2019年7月27日土曜日

診断よりも治療が大事な時

國松淳和先生の「病名がなくてもできること」をよんだので、

読書感想文してみたいと思います


自分なりの本を読むコツ

①読んでいたら、イメージが降ってくるので、

それを絵にしてメモしていきます

左脳(言語)を右脳(イメージ)に変えていく感じです




②読み終えたら、まとめます

自分の考えと共感できれば、なおさらまとめたくなります

そこで大事なのは、ただまとめるのではなく、

自分の思考を通して、まとめるという事です

自分の考えが組み合わさって、新しいものが生まれます

なので、下記にまとめがありますが、

國松先生が全て語ったことだけではなく、個人的な経験や解釈に基づいて

まとめてあります



勉強のコツはいかに、アウトプットするかです

inとoutの比率は、3:7でいいそうです

(学びを結果に変えるアウトプット大全より)


本を読むときも、読んだらどうやってアウトプットするかを考えます

経験上、アウトプットしなかった時に読んだ本の内容は、ほとんど忘れています

しかし、何かしらアウトプットすると、記憶の定着が格段に上がります

アウトプットする方法は何でも構いません

フェイスブック上に読んだ本の感想をあげている人もいますし、

自分のパソコンの中だけに残しておいてもよいと思います

翌日に人に伝えるだけでも良いです



自分はこうやって、ノートにまとめるのが性に合っているようです



読書感想

この本を読んで、

自分が深層心理で思っていたことだけど、

言語化できていなかった部分であり、それを言語化してもらっている感じで、

とても共感できました


眼から鱗のことが多いです


それ言っちゃう!

みたいなことを平気で言語化していきます

そこが國松先生の魅力です



診断・病名がなくてもできること、という斬新な切り口で書かれています

診断学が好きな総合診療医に一石投じている感じです


確かに、診断できなくても何かをしなければならない場面はあります

それを3つのフェーズに分けて考えていきます




初診外来

まず時間という武器が使えない初診という世界についてです


個人的には、病気を診断するには、

病歴×身体所見×検査×時間


が必要だと思っています

よく外来で、「診断は何なんですか?」と迫られますが、

「もう少し時間が経てば、病気が顔を出してくるので、

 情報も増えて診断できると思いますよ」

と返すと、ほとんどの方が納得してくれます



病気を診断する時に、時間は大きな武器になります


その時間という武器が使えない状況が、初診外来です


そのため、初診外来では、半分以下くらいしか病気を診断できないと思います


医師としては、病気が診断できなくても、何か患者さんのためになることをしなければ、

患者さんが来た意味がありません


そのため、初診の時点で、診断をつけられなかった時に大事なことは、

具体的なプランを提示することです


「週明けても、発熱や咳が持続しているようなら、肺炎の可能性があるので、

また来てくださいね」

「2週間後の外来で、咳の様子を聞かせてください、まだ咳が続いているようなら、

咳喘息として対応するかもしれません」



といった感じで、具体的に示すことが重要です



キャンピロバクタ―がよい例です

one day FUOと称されるように、

頭痛・節々の痛み・高熱が、まずはじめの症状です

この時点では下痢がないので、キャンピロを積極的に疑えません

インフルエンザ様症状を呈する疾患はたくさんあります


そこに、数日前にBBQにいったという情報が加われば、

これはキャンピロの下痢の前の症状の可能性があるということで、

「明日、下痢になったら、キャンピロバクタ―という感染性腸炎だと思います。

その場合は水分をしっかりとっていただき、経過をみていただければ、

自然に治ることが予測されます。水分さえ取れなくなったり、

腹痛が悪化してきたりすることがあれば、いつでも受診してください」

ということができます


この時点で重要なのは、診断はついていなくても、

軸足を何かに置いておく、

何かの病気に賭けておくことが重要です


何にも賭けていないと、新たな情報が出てきてもインパクトが全く違います





ここで思い出すのは、

研修医の時に、矢野晴美先生(国際医療福祉大学)に言われた言葉です



「医者の仕事は考えることではありません、judgmentです」


この言葉が医者としての自分を支えています


知識が豊富で、鑑別疾患をたくさん上げることができる医者が、

よい医者ではありません

与えられた情報の中で、最善の判断・決断をすることができるのが、

よい医者です





あとがない状況



後がないというのは、死が迫っているということだけではありません

臓器障害や機能予後という観点でも、後がないと言えます


例えば、ADLがギリギリな高齢者がPMRになってしまって、

さらにADLが落ちているとしたら、

これ以上、動けなくなったらリハビリしても、

本当に寝たきりになってしまう

というのも、後がないと言えるかもしれません



このあとがないという状況は、科ごとに異なります

呼吸器、循環器、腎臓、消化器、神経といった科は、

画像や検査データで後がないことがよくわかります

つまり、戦っている相手を可視化しやすいと、國松先生は書いています


可視化しにくい敵というのは、

多くは炎症の病態です


炎症が強くなりすぎると、炎症を起こした本態が見えにくくなり、

炎症の結果起きている事象(臓器障害)に目が奪われて、

ついには、血液・凝固異常をきたしてきます



そういったときに、火事を起こした犯人が分からないから、

火は消さない

ということはあり得ないと思います


犯人捜しは火を消した後です


なので、とりあえず火を消すために、

ステロイドを使用します

これを國松先生は、damege control steroid therapyと言っています


よくあるのは、不明熱で精査中に、

凝固異常をきたし、貧血が進行し、

血球貪食リンパ組織球症(HLH)をきたしてきた


という状態です


炎症が強くなりすぎると、行き先はHLHです

入口はいろいろあります



このフェーズでは、病名よりも、

病態を考えることで、治療を行います


「病名がなくてもできること」の本を読んだまとめ
・本を読むときに、左脳→右脳を意識しながら読む
→読んだらアウトプットする


・初診外来の時点で大事なこと
→診断をつけることではなく、具体的なプランを提示する


・あとがない状況で大事なこと
→病名よりも病態を考えて、治療する


最後に、一番心に響いた文章を抜粋してご紹介します。

(中略)勇気というのは、無謀で危険なギャンブル精神では決してない。
確かで正確な知識を身に付けて、治療に踏み切った後のフォローまで行い、そのフォロー内容は治療副作用の管理はもちろん合併症の治療あるいは、そもそもの診断の見直しまでカバーするものであって、迷いや苦しみを負い続ける責任感まで含めて「勇気」と呼ぶのである。

(中略)単なる賭け的な思い切りではなく、その後も患者をフォローする・フォローし切るという責任感の発動なのだろうと思う。



決断する時に、勇気がでない時に思い出したい言葉です。

参考文献:
病名がなくてもできること 診断名のない3つのフェーズ 國松淳和 中外医学社


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