった

ROS:四肢の痺れあり、過呼吸あり
内服:なし 既往:なし

バイタル
血圧120/80、脈 90、SPO2 100% 、呼吸数 30回、体温 35.3度
意識 清明 みため やや辛そう
呼吸音 清

程なくして、落ち着きを取り戻してきた

が・・・

今度はSPO2 80%をきるようになってきた


と思ったら、またSPO2 100%に戻ってきた


???
低体温のせい?

加温してみるも変化なし・・・


これは一体・・・・
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ディスカッション①何がおきているのでしょうか?

T「何してるの?」

N「いやあ、明らかに過換気症候群で搬送された方なんですけど、
  
  過換気が終わったと思ったら、
  なんか急に無呼吸になって酸素化が悪いんですよね。
  
  水かけられたらしいので、少し体温が低めだったので、
  末梢がしまって、SPO2 拾えていないのかと思って、
  温めてみたんですけど、何も変わらなかったです。」

T「なるほど。
  本当だね、無呼吸になったり、呼吸したり繰り返しているね。」


N「そうなんですよ、寝ちゃうと酸素化が低下してしまうので、
  刺激して起こすとまた呼吸し始めるんですよね。
  
  〇〇さーん!起きてくださーい!!」

患者さん「はあ、はあ、はあ・・・」


N「こんな感じなんです。

  熱中症で中枢神経までやられてしまったのでしょうか???」


T「そんなわけないでしょ 笑

  そんなに慌てないで大丈夫だよ。

  何が起きていると思う?」


N「えっと、呼吸様式はチェーンストークス呼吸なんですけど、
 チェーンストークス呼吸が急にこのタイミングでおきますかね・・・・

 あとは、SASでしょうか。」


T「さっきまで過換気だった人が急にSASになるかな。

  これは過換気後無呼吸 
 Post Hyperventilation Apnea(PHA)呼ばれるものだよ。
  

  知らないとびっくりするよね。
  でも放っておいて大丈夫なことが多いんだ。

  ほら、だんだんmin のSPo2 が上がってきたでしょ?」


N「本当ですね、言葉だけは知っていましたけど、こんな感じになるんですか?

  こんな周期的なんですか?」


T「うん、そうだね。
  周期的なこともあるし、一時的に終わる人もいる。

  かなり過換気は酷かったんじゃないの?」


N「そうなんです、PaCO2 20mmHgでした」


T「なるほど、じゃあ、リンは1以下になっているね。
  リン出した?」


N「はい、出しました。

 
  今出ました。なんと、0.6でした!!

  こんな低くなるんですか?

  1以下は危ないって聞いていましたけど、大丈夫ですか?

  補充しなくていいんですか!?」


T「笑 慌てなくていいよ。

  だから言ったでしょ、1以下だって。

  
  過換気でアルカローシスになると、低リンになるになることを知っているのは素晴らしい。
  低リン血症が1以下が危ないことを知っているのも素晴らしい。

  でもこのパターンは補充する必要はないんだ。
  すぐに回復するよ。

  昔は自分もビビって補充しようとしたけど、
  このパターンは再検すると正常値になっているんだ。

 重症な過換気ほど低リンになりやすいし、
 自分が経験した過換気後無呼吸の人もみんな低リンになっていたね。

  多分、相関あると思うよ。そういう研究はないけど、研究してみると面白いかも」


N「そうなんですね・・・

  過換気後の無呼吸をはじめてみましたので、めっちゃ焦りました。」


T「そうだね、はじめてみると、びっくりするよね。

  モニターつけていないと気がつかないしね。
  
  これがあるから、ペーパーバックは推奨されなくなったよね。」


N「勉強になりました。」


T「SASがでしょ?(ドヤ)」

N「先生・・・S先生に似てきましたね・・・」

その後、患者さんは、無呼吸も改善し、意識清明になって呼吸苦や症状も消失した
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過呼吸の人の診療には2つのpit fallがあります

過換気や過呼吸の人をみたら、経験を積んだDrであればあるほど、

「はい、はい。過換気ですね、大丈夫ですよ〜
 ゆっくり呼吸してくださいね〜」

というような感じで、楽勝ムードで対応されることが多いです

背景には精神的な要因やパニック発作の人が多いということが、経験として身に染みているのでしょう・・・

ですが、ここがpit fallです


1つ目のpit fallは過換気の背景に重篤な病気が隠れている場合です

よくあるのは、喘息発作や敗血症、肺塞栓です


では一番見逃してもいい疾患はなんでしょうか?



答えは、パニック発作や精神的な誘引のものです



SPO2が100%でなければ、気を引き締めてください




2つ目のpit fallは今回の症例にあった
過換気後無呼吸 Post Hyperventilation Apnea(PHA)です
  
これは1905年にHaldane、1909年にDouglasらが報告した概念です

それよりも前の1987年のLancetや1966年のNEJMには、
過換気後に死亡した症例が報告されています

つまり、この病態は最悪、死につながることがあります




なので、慌ててください

それが正解です


ですが、知っていれば落ち着いて対応できます

過換気発作後にこうした無呼吸が起こることがあるので、
過換気が酷かった人は、必ずモニターをつけて管理してください

自然に軽快してくることが多いですが、
あまりに長引くような低酸素があれば、躊躇せずマスク換気や酸素投与してください




まとめ
・過換気症候群をみたら、2つのpit fallがあることを思い出す
→重篤な疾患が隠れいている可能性、過換気が終わった後の無呼吸

・過換気後無呼吸は最悪、死につながる病態
→過換気が重度だった人はモニターつけて管理すべし

・低リン血症と過換気後無呼吸には相関があるかもしれない
→どなたか、興味あれば調べてみてください

参考文献:. 2013; 7: 9.  PMID: 23594702
スラムダンク 

You tube解説動画:https://youtu.be/kI1S3EoSc_Y

2020年7月4日土曜日

新型コロナウイルス感染症をのりこえるための説明書 〜新聞ver.〜

じわじわ流行ってきていますので、注意喚起のため再度載せておきます

長野日報さんに連載させてもらった全7回の記事です
※長野日報さんからは、ネット上で拡散してもOKの承諾得られています









研修医の先生との振り返り 〜面談編〜

学生時代には習わなかったけれど、医師になってからはじめて知ることはたくさんあります
医学的なことはもちろんですが、医学以外のこともあります

一番はコミュニケーションのスキルだと思います
特に面談のスキルです


自分はインフォームドコンセント(IC)という言葉は好きではないので使いません
ICは「説明と同意」と訳されますが、患者さんは「同意」する必要はないからです

ムンテラはドイツ語のムントテラピーが語源で、「口で治す」というのが、
「言いくるめられる」というような意味合いに捉えられてしまっていて、
もはや死語になってきました


なので、自分は患者さんと話す時は「面談」と呼んでいます
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研修医の先生が、めまいの精査加療目的に入院した患者さんと家族に面談を行いました


これに忠実に沿って、研修医の先生は面談をしてくれました

まず、患者さんの思いや家族からみた患者さんの状態を聞き、
その後、今回の病状や検査結果を説明していました

説明は紙に絵をまじえながら丁寧に説明していましたが、
途中、画像を出すのがごたついてしまいました

一通りの区切りで、家族の方にも視線をむけて、
質問はありませんか?

と促しており、ご家族の方も自由に質問ができる雰囲気でしたが、
家族の中には高齢の奥さんもいて、奥さんはずっと黙って聞いておられました


ご家族の質問にも丁寧に答えていましたが、若干、質問と答えが一致していない
という印象は受けました
(ちなみに家族は質問した内容と答えが一致していなくても、
 「わかりました」と答えてしまいます。
 流石に「それは質問の答えにはなっていません」とは言えませんから)

最後に退院後の生活指導も話し、和やかに終了となりました
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面談の振り返りです

T「どうだった?」

Y「いやあ、全然ダメでした」

T「そう?とっても上手だったし、
 質問にもほとんど答えることができていたし、よくやれていたと思うよ。

 ちなみに、今の面談、自分では何点くらい?」

Y「50点くらいですかね」

T「そんな低い?笑

  80点以上はあったと思うよ。まあ、100点の面談がどんな面談かわからないけど。笑

  じゃあ、100点になるように振り返ろうか。
  強いていうなら、どの辺がもう少し改善できたかな?」

Y「え・・・そうですね。

  うーん、画像をもっと最初から準備しておけばよかったと思いました。」

T「そうだね。

 3つアドバイスがあるんだけど、その中の一つは準備だね。
 
 ファシリテーションって知ってる?」


Y「ファシリテーションですか。
 聞いたことはあります。」

T「ファシリって医者になるといろんな場面で使うんだ。
 今の面談もそうだけど、他職種で行うカンファレンスとか、会議とかでも使うね。

 つまり、話し合いが行われれば、ファシリが必要になるんだ。


 話し合いにはいろいろなパターンがあって、主に2つに分かれる

 今回みたいに、報告や承認のパターンだと、3つのプロセスになる
 情報共有→質疑応答→決定(病状説明→質問→退院決定)

 このパターンは比較的簡単だから、ファシリもいらないくらい。


 もう一つのパターンは問題解決のパターン。
 さあ、みんな集まってこの問題を議論しよう!みたいな時だね

 この時は4つのプロセスになる

 共有→発散→収束→決定 です

 このパターンは、そのままだと議論がまとまらないことが多いので、ファシリの力が必要です。

 
 4つのプロセスといいつつ、実は5つ目のプロセスがあって、

 最初に準備というプロセスがあるんだ。

 この準備がとても大事で、ファシリがうまくいくかどうかは、準備にかかっている。
 
 場のデザインスキルともかぶるんだけど、
 今回の面談でいうと、椅子のセッティングや誰がどこに座るか、誰を呼ぶかとか。

 患者さんを画像に近い位置に座ってもらったり、
 ご家族さんに自分がお尻をむけないように注意したりする必要があったね。

 画像も事前に準備しておけば、スムーズだったね。

 話す内容も事前にカルテに書いておけば、頭の中が整理される。
 
 結局、全ては準備なんだ。
 
 というのが、1つ目のアドバイス。」


Y「確かに。。。。

 先生がせっかく、MRIのDWIの画像出してくれていたのに、
 それを僕が変えてしまって、結局探しまくった挙句、またDWIの画像を出すっていうことをしてしまいました。」

T「そうだね、笑。
  人が準備しても意味がないからね。自分でしておこう。

  では二つめのアドバイス。

  それは、参加した全員に発言してもらうこと。

  今回、発言していない人がいるよね。」


Y「ああ、、、奥さんです。」


T「そう。奥さんは実は耳が遠いかもしれないし、話が難しくてついて来れなかったのかもしれない。
 
 いずれにせよ、奥さんは一言も話さなかった。

 せっかく面談にきてくれているのだから、奥さんに話をふってもよかったね。
 
 面談は一方的に医学用語を並べて、話をすればいいものではない。
 それはただのムンテラ。


 面談の姿勢としては話しながら、聴く姿勢でいるんだ

 そのために、話ながらみんなついて来れているかを確認するのが大事。
 マラソンの先導する白バイみたいに、誰も脱落することなく話を進めるのが重要なんだ。


 そこでだ。

 みんなに話し合いに参加してもらうコツがあるんだ。

 なんだと思う?」


Y「えーー。。。コツですか?
  
 わかりません。」


T「それは、
 この現状で一番立場の弱い人は誰かを常に意識することだよ。

  この考え方はどんな場面でも意識しておいた方がいい

  例えば電車の中では、妊婦さんや小さな子供をみている親は実はとても立場が弱い。

  コロナ騒動でも、一番立場の弱い人は誰だろうって考えると、
  その人たちを助けることができれば、ほとんど全ての人を助けることができる。


  今回の面談では明らかに高齢の奥さんだったね。
  だから奥さんにむけて話すイメージで、話すのがいいんだ。

  奥さんでもわかる声のスピードと大きさが求められていたんだよ。」


Y「なるほど・・・」

T「最後のアドバイスは、致し方ない部分もあるんだけど、
 
 緊張すると早口になってしまうよね。

 これを克服するのはどうしたらいいと思う?」


Y「練習ですかね。自分で自分の声を聞いてみたり、人前で一度話てみたりすることでしょうか。」


T「そうだね、それも大事。

  もう一つはね。自信だと思うんだ。

  この患者さんの病態について深く考えて、
  自分の中で納得できる物語が生まれた時に、患者さんに自信を持って話ができる。

  
  めまいだからとりあえず、中枢性が怖いので脳梗塞の検索のために
  MRIを撮りましたが、脳梗塞はありませんでしたので、大丈夫だと思います。

  っていうのと、

  めまいの原因には大きく二つあって、脳からくるものと耳からくるものがあります

  今回はお風呂に入った後に立ち上がって、その後、めまいが起きています
  めまいの後に横になって、数分間で治っています

  耳からくるめまいの場合、数分間で治ることは考えにくく、
  どちらかというと一時的に脳への血流が途絶えて、めまいが起こった可能性があります

  なんらかの理由で脳への血流が低下してしまい、それが完全に途絶えてしまうと脳梗塞になります

  今回は幸い脳梗塞はみられませんでしたが、一過性の脳への血流が落ちてでた症状だったことが推測されます・・・

  というようなかんじだね。

  検査結果や病名を伝えることはもちろん大事なんだけど、
 患者さんの起こった症状を病態生理まで理解して、
 その思考のプロセスを共有してもらうのが、家族としても納得がしやすいと思うよ


  だから自信を持って話すためには、患者さんにおきた病態生理を深く理解しておく必要がある。

  もちろん、病気や治療の知識も必要だからめっちゃ調べる。
  
  自分が知らないことを突っ込まれたらどうしよう・・・・

  と潜在的に思っているから、質問がくると焦るし、
  適当に自分の中で答えられる答えとして、質問に答えてしまうんだ。


  病態生理や知識があやふやだと、焦った話し方や丸めんでしまうような話し方になってしまうんだ。」


Y「確かに。。。」

T「でもこれは強いていうならのアドバイスだから、今ので十分、平均以上のいい面談なんだよ。

  ただ、より高みの面談を目指すなら、この3つを意識してみて。」

Y「はい、わかりました。ありがとうございます。」


T「面談ってめっちゃ勉強になるでしょ?

 医者になって、一番勉強になったなあと思える時は面談だと思うよ。

 こんな大事なこと、なんで学生時代に教えてくれないんだろうね。」
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まとめ
・面談で最も重要なのは、準備である
→場所、人、時間、内容を事前に考えておく

・面談ではみんなに発言をしてもらう
→誰がこの中で立場が弱いかを考える

・焦らず話すためには、練習も必要
→もっと大事なのは、自信を持つこと
 患者さんに起こった病態、病気の知識、
 治療内容、全ての知識があれば焦ることはない
  

You tube追加解説動画:ファシリテーションhttps://youtu.be/yIXel1vlEHc
面談の仕方https://youtu.be/7YGIbOICA0A




2020年7月2日木曜日

ボス回診 〜見えている世界が違う〜

Y「お願いします。
  コンサルテーションポイントは、
  現在、肺炎・心不全に対して治療を行なっているのですが、
  酸素化が改善しないので、今後の治療方針について相談させていただきたいと思います。」

S「OK」
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82歳  男性 主訴:呼吸苦(症例は一部修正・加筆を加えています)

Profile:認知症あり、施設に長期入所中、ADLはほとんど寝たきり
    会話は可能、もともと多量喫煙者

現病歴:1ー2週間前からSPO2 が90%を下回ることがあったが、
    本人の自覚症状がなかったので、経過をみられていた
    発熱や湿性咳嗽はみられず

    受診の4日前に転倒し、腰痛が出現
    嘱託医の診断で腰椎圧迫骨折と診断された
  
    受診の前日、酸素化低下あり。SPO2 80台になっていたが、
    呼吸苦の訴えなく、様子がみられていた
    受診日当日、SPo2 70%台になり、本人の呼吸苦もあったため、
    当院受診し、心不全・肺炎疑いで入院となった

既往歴:小児期よりてんかん、COPD、前立腺肥大症

バイタル:BP 140/80, P 89, SPO2 82%(RA)→90%(2L)、RR18、T 37.3
意識 会話できるが、なんだか呂律が回っていない印象
指示は入る

見た目 顔面含め全身の浮腫みがありそう 苦しそうな様子はなし
頸静脈 短頸で観察不良
呼吸 全肺野からcrackle聴取
心雑音なし
腹部 ぼってり 軟 圧痛なし
四肢 下腿浮腫著明 上肢にも浮腫あり

血液検査 CRP1、Hb17、腎機能問題なし、BNP 80
血ガス CO2 41
CXR    心臓の後ろの透過性低下あり、下降大動脈のシルエットアウトあり
CT   両側の下肺背側で浸潤影あり、全体的に気腫性変化あり、気管支壁は軽度肥厚
    他、特記事項なし
心電図 洞調律、ST-T変化なし

痰はでず
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Y「・・・という状況でした
  体重が1年前から5kg増えており、まずは心不全と考え、利尿剤の投与を行いました
  また肺炎もあると判断して、CTRXで治療を開始しました

  入院後、体重は減少傾向ですが、1週間経過してもまだ酸素が外せない状況です
  今後はCOPDの合併もあるので、SABAの吸入を行おうと思っています」

S「ありがとう。

  ところで、薬は何飲んでいるの?」

Y「あ、すいません
  アレビアチンとウルティブロです。」


S「なるほど、ウルティブロって何だっけ?」

Y「LABA,LAMAです」

S「了解。じゃあ行ってみよう」
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ボス回診

S「こんにちは〜」

Pt「ガーガー、むにゃむにゃ・・・(眠そう)」

S「やたら眠そうだね。目は開きますか?」

Pt「うーん、先生が○×▲□ むにゃむにゃ・・・」


S「・・・?いつもこんなに呂律は悪いの?」

Y「はい、施設の方に聞いてもいつもこんな話し方のようです」


S「なるほど。全然目が開かないね。

 すいませんが、診察させてくださいね。深呼吸してみてください・・・・」


Pt「スーハースーハー」

口元に聴診器を持っていき、early inspiratory crackleを聞いたが聞こえず・・・




:DOI: 10.2169/internalmedicine.46.0455


S「どこか痛いですか?」

Pt「痛くない」


S「ここ(腰)はどうですか?」

Pt「アイタタた」

S「やっぱり痛そうだね、リハビリの様子はみたかな?」

Y「いえ、しっかりとはみれていないです。」


S「これだと、座ったりするのも大変そうだね。」


他の診察・・・
バチ指なし
末梢はやや冷たい
浮腫ないが、全身がややぼってりしている

神経
指示は入る 会話できる
眼瞼下垂なのか、なかなか目が開かない
呂律不良は目立つ
粗大な麻痺はなし
指鼻指はぶれてしまう
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ディスカッション①何を考える?

S「パッとみてどう思った?」


学生「うーん」


S「明らかにblue bloaterだね!」


Y「blue bloater??」

S「blue bloaterっていうのは、COPDの慢性気管支炎型のタイプの人だよ。

  青太り型だね。
  全体的に青白くて、ぼってり浮腫んでいるような体型なんだ。

  もう一つのパターンは肺気腫型のpink puffer(赤ふぐ)パターンだね。

  少し赤ら顔で口すぼめ呼吸をして、フグのように口が膨らむでしょ。


  COPDの身体所見って色々あるけど、こういうパッと見の印象ってとても大事なんだ。」





T「日本ではpink puffer型が多いと思っていました。
  あんまり最近の教科書には強調されていないように思えます。」


S「そうなんだ、だからこそblue bloaterは見落とされてるんだ。
  気がつかないでしょ、一見、COPDだって。


  大事なのは、呼吸機能検査で1秒率がうんたらかんたらで、GOLDの分類が〇〇で・・・
  っていうことではなく、その前段階。


  この人に呼吸機能検査しよう!
  
  って思えるかどうかは、パッと見ただけでわかる。


  pink pufferは日本人に多いから、分かりやすいけど、
  blue bloaterのパターンもあるから、覚えておこうね。

  
  今回の症例は多量の喫煙歴があったし、そりゃあCOPDでしょ?
  って思って、early inspiratory crackleを聞いたけど、聞こえなかったね。
  early inspiratory crackleあがあれば、%1FEV1は40%以下と言われる。

  つまり重症ってことだよ。


  でもなかった。

  その時点で、本当にCOPDが悪さをして酸素化が低いのかが疑問だったんだ。


  それでだ。


  他に何か感じた?」


学生「いや・・・なんだか・・・話すのが、、、
   ゆっくりでした・・・・」


S「そうだね。
 
  あと、目が開かなかったよね。
     
  呼吸状態がなかなか改善しない時って、肺の問題も考えるんだけど、
  次に考えるのは、筋骨格系の問題じゃないか?ってことなんだ


  だからそういう時は、常にMG(重症筋無力症)を疑っている。
  その中で、目が開かないというのは、もしかしたら眼瞼下垂なのかもしれないよね。

  入院後、ガスはフォローした?」


Y「いえ、していません」

S「そうだね、一回、酸素をoffにしてみて、AaDO2を測定してみるといいね。
  まあ、肺炎や心不全、COPDがあるから、解釈は難しいかもしれないけどね。

 ただ今回の場合、MGっていう鑑別診断は実は高級な議論なんだ。

  
 実際はなんだと思う?」


Y「・・・」



S「多分、痛いだけだね。


 痛くてあんまり呼吸が吸えていないんじゃないかな?

 もともとCOPDで酸素化がギリギリな人が、圧迫骨折になってしまって、
 うまく呼吸ができていないんじゃないかな?」


Y「なるほど・・・
 確かに今回、プレゼンの準備をしていて、
 そういえば圧迫骨折って言われてたなあ、って改めて気がつきました。
 
 入院中は寝ていれば、痛みはないというので、気が付きませんでした。」


S「そうだね。

 この人は酸素化の低下という表現で、痛みを訴えていたんだ。


  大事なのは、HOTではなく鎮痛だね。」


Y「わかりました。ありがとうございます。」



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ディスカッション②眠そうな原因は?

S「あと、やたら眠そうだよね?

  それはどう?」


T「COPDもあるので、cO2ナルコーシスだったら嫌だなあと思いました」


S「そうだね、それをみるのもあって、末梢をみたんだけど、赤くはなかったね。

 この人の指鼻指どうだった?」


Y「ぶれていました」


S「そうだよね。
 
  この人はアレビアチンを長期に飲んでいる。
  つまりフェニトインね。


  フェニトインの血中濃度って線形に比例して上がっていく感じじゃないんだ。
  急激にあるところから上昇してしまう非線型関係(non-linear saturation kinetics)なんだ

  治療域がとても狭くて、血中濃度が上がると副作用が出やすい


  血中濃度測った?」


Y「測っていないです。」


S「測ったほうがいいね。血中濃度によって出てくる症状もわかっている

 10ー20が至適濃度で、
 30くらいで眼振が出て、
 40くらいで小脳失調が出て、
 50くらいで意識障害が出てくる。

 
 フェニトインは今はあまり使われなくなったけど、昔はよく使われていた薬だね。
 長期投与されると小脳萎縮がきたりすることもある

 だから呂律が回っていないのは、もしかすると小脳症状かもしれないね。」

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ディスカッション③:プレゼンの意味は?

Y「わかりました、ありがとうございます。

  今回も全然、だめでした。」


S「そんなことないよ。

  あ、でも薬をプレゼンで言わなかったのは、ダメだね 笑。
 
  なんで薬をプレゼンで言ってなかったか、気がつけたかというと、
  いつも薬が原因じゃないかって疑っているからなんだ


  いつも心に・・・?」


Y「薬と結核」


S「知ってるでしょ?

  みんなわかっているのに、薬が原因ということに気が付けないんだ。


  プレゼンをすることで、たくさん気が付くことがある。
  今回の圧迫骨折にだって改めて気がついたでしょ?

 
  医者がプレゼンする最大の目的は患者さんのアウトカムをよくすることなんだ。


  プレゼンは八方美人のようなプレゼンでなくていいんだよ。
  拙いプレゼンでいいんだ。

  
  ディフェンシブで、あれもこれも考えています。
  みたいに言われてしまうと、議論が進まない。


  だからこそ、ツッコミどころがあった方が、議論は盛り上がる。

  それが患者さんにとっていいアウトカムにつながる。

  
  今回だって、アレビアチンのことわかってますみたいな感じでプレゼンしてたら、
  ここまで盛り上がらなかったでしょ?」


Y「そうですね。笑

  これからもめげずに頑張ります。」


S「そうだね、プレゼンはたくさんしたほうがいいよ。

 プレゼンをすることで、患者さんのプレゼンテーションが頭にストックされるんだ。


 症例を自分の中の棚みたいなところに入れてストックしていく感じ。
  外付けのハードに貯めても意味がないんだ。
 
 すぐにアクセスできない時もあるしね。
 
 ストックがたくさんできてくると、照らし合わせることですぐに診断できるようになる。

  
 これからも、議論が盛り上がるようなプレゼンをたくさんしてね。」


Y「はい、頑張ります」
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まとめ
・COPDのblue bloater(青太り)型を見逃さないように

・圧迫骨折後に酸素化低下することはよくある
→低酸素でしか、痛みを表現できない人もいる

・プレゼンは八方美人は盛り上がらない、拙いプレゼンでいい
→内容よりも気持ちが大事

2020年6月29日月曜日

昼カンファレンス 〜Red flagよりもwhyが大事〜

症例 80歳 女性 主訴:発熱、腰痛(症例は一部修正・加筆しています)

Profile:下肢の骨折後、ADLは歩行器使用し歩行できるレベル

現病歴:受診の2日前、朝からなんとなく腰痛が出現  
    特にきっかけはなかった
    それまではいつも通り元気であった
    1日前、いつもできていた家事ができなくなった
    座位もとることができなくなってきた
    受診当日、動けなくなってきた本人を見て救急要請

既往:高血圧、骨粗しょう症、胃癌摘出後、腹壁瘢痕ヘルニア
内服:アムロジピン、ラックビー、ペリチーム
生活:息子夫婦と同居

バイタル:血圧120/86、脈77回、体温 37.6度、呼吸数 16回
意識レベル クリア、見た目 not so bad
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ディスカッション①まずはICFを完成させよう


司会「はい、ありがとうございます。

   このように動けなくなった患者さんが来られた場合、
   いきなり病気を診断しよう!

   という感じで、質問し始めてはいけません。


   まだ病気を診断するための問診はさせませんよ 笑
  
   
   ご高齢の方だったり、ADLが落ちてきた人をみる時は、

   そもそものADLを確認しなければ、
  どれくらい悪化しているのかが分かりません。


   点でみるのではなく、線で捉えるイメージです。

   元々の状態のADLがかなり悪い場合があるので、
   まずはICFを完成させましょう。

   みなさん、ICFは知っていますか?」


Y「はい、この前教えてもらいました。」

司会「ありがとうございます。では聞いてみましょう。
   BADLやIADLはどうでした?」


F「 D(着替え)は自分でできます
  E(食事)は自分でできます
  A(移動)は立位になったり歩行するのはできますが、長い距離は歩けません
  T(排泄)は長い距離歩けないので、Pトイレを使っています
  H(入浴)は訪問入浴を利用しています

  S(買い物)は家族です
  H(家事)は簡単なことなら自分でできます
  A(お金の管理)は自分でやっています
  F(食事の準備)は自分でやっています
  T(交通手段)は家族の車です
  T(電話)は分かりません
  T(薬の管理)は自分でやられています」


司会「すごいね。とてもしっかりしている人だね。」

F「はい、とてもしっかりされています。」

司会「ICFをかなり詳しくとってくれて素晴らしいです。
   
   この中で、ぜひ毎回とって欲しい項目があるのですが、分かりますか?」

聴衆「・・・・」


司会「みなさん、外来でご高齢の方が一人で来た時にどうやってその人が来たか気になりませんか?

   この杖をついているお婆ちゃんが、どうやってここまでたどり着いたのだろう?
     
   誰かが送り届けてくれたのか?タクシーできたのか?

   バスを使ったのか?歩いてきたのか?

   と疑問に思うことが重要です。


   今日はどうやってお越しになられたのですか?


   という質問はとてもたくさんの情報が得られる質問です。

   バスを使えるくらいなら認知機能は保たれているな、と思いますし、
   タクシー使うなら、経済的に豊かなのかな?と思いますし、
   誰かに送ってもらったのなら、家族背景も少し見えてきます。
  
   はい、では他のICFを埋めていきましょう。」


Y「何か、参加はされていますか?」

F「特に参加はしていません。畑に行ったりはします。」

司会「介護度は?」

F「要介護1です」

司会「はい、ありがとうございます。
   
   ではそろそろこの人の人となりが理解できましたでしょうか?
   
   では症状について詰めて聞いていきましょう」
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腰痛について追加病歴

F「腰痛は2日前に起きたらいつの間にか痛かったようです
  前日は痛みはなかったです

  痛みを点数で言ってもらわなかったので、自分が感じた点数で言いますと、

  最初は6/10くらいの痛みで、動くと悪化していました
  徐々に痛みが悪化してきて、今は7/10くらいの痛みです。

  寝ていると、痛みは和らぐようです
  ですが、0にはなりません。

  1日前から発熱も自覚しています。
  それ以外のROSは特にありません。」

司会「はい、ありがとうございます。
  この図を描けるような問診をすることが大事ですね。

  痛みを点数で言うことができない人もいますので、
  その場合はこちらで代弁してもいいと思います

  イメージとしては、
 5/10以上の場合は日常生活ができないくらいの痛み、
  と理解しておくと良いと思います。

  時々、VASをつけると、

  10/10で痛いっす。

  って言うわりにけろっとしている人いますよね。
  
  関節リウマチの時の評価にも、患者さんのVASとDrがつけるVASがあります。

  なので患者さんがいうVASの点数ももちろん大事ですが、
  医者がつけるVASも大事です。」

T「尿は出ていますか?」

F「はい、出ています。」

司会「それは、膀胱直腸障害に思いを馳せた質問かな?」

T「そうです。」

司会「なるほど、でもそれだと溢流性の尿失禁でも尿はチョビチョビと出てくるので、
   尿は出ています、という答えになってしまうよ。」

T「そうですね、尿の出が悪いなと感じたり、尿意はありますか?」


F「はい、尿の出は悪くないです。しっかり出ています。」




司会「はい、ありがとうございます。
   他に何か聞きたいことはありますか?」

聴衆「・・・・」


司会「ではみなさん、Red flag signって聞いたことありますか?」

T「あります。えっと、熱があるとかですか?」


司会「そうですね、この人はすでに熱がある時点でflag 立ってますね。
   
   他にもRed flag signってたくさんありますね。
   病歴と身体所見で分けたりもします。   

   体重減少とか、ステロイドユーザーとか、悪性腫瘍の既往とか、・・・


   まあ、ぶっちゃけこんなの覚えなくていいです。 笑

   
   red flag signなんて覚えるものではありません。

   腰痛で見逃してはいけない危険な疾患を想起できれば、
   何を聞けばいいかは自然と湧いてきます

   
   つまり、何を(what)聞けばいいかが大事なのではなく、
  なぜ(Why)その問診をとるのかが大事です



   致死的な疾患ををひっかけるための問診が、red flag signです


   red flag signばかり覚えてしまっては、応用が効きません。

   
   胸痛の時はfour killer chest painって言う格好いい名前がありますが、
   腰痛の時はそんな格好いい名前は、特にありません。

   さて、腰痛で見逃してはいけない疾患は何があるでしょうか?」


T「腸腰筋膿瘍!」

司会「そ、そうだね。(やたらピンポイントで来るな・・・)

   他には?」


Y「大動脈解離とか、急性膵炎とかも、腰痛できますかね?」


司会「そうだね。素晴らしい。
   内臓系も忘れてはいけない鑑別だね。
  
   うちの病院だと、外傷系と内科系で問診票が分かれています。
   
   あれって実は凄まじいバイアスになってしまうんだ。
   (yellow paper biasと名付けます 笑)

   外傷系の紙で腰痛が主訴だったら、
   整形的な腰痛ですね。って頭が勝手に判断して、
   内科的な疾患を想起できなくなることがあります。


   あと、湿布ね。

   湿布貼ってあったら、もう整形的な腰痛にしか見えませんよね。
   (湿布バイアスと名付けます)

    なので、僕は湿布を見つけたらまずは剥がします。
    数分前に貼ったと言われても剥がします。
   
    理由は湿布があると、整形的な腰痛に見えてきてしまうことと
    その下に帯状疱疹の発疹が隠れていることがよくあるからです。


    はい、他に危ない腰痛と言えば何がありますか?」


H「破裂骨折とか、腫瘍とか」


司会「はい、ありがとうございます。
   
  みなさん、ピンポイントで覚えていると忘れますので、
  処置で覚えた方が見落としが少ないですよ。


 ①整形処置が必要になる病気
 (1)ドレナージ:腸腰筋膿瘍、硬膜外膿瘍、椎間板炎
 (2)除圧:硬膜外〇〇系(血腫、膿瘍、腫瘍)、ヘルニア、破裂骨折、骨メタ


 ②内科的緊急疾患
  大動脈解離、AAA、急性膵炎、閉塞起点のある腎盂腎炎




   
  ①の疾患はすぐに整形外科をcallしなければいけない病気です
  ですが、普通にCT撮ってもわからないことが多々あります。

  膿瘍であれば造影しないとわからない時もありますし、
  椎間板炎や硬膜外〇〇の場合、MRIが必要なこともあります。

  硬膜外血腫はCTでその目で見れば見えますが、
  みなさん、あの小さな脊柱管の中に思いを馳せたことはありますか?


  よくみると血腫の場合は、highになっていることがあるので、
  疑った場合はその目で見てください。


  ②の内科的緊急疾患を疑った場合に大事なのは超音波検査をすることです。


  腰痛の場合は、この①と②を分けることがとても大事です。
  よくある分け方は、体動での増悪の有無です。

  整形外科的な疾患の場合は、体動で増悪することが多いので、
  体動で増悪があるかどうかは必ず聞きましょう。

  もちろん、体動での増悪がなかったとしても全ての整形疾患の否定にはなりません。
  
  そして内科的な疾患でも腰痛から筋肉の緊張によって筋膜疼痛を合併することがあるので、
  体動での増悪の有無だけでクリアカットに分けない方がいいと思います。


  結局、腰痛の患者さんを見たら(ほぼ)全ての症例で超音波を当てます。


  そのままハイドロリリースに流れ込むことも出来ますし・・・」


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身体所見

心雑音 収縮期雑音あり
肝巧打痛なし
腹部 平坦 軟 圧痛なし
右の腎把握痛が陽性
右の傍脊柱起立筋で圧痛あり
右CVA巧打痛陽性

下肢 筋力低下なし 痺れなし
---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
ディスカッション②鑑別疾患と今後の対応は?

司会「はい、ありがとうございます。では、ここまでで鑑別をあげてください。」

T「腸腰筋膿瘍!」

Y「腎盂腎炎」

聴衆「圧迫骨折、椎間板炎、硬膜外〇〇・・・」


司会「はい、ありがとうございます。
           腸腰筋膿瘍好きだね。笑

   そうですね。炎症(発熱)+腰痛ですので、
   やっぱり椎間板炎が一番可能性としては考えますね。

   と言うことは、CT撮っても何も鑑別は変わらないと言うことですね。
   CTではなかなか分かりませんから。
  
   圧迫骨折とかあれば、他の代替疾患がわかればいいですけど。

   さて、検査結果はどうでした?」


F「血液検査では炎症反応が軽度上昇していました
  他、特記事項はありませんでした。

  尿検査では白血球が1+でした。細菌尿はなかったです。

    CTでは特に異常所見は指摘できませんでした。

  この時点では腎把握痛やCVA巧打痛、炎症反応あり、
  膿尿の所見から腎盂腎炎としてCTRXで抗生剤の治療が開始され、入院となりました」


司会「はい、ありがとうございます。

   さあ、みなさんどうですか。ご意見ください。

   批判的でもいいですよ。 笑」


H「この時点では椎間板炎も否定はできないと思います。

  椎間板炎だった場合、長めの抗生剤治療になってしまうので、
  できれば起因菌を捕まえてから治療を開始したいです。

  ですので、血培をとって経過観察目的で入院にするかなと思います。」

  
司会「はい、ありがとうございます。素晴らしい、大人の対応ですね。

   とりあえず、発熱+腰痛→腎盂腎炎にしてしまって、早く治療したい!


   という気持ちはとてもよく分かりますが、椎間板炎の治療は待てることが多いです

   鑑別に椎間板炎があるのであれば、起因菌を同定してから抗生剤を開始するのが良かったのかなと思います。


   自分だったらこの症例は、抗生剤フリーで入院にします。

   入院後すぐにMRIをとって、椎間板炎らしさがあれば、
   整形にコンサルトして、穿刺吸引してもらい、
   そのG染色の結果や所見を見て、抗生剤を開始するかなと思いました。」


M「なるほど、そうですね・・・

  その時は、腎臓に嚢胞もあったので、そこに感染していたりするのかな、
  とも思ったりしました。」


司会「そうねえ。でも、体動で悪化するからね。


   ・・・というか、よく見ると腰椎折れてない?」


F「えーーー????」
  

司会「新規の腰椎圧迫骨折ってMRIでないとわからないと言われますが、あれは嘘です。

   もちろん、MRIじゃないとわからないという時は確かにありますが、稀です。


   これまで何人も腰椎の圧迫骨折の患者さんを受け持ってきましたが、ほとんどCTわかりました。

   
   ポイントはsagitalで骨のずれを探します。

   一スライスではなんとも言えないので、数枚のスライスでずれているかを探します。
   そしてよくみると、椎体の中に黒い帯が見えます。


   慣れてくると、折れている部分が目に飛び込んでくるようになります。

   あたかも、3つ葉のクローバーの中に、4つ葉のクローバーがあるような感じで、
   違和感を感じられるようになります。


   でも、この症例、読影でも骨折とは読まれていないでしょ?」


F「何も読まれていませんでした。

  ですので、MRIをとりました。」



MRIでは腰椎の折れていそうな部分に信号変化があった。


司会「うーん、やっぱり折れているように見えるね。
   でも椎間板炎の波及でもいいかもね。

   放射線の先生にまた確認してみてください。」


F「はい。わかりました。」


司会「はい、ということで今日の症例は高齢女性の発熱と腰痛の方でした。

   腰痛の場合、
  red flag を覚えるよりも、 
  whyの危ない腰痛が何であるか、を想起できるようになりましょう。
   
   危ない疾患は整形外科の疾患と内科的疾患で分けて想起することがコツでしたね。


   

   はい、ありがとうございました。」


まとめ
・腰痛は内科的疾患と整形外科疾患が混ざり合うので、鑑別が広く難しい
→体動、湿布、外傷の問診票に騙されないように!

・腰痛の場合のred flag signの意味を考える
→危ない腰痛を想起できれば、red flag signを覚える必要はない

・安易に腎盂腎炎や非特異的な腰痛と言ってはいけない
→椎間板炎を疑ったら、抗生剤投与はいったん保留。起因菌を同定する努力を!







2020年6月28日日曜日

老年医学・高齢者医療の3つの考え方 

老年医学・高齢者医療で大事にしていることは、この3つです

①2つのレール
②適切な仮説を立てて、仮説に沿って進んでいくこと
③診断や治療を目的としてはいけない
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①2つのレール

今まで元気であったご高齢の方が入院しました

だんだん医者として慣れてくると、
その患者さんの最後の落とし所まで想像することができるようになります

高齢者が食べられなくなった場合、血液検査やCT検査、胃カメラはすぐに行われます
そして薬の見直しも重要です


参考:高齢者が食事をとれなくなったら


それらの検査で原因がわからなかった時の落とし所は、
副腎不全やうつ病、結核性髄膜炎といった疾患が考えられます


本気で調べるとしたら、何をするかをまずは考えます(医療のレール)

次に、その全てを実行するのではなく、
患者さんの希望や患者さんのこれまでの人生を聞きます(患者さんのレール)

この2つのレールを重ねていくイメージで検査を進めていきます



この考え方は家庭医療的な学術用語でいうと、

PCCM(patient-Centered  Clinical  Method)、
患者中心の医療の方法と呼ばれます

ですが、いきなりPCCMを全て理解するのは難しいので、
まずは2つのレールという考え方を身に付けてください

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②適切な仮説を立てて、仮説に沿って進んでいくこと

原因不明な状態や今後の見通しが立ちにくい状態では、
仮説を立てるというのは、非常に大事です

近未来を想像できないと手探りの毎日になってしまい、
患者さんも家族もスタッフも不安になります


そんな場合は得られた情報から、適切な仮定を立てます


現状ではこの疾患の可能性が高いので、こんな治療を試してみます
〇〇くらいで改善が見込まれますので、その時点で再評価します

というような感じで、ある程度の具体的な見通しを立てることが大事です


看護師さんとうまくコミュニケーションがとれない先生は、
この仮定ができていないことが多いです


先生が何を考えているかわからない、
今後の予定を教えてください

とよく言われる先生は注意が必要です(自分もですが・・・反省)


仮説を立てる時は、なるべく良い仮説を立てましょう

みんなが頑張れる仮説がいい仮説です


高齢者が食べられなくなった場合、
本当に何を調べても原因がわからない時には、5つ考えるようにしています
(あんまり大きな声では言えませんが・・・)

① アパシーによる食欲低下:アリセプトを試す

②パーキンソニズムによるうつ傾向・食欲低下:Ldopa製剤を試す

③高齢者うつによる食欲低下:抗うつ薬(リフレックス®️など)を試す

④機能性ディスペプシアやGERDによる症状:ガスモチン、六君子湯を試す

⑤副腎不全による症状:ステロイドを試す
 (もちろん、Lapid ACTHできる状況なら診断確定させてから。
  ただ寿命が限られており、余命が1ヶ月以内と判断した場合は検査せずにいれる場合もあり)

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③診断や治療を目的としてはいけない

昔の自分は、病気をなんでもかんでも診断したり、
病気を治療することは、患者さんのためになっている

と 信じていました

今になって考えれば過剰であったと反省しています


診断をすること、治療をすること、
それはとても素晴らしいことですが、それが医療の目標ではありません

そこは氷山の一角で、大事なことはもっと下にあります

本当の目標は、患者さんや家族が幸せになるということです

診断や治療は患者さんが幸せになるための手段であって、
目的ではありません


「人をhappyにする」という信念は、
学生時代に行った北海道の実習先の病院の先生に教えてもらいました

いったん忘れかけていた信念ですが、また思い出しました

人との出会いや言葉の出会いは大事ですねえ(しみじみ)

夜間や休日に他の担当医の患者さんのことで看護師さんから呼ばれたら・・・

当直中や待機の時には自分の患者さん以外でも何かトラブルがあれば、

看護師さんからコールがあります

よくあるのは、転倒です

ある程度、呼ばれる理由も決まっていますし、やるべきことも決まっていますので、
カルテにはフォーマットとして作っておくのも選択肢かと思います
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(以下、記載例)

○時○分、 酸素化低下でコール

ナースより:検温でバイタル測定すると、SPO2 80%と低下あり
      夕食も普通にとれた、痰がらみはなし

バイタル:BP 60/40, P 88,  SPO2  80%, RR  20, T 36.8
     意識 レベルいつもより低下あり

訪室し診察
(S)

(O)

(A)
大腿骨頸部骨折術後、2週間目で数日前から歩行開始となっている患者さん
脳出血の既往あり、抗凝固薬の使用はしていない

鑑別:PE・・・

(P)

みたいな感じです
意識しているのは、

いつコールがあったか?
バイタルはどうか?

ということです
看護師さんのカルテに書かれていることが多いですが、
自分も意識していることを皆さんに伝えるために、あえて書きます
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さて本題

休日の待機:研修医の先生より電話あり

研修医「〇〇先生がみている患者さんで、酸素化低下で看護師さんよりコールがありました。

    大腿骨頸部骨折術後の90歳の男性で、リハビリ中でした
   
    先ほど急に酸素化が低下して、 
    SPO2 80%台になって、血圧も下肢挙上しても60/40しかありません。
   
    肺塞栓とか考えた方が良いでしょうか?」

T「そうだね、その状況ならPEは考えないといけないね。
  じゃあ、造影ルートで点滴とって、採血して、心電図とって対応しようか。
 
  急変時の対応はどうなってる?」

研修医「えっと、DNARになっています」

T「(DNARか・・・)
  了解です、もう少ししたら行きますね。

   家族も呼んでおいてもらえますか?」

研修医「はい、分かりました。」
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夜間や休日に他の担当医の患者さんのことで看護師さんから呼ばれたら・・・

①今の状況を把握する
②過去の人生や物語を知る
③未来を予測する

の3ステップで考えます


①今の状況を把握する

当たり前ですが、今の状況を把握するというのが大事です

何が起きているか?

大事なのは、バイタルと診察と看護師さんからの情報です
そして、最近の治療経過や薬の内容をチェックします

急変時の対応も確認します

注意が必要なのは、急変時の対応を確認されたのが、はるか昔ということもあるので、
いつ最後に家族と急変時の対応について、話合われているかも確認します

①の時点で、ある程度の鑑別疾患を想起し、次に何の治療や検査をすべきかを考えます
--------------------------------------------------------------------------------------------------
上記の症例でもう少し情報を加えると、

頸部骨折は3ヶ月前で、それ以来、フレイルが進行し寝たきりの状態
今は嚥下が落ちてきており、
そろそろ看取りの可能性も出てきている人であった

食事はとれたりとれなかったりで、点滴も数日前に抜去していた
治療はデジレルしか内服はなかった

血圧はもともと80台で低かった
もともと 受け答えもyes,noくらい

診察しても 指示は入らなかった
血圧は生食が少し入って、80台に戻ってきていた

見た目はるいそうが進んでおり、ぐったりされていた
呼吸は浅い
四肢は浮腫はなく、痩せている
皮膚は乾燥していた 
冷や汗はなく、末梢は冷たい

内頸静脈の怒張はなく、JVPの上昇もみられなかった


ということで、鑑別は肺塞栓や心不全、心筋梗塞、肺炎、脱水が挙げられた

ポイントは、どこまで検査や治療をするかということです

そこを考えるために、過去の人生や物語を知る必要があります
------------------------------------------------------------------------------------------------
②過去の人生や物語を知る

人生の終末期に来ている人が、急変した時に侵襲的な治療をするでしょうか?

例えば、カテーテルやtPA、挿管、CV、昇圧薬・・・

もちろん、主治医に電話で確認することも重要ですが、
カルテ記載を見れば、ある程度分かります

カルテはその人の人生の物語の一部です

そして、

今の状態は物語の最後の1ページをみているに過ぎません


最後の1ページをみただけでは、その方の人生は分かりません

ということは、どんな治療をすべきかということも分かりません


時間があるのであれば、これまでの患者さんや家族と主治医の面談記録や
治療経過を確認することが重要です
-----------------------------------------------------------------------------------------------------
この患者さんの場合は、終末期にさしかかっており、
食事摂取も厳しくなってきている状況であった

主治医からも急変のリスクについてやその時の対応については、DNARであることも
今回の入院中に確認されていた
----------------------------------------------------------------------------------------------------
③未来を予測する

この患者さんが肺塞栓だったとして、果たしてtPAや持続のヘパリン、カテ、手術するかどうか?

血圧が下がったら、昇圧薬使うか、ICU管理するか
酸素化下がったら、NPPV使うか、挿管するか

②が分かっていれば、そのような処置はしないという答えになると思います

となると、検査する意味はあるのであろうか?
どこまで検査すべきか?

という問いになります

ここからはケースバイケースで 、
家族や主治医と相談で話し合って決めるのが良いとは思いますが、
ちゃんとしたカルテが書いてあれば
カルテをみただけでもある程度の判断は可能です


-----------------------------------------------------------------------------------------------------
人手が足りない病院は、
止む無く主治医制(休日、夜間でも1st call1)になっている病院もあると思いますが、
今後、いつまでも主治医制をとることはできません

このコロナ禍では、
自分の患者さんのことで、自分が全部対応するのは難しくなってきています

いつ自分がコロナの濃厚接触者になるか、
いつ体調不良で休むまなければならないか、分かりません

考え方は「絶対に俺は休まない」ではなく、

「いつ自分が休んでも大丈夫なようにしておく」という考え方です


医者の仕事は属人化しやすく、そして属人化することは決して悪いことではなく、
むしろ美学である

という変な空気があります

(特に若いイケイケの医者と、昔のお医者様に・・・
 でも安心してください
 昔の自分はそうでしたので、人は変われます 笑)


私たちの仕事が属人化しないためには、どうすべきかを考えなければなりません

それは患者さんへの責任の放棄ではありません
むしろ患者さんのためです


属人化を防ぐとなると他の人にお願いする機会が必ず出てきます

カルテはそのためにあります

そのことを意識して、毎日のカルテを書きましょう

皮疹の見方

皮疹の見方 皮疹の見方と言っても状況によって考え方が異なる。 皮疹だけをみてどう考えるかだけではなく、 どんな文脈で皮疹が出てきたか、 が重要である。 我々が皮疹に出会う状況は皮疹と全身症状のバランスによって3つに分けられる。 ① 全身症状がメイン(発熱、関節炎、ショックなど)だ...

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