2020年7月13日月曜日

昼カンファレンス 〜MVPは誰?〜

症例 80歳 男性 
主訴:右上下肢の脱力、頸部痛 (※症例は一部加筆・修正しています)

Profile:ADLフルで元気

HPI:来院、当日の朝にトイレ(排尿)のため起床
   排尿後にベッドに戻ったところ、
   急に首から肩にかけての痛みが生じた
   揉んだりしたが、改善はなかった
   1時間後に右上肢・下肢の脱力が出現してきた    
   トイレ(排便)に行こうとしたが、
   歩けなかったため、妻に支えられながらトイレへ
   トイレにこもっていたら、だんだんと症状は改善
   排便後は普通に歩くことができたが、
   症状が気になったため、来院

既往:なし
内服:なし
生活歴:喫煙 40年間吸っていたが、今は禁煙
    飲酒 お酒はよく飲む


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ディスカッション①:何を聞きますか?

T(司会)「はい、では何か質問してください」

TT「痛みの強さはどうでしたか?」

F(発表者)「痛みはこれまでにないくらい痛かったそうです」

TT「性状はどうでしたか?」

F「えーっと、やっぱりこれまでにないくらいの痛みで、性状はよくわかりません」


R「今は何か症状はありますか?」

F「今は右手が少し痺れる程度です。首の痛みもほとんどありません」


R「顔の麻痺とかはどうですか」

F「特にありません」


T(司会)「いいねえ、もう少しその質問を掘り下げようか
      それは何を意識した質問なの?」


R「えっと、頸椎の硬膜外血腫を考えていました。
  じゃあ・・・
  膀胱直腸障害のような排尿や排便に関しては、いつも通りですか?」


F「はい、普通に排尿も排便もできています」

T「うーん、それもそうなんだけど・・・

  みんなこの症例は脳梗塞か、TIAだと思っているでしょ?

  脳梗塞には○回騙されるって聞いたことある?」

TT「3回ですか!?」

T「おーよく知ってるね。」


TT「勘です!」


T「当たっています。笑

  脳梗塞は3回騙されるポイントがあります。

 ①まず、症状に騙されます
 ②次にMRIのDWIに騙されます
 ③最後にMRIのDWIとADCに騙されます



参考:脳梗塞には3回騙される


  ①症状に騙されるのは今の状況ですね。
  例えばこの状況で脳梗塞の対抗馬になるとしたら、どんな疾患ですか?」


TR「頸椎の硬膜外血腫です」


T「そうだね、それが一番の対抗馬だね!
  
  例えば右上下肢麻痺があって、MRIでDWIで光らなかったら、
  まだtPA時間内だとすると、tPA投与したくなりますよね

  硬膜外血腫にtPA投与したら大変なことになりますので、本当に注意が必要です。

  首が痛い人が何かしらの神経症状を出していたら、
 まず頸椎硬膜外血腫を疑ってください。

  さらに問診で詰めるとすると、首より上の症状をひたすら探しましょう


  特にこの症例は一時的に症状が改善してしまっているので、
  今、診察しても何も出てこないかもしれません。

  病歴で首より上の神経学的な異常がなかったかを探る必要があります。

  例えば、妻と話しているときに、妻に呂律が回っていないと言われなかったか、
  洗面で顔を洗ったときに、顔が歪んでいなかったか、
  うがいをしたときに、右側から水がこぼれなかったか

  という風に生活動作に交えて質問するのが、
 神経学的な異常所見を探す時の問診のこつです

  では頸椎硬膜外血腫以外の鑑別は何かありますか?」


H「RCVSですか?」

T「そうですね、排尿後の頭痛といえば、RCVSですね。
  RCVSはSAHと同じくらいの痛みです

  人生最大と言われたら、SAHかRCVSをまずは考えます。
  RCVSは後方循環系の血管が攣縮することが多いので、
  後頭部や頸部痛も矛盾しません。

  RCVSを詰める問診をするのであれば、後方循環系の症状を確認します。
  つまり、視野の異常がないかを聞きたいところですね。

  でも視野の異常は自分でも気づかないことが多いので、聞き方にも工夫が必要です

  トイレから歩いて戻ったときに、ドアに体をぶつけなかったかどうかとか、
  新聞を読んでいて、一部が見えにくかったとか。

  これも生活動作に合わせて聞くのがいいですね。

  では最後にこの状況で、
  普通の脳梗塞ではないmimicになるのは、なんでしょうか?」


U「解離ですか?」

T「そうですね、椎骨脳底動脈解離です。
  頸部痛と神経異常と聞いたら、まずは椎骨動脈解離を思い浮かべますよね」




外科Dr「普通、解離が一番じゃない?
    鑑別の順番逆じゃない? 笑」


T「そうですね、笑。みんな優秀です。

  椎骨動脈解離を疑ったら、他に聞きたいことはありますか?」


U「マッサージとか行ってますか?」

F「行ってませんでした」


T「いいですね!
  マッサージって椎骨動脈解離の誘引になりますから聞きましょう。

  ところで、、、
  
  いつからか分かりませんけど、美容室で肩のマッサージしてくれるところ、
  多くなりましたよね。

  店員さんによってはかなり圧強めでやられるので、痛い時ありますよね。
  肩や首のマッサージされる度に、椎骨脳底動脈解離になったらどうしよう・・・

  と思って、ドキドキしています。
  
  僕はNoと言えないので、断れないのですが、みなさんいかがですか?」


聴衆「(失笑)」

T「いやいや、美容室は甘くみちゃダメですよ。

  美容室症候群って知っていますか?

  髪の毛洗うときに、頸部を後屈させますよね?

  あの姿勢で解離を起こしたり、椎骨動脈の血流不全になったりして、
  意識を失う人もいるんですよ。

  まあ、今回の人は美容室行ってなさそうではありますが。。。

  あとは解離の誘引には何がありますか?」


TT「スポーツですか、トランポリンとか。」


T「そうですね! トランポリンと言えば・・・(脱線なので割愛)

  他に何かスポーツで危ないものはありますか?」


TT「アメフトとか、柔道とか」

T「そりゃそうですけど(笑)それ、ガチの外傷だから。
  咳とかくしゃみとか、軽微な外傷といえないレベルでなってしまうのが、椎骨脳底動脈解離です。」


外科Dr「ヨガとかも」

T「いいですね、覚え方は筋肉がぎゅーっと動くような姿勢になるものが多いですね。

  今回は何か誘引ありましたか?」

F「いえ、特に誘引はありませんでした。
  でもあまりしっかり数日前に遡っては聞けていませんでした。

  えーっと、強いていえば、雨戸を閉めたらしいです」

T「うん、椎骨脳底動脈の解離の原因に、「雨戸を閉めた」って書いてあっても、
  それ、たまたまやろ!ってなりますね。

  誘引を聞くコツとしては、家の外に出る機会や趣味を聞くことです。
  
 趣味のヨガやマッサージに実は行ったとか。
 
 椎骨脳底動脈解離の場合は、何かしら誘引や原因があることが多いので、
 ここはしっかり聞きましょう」




 
 


 では症例に戻ります」
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身体所見

バイタル T 37.0, BP 168/104, P 93, RR 20. SPO2 不明  意識 清明

一般診察 頸動脈雑音なし、心雑音なし、不整なし

神経診察 脳神経問題なし 右手に少し痺れある程度 麻痺なし
歩行 安定
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ディスカッション②:脳梗塞を疑った時の診察の型は?


T「みなさん、この症例は脳梗塞かTIAだと思っているでしょう?

  その場合、脳梗塞を疑ったらどんな診察をしますか?

  型はありますか?」

F「ありません、この症例もただなんとなく、診察してしまいました」

T「では型をプレゼントしましょう。」


脳梗塞を疑った時の診察のポイント

①原因となっている部位はどこか?(神経診察)
(1)首か脳か
(2)脳ならば、前方循環か、後方循環か
(3)ラクナか、皮質を巻き込んでいるか


(1)首か脳か


一番大事なのは、首かもしれないと想起することです

首より上の症状があれば、首が原因である可能性は低くなります

そのため、顔面表情筋や眼球運動、呂律不良、嚥下不良などなど、
顔面の神経に異常がなかったのかをしつこく探すことが大事です

顔に症状がなく、首より下の症状しかなかった場合、
危険信号です

首が原因の可能性があります

その場合は、必ず頸椎の評価を行ってください


(2)脳ならば、前方循環系か、後方循環系か

前方を探すというのは、難しいので、後方循環系で出る症状を探します

例えば、目の所見です
複視や眼振、視野異常、ホルネル兆候があれば、かなり後方循環系の梗塞が疑わしいです


注意しなければならないのは、小脳失調です

小脳の異常は実は、前方循環系でも場所によっては出るので、
小脳失調があるからといって後方循環系とは限りません







(3)ラクナか皮質を巻き込んだ梗塞か

ラクナの場合、古典的な病型が5つありますね
pure motor、pure sensory、ataxic hemiparesis、dysarthria-clumsy hand syndrome、sensorimotorですね




ラクナの病型であれば、どこが原因かはだいたいわかります

皮質症状というのは、いわゆる高次脳機能です

失〇:失認、失行、失語、失算、失書

とか半側空間無視とかをとります


これらをとるのが、神経診察です


ただ何も考えずに頭から順番にとっていくのではなく、
何のために自分は神経診察をしているのかを意識しながらとると、脳梗塞の部位診断ができるようになります


次に考えることは脳梗塞の原因です

アテローム性?塞栓性?奇異性塞栓?コレステロール塞栓?IE?

これらの原因を診断するために、一般のフィジカルがあります

②脳梗塞の成因は何か?(一般身体初見)

頸動脈雑音、心雑音、橈骨動脈の左右左、鎖骨下動脈の雑音、
下腿浮腫、リベド、眼瞼結膜や手掌の塞栓兆候、足の指のblue toe


これらの所見を取りに行くことで、脳梗塞の成因がわかることがあります

全ての脳梗塞症例でこれらを愚直に取らない限り、実際に出会っても気がつきません
脳梗塞の人に出会ったら、ルーチンでとるようにしましょう

あとで上級医にドヤ顔でblue toeや頸動脈雑音を見つけられるのは、かなり悔しいものです」



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症例に戻って

結局、神経診察の結果は右手の痺れしか所見としてはなかった

そしてこの後、精査目的に頭部MRIが撮影された

T「MRIでDWIで高信号だとしたら、どこだと思う?」

N「頸部痛もあったようなので、後方循環系ですかね。
  解離も気になります」

T「そうだね、でも解離だったら、麻痺はくるかな?

 普通はワレンベルグできそうだから、麻痺まではあまり来ない気もするよね」

N「確かに。。。」


T「じゃあ、MRIで何もなかったらどうする?
  
  症状よくなってるから、TIAとしてバイアスピリンいれる?
  もしくは頸部が気になるから頸椎のMRIとる?」


N「やっぱり抗血小板薬をいれる前に頸椎の病変は否定しておきたいので、
  頸椎のMRIをとります」

T「OK。

  実際どうされました?」

F「はい、実際は頭部MRIにてDWIで高信号はありませんでした
  
  MRAやBPASでは椎骨動脈に解離を疑わせるようなやや怪しい所見があったので、
  経過観察目的に入院となりました」

T「そうかあ、やっぱり脳梗塞じゃなかったかあ。
  
  じゃあ、首とるしかないね」


F「はい、結局、その日は頭部のMRIだけとって、様子をみました
  症状も右手の痺れくらいだったので。

  ですが、夜間に放射線の先生から電話がかかってきました。

  頸椎に硬膜外血腫があるよって。」


T「えーー???

 頸椎のMRIとっていないんだよね?

 じゃあ、放射線の先生は頭部のMRIで頸椎の硬膜外血腫見つけたの?

 凄すぎない?笑」

F「はい、凄すぎます。

  BPASを再構成してみると、一番下のところに硬膜外血腫が少しだけ見えているんです。

  その後、頸椎のMRIをとってしっかり硬膜外血腫がありました。

  ですが、圧迫は軽度で症状もほとんど改善していたので、
  保存的に加療して退院となりました。」


T「まじか・・・
  
  やっぱり撮った画像はとことん、全部見ないといけないね。

  いやあ、すごい症例ですね。
  
  放射線の先生もすごいけど、頸椎の硬膜外血腫を一番最初の鑑別にあげていた
  TR先生もすごいね。笑」

F「はい、びっくりしました。」


脳外科Dr「できれば、MRI室までついていって、頭部のMRIでDWIで高信号がなかったときに、頸部を追加で撮ってもらうのがいい方法だね。

頭部と頸部って一緒に撮れてしまうから、その場にDrがつきそうといいよ。

また出たり入ったりするのは、患者さんにとっても医療者にとってもストレスでしょ?」


T「確かにそうですね。貴重な症例をありがとうございました。勉強になりました。」


まとめ
・首より上に異常がない手足の麻痺や痺れは脳梗塞を考える前に首の病変を疑う

・脳梗塞を疑った時の診察の型をマスターしよう
→漠然と神経診察するのではなく、自分が何のために診察しているのかを意識する

・頭部のMRIでも頸部の一部は見えている
→頸椎硬膜外血腫を少しでも疑ったら、自分もMRI室についていく

参考:椎骨動脈血流不全


2020年7月11日土曜日

B型肝炎 〜なんて奥が深いんだ〜

症例 38歳 男性 主訴:交通外傷(※症例は一部加筆や修正を加えてあります)

現病歴:バイクを運転中に転倒し、救急搬送
内服:なし
既往:なし
生活:ADLフル、飲酒なし

バイタル:BP60/40、P 100、T 36.5、SPO2 96%
意識 清明、末梢 冷たい

PS(primary survey)
Cの異常あり →外液500mlで血圧安定(responder)

FAST negative
骨盤Xp  骨盤骨折あり
trauma panscan 骨盤骨折あり(骨盤輪は保たれている)
         実質臓器の損傷なし:肝損傷や脾損傷なし
         肝形態 普通、腹水なし、脾腫なし
         胆嚢は浮腫状、食道静脈瘤は確認できず
         腹腔内の脂肪織濃度が全体的に上昇あり

血液検査 Hb9、Plt 8万、凝固 PT-INR 1.6、APTT 120>
AST 200、ALT 180、LDH 350、ALP・γGTP上昇あり、Alb 2.8
Tbil 2、BUN 20、Cr 0.9

HBs抗体陰性、HBs抗原陽性、HCV抗体陰性

生来健康な40歳男性が、バイクの単独事故で救急搬送
骨盤骨折あり、一時ショックバイタルであったが、外液のみで改善し、responderとして対応
今後の待機的に手術が予定され、整形外科入院となった

しかし、謎の凝固異常あり、内科にコンサルト
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ディスカッション①この凝固異常はなんでしょうか?

整形Dr「この凝固異常はなんなんでしょうか?
    元々肝臓悪かったり、凝固が異常な人なのでしょうか?」

T「うーん、でも結構な外傷でショックにも一時期なっていたので、
  ただの外傷からの出血性ショックによるDICでいいんじゃないでしょうか?

  今後、手術を予定されているのであれば、FFPとRCCは入れた方が良いと思います。

  肝臓の値は若干上がっていますが、ショックリバーになりかけたのかもしれません。
  ですが、ショックリバーにしては、値がしょぼいです

  経過みながら、他の原因も考えていこうと思います
    
  本人に聞いてみると、子供の時からHBVキャリアと言われていたようです

  これまで肝臓が悪いとは言われてこなかったようですし、
  お酒も薬も飲んでいない人なので、
  ひとまず、肝障害や凝固異常は外傷に伴うものとして考えて良いのではないでしょうか?」

整「わかりました、FFPとRCC入れて手術に望みます。
 
  でもなんだか、この外傷でこんなに血が出るかな・・・
  という印象で、何かが変なんですよね・・・
     ALbも低めですし。」

T「Albは急性の出血の時には結構下がりますので、徐々に回復すると思いますよ」

整「わかりました」

手術後、バイタル変動なく、数日経過
術後経過は良好であったが・・・・
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経過

Pt「なんだか数日でお腹が張ってきました。」

身体所見
バイタルは安定、熱もなし

意識清明
腹部 圧痛ないが、明らかに張ってきている
羽ばたき震戦なし

感染のfocusとなるような所見なし

血液検査 Plt 5-10万台を推移、凝固はINR1.5前後を推移、
     AST,ALTは100ー200前後を推移、Albは2.5前後を推移
     Tbil 2前後を推移、腎機能問題なし

1週間後の造影CT:来院時はなかった腹水出現、肝臓の萎縮あり、門脈血栓なし

これは一体・・・・
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ディスカッション②外傷による一時的なショックの後の急性肝障害の原因は?

整「先生、腹水が出てきました。
  肝臓の値も悪いままですし、凝固も戻ってきません。
 
  外傷による出血という感じでもないですし、何が起きているのでしょうか?」


T「うーん。ちょっと考えますね。

  とりあえず、薬は全て中止しましょう。」


急性肝不全の原因の覚え方はABCsというものがあります(by up to date)

A:アセトアミノフェン、HAV、Autoimmune(自己免疫)、アデノウイルス
B:HBV、バッドキアリ
C:Cryptogenic、HCV、CMV
D:HDV、drug
E:HEV、EBV
F:fatty infiltration(acute fatty of pregnancy),Reye's syndrome
G:genetic(ウィルソン病)
H:hypoperfusion(虚血性肝炎、敗血症)、HSV、hemophagocytic
I:infiltration by tumor


うん、覚えられないですね。笑

ということで、いつも通りのVINDICATEで考えます


今回のイベントとしては、
①一時的にショックになった
②予防的に抗生剤が入った
③痛み止めとして、アセトアミノフェンやNSAIDsが通常量入った

元々の情報としては、
①肝臓が悪いと言われたことはなかった
②子供の頃にHBVのキャリアと言われた
③両親は肝臓は悪くなかった
④輸血したことはなく、今回がはじめて
⑤MSMではない
⑥お酒は飲まず、違法薬物は打っていない

肝臓が急に悪くなっている人をみたら

肝臓が悪くなっている人をみたら、まずは原因も大事ですが、
①激症化してこないかに気を配る必要があります


臨床の大事な考え方として、
この患者さんの行き着く先はどこなんだろう?と想像してみることがあります


この患者さんの行き着く先はどこでしょうか?


急性肝障害からの激症肝炎です
そうなると、治療はもちろん移植です


PT時間やINR、意識状態に気を配る必要があります

今回は、INRはずっと1.5前後を推移しており、どんどん悪化しているという感じではありませんでした
意識状態もずっと清明であり、肝性脳症が出現している感じはありませんでした

ただ造影CTにて肝萎縮や腹水が出現しており、これは嫌な兆候です


②激症化に気を配りつつ、次に原因を探ります

このタイミングで自己免疫とか、急性の感染症は考えにくいかもしれませんが、
ありえるかもしれません

血液でわかるものは提出しておきましょう(HAV,HBV,HCV,HEV,HSV,ANA,etc)

薬に関しては、疑わしいものは全てやめます


今回、輸血が行われましたが、輸血による肝炎ウイルスの感染症はどうでしょうか?
流石に数日後なので早すぎますね

造影CTでは門脈や肝動脈に血栓はなかったですし、
肝損傷を疑う所見もありませんでした

やっぱり、ただショックリバーが遷延しているだけなのか???


そういえば、この方はHBVのキャリアと言われていました

???

そもそも、HBVキャリアってなんだ?

HBVを持っているけど、悪さしていなくて、落ち着いている状態のことか?

HBVのProfileについて、改めて調べないといけないな・・・
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HBVについて

HBVのいやなところは、抗原と抗体がたくさんあって、
何を測ればいいのか、よくわからないということですね

知った気でいましたが、改めて勉強し直すと、とても奥が深いことに気がつきました


まずはHBVのウイルスの構造をみてみます



それぞれの検査の意味についてみていきます



 結局、どんな状態であるかを知りたいかで、測定する項目が変わってきます

up to dateにわかりやすい図があるのでご参考ください



HBVの感染経路の多くは垂直感染です
母から子供へ血液を介して感染します

ですが近年では、性行為で感染するジェノタイプAが流行してきています
これは成人で初感染して慢性化することが多いとされています

ですので、ジェノタイプAのHBV感染をみた場合は、MSMの確認が必要になります


今回はこれまでのよくある感染経路である母子感染の流れをみていきます


免疫応答が起こるまでは同じ流れをとることが多いですが、
その後の流れが複雑です

それぞれの時期は移行しますし、全ての時期を経るわけでもありません

以前、無症候性キャリア(免疫寛容期)や非活動性のキャリア(HBe抗体陽性無症候性キャリア)だったとしても、いつの間にか肝炎を起こしていることがあります


一度、安定した状態にいたからといって安心できないのが、HBV感染の落とし穴です 

HBVウイルスは遺伝子を肝細胞の中に組み込むので、
HBs抗体やHBe抗体ができた(セロコンバージョン)としても、遺伝子レベルでは排除できません

ですので、肝酵素の上昇がなくて、落ち着いているキャリアの人でも、
定期的なフォローが必要になります



 HBVの治療を検討する機会のシェーマ図です

HBVによる慢性肝炎や肝硬変の場合は治療すべきです
HBV-DNAやALTの値、年齢、ジェノタイプを考慮して、
治療に入ります(治療の詳細はガイドライン参照して下さい)

B型肝炎治療ガイドライン 2019


問題は急性の肝不全の場合です

HBVによる急性肝不全はいくつかのパターンがありますが、
すぐにこれらの病態を見分けるのは難しい時があります

肝不全が進行していってしまう症例の場合、HBVのどの病態によるかは置いておいて、
早期から抗ウイルス薬を使うことが推奨されています




今回の症例の結論としては、

HBs抗原:著明高値
HBe抗原:著明高値
HBs抗体:陰性
HBe抗体:陰性
HBc抗体:陽性
IgMHBc抗体:弱陽性
HBV-DNA:高値
ジェノタイプ:C
ALT:100以上
凝固:INR1.5
Tibil 4→2
Alb:2.8
肝臓:画像上の形態変化軽度(辺縁鈍化なし)
脾腫:軽度
腹水:途中で出現し、経過中に消失


追加情報
数年前から健康診断の血液検査で肝障害を指摘されていたが、忘れていた


ということで、子供のころは無症候性キャリアであったが、
成人になり慢性肝炎を発症し、知らない間に肝硬変の状態まで悪化していた
今回、交通事故でそれが偶然発見された症例

来院時はショックバイタルでもあり、
入院後の肝機能低下や腹水はショックリバーの影響や薬剤性肝障害が鑑別になったが、
HBVのProfileからは、HBVによる肝硬変の状態に急性の増悪が加わった
acute on chronic liver failure(ACLF)であると考えた




入院後、腹水は自然軽快し、Bil上昇も自然に軽快認めたため、
ACLFになった(もしくはなりかけた)が、自然軽快したと判断した

ただ、HBVの急性増悪の可能性もあったため、
血液検査の結果が揃う前からでも、抗ウイルス薬は使用を検討してもよかったと思われる

HBVのProfileが揃ったため、抗ウイルス薬の適応であり、
今後は抗ウイルス薬の治療を専門家主体で行なっていく予定

まとめ


参考文献:Journal of Hepatology 2012 vol. 57 j 1336–1348
     uptodate
               hospitalist  vol 6.No.3 2018 肝胆膵
     B 型肝炎治療ガイドライン (第3.1 版)

You tube解説動画:B型肝炎 解説動画

2020年7月5日日曜日

過換気後無呼吸 〜まだ慌てるような時間じゃない〜

ある日の救急外来(一部症例は加筆・修正してあります)

50歳 女性 主訴:吐き気、全身の痺れ

Profile:特記すべき既往なし
現病歴:来院当日、午前中に暑い中、農作業をしていた
    しゃがんだ体勢から立ち上がった時に、フラフラして吐き気があった
    家族が熱中症だと思って、本人に水をかけた
    その後、「寒い、寒い」と寒気を訴えて、
    ハアハアと呼吸が早くなってきたため、救急車要請し救急搬送となった

ROS:四肢の痺れあり、過呼吸あり
内服:なし 既往:なし

バイタル
血圧120/80、脈 90、SPO2 100% 、呼吸数 30回、体温 35.3度
意識 清明 みため やや辛そう
呼吸音 清

程なくして、落ち着きを取り戻してきた

が・・・

今度はSPO2 80%をきるようになってきた


と思ったら、またSPO2 100%に戻ってきた


???
低体温のせい?

加温してみるも変化なし・・・


これは一体・・・・
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ディスカッション①何がおきているのでしょうか?

T「何してるの?」

N「いやあ、明らかに過換気症候群で搬送された方なんですけど、
  
  過換気が終わったと思ったら、
  なんか急に無呼吸になって酸素化が悪いんですよね。
  
  水かけられたらしいので、少し体温が低めだったので、
  末梢がしまって、SPO2 拾えていないのかと思って、
  温めてみたんですけど、何も変わらなかったです。」

T「なるほど。
  本当だね、無呼吸になったり、呼吸したり繰り返しているね。」


N「そうなんですよ、寝ちゃうと酸素化が低下してしまうので、
  刺激して起こすとまた呼吸し始めるんですよね。
  
  〇〇さーん!起きてくださーい!!」

患者さん「はあ、はあ、はあ・・・」


N「こんな感じなんです。

  熱中症で中枢神経までやられてしまったのでしょうか???」


T「そんなわけないでしょ 笑

  そんなに慌てないで大丈夫だよ。

  何が起きていると思う?」


N「えっと、呼吸様式はチェーンストークス呼吸なんですけど、
 チェーンストークス呼吸が急にこのタイミングでおきますかね・・・・

 あとは、SASでしょうか。」


T「さっきまで過換気だった人が急にSASになるかな。

  これは過換気後無呼吸 
 Post Hyperventilation Apnea(PHA)呼ばれるものだよ。
  

  知らないとびっくりするよね。
  でも放っておいて大丈夫なことが多いんだ。

  ほら、だんだんmin のSPo2 が上がってきたでしょ?」


N「本当ですね、言葉だけは知っていましたけど、こんな感じになるんですか?

  こんな周期的なんですか?」


T「うん、そうだね。
  周期的なこともあるし、一時的に終わる人もいる。

  かなり過換気は酷かったんじゃないの?」


N「そうなんです、PaCO2 20mmHgでした」


T「なるほど、じゃあ、リンは1以下になっているね。
  リン出した?」


N「はい、出しました。

 
  今出ました。なんと、0.6でした!!

  こんな低くなるんですか?

  1以下は危ないって聞いていましたけど、大丈夫ですか?

  補充しなくていいんですか!?」


T「笑 慌てなくていいよ。

  だから言ったでしょ、1以下だって。

  
  過換気でアルカローシスになると、低リンになるになることを知っているのは素晴らしい。
  低リン血症が1以下が危ないことを知っているのも素晴らしい。

  でもこのパターンは補充する必要はないんだ。
  すぐに回復するよ。

  昔は自分もビビって補充しようとしたけど、
  このパターンは再検すると正常値になっているんだ。

 重症な過換気ほど低リンになりやすいし、
 自分が経験した過換気後無呼吸の人もみんな低リンになっていたね。

  多分、相関あると思うよ。そういう研究はないけど、研究してみると面白いかも」


N「そうなんですね・・・

  過換気後の無呼吸をはじめてみましたので、めっちゃ焦りました。」


T「そうだね、はじめてみると、びっくりするよね。

  モニターつけていないと気がつかないしね。
  
  これがあるから、ペーパーバックは推奨されなくなったよね。」


N「勉強になりました。」


T「SASがでしょ?(ドヤ)」

N「先生・・・S先生に似てきましたね・・・」

その後、患者さんは、無呼吸も改善し、意識清明になって呼吸苦や症状も消失した
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過呼吸の人の診療には2つのpit fallがあります

過換気や過呼吸の人をみたら、経験を積んだDrであればあるほど、

「はい、はい。過換気ですね、大丈夫ですよ〜
 ゆっくり呼吸してくださいね〜」

というような感じで、楽勝ムードで対応されることが多いです

背景には精神的な要因やパニック発作の人が多いということが、経験として身に染みているのでしょう・・・

ですが、ここがpit fallです


1つ目のpit fallは過換気の背景に重篤な病気が隠れている場合です

よくあるのは、喘息発作や敗血症、肺塞栓です


では一番見逃してもいい疾患はなんでしょうか?



答えは、パニック発作や精神的な誘引のものです



SPO2が100%でなければ、気を引き締めてください




2つ目のpit fallは今回の症例にあった
過換気後無呼吸 Post Hyperventilation Apnea(PHA)です
  
これは1905年にHaldane、1909年にDouglasらが報告した概念です

それよりも前の1987年のLancetや1966年のNEJMには、
過換気後に死亡した症例が報告されています

つまり、この病態は最悪、死につながることがあります




なので、慌ててください

それが正解です


ですが、知っていれば落ち着いて対応できます

過換気発作後にこうした無呼吸が起こることがあるので、
過換気が酷かった人は、必ずモニターをつけて管理してください

自然に軽快してくることが多いですが、
あまりに長引くような低酸素があれば、躊躇せずマスク換気や酸素投与してください




まとめ
・過換気症候群をみたら、2つのpit fallがあることを思い出す
→重篤な疾患が隠れいている可能性、過換気が終わった後の無呼吸

・過換気後無呼吸は最悪、死につながる病態
→過換気が重度だった人はモニターつけて管理すべし

・低リン血症と過換気後無呼吸には相関があるかもしれない
→どなたか、興味あれば調べてみてください

参考文献:. 2013; 7: 9.  PMID: 23594702
スラムダンク 

You tube解説動画:https://youtu.be/kI1S3EoSc_Y

2020年7月4日土曜日

新型コロナウイルス感染症をのりこえるための説明書 〜新聞ver.〜

じわじわ流行ってきていますので、注意喚起のため再度載せておきます

長野日報さんに連載させてもらった全7回の記事です
※長野日報さんからは、ネット上で拡散してもOKの承諾得られています









研修医の先生との振り返り 〜面談編〜

学生時代には習わなかったけれど、医師になってからはじめて知ることはたくさんあります
医学的なことはもちろんですが、医学以外のこともあります

一番はコミュニケーションのスキルだと思います
特に面談のスキルです


自分はインフォームドコンセント(IC)という言葉は好きではないので使いません
ICは「説明と同意」と訳されますが、患者さんは「同意」する必要はないからです

ムンテラはドイツ語のムントテラピーが語源で、「口で治す」というのが、
「言いくるめられる」というような意味合いに捉えられてしまっていて、
もはや死語になってきました


なので、自分は患者さんと話す時は「面談」と呼んでいます
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研修医の先生が、めまいの精査加療目的に入院した患者さんと家族に面談を行いました


これに忠実に沿って、研修医の先生は面談をしてくれました

まず、患者さんの思いや家族からみた患者さんの状態を聞き、
その後、今回の病状や検査結果を説明していました

説明は紙に絵をまじえながら丁寧に説明していましたが、
途中、画像を出すのがごたついてしまいました

一通りの区切りで、家族の方にも視線をむけて、
質問はありませんか?

と促しており、ご家族の方も自由に質問ができる雰囲気でしたが、
家族の中には高齢の奥さんもいて、奥さんはずっと黙って聞いておられました


ご家族の質問にも丁寧に答えていましたが、若干、質問と答えが一致していない
という印象は受けました
(ちなみに家族は質問した内容と答えが一致していなくても、
 「わかりました」と答えてしまいます。
 流石に「それは質問の答えにはなっていません」とは言えませんから)

最後に退院後の生活指導も話し、和やかに終了となりました
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面談の振り返りです

T「どうだった?」

Y「いやあ、全然ダメでした」

T「そう?とっても上手だったし、
 質問にもほとんど答えることができていたし、よくやれていたと思うよ。

 ちなみに、今の面談、自分では何点くらい?」

Y「50点くらいですかね」

T「そんな低い?笑

  80点以上はあったと思うよ。まあ、100点の面談がどんな面談かわからないけど。笑

  じゃあ、100点になるように振り返ろうか。
  強いていうなら、どの辺がもう少し改善できたかな?」

Y「え・・・そうですね。

  うーん、画像をもっと最初から準備しておけばよかったと思いました。」

T「そうだね。

 3つアドバイスがあるんだけど、その中の一つは準備だね。
 
 ファシリテーションって知ってる?」


Y「ファシリテーションですか。
 聞いたことはあります。」

T「ファシリって医者になるといろんな場面で使うんだ。
 今の面談もそうだけど、他職種で行うカンファレンスとか、会議とかでも使うね。

 つまり、話し合いが行われれば、ファシリが必要になるんだ。


 話し合いにはいろいろなパターンがあって、主に2つに分かれる

 今回みたいに、報告や承認のパターンだと、3つのプロセスになる
 情報共有→質疑応答→決定(病状説明→質問→退院決定)

 このパターンは比較的簡単だから、ファシリもいらないくらい。


 もう一つのパターンは問題解決のパターン。
 さあ、みんな集まってこの問題を議論しよう!みたいな時だね

 この時は4つのプロセスになる

 共有→発散→収束→決定 です

 このパターンは、そのままだと議論がまとまらないことが多いので、ファシリの力が必要です。

 
 4つのプロセスといいつつ、実は5つ目のプロセスがあって、

 最初に準備というプロセスがあるんだ。

 この準備がとても大事で、ファシリがうまくいくかどうかは、準備にかかっている。
 
 場のデザインスキルともかぶるんだけど、
 今回の面談でいうと、椅子のセッティングや誰がどこに座るか、誰を呼ぶかとか。

 患者さんを画像に近い位置に座ってもらったり、
 ご家族さんに自分がお尻をむけないように注意したりする必要があったね。

 画像も事前に準備しておけば、スムーズだったね。

 話す内容も事前にカルテに書いておけば、頭の中が整理される。
 
 結局、全ては準備なんだ。
 
 というのが、1つ目のアドバイス。」


Y「確かに。。。。

 先生がせっかく、MRIのDWIの画像出してくれていたのに、
 それを僕が変えてしまって、結局探しまくった挙句、またDWIの画像を出すっていうことをしてしまいました。」

T「そうだね、笑。
  人が準備しても意味がないからね。自分でしておこう。

  では二つめのアドバイス。

  それは、参加した全員に発言してもらうこと。

  今回、発言していない人がいるよね。」


Y「ああ、、、奥さんです。」


T「そう。奥さんは実は耳が遠いかもしれないし、話が難しくてついて来れなかったのかもしれない。
 
 いずれにせよ、奥さんは一言も話さなかった。

 せっかく面談にきてくれているのだから、奥さんに話をふってもよかったね。
 
 面談は一方的に医学用語を並べて、話をすればいいものではない。
 それはただのムンテラ。


 面談の姿勢としては話しながら、聴く姿勢でいるんだ

 そのために、話ながらみんなついて来れているかを確認するのが大事。
 マラソンの先導する白バイみたいに、誰も脱落することなく話を進めるのが重要なんだ。


 そこでだ。

 みんなに話し合いに参加してもらうコツがあるんだ。

 なんだと思う?」


Y「えーー。。。コツですか?
  
 わかりません。」


T「それは、
 この現状で一番立場の弱い人は誰かを常に意識することだよ。

  この考え方はどんな場面でも意識しておいた方がいい

  例えば電車の中では、妊婦さんや小さな子供をみている親は実はとても立場が弱い。

  コロナ騒動でも、一番立場の弱い人は誰だろうって考えると、
  その人たちを助けることができれば、ほとんど全ての人を助けることができる。


  今回の面談では明らかに高齢の奥さんだったね。
  だから奥さんにむけて話すイメージで、話すのがいいんだ。

  奥さんでもわかる声のスピードと大きさが求められていたんだよ。」


Y「なるほど・・・」

T「最後のアドバイスは、致し方ない部分もあるんだけど、
 
 緊張すると早口になってしまうよね。

 これを克服するのはどうしたらいいと思う?」


Y「練習ですかね。自分で自分の声を聞いてみたり、人前で一度話てみたりすることでしょうか。」


T「そうだね、それも大事。

  もう一つはね。自信だと思うんだ。

  この患者さんの病態について深く考えて、
  自分の中で納得できる物語が生まれた時に、患者さんに自信を持って話ができる。

  
  めまいだからとりあえず、中枢性が怖いので脳梗塞の検索のために
  MRIを撮りましたが、脳梗塞はありませんでしたので、大丈夫だと思います。

  っていうのと、

  めまいの原因には大きく二つあって、脳からくるものと耳からくるものがあります

  今回はお風呂に入った後に立ち上がって、その後、めまいが起きています
  めまいの後に横になって、数分間で治っています

  耳からくるめまいの場合、数分間で治ることは考えにくく、
  どちらかというと一時的に脳への血流が途絶えて、めまいが起こった可能性があります

  なんらかの理由で脳への血流が低下してしまい、それが完全に途絶えてしまうと脳梗塞になります

  今回は幸い脳梗塞はみられませんでしたが、一過性の脳への血流が落ちてでた症状だったことが推測されます・・・

  というようなかんじだね。

  検査結果や病名を伝えることはもちろん大事なんだけど、
 患者さんの起こった症状を病態生理まで理解して、
 その思考のプロセスを共有してもらうのが、家族としても納得がしやすいと思うよ


  だから自信を持って話すためには、患者さんにおきた病態生理を深く理解しておく必要がある。

  もちろん、病気や治療の知識も必要だからめっちゃ調べる。
  
  自分が知らないことを突っ込まれたらどうしよう・・・・

  と潜在的に思っているから、質問がくると焦るし、
  適当に自分の中で答えられる答えとして、質問に答えてしまうんだ。


  病態生理や知識があやふやだと、焦った話し方や丸めんでしまうような話し方になってしまうんだ。」


Y「確かに。。。」

T「でもこれは強いていうならのアドバイスだから、今ので十分、平均以上のいい面談なんだよ。

  ただ、より高みの面談を目指すなら、この3つを意識してみて。」

Y「はい、わかりました。ありがとうございます。」


T「面談ってめっちゃ勉強になるでしょ?

 医者になって、一番勉強になったなあと思える時は面談だと思うよ。

 こんな大事なこと、なんで学生時代に教えてくれないんだろうね。」
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まとめ
・面談で最も重要なのは、準備である
→場所、人、時間、内容を事前に考えておく

・面談ではみんなに発言をしてもらう
→誰がこの中で立場が弱いかを考える

・焦らず話すためには、練習も必要
→もっと大事なのは、自信を持つこと
 患者さんに起こった病態、病気の知識、
 治療内容、全ての知識があれば焦ることはない
  

You tube追加解説動画:ファシリテーションhttps://youtu.be/yIXel1vlEHc
面談の仕方https://youtu.be/7YGIbOICA0A




2020年7月2日木曜日

ボス回診 〜見えている世界が違う〜

Y「お願いします。
  コンサルテーションポイントは、
  現在、肺炎・心不全に対して治療を行なっているのですが、
  酸素化が改善しないので、今後の治療方針について相談させていただきたいと思います。」

S「OK」
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82歳  男性 主訴:呼吸苦(症例は一部修正・加筆を加えています)

Profile:認知症あり、施設に長期入所中、ADLはほとんど寝たきり
    会話は可能、もともと多量喫煙者

現病歴:1ー2週間前からSPO2 が90%を下回ることがあったが、
    本人の自覚症状がなかったので、経過をみられていた
    発熱や湿性咳嗽はみられず

    受診の4日前に転倒し、腰痛が出現
    嘱託医の診断で腰椎圧迫骨折と診断された
  
    受診の前日、酸素化低下あり。SPO2 80台になっていたが、
    呼吸苦の訴えなく、様子がみられていた
    受診日当日、SPo2 70%台になり、本人の呼吸苦もあったため、
    当院受診し、心不全・肺炎疑いで入院となった

既往歴:小児期よりてんかん、COPD、前立腺肥大症

バイタル:BP 140/80, P 89, SPO2 82%(RA)→90%(2L)、RR18、T 37.3
意識 会話できるが、なんだか呂律が回っていない印象
指示は入る

見た目 顔面含め全身の浮腫みがありそう 苦しそうな様子はなし
頸静脈 短頸で観察不良
呼吸 全肺野からcrackle聴取
心雑音なし
腹部 ぼってり 軟 圧痛なし
四肢 下腿浮腫著明 上肢にも浮腫あり

血液検査 CRP1、Hb17、腎機能問題なし、BNP 80
血ガス CO2 41
CXR    心臓の後ろの透過性低下あり、下降大動脈のシルエットアウトあり
CT   両側の下肺背側で浸潤影あり、全体的に気腫性変化あり、気管支壁は軽度肥厚
    他、特記事項なし
心電図 洞調律、ST-T変化なし

痰はでず
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Y「・・・という状況でした
  体重が1年前から5kg増えており、まずは心不全と考え、利尿剤の投与を行いました
  また肺炎もあると判断して、CTRXで治療を開始しました

  入院後、体重は減少傾向ですが、1週間経過してもまだ酸素が外せない状況です
  今後はCOPDの合併もあるので、SABAの吸入を行おうと思っています」

S「ありがとう。

  ところで、薬は何飲んでいるの?」

Y「あ、すいません
  アレビアチンとウルティブロです。」


S「なるほど、ウルティブロって何だっけ?」

Y「LABA,LAMAです」

S「了解。じゃあ行ってみよう」
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ボス回診

S「こんにちは〜」

Pt「ガーガー、むにゃむにゃ・・・(眠そう)」

S「やたら眠そうだね。目は開きますか?」

Pt「うーん、先生が○×▲□ むにゃむにゃ・・・」


S「・・・?いつもこんなに呂律は悪いの?」

Y「はい、施設の方に聞いてもいつもこんな話し方のようです」


S「なるほど。全然目が開かないね。

 すいませんが、診察させてくださいね。深呼吸してみてください・・・・」


Pt「スーハースーハー」

口元に聴診器を持っていき、early inspiratory crackleを聞いたが聞こえず・・・




:DOI: 10.2169/internalmedicine.46.0455


S「どこか痛いですか?」

Pt「痛くない」


S「ここ(腰)はどうですか?」

Pt「アイタタた」

S「やっぱり痛そうだね、リハビリの様子はみたかな?」

Y「いえ、しっかりとはみれていないです。」


S「これだと、座ったりするのも大変そうだね。」


他の診察・・・
バチ指なし
末梢はやや冷たい
浮腫ないが、全身がややぼってりしている

神経
指示は入る 会話できる
眼瞼下垂なのか、なかなか目が開かない
呂律不良は目立つ
粗大な麻痺はなし
指鼻指はぶれてしまう
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ディスカッション①何を考える?

S「パッとみてどう思った?」


学生「うーん」


S「明らかにblue bloaterだね!」


Y「blue bloater??」

S「blue bloaterっていうのは、COPDの慢性気管支炎型のタイプの人だよ。

  青太り型だね。
  全体的に青白くて、ぼってり浮腫んでいるような体型なんだ。

  もう一つのパターンは肺気腫型のpink puffer(赤ふぐ)パターンだね。

  少し赤ら顔で口すぼめ呼吸をして、フグのように口が膨らむでしょ。


  COPDの身体所見って色々あるけど、こういうパッと見の印象ってとても大事なんだ。」





T「日本ではpink puffer型が多いと思っていました。
  あんまり最近の教科書には強調されていないように思えます。」


S「そうなんだ、だからこそblue bloaterは見落とされてるんだ。
  気がつかないでしょ、一見、COPDだって。


  大事なのは、呼吸機能検査で1秒率がうんたらかんたらで、GOLDの分類が〇〇で・・・
  っていうことではなく、その前段階。


  この人に呼吸機能検査しよう!
  
  って思えるかどうかは、パッと見ただけでわかる。


  pink pufferは日本人に多いから、分かりやすいけど、
  blue bloaterのパターンもあるから、覚えておこうね。

  
  今回の症例は多量の喫煙歴があったし、そりゃあCOPDでしょ?
  って思って、early inspiratory crackleを聞いたけど、聞こえなかったね。
  early inspiratory crackleあがあれば、%1FEV1は40%以下と言われる。

  つまり重症ってことだよ。


  でもなかった。

  その時点で、本当にCOPDが悪さをして酸素化が低いのかが疑問だったんだ。


  それでだ。


  他に何か感じた?」


学生「いや・・・なんだか・・・話すのが、、、
   ゆっくりでした・・・・」


S「そうだね。
 
  あと、目が開かなかったよね。
     
  呼吸状態がなかなか改善しない時って、肺の問題も考えるんだけど、
  次に考えるのは、筋骨格系の問題じゃないか?ってことなんだ


  だからそういう時は、常にMG(重症筋無力症)を疑っている。
  その中で、目が開かないというのは、もしかしたら眼瞼下垂なのかもしれないよね。

  入院後、ガスはフォローした?」


Y「いえ、していません」

S「そうだね、一回、酸素をoffにしてみて、AaDO2を測定してみるといいね。
  まあ、肺炎や心不全、COPDがあるから、解釈は難しいかもしれないけどね。

 ただ今回の場合、MGっていう鑑別診断は実は高級な議論なんだ。

  
 実際はなんだと思う?」


Y「・・・」



S「多分、痛いだけだね。


 痛くてあんまり呼吸が吸えていないんじゃないかな?

 もともとCOPDで酸素化がギリギリな人が、圧迫骨折になってしまって、
 うまく呼吸ができていないんじゃないかな?」


Y「なるほど・・・
 確かに今回、プレゼンの準備をしていて、
 そういえば圧迫骨折って言われてたなあ、って改めて気がつきました。
 
 入院中は寝ていれば、痛みはないというので、気が付きませんでした。」


S「そうだね。

 この人は酸素化の低下という表現で、痛みを訴えていたんだ。


  大事なのは、HOTではなく鎮痛だね。」


Y「わかりました。ありがとうございます。」



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ディスカッション②眠そうな原因は?

S「あと、やたら眠そうだよね?

  それはどう?」


T「COPDもあるので、cO2ナルコーシスだったら嫌だなあと思いました」


S「そうだね、それをみるのもあって、末梢をみたんだけど、赤くはなかったね。

 この人の指鼻指どうだった?」


Y「ぶれていました」


S「そうだよね。
 
  この人はアレビアチンを長期に飲んでいる。
  つまりフェニトインね。


  フェニトインの血中濃度って線形に比例して上がっていく感じじゃないんだ。
  急激にあるところから上昇してしまう非線型関係(non-linear saturation kinetics)なんだ

  治療域がとても狭くて、血中濃度が上がると副作用が出やすい


  血中濃度測った?」


Y「測っていないです。」


S「測ったほうがいいね。血中濃度によって出てくる症状もわかっている

 10ー20が至適濃度で、
 30くらいで眼振が出て、
 40くらいで小脳失調が出て、
 50くらいで意識障害が出てくる。

 
 フェニトインは今はあまり使われなくなったけど、昔はよく使われていた薬だね。
 長期投与されると小脳萎縮がきたりすることもある

 だから呂律が回っていないのは、もしかすると小脳症状かもしれないね。」

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ディスカッション③:プレゼンの意味は?

Y「わかりました、ありがとうございます。

  今回も全然、だめでした。」


S「そんなことないよ。

  あ、でも薬をプレゼンで言わなかったのは、ダメだね 笑。
 
  なんで薬をプレゼンで言ってなかったか、気がつけたかというと、
  いつも薬が原因じゃないかって疑っているからなんだ


  いつも心に・・・?」


Y「薬と結核」


S「知ってるでしょ?

  みんなわかっているのに、薬が原因ということに気が付けないんだ。


  プレゼンをすることで、たくさん気が付くことがある。
  今回の圧迫骨折にだって改めて気がついたでしょ?

 
  医者がプレゼンする最大の目的は患者さんのアウトカムをよくすることなんだ。


  プレゼンは八方美人のようなプレゼンでなくていいんだよ。
  拙いプレゼンでいいんだ。

  
  ディフェンシブで、あれもこれも考えています。
  みたいに言われてしまうと、議論が進まない。


  だからこそ、ツッコミどころがあった方が、議論は盛り上がる。

  それが患者さんにとっていいアウトカムにつながる。

  
  今回だって、アレビアチンのことわかってますみたいな感じでプレゼンしてたら、
  ここまで盛り上がらなかったでしょ?」


Y「そうですね。笑

  これからもめげずに頑張ります。」


S「そうだね、プレゼンはたくさんしたほうがいいよ。

 プレゼンをすることで、患者さんのプレゼンテーションが頭にストックされるんだ。


 症例を自分の中の棚みたいなところに入れてストックしていく感じ。
  外付けのハードに貯めても意味がないんだ。
 
 すぐにアクセスできない時もあるしね。
 
 ストックがたくさんできてくると、照らし合わせることですぐに診断できるようになる。

  
 これからも、議論が盛り上がるようなプレゼンをたくさんしてね。」


Y「はい、頑張ります」
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まとめ
・COPDのblue bloater(青太り)型を見逃さないように

・圧迫骨折後に酸素化低下することはよくある
→低酸素でしか、痛みを表現できない人もいる

・プレゼンは八方美人は盛り上がらない、拙いプレゼンでいい
→内容よりも気持ちが大事

皮疹の見方

皮疹の見方 皮疹の見方と言っても状況によって考え方が異なる。 皮疹だけをみてどう考えるかだけではなく、 どんな文脈で皮疹が出てきたか、 が重要である。 我々が皮疹に出会う状況は皮疹と全身症状のバランスによって3つに分けられる。 ① 全身症状がメイン(発熱、関節炎、ショックなど)だ...

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