2020年10月11日日曜日

感染症セミナー 〜with コロナ(前半)〜

 62歳 男性 主訴:倒れていた (※一部、症例は加筆・修正を加えております)

Profile:DMで透析中、ADLはフル

現病歴:旅館で勤務

    同僚が勤務に来ない患者を見に行くと、自宅の部屋で倒れていた

    救急車要請し搬送となった

(本人からは病歴とれず、同僚からのみ病歴が取れる状況)

    前日、会った時は元気そうだった

             最終の透析日は2日前、予定では来院日の翌日が透析日 


既存症:高血圧、狭心症、糖尿病

内服:アムロジピン、カンデサルタン、トラゼンタ、バイアスピリン

生活:旅館で勤務、飲酒なし、喫煙 20本/日 


来院時バイタル:BP127/75, P 86,  T 39.7 , Spo2  73% (RA) →95% (7L) ,RR 32

          意識レベル 不穏状態で指示入らず

身体所見 項部硬直なし 

     心雑音なし  呼吸音 wheezesなし cracklesなし

     腹部 圧痛なし

     下肢浮腫なし 関節腫脹なし 皮疹なし

血液検査 WBC 11000,Hb 8,  Pat  12, CRP 11

     トロポニン上昇あり、BNP  上昇

                     LDH 軽度上昇あり、CK 軽度上昇あり

CXR  両側下葉の透過性低下あり

CT  両側下葉にコンソリデーションあり、胸水少量あり

   血管陰影の増強あり

ECG   広範囲でST-T低下を認める


痰G染色:白血球少数、扁平上皮少数、porimicrobaial patern


重症肺炎、心筋梗塞が疑われ、集中治療室へ入室となった

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ディスカッション①

重症患者さんですが、どのように考えていけばいいでしょうか?

最も気を付けたいポイントはなんでしょうか?


T(ファシリ)

 「はい、DMで透析中の62歳男性の急性の経過で起こった意識障害、呼吸不全という症例ですね。

 肺炎はありそうですが、さらに心筋酵素上昇や心電図変化も伴っており、

 心不全の合併もありそうな感じです。

 多臓器にまたがるプロブレムがあり、by systemで考えた方がいい症例ですね。


 さて、まずはどのように考えますか?第一印象はどんな感じですか?」


S「バイタルからは敗血症が疑われる状況です。

 原因は肺炎だと思われますので、早めに抗生剤を投与していきたいです。

 あとNSTEMIもありそうなので、循環器にも声をかけたいです」


T「はい、ありがとうございます。

  早めに抗生剤入れたいですよね。

  では抗生剤は何を使えばいいでしょうか?」



S「うーん、そうですね・・・」


T「先ほどのレクチャーでもあったように、感染症を疑った場合は、

  ロジックで考えていくのが重要です。

感染症診療 初めの一歩



  一番大事なのは患者背景です。


  どんな患者さんかが分かれば、自ずと菌名もわかってきます。

  そうすれば、何の抗生剤を使うべきかも見えてきます。


  この患者さんの人となりはどうでしたか?」


S「糖尿病があって、透析している方です。あと喫煙者で、vascular riskの高い方です」


T「そうですね、糖尿病と透析というのは、とてもコモンな免疫不全の原因です。

 糖尿病や透析に特徴的な感染症はご存知ですか?」


S「わかりません」


TT「ぱっとは出ませんが、緑膿菌感染は考えたいです。」


N「透析の人であれば、穿刺部位からの感染は考えたいです」


T「はい、ありがとうございます。

  そうですね、糖尿病で特徴的な感染症があるので、知っておいてもいいですね。



  あと透析の方の場合は、結核のリスクが高いので注意が必要です。


  


  

  糖尿病や透析というのは、「免疫」という観点からの人ととなりでした。

  「暴露」という観点からの人となりはいかがでしょうか?」


S「旅館で働いているので、都会の方との暴露はあるかと思います。

  それ以外の暴露については、病歴が聞けないのでわかりません。」


T「そうですね。この時代は不特定多数との人の暴露、

  つまり3密への暴露が、一番、医療者を緊張させますね。


 ということで、コロナ対応しますか?」


S「肺炎もありますし、呼吸不全の状態でもありますので、コロナ対応はした方がいいと思います。」


T「他の方も同じですかね、

 そうですね、では個室隔離として入室時はPPEを装着し、

 患者さんにはサージカルマスクをつけてもらいましょう。

 でも不穏状態・意識障害のせいで、なかなかマスクもつけられなさそうですね。


 感染症診療で次に考えるべきは、感染臓器です。

 肺炎はありそうですが、他にfocusとなる臓器はありますか?」


  

T T「意識障害も伴っているので、髄膜炎対応をした方が良いかもしれません。」


T「ありがとうございます。そうですね。

 髄膜炎対応するとすれば、どういう対応になりますか?」


TT「血液培養をとって、デキサート®︎を点滴して、

  抗生剤をすぐに点滴します。セフトリアキソン、ビクシリン、バンコマイシン、

  ヘルペス脳炎を疑う状況であれば、アシクロビルも投与します。

  そして落ち着いたら、髄液検査を行います。」


T「はい、ありがとうございます。点滴ではなく、本気の髄膜炎対応の時は、

 ivでいいですよ。VCM以外はね。

 髄膜炎を疑ったら、30分以内に抗生剤を投与しなさいと言われるような疾患だから、

 本気で対応する場合は、ivでお願いします。



髄膜炎対応



 この症例は髄膜炎対応すべきでしょうか?」


N「そうですね。した方が良いかと思います。」


T「みなさんも同じ意見ですかね。

 そうですね、意識障害の原因は実は肺炎や敗血症性脳症でいいかもしれません。

 でも、髄膜炎でもいいかもしれませんよね。

 

  迷ったら、やる。


  これは救急やICUの世界ではよく言われることです。

  結核対応、コロナ対応、髄膜炎対応・・・

  

  〇〇対応をするかどうかは、誰かがそれを口走ったら、やった方がいいです。

  やらない時に限って痛い目に合います。


  ということで、今回の症例は髄膜炎対応しつつ、コロナ対応するという非常に忙しい状況です。

  さらに心臓の虚血も絡んで心不全になっており、

  透析もすぐに必要な状況で、不穏状態という大変な状況です。

  

  バイタルを立て直すためにも、挿管して人工呼吸器管理が必要そうですね。」

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経過

都会の人との暴露があり、コロナ対応でICUの個室に入室となった

その後、不穏状態で透析を行うことができず、鎮静・挿管・人工呼吸器管理を行なった

血圧も低下し、CV挿入し、NAが開始となった

Aラインと胃管も留置された


抗生剤は髄膜炎も念頭にMEPN,VCMが投与開始となった

当初は髄膜炎を積極的に疑ってはおらず、ステロイドの投与は行われなかった

鎮静後に髄液検査施行し、細胞数やタンパクの上昇は認めず、髄膜炎は否定的だった


その後、呼吸状態は横ばいのまま推移

呼吸器の設定を下げることができなかった


高熱も持続し、3日間が経過した

この時点で、初日の血液培養は陰性

痰の抗酸菌染色は陰性、コロナのPCRは陰性だった


そのため、再度、fever work upを行なった


・CRBSIを疑い血液培養を採取し、カテーテルの入れ替えを行なった

・画像評価を行うと、肺のコンソリデーションが増悪しており、胸水が悪化していた

・CDトキシンを提出したが、陰性であった


(前半終了)


  

  

2020年10月8日木曜日

昼カンファレンス 〜でも逆はよくない〜

95歳 女性  主訴:左下肢の痛み (※症例は一部加筆・修正を加えてあります)

Profile:要介護5、ほぼ寝たきり、施設入所中

現病歴:4ヶ月前から急に左下肢の浮腫が出現 痛みも伴っていた

    慢性心不全と診断され、フロセミドの内服が開始された

    3ヶ月前、浮腫が増悪し、フロセミドが増量されて軽快した

    2日前、発熱認め、左下腿の発赤・腫脹・滲出液が出現

    前医にて抗生剤処方された

    来院当日、症状改善せず救急外来受診


バイタル

血圧83/53、脈102、呼吸数22、体温37.8度、SPO2  92%

見た目 不穏状態

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ディスカッション①他に聞きたい情報は?


司会T「はい、ありがとうございます。

   ショックバイタルですので、悠長に病歴聞いてもいられませんが、

   他に聞きたい情報はありますか?」


K「飲んでいる薬はなんですか?」


N「たくさんあります。」


既存症:高血圧、糖尿病、Af、脳梗塞、症候性てんかん、喘息、便秘

内服:カルシウム拮抗薬、硝酸薬、フロセミド、ネシーナ、リクシアナ、イーケプラ、デプレノン、ピコスルファート、酸化マグネシウム、カロナール、エビナスチン、オーグメンチン、サワシリン、マイスリー


T「わーお、たくさんだね。笑

  こう言うのなんて言うか知ってる?」


学「・・・・」


T「ポリファーマシーだね。

  そして、マルモだね。multimobidity(多疾患併存)の略です。


  この人は多分、骨粗しょう症もあるよね。

  ガイドラインが入り乱れている世の中で、病気ごとにしっかり、

  ガイドラインを遵守したら、大変な数の薬を飲まなければならなくなるね。

  それが果たして、患者さんにいいことをしているのかなぁ?

  

  マルモの場合、それぞれの病気のプロブレムリストを作ると、

  #1〜#13・・・と膨大な数になってしまう。


  だから最近は、ICUの時のカルテのように臓器別に考えたり、

  

  このようにパターンごとに分ける方法が推奨されてきています

マルモのみかた

  

  目の前の患者さんの病気を「虫の目」でじっくりみるのではなく、

  「鳥の目」のように、全体像を俯瞰してみてみましょう。



 覚えておいて欲しいのは、高齢者が救急外来にきたら、

 まず、薬の関与を疑ってください。

 病気を考える前に、薬のせいにしてみるのが、コツです。

  
  

  さて、今回であればどんな薬が悪さしてそうですか?

  入院になったら、みなさんはどの薬を中止したいですか?」


Y「カルシウム拮抗薬は浮腫む副作用があるので、中止した方がいいかもしれません。」


T「そうだね、カルシウム拮抗薬で浮腫んでしまって、フロセミドが処方される。

  よくある処方カスケードですね。

  いいと思います。」


O「後はリクシアナを飲んでいるので、腎機能悪かったりしたら、

  効きすぎて血腫や出血傾向になっているかもしれません」


T「その通りですね。凝固系は確認しておきたいところです

 ありがとうございます。


 そんな感じでOKです


 ある症状をみたときに、すぐに病気がなんだろう?

 と考えるのもいいのですが、

 同時並行で、薬害の可能性はないか?

 と考える癖をつけておきましょう。

 

 では、他に聞きたいことはありますか?」

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ROS:体重の推移不明、血便なし、血尿なし、悪寒戦慄なし、転倒歴なし


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ディスカッション②何を考えて、どう動く?


T「実際はバイタルが良くないので、病歴-診察-検査-治療が同時並行で進むと思います

  この後、診察していくわけですが、何かを疑わないと見落としてしまいます。

  

  この時点で何が思い浮かんでいますか?」


O「蜂窩織炎や丹毒といった感染症を考えています。」


T「そうだね、もう一声。

 この前の進化する感染症っていうレクチャー聞いた?」


O「はい、聞きました。えっと、壊死性筋膜炎も鑑別になります」


T「その通り!

 よく覚えててくれたね。あのポケモンレクチャーを(笑)


進化する感染症


 感染症は放っておくと、どんどんひどくなって進化(悪化)してくるっていう話ですよね。

 皮膚軟部組織感染症だと、

 丹毒、蜂窩織炎、皮下膿瘍、壊死性筋膜炎、化膿性筋炎、骨髄炎みたいな感じですね。

 もちろん、この流れで進むわけではないですし、

 いきなりすっ飛ばすこともありますので、あくまでイメージです。


 今回であれば、蜂窩織炎と思わしき人がショック状態になっている。



 蜂窩織炎 + ショック = 壊死性筋膜炎

 

 とまずは考えちゃっていいです。

 

 そして、この状況ならあと2つ考えておかなければならないことがあります。

 なんだかわかりますか?」


聴衆・・・


TR「TSSですか?」


T「その通りです!

 蜂窩織炎の原因菌として、ブ菌や溶連菌で、

 さらに毒素産生するタイプであれば、TSSを合併することもあります。

 第二の公式として、

 

 蜂窩織炎 + ショック = TSS


 これも忘れないようにしましょう。

蜂窩織炎のみかた

 

 TSSと壊死性筋膜炎を見極めるためには、TSSの所見を取りに行く必要があります。」


T R「全身の紅斑や目の充血ですか?」


T「そうです。あとは下痢も重要です。


 今回のようにショックバイタルだと皮膚の紅斑がわかりにくいことがしばしばあります。

 皮膚を押してみてはじめてわかる紅斑もあります。


 White Island in the Red Sea


 というのは、デングの皮疹でよく言われるタームですが、

  TSSの時もそんな感じになります。

 押したところだけ、薄ら紅斑が消退して、白い島状に見えます。

 

 これは疑って、皮膚を押さないと見落とします。





 TSSは菌の量が問題ではありません。

 菌が一匹でもいたら発症する病気と覚えておきます。

 

 ドレナージの必要性がとても高い疾患です。


 この時点で 蜂窩織炎 + ショック = 敗血症

 

 という公式をまず、思い浮かべてしまうと、

 血培とって抗生剤点滴までは一緒ですが、

 TSSと壊死性筋膜炎のようなドレナージが必須な疾患を見落としかねないので、

 まずはこの二つを思い浮かべてください。


 そして、もう一つ。なんでしょうか?」


TR「DVTや化膿性血栓性静脈炎ですか?」


T「うーん、というより、DVTからの肺塞栓ですね。

  何はともあれ、ショックで足が腫れてるからね。

  だから頸静脈もみるし、早めに心臓に超音波を当てたいですね。

  さて、実際はどんな所見でしたか?」

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身体所見

頭頸部 特記事項なし

胸部  心雑音なし crackleなし

腹部 圧痛なし 脊柱巧打痛なし 褥瘡なし

左下腿に地図上の紫斑あり

周囲は発赤・腫脹・水疱形成あり

発赤を超えた範囲に疼痛あり


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ディスカッション③どう動きますか?


T「わーお、教科書的な壊死性筋膜炎の皮膚所見が揃っていますね。

 この後、どうしましょうか?」


O「血液培養とって、抗生剤の点滴を開始します。

 輸液を行って、血圧上がらなければNA使います。

 

 壊死性筋膜炎を疑っているので、整形外科にコンサルトして、

 試験切開をお願いしたいと思います。」


T「素晴らしい、その通り!

  うちはすぐに整形の先生が開けてくれるから、とても助かります。

  

  だからこそ、内科医もそれなりの準備をしておく必要があると思っています。

  詳しくはwebで。笑」

 壊死性筋膜炎の対応

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実際の経過

N「実際はみなさんのいう通り、整形外科にすぐコンサルトして、試験切開が行われました。

 ですが、dish water signやfinger testも陰性で、

 G染色も陰性で、後日の病理でも壊死性筋膜炎の所見はありませんでした。

 

 結局、抗生剤の点滴で改善しました。


 見た目の皮膚所見が派手で、バイタルも悪かったので、

 絶対に壊死性筋膜炎だと思ったら、蜂窩織炎だったという印象的な症例です。」



T「そうだったんですね。それはよかったです。

 一番、happyな経過です。

  

 でも逆は良くない。

 この皮膚所見とバイタルからは誰がどうみても、壊死性筋膜炎を考えます。

 

 マネージメントとしては、全く問題ないというか、

 素晴らしかったと思います。


 あえていうなら、超音波検査はしておいてもよかったかもしれませんね。


 はい、では今日は壊死性筋膜炎かと思ったら、蜂窩織炎だったという症例でしたね。

 勉強になりました。ありがとうございました。」




2020年10月7日水曜日

新型コロナウイルスとICU管理  〜人工呼吸管理を中心に〜





































※PCVの時、プラトー圧を測る必要があるのは、吸気流量=0でない時
吸気流量=0であれば、PCVであればプラトー圧はPi+PEEPでよい






driving pressuure(駆動圧)と経肺圧が、
VALIを防ぐための重要な因子であることがわかってきている

駆動圧が小さいほど生命予後が改善する可能性がある


経肺圧は気道内圧–胸膜圧で表されるが、実際はPEEP圧–食道内圧で計算される
経肺圧が実際の肺胞上皮にかかっている真の圧力である

実は肺胞上皮にかかっている真の圧力は、気道内圧ではなく、
肺胞上皮の内側からかかる圧(気道内圧)と外側からかかる圧力(胸腔内圧)の差である

これが経肺圧であり、肺胞伸展圧やストレスとも言われる
経肺圧が大きいとVALIが起こりやすい








参考文献:Intensivist VOL.10 NO.3 2018-7 特集 人工呼吸器
     ntensivist VOL.10 NO.2 2018-4   特集 酸素療法
     ntensivist VOL.12 NO.1 2020-1 特集 生理学
                   ARDS診療ガイドライン2016
        呼吸器ジャーナル vol.67 no.1 2019
       新型コロナウイルス感染症 診療の手引き・第3版



皮疹の見方

皮疹の見方 皮疹の見方と言っても状況によって考え方が異なる。 皮疹だけをみてどう考えるかだけではなく、 どんな文脈で皮疹が出てきたか、 が重要である。 我々が皮疹に出会う状況は皮疹と全身症状のバランスによって3つに分けられる。 ① 全身症状がメイン(発熱、関節炎、ショックなど)だ...

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