2021年4月9日金曜日

東京GIM 〜パズルのピース〜

3月のTGIMの症例はそんなプレゼンテーションあり!?という驚きの症例でした

心窩部痛の原因として鑑別にあげたことがなかったので、

とても勉強になりました


実際の流れとは少し違いますが、Clinincal Problem Solving形式でお届けします

コメントは自分の思考です

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50歳代 女性 主訴:心窩部痛(※一部、症例は加筆・修正を加えてあります)

Profile:20代で結核の既往あり

現病歴:入院3日前から心窩部痛が出現

    吐き気もあり

    食事摂取は難しかったが、水分摂取はできた

    入院2日前、近医を受診

    Xp、腹部US、胃カメラが施行されたが異常認めず

    入院当日、心窩部痛と吐き気が持続するため、紹介となった


心窩部痛について

O:徐々に出現

P:部位は心窩部、食後に増悪

Q:何とも言えず

R:なし

S:3/10の強さ

T:持続痛


ROS:吐き気あり、発熱なし、下痢なし、生ものや肉類の摂取なし

既往:20代で結核(4剤で半年間治療)

内服:なし

アレルギー:なし

生活:夫と二人暮らし

喫煙なし、アルコールなし

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コメント

結核の既往歴以外には特記すべき既往のない50代の女性です

来院の3日前から心窩部痛が徐々に出現し、吐き気があります

食事がとれず、少量の水分しかとれていません


急性の心窩部痛のcommonな病態から考えると、

虫垂炎や胃潰瘍、膵炎、胆嚢炎、感染性腸炎、胃・小腸アニサキスを疑います

消化器以外の以外を考えると、心臓由来や血管病変も鑑別にあがります


まず、病歴では食事歴を細かく確認する必要があります

食事歴は「生モノは食べましたか?」とさらっと聞くと、

「食べていません」と返事が帰ってきますので、

ねっとりと聞く必要があります


「食べてないです」と言われてからが始まりです

心窩部痛が出る直前の食事を一緒に、一つ一つ振り返っていきます

思い出せない場合は、こちらから食材を言っていきます

BBQ、焼き鳥、焼肉、鳥刺し、寿司、お刺身、唐揚げ、卵料理、餅・・・

といった感じで、挙げていくと「あ、食べました」となることが多いです


特に小腸アニサキスは数時間後に発症する胃アニサキスと違って、

5ー7日以内の摂取で起こりますので、さかのぼって聴取する必要があります


今回はすでに腹部USや胃カメラで問題がなかったので、

胆嚢炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍の可能性は低くなっています


病歴で気になるのは、食後に増悪するという病歴です

ここも実は深く掘り下げて聞いてみたいところです

「食べた後に痛みが強くなります」と言われてからが始まりです


詳しくは:腹部アンギーナ



失神は病歴が大事だと言われますが、腹痛も病歴がとても大事です

失神の場合はその情景を映像化できるまで病歴をとりなさいと言われます

一方、腹痛に関しては、グラフ化できるまで病歴をとります


できれば病歴をとりながら、患者さんと一緒に痛みの推移のグラフを作ります


もちろん、急性腹症を疑うような痛みの強い場合やバイタルが崩れている場合は、

そんな暇はありません

一般外来に歩いてきた腹痛の患者さんの場合に限ります


原因不明の腹痛

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身体所見

バイタル T 36.8、BP148/80、P 70、RR16、SpO2 98%(RA)

頭頸部 異常なし

胸部 異常なし

腹部 平坦 軟 圧痛なし 腸蠕動音亢進・減弱なし

四肢 浮腫なし

皮膚 発疹なし 潰瘍なし


血液検査

WBC 14000, Hb 15, Plt 80000

凝固 異常なし

生化 電解質異常なし、腎機能異常なし

肝胆道系酵素上昇なし、Bil上昇なし、CRP7

ACTH  2.7, コルチゾール 10


レントゲン

心拡大なし 肺炎像なし


造影CT 両側副腎に血流低下

         その他に特記すべき所見なし

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コメント


身体所見では心窩部に圧痛はなかったようです

腹痛の際には、自発痛と圧痛と最強点の圧痛は区別することが重要です


心窩部の自発痛はあるのに、

そこを押しても痛くないというのは、

実はそこに原因はないかもしれません


心臓由来や神経根痛、代謝、内分泌系、薬剤、偏頭痛、ポルフィリアなどを考慮します

頻脈や甲状腺中毒症の症状はありませんが、甲状腺はチェックしておきたいです


造影CTで両側の副腎の血流低下がありますが、

今回の病態にどう関わっているかわかりません


そもそも何なのかを放射線科の先生に相談したいです

副腎への血流低下ということは、副腎梗塞といった病態なのでしょうか


副腎梗塞が両側に起こるということは、かなり限られた状況です

両側の副腎出血の場合は、Waterhouse-Friderichsen 症候群が有名ですが、


両側の副腎梗塞はICUに入るような多発外傷でショックになる人で稀にみられます

まずうっ血が起こり、両側が副腎が腫大し、

その後、出血、梗塞を起こす人がいます


よーく見ると、なんだかボヤ〜っと腫大していることがありますので、

その目で見ることが重要です


副腎の解剖は面白いです

動脈は複数ありますが、静脈は1本です


そのため、副腎はうっ血しやすい臓器といわれています

静脈血流が障害されると、副腎はうっ血し腫脹します
うっ血が解除されないと、梗塞に陥り、出血します

      

副腎不全


副腎梗塞や出血は痛みが出現しますが、今回の腹痛の原因が副腎梗塞であれば、

なぜ、副腎梗塞が急に出現したのかが問題になります


結核の既往があり、副腎結核だとしてもこんなプレゼンテーションになるかは疑問です


APSや凝固系、過粘稠状態、背景に悪性腫瘍がないかの検索が必要になります


ただ一方で腹痛の原因検索も必要かと思います

副腎梗塞からの副腎不全の可能性はあり、副腎不全からの腹痛かもしれません


Lapid ACTH試験を行い、副腎不全の診断を詰めていくことになると思います

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経過

両側副腎梗塞の診断で入院


輸液とヒドロコルチゾンの投与が開始となった

入院5日目、CT再検されたが、

副腎の画像所見は変化なし


入院7日目、心窩部痛や吐き気は改善

食事摂取可能になり退院となった


ヒドロコルチゾン15mg内服継続し、外来で精査の方針となった


追加検査

ACTH負荷試験は正常範囲

APSのマーカーは陰性

ANA  >40

抗SSA抗体陽性、抗SSB抗体陽性


プロテインS、C活性や抗原 正常

IgG 、IgM、IgA  正常値

補体低下なし

ANCA陰性


フォローの外来では自覚症状なし

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コメント


両側副腎梗塞が痛みの原因だったのでしょうか・・・

あまり経験がないので、ゲシュタルトがつかめませんね


副腎不全としてステロイドが開始となっていたので、

副腎不全の影響もあったのかもしれません


心窩部痛は改善してその後も出現ないので、

めでたし、めでたし?


ただ、なぜ両側副腎梗塞になったかが不明のままです

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経過


退院2週間後、顔面・四肢の浮腫を自覚

倦怠感も出現


退院20日後、倦怠感が増悪

食思不振も出現し、精査目的に入院となった


ROS:顔面の浮腫あり、吐き気あり、食思不振あり

四肢の浮腫あり


めまいなし、視力低下なし、口内炎なし

嗄声なし、咽頭痛なし、甲状腺腫大なし、下痢なし

咳なし、血痰なし、呼吸苦なし、関節痛なし、レイノーなし



身体所見

バイタル T 38/0、BP110/80、P 110、RR18、SpO2 98%(RA)

頭頸部 顔面に浮腫あり

    頸部リンパ節腫脹なし

胸部 異常なし

腹部 平坦 軟 圧痛なし 腸蠕動音亢進・減弱なし

四肢 浮腫あり

皮膚 発疹なし 潰瘍なし


血液検査

WBC 6500, Hb 12, Plt 50000

凝固 異常なし

生化 電解質異常なし、腎機能異常なし

Alb 2.5と低下あり 

肝胆道系酵素 ALP 700と上昇あり、Bil上昇なし、CR30


造影CT  腹水あり、両側腋窩・鼠径LN腫脹あり 

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コメント

今回は心窩部痛ではなく、発熱、全身性の浮腫、血小板の更なる低下、Alb低下がみられています

CTでは腹水と全身のリンパ節腫脹があります


数日の急性経過で悪化しており、全身性の炎症が起こっています

それが感染なのか、自己炎症性疾患か、自己免疫性疾患か、腫瘍性か、アレルギー性かが問題です



感染であれば、急激に状況が悪くなっているので、敗血症になっていないかは心配です

感染症の原則に当てはまると、

宿主は? 30代で結核の既往のある50代女性


どこに? 

     フォーカスがはっきりしないので菌血症、IE

     IEに伴う心不全の可能性も否定できず、UCGやECGはすぐに行いたいです

     実はIEからの塞栓が副腎梗塞を起こし、

     その後、膿瘍形成していた可能性もありますので、

     その目で副腎をみる必要があります

     

     腹水が出現していることから、原発性の腹膜炎の可能性もあります

     実は前回も腹膜炎だったが、ステロイドで軽快したのかもしれません

 

    

何が?  

     いきなり菌血症でくるような、MSSAや連鎖球菌

     他には皮疹はありませんがリケッチア、レプトスピラ、

     肺炎があるかはわかりませんが、レジオネラ

     結核の既往があるので、粟粒結核

     HIVがあるかないかで鑑別が変わるので、

     HIVの有無はチェックしておきたいです


     全身性のリンパ節腫脹の鑑別で考えれば、

     EBV、CMV、梅毒、TBなども考慮します


治療は?

頻脈がみられており、消耗が強そうであれば、

血液培養を採取後、抗生剤投与を開始します



感染症は治療しないと命に関わるので、ワンサイドカットのため、

抗生剤は投与するかと思います



一方で、非感染症の可能性も考えます


自然免疫系の炎症であれば、

AOSD、ベーチェット病を疑います

AOSDはプレゼンテーションが多彩なので、鑑別に残ります


血管炎も考えますが、大血管らしくはないです

となると、PNか小血管となりますが、

紫斑や痺れ、関節炎、腎障害、間質性肺炎といった血管炎を示唆する所見に乏しいです

ANCAも陰性であり、積極的に血管炎は現時点では疑えないかと思います


SLEはこの症例でもあり得えると思います

血小板減少もリンパ節腫脹も起こり得ます

リンパ節を生検すると、壊死性リンパ節炎の所見が得られれば、SLEの可能性が高まるかと思います


SSA、SSB抗体が陽性であり、シェーグレン症候群が背景にあるため、

シェーグレン症候群に伴う血管炎や血小板減少の可能性もあります


悪性腫瘍であれば、MDSに伴う全身性の血管炎パータンは診断が非常に難しいです

悪性リンパ腫の中でも特にIVLは鑑別にあがります


骨髄穿刺や生検を行い、MDSやIVL、播種性結核の検索を行いたいです


ですが、これまでの検査はある疾患のお膳立てです

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経過


入院後、血小板減少進行あり

胸水も出現してきた

UCGではEF良好


追加検査

甲状腺機能 正常

RPR 陰性  TPAb陰性

HBs 抗原 陰性

HCV 抗体 陰性

HIV 抗体 陰性

CMV、EBV  陰性

T spot 陰性

HHV 8 DNA  陰性


骨髄穿刺・生検  芽球なし

リンパ節 生検  Paracortical hyperplasia with lymphoplasmacytic infiltration

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最終診断:TAFRO症候群


Thrombocytopenia

Anasarca(pleural effusion and ascites)

Fever 

Reticulin myelofibrosis

Organomegaly(Hepatosplenomegaly and lymphadenopathy)


2010年に日本で報告された全身性炎症性疾患で

頻度は、0.9-4.9人/100万人(日本)です


多彩な症状や所見があり、それぞれに突っ込んでいくと失敗する疾患です


こういった疾患は、パズルのピースを集める感じで診断します



診断はMajor categoriesから3つ、Minor categoriesから少なくとも2つですが、

最も大事なのは、他の疾患の除外が必要なことです


悪性腫瘍、SLE、シェーグレン症候群、AAV、リケッチア、ライム病、SFTS、POEMS、TTPなど


今回はSSAだけでなく、SSBまで陽性なので、

シェーグレンが背景にありそうですが、

どうやって除外するのか、除外する必要があるのか、よくわかりません


治療

キャッスルマン病に準じて治療

グルココルチコイド

治療抵抗例では、シクロスポリンAなどの追加を考慮

トシリズマブ、リツキシマブ


臨床で難しいのはいつTAFROとして治療に踏み切るかです

鑑別にはあがりますが、

実際にTAFRO Switchを押すのが、誰で、いつか?が問題です


一人では診断、治療したくない病気です

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TAFRO症候群と副腎梗塞


副腎梗塞を合併するTAFRO症候群の症例報告はあり

副腎病変(梗塞/出血)はTAFRO症候群の特徴的なCT所見




静脈、リンパ鬱滞により副腎梗塞が生じると考えられている



European Radiology (2020) 30:5588–5598



TAFRO症候群の病態

腎臓、副腎のリンパ管は大動脈へつながる

大動脈周囲の静脈、リンパ管排出が増悪し、鬱滞

大動脈周囲静脈、リンパ鬱滞が腎臓、副腎に波及し、梗塞

腎機能が増悪、浮腫が全身に波及し、臓器腫大


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まとめ

・診断困難症例では経過をフォローすることが重要

・副腎梗塞はTAFRO症候群の特徴的なCT所見

・血小板低下+副腎梗塞ではTAFRO症候群を鑑別に挙げる

2021年4月6日火曜日

Clinical Problem-Solving  〜Stalking the Diagnosis〜


直近のNEJMのCPSです

おすすめ度はそれほど高くないですが、
白質病変と戦ったことがある人にとっては、面白いと思います


オススメ度:☆☆☆(3/5)


神経内科目指す人むけです

コメントは自分の頭の中なので、
本当のコメンテーターの思考を知りたい人は、本文読んでください




 


N Engl J Med 2021;384:1262-7.


22歳 男性 主訴:進行性の神経異常


現病歴:1年前 痛みを伴わない視力障害が左目に出現し、

    右目にも出現してきた

    その後、4-6ヶ月で痺れや四肢の拘縮、体幹の筋力低下、失禁が出現した

    1年で体重が6.8kg減少した

    見当識障害が出現し、自分のことができなくなった


生活:発症の3ヶ月前にパキスタンからカリフォルニアにきた  

   配達の運転手をしていた

   喫煙なし、飲酒なし、違法drugなし


家族歴:なし


経過:

画像検査で脱髄を示唆する所見があり、MSと診断された

ナタリヅマブで治療が開始されたが、改善なし

IFNに切り替わったが、症状は進行していったため、紹介となった

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(自分の思考)

これはMSと思わせて、違う病気パターンですね


MSの診断は実はとても難しいです

典型的な所見やデータ、経過が揃っていれば良いですが、

画像で白質病変があるだけではMSと言い切るのは難しいです


MSのような白質病変をきたす疾患として、


NMOやサルコイドーシス、中枢神経原発悪性リンパ腫、原発性中枢神経系血管炎、

神経ベーチェット、神経sweet病、CNSループス、シェーグレン症候群、PML、

サルコイドーシス、神経梅毒、HIV感染、結核・・・というように鑑別は多岐にわたります


本当はMS以外の疾患を除外しなければなりませんが、

脳生検を最初から行うことは少ないと思います


そのため、今回のように経過や造影MRI所見、髄液検査所見を総合してMcDonald criteria

などを用いながら、診断・治療することが多いです


ただ、今回は治療がうまくいっていないため、MS以外の疾患の可能性が高い状況です

一番嫌なのは、結核ですね

アジア系の出身であれば、神経ベーチェットも気になるところです


脳だけにとらわれず、他の病歴や所見もしっかりとらなければならないと思います

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体温は36.9℃、血圧は102/55mmHg、脈拍は75回/分、酸素飽和度は98%

心臓、肺、腹部の診察は問題なし


神経学的検査では、開眼しており病院にいることは認識していました

都市名や日付は認識できず、簡単な命令には従えたが、発語は少なかった


瞳孔は正円同大で、対光反射はなかった

視力は両側とも重度に障害され、光と指の動きのみを認識していた


四肢の筋力低下や筋トーヌスの亢進があった

反射は全体的に3+で、バビンスキー徴候は両側に見られた


触覚の感覚は問題なかった

小脳検査の結果は正常でしたが、

患者は介助なしでは歩けない状態でした



頭部の磁気共鳴画像(MRI)では、脳室周囲の白質に広い範囲で信号異常が見られ、

脳室に結節や軟膜の造影効果が認められた

視神経路に沿って対称的な信号異常が見られた

造影脊髄のMRIの結果は正常であった

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(自分の思考)

MRIではやたら脳室周囲の異常陰影が目立ちますね


脳室周囲炎といえば、アクアポリン4に関わるNMOをまずは考えたくなります

他には髄液内に病原微生物や腫瘍が存在することで、脳室周囲に炎症を引き起こすこともあります


この画像からは、まだ鑑別疾患は絞られません

やはり、慢性髄膜炎を引き起こすような感染症をまずは念頭においた方が良さそうです


結核、クリプト、癌性髄膜炎(リンパ腫や白血病)、神経梅毒といった疾患は

鑑別に上がるので、髄液検査を行いたいです


HIVの有無は鑑別疾患を考える上で、非常に重要なので早々にチェックします



この中でも結核をどうやって除外するかは非常に悩ましい問題です

もちろん、培養やPCR、ADA、IGRAを提出することになりますが、

状態が悪ければ、抗結核薬で治療を開始することも選択肢になります


結核性髄膜炎の場合、ステロイドを併用することもあります

ただし、併用したステロイドで色々がマスクされてしまうため、

ステロイドを使う前には、血清で自己抗体のチェックや生検を検討します


実臨床では、あとで追加できるように血清保存をたくさんとっておくのが重要です

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全血球数と生化学は、ナトリウム濃度が148mmol/Lであったことを除いて正常であった


腰椎穿刺を行い、3本目の脳脊髄液(CSF)を分析したところ、

透明な液体で、白血球数は11個(基準範囲、6個未満)

そのうち94%がリンパ球、6%が単球で、赤血球数は5個

グルコース値は44mg/dl、タンパク値は110mg/dlであった

オリゴクローナルバンドが認められた

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髄液検査では髄液糖が低いですね

慢性的な炎症が起きている証拠です


やはり結核を軸に考えたいところです

オリゴグローナルバンドはMS含む脱髄疾患で見られることが多いですが、

非特異的な所見ですので、MSと決まったわけではありません


ここでは慢性髄膜炎として鑑別を進めていくのが良いと思われます


感染症:結核、クリプトコッカス、梅毒、whipple病、コクシジオイデス、アスペルギルス、ムコール

自己免疫性疾患:SLE、シェーグレン、ベーチェット、神経sweet、血管炎

腫瘍性:リンパ腫(IVL含め)、転移、癌性髄膜炎

肉芽腫疾患:サルコイドーシス、GPA、LYG


脳生検が最後の切り札になリますので、それまでにできる限りの検査を提出しておきます

血液検査や髄液検査でわかればよいですが・・・


脳生検のハードルが高いんですよね・・・

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血液と髄液の細菌培養,抗酸菌と真菌の染色・培養は陰性

髄液の結核菌のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査は陰性

髄液と血清のクリプトコックス抗原検査は陰性


単純ヘルペスウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルス,西ナイルウイルス,デング熱,チクングニヤ熱,JCウイルス,ヒトヘルペスウイルス6の検査も陰性であった


上下部の内視鏡検査では腫瘍は見られず

内視鏡生検の結果、Tropheryma whippleiの証拠なし


抗核抗体,抗二本鎖DNA抗体,抗Ro(SSA)抗体,抗La(SSB)抗体

組織トランスグルタミナーゼ抗体,抗好中球細胞質抗体は陰性

アクアポリン-4に対する抗体も陰性であった

髄液の細胞学的検査およびフローサイトメトリー検査では異常認めず


硬膜、皮質、脳室周囲白質の生検が施行された

生検結果はマクロファージと散在するリンパ球を主成分とする細胞性の増加が認められた

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お〜

脳生検までやってますね


案の定、血液や髄液からは原因がわかりませんでした

残念です


髄液検査を繰り返し行うと結核やクリプト、癌性髄膜炎の感度が上がリますので、

脳生検の前には、髄液検査を繰り返すのも重要です


今回は脳生検まで行われましたが、肉芽腫や血管炎、腫瘍の証拠はなかったようです

困りましたね〜


せっかく生検したのに、こういうことがあるんですよね・・・


さて、どうしたものか・・・

やはり結核として治療せざるを得ない気がしますが・・・


それにしても、HIVやADAの話題が全く出てきませんね

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入院10日目にナトリウム濃度が急激に上昇し、165mmol/Lとなりました

1日の尿量は約3~4Lで、尿浸透圧は132mmol/kg(参考値、300~900)でした

プロラクチンは48μg/L(参考値、3.6~18.0)

コルチコトロピンは7ng/L(参考値、6~50)

卵胞刺激ホルモンは0.2IU/L(参考値、1~12)

黄体形成ホルモンは0.1IU/L(参考値、0.6~12.1)でした


コルチゾールは3μg/dl(基準範囲4~19)で、

合成コルチコトロピン投与後に12μg/dlまで上昇した


遊離サイロキシン値は8pmol/L(参考値10~18)でした

患者はヒドロコルチゾンによる治療を開始し、続いてレボチロキシンを投与しました

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なんと・・・下垂体までやられてしまいました


下垂体がやられる疾患と硬膜が肥厚する疾患は似ています

硬膜肥厚に加えて、下垂体病変があるだけでは決め手にかけます


下垂体の障害の分類は病態(原因)による分類、位置による分類、病理学的な分類があります


病態(原因)による分類

腫瘍:頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、下垂体腺腫

炎症:神経サルコイドーシス、GPA、リンパ球性下垂体炎、IgG4関連

感染:結核、梅毒

浸潤:ランゲルハンス組織球症(LCH)、non-LCH

薬剤:免疫チェックポイント阻害薬


位置による分類

・漏斗神経下垂体炎

・汎下垂体炎

・腺下垂体炎


病理学的な分類

・リンパ球性

・肉芽腫性

・黄色肉芽腫性/壊死性

・IgG4形質細胞性

・腫瘍性


下垂体病変の原因を調べるには3つのアプローチが必要です


1つ目は下垂体を狙った造影MRIで所見を探すことです



本症例のMRIはこんな感じでした


2つ目は下垂体以外の+αを探すことです

・膝の痛みや骨硬化があれば、エルドハイムチェスターを

・後腹膜線維症があれば、IgG4やGPAを

・肺病変があれば、結核やサルコイドーシスを


全身性疾患の表現系の一つとして、下垂体がやられることがあります


3つ目は、やはり生検です

病理学的に特異的な所見を探すしかありません


さて本症例の結末はいかに・・・

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下垂体の経蝶形骨洞生検が行われた

生検標本の組織学的所見は,鞍部上の中枢神経系胚芽腫と一致した




CSFのヒト絨毛性ゴナドトロピン濃度は4.5IU/L(参照範囲1.1以下)であった

この患者は最終的に、下垂体性CNS胚芽腫と診断された


腫瘍性髄膜炎と実質的な浸潤性疾患を合併して重度の神経学的障害をもたらしたと推定されたが、

これらの部位における疾患の明確な組織学的または細胞学的証拠はなかった


患者はエトポシドとカルボプラチンによる化学療法を開始し、

続いて放射線療法を行われました


しかし、下垂体機能低下症は継続しており、

ヒドロコルチゾンとレボチロキシンの投与を受けています

また、神経学的にもかなりの障害があり、

日常生活のすべての活動において介助が必要となっています

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ということで、胚芽種(ジャーミノーマ)が最終診断でした


まさか、MSの鑑別にジャーミノーマがあるなんて、知りませんでした


ジャーミノーマは子供や若年者に起こる腫瘍で、

正中の構造物にできることは有名ですね


他にもジャーミノーマの面白い特徴がいくつかあります


・神経下垂体ジャーミノーマは、下垂体後葉炎やLCH、サルコイドーシスと間違いやすい


・ジャーミノーマの放射線感受性が高すぎて、

 生検前にCTを行うと、腫瘍細胞が消失してしまうことがある

 下垂体の中の小さなジャーミノーマの場合、CT撮影一回で消失してまい、

 生検を行なっても、リンパ球浸潤のみの病理となりうる


・脳室上衣に沿って、脳室壁に広範囲に浸潤する特徴がある(脳室上衣下浸潤)

 脳室壁に結節状の多発病変として抽出される

 →NMO含め脱髄疾患や慢性髄膜炎と誤診されることがある

  オリゴグローナルバンドも陽性になることがあるようです


 

・脳室上衣下浸潤は髄液播種ではないので、髄液細胞診では検出されない

 ジャーミノーマは脳室壁全体を侵す腫瘍である

 下垂体だけでなく、視床下部、松果体、大脳基底核にも起こる


・腫瘍マーカーがある

 血液と髄液のHCG-βとAFPを調べる

 血液中ではHCGは31%で上昇あり、髄液中では41%で上昇を認めたという報告あり


・治療は抗がん剤と放射線治療

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著者のコメント

この症例は、初診時の非特異的な所見と最終診断の稀少性のために、診断が非常に難しかった


討論者も治療チームも頭蓋内胚葉腫の存在を疑っていませんでしたが、

尿崩症の発症により下垂体茎pituitary stalkにたどり着き、最終的に診断を下すことができた


2021年4月4日日曜日

日本一朝早いカンファレンス 〜どこまでやるか?〜

本日の症例もディスカッションも大変勉強になりました 

腹痛診療でみなさんが大事にしていることが聞けてよかったです


実際は自分は司会に徹しているので、今回はじぶんの思考過程も交えながら振り返ります


症例 40歳 男性 主訴:腹痛 (※一部修正や加筆を加えてあります)




コメント

生来健康な40代男性の右側腹部痛
来院の5時間前から徐々に出現しています


腹痛のバイタルで一番大事なものはどれか?という質問をはじめにさせていただきましました


そうすると、血圧や脈、呼吸数、体温とかなりばらつきがありました


もちろん、どのバイタルも大事であることに異論はありませんが、
この質問の答えは決まっていて、「脈」が答えです


実は意地悪問題で、「脈が整か不整か」というのが最も大事なバイタルになります
不整であった時点(特に抗凝固なければ)で、SMA塞栓や腎梗塞の可能性があがります


本症例は脈は整でした


1st impressionとしては年齢、性別から尿路結石でしょうか
ただ尿路結石の発症時刻は多くは夜間や朝方であり、午後〜夕方というのがやや非典型
他の鑑別としては、腎梗塞や大動脈解離、ACNESが考えられます


起き上がる時に痛いという病歴からは、筋骨格系を疑いたくなりますね
実際にどの動作で痛みが誘発されるかを確認したいです

腰の屈曲、側屈、伸展、回旋を行って、原因となる筋肉を同定したいです
屈曲だけ痛いのであれば、ACNESを疑います


食事が取れているというのも、筋骨格系を示唆します
虫垂炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、膵炎、腸閉塞であれば、食欲不振が出現することが多いので、やや可能性が下がるかもしれません
尿路結石や精巣捻転も吐き気や嘔吐はよくあります
夕食をしっかり食べられているのであれば、憩室炎や腹膜垂炎を疑います


ですが、まだまだ鑑別疾患が広いので、
鑑別を狭めるためには、痛みの詳細をもう少し聞く必要があります
OPQRST2と痛みの図(N-Tの図)を完成させましょう





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OPQRST2と痛みの図を作ることができました
ただ、実際には痛みの図は自分と患者さんと一緒に描いた方が正確になります

間違っていたら、患者さんが指摘してくれるので、問診票の裏に書くと良いでしょう


今回は買い物をした後に自宅に戻ったという経過でしたが、
もう少し詳細を知りたいですね

自宅で筋トレをしていたのかもしれませんし、
昼食にお刺身を食べたのかもしれません
子供がお腹の上で遊んでいたかもしれません

子供がお腹の上で遊んでいたとしても外傷とは誰も思わないので、
腹直筋血腫を疑った時の問診は工夫が必要です



痛みの問診は、痛みが出た直前に何をしていたのかも大事ですが、
もう少し前から聞くことが診断のヒントになることがあります


今回であれば、午前中から午後に何をしていたのかを聞くと良いと思います


きっかけがあってもタイムラグを持って発症する疾患もありますので

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ディスカッション①鑑別疾患と取りたい身体所見は?腹痛診療で気をつけていることは?(SGD)


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体動で痛みが悪化するというと、圧倒的にACNESを疑います
ACNESはみんなが思っているよりも多い病気です

ただ、ACNES診療にはコツとピットフォールがあります


ACNESを診断治療するためには、キシロカインの局所麻酔をしないといけないのですが、
意外にこれを希望されない人が多いです


患者さんからすると、腹痛できているので、
なぜ皮膚の下に注射をして、さらに痛い思いをしないといけないんだ?
という人もいます

なので、丁寧に病態を説明し、患者さんに納得していただく必要があります
そのために図を描いて、今起きているのはこういうことですよ
と伝えるようにしています(上記のような図を描きます)


もう一つは、他の腹痛をきたす疾患にACNESがかぶることがあります
多いのは、帯状疱疹です
生理痛に合併した人もいました

お腹が痛くて腹直筋が緊張してしまうと、それによって神経の絞扼が起きます


ACNESを見つけて満足するのではなく、局所麻酔で痛みが取りきれない場合は、
他に原因が隠れている可能性があります


腹痛診療で大切にしていることは?



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腹痛の身体所見で重要な徴候は、腹膜刺激徴候とカーネット徴候です
この二つの所見で、鑑別をかなり狭めることができます


腹痛の診察でみんなが重視していることは
・痛がり方の見た目と腹膜刺激徴候の有無
・痛みの程度と腹部所見の解離
・お腹の外の原因から考える
・皮膚もちゃんとみる
・US片手に診察する
・表情にも注意する 
・主訴と違うところに圧痛がないかも確認する
・動いて痛い時は、実際に再現してもらう


などがあがりました


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身体所見

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どうやらACNESではないようです 笑


ACNESかどうかは、患者さんに
「自分で指一本で押して、どこが一番痛いか教えてください」と聞いてみると良いです


痛いところを迷ってしまって、指一本で押すことができなければ多分違います

ACNESの人は、自分で一番痛い部位をわかっていて、それを伝えることができます
あとはそこを押しながら、カーネット徴候して確認します


今回は身体所見上でも圧痛点がはっきりしません
ベッドから起き上がる時には、痛みが誘発されるようです

となると、やはり筋骨格系を考えたくなります
そして、忘れがちな神経系を考えます


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USでも水腎の所見はなかったようです
尿路結石を疑って水腎がなかった時に、次どうするかはポイントです


一つは尿路結石を疑い膀胱尿管移行部を見に行くことです




あまり知られていませんが、膀胱にカラードプラを当てると、
膀胱尿管移行部から尿が膀胱内に入ってくる様子が間欠的に確認することができます






膀胱尿管移行部を確認したら、その辺にエコーをあてて、
パワードプラを当てると、煌めくエコー像が見えることがあります





よくよくみると、尿管も拡張していますが、
その先に石があります


ドプラを当てると、容易に見つかります


石があるため、尿の流れに乱流が生じて、このようなエコー像になります








尿路結石でなければ、
腎梗塞、大動脈解離、SMA解離、硬膜外血腫、帯状疱疹が次の鑑別になりますので、
USでは血管系を見に行きます


ただ、腎梗塞は腎動脈の中枢で詰まっていなければ、カラードプラでは発見できませんので、
USでは除外できないことは覚えておきましょう


腎梗塞では、血液検査でLDH上昇は有名ですが、
発症からまもない時は、上昇していないのでLDHで除外することもできないので注意が必要です


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ディスカッション②この後どうしましょうか?(SGD)



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造影CTまでおこない腹痛の原因がわからない時、どうするか

というのも一つのカテゴリーです


全身性疾患や代謝疾患(DKA、高カルシウム血、薬剤)を考慮しますが、

本当は造影CTでもうつっている可能性があります


例えば、心筋梗塞は造影CTで実は染まっていない心筋がうつっている時があります

精巣捻転も横になった精巣が見えている時もあります

硬膜外に血腫ができている時もあります


今回の症例では硬膜外血腫や硬膜外膿瘍が気になりますね




そしてなんといっても帯状疱疹が一番の鑑別です


そのため、今回は帰宅の方針で良いかと思いますが、

その際には、

「帯状疱疹の可能性があるので、

 毎日、ぶつぶつが出来てこないかは、

 誰かに見てもらって確認してください」


と伝えて帰すことが重要です


背中だと自分だけでは確認するのが、難しいですので、

他の人にも見てもらうことが大事です

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症例を通じて


今回の症例は病歴で尿路結石やACNESを疑いましたが、

身体所見上は所見に乏しく、

USや造影CTまで施行したが、診断がつかなかったという症例です


結論はでませんでしたが、考えられることとしては、

筋膜疼痛、帯状疱疹、硬膜外膿瘍や血腫、LCNESでしょうか



自分の経験上、診断がつかない時は、

病歴や身体所見が十分にとれていない時が多いです

診断がつかなかった時は、病歴に戻ることをおすすめします



もう一つは、診断がつかなかった時にあとで電話で体調確認をすると良いです


初期研修医のうちは自分の外来でフォローすることができません

ですが、電話はできます


外来をやっていて一番貴重だと思うのは、その後の経過をフォローできることです


そこで診断がつくかもしれませんし、

病気の経過をワンポイントで見るよりも、

ツーポイントで見ると病気のゲシュタルトを掴むことができます



電話することは手間ではありますが、

患者さんからも感謝されますし、自分の経験にもなります

まさにwin-winです


特に造影CTを撮ったら後で、読影で何かを指摘されることもあるので、

必ず連絡先は聞いておくようにしましょう


医師として成長するスピードは人それぞれ、早い遅いはもちろんありますが、

こういった一手間をかけることが医師の成長のコツなのかと思っています


では、また来週〜


2021年4月2日金曜日

おすすめClinical Problem-Solving 〜A Treacherous Course〜

自分の臨床力に疑問を持ったら、NEJMのCPSを読むようにしています

コメンテーターと自分の思考を比べて、自分の臨床推論の思考過程を見直します


先月の症例はめちゃくちゃ勉強になりました

オススメ度:☆☆☆☆☆(5/5)


10年医者をすると、1人出会う疾患です

経過を知っておかないと、ビビります

信じてやりぬく危険な経過を辿る病気です



 

N Engl J Med 2021;384:860-5.


33歳男性 主訴:発熱、嘔吐、腹痛、喀血

(COVID19が流行する前の症例)


Profile:スペイン語を話す移民


現病歴:来院の2日前から腹部全体の痛み、吐き気、嘔吐あり

    その後、発熱や倦怠感、寒気をきたした

    入院日、喀血がみられ、コーヒー様の吐物を嘔吐し、下血があった

ROS:呼吸苦あり


既往:特記事項なし

生活・社会歴:多くを語らず不明

喫煙:あり 多飲酒歴:あり


バイタル:T 38.7、BP 124/85、P116、RR16 、SPO2 95%(室内気)

頭頸部 口腔内や鼻腔 出血原なし

呼吸音 清

腹部 上腹部に圧痛あり 肝脾腫なし

皮膚 正常


CT multifocalに斑状陰影あり


救急医は上部消化管出血を疑い、PPIと輸液を行い、

肺炎を疑い、PIPC/TAZ、VCMの投与を開始した

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(自分の思考)

アルコールを多飲している33歳男性の倦怠感、発熱、嘔吐、腹痛、喀血


って主訴多いなあ・・・

吐血と下血があるから消化管出血はありそうだけど、

喀血もあるって、どういうこと??


食道や気管より上の咽頭・喉頭から出血して、それが両方に垂れ込んだ?

もしくは、大動脈瘤や血管奇形があって気管や食道に穿通した?

なんだかピンとこない・・・

高齢者なら腫瘍とか考えたくなるけど、若年者だからなあ・・・


例えば、osler病のように毛細血管拡張をきたしていれば、このような経過もありか

あとは、血友病のような出血素因があれば、あっても良いか・・・


もしくは、両方から出血というわけではなく、

消化管出血で血液を吸い込んで、喀血っぽくなっているか、

喀血を飲み込んで消化管出血っぽくなっているのであろうか


消化管出血だとすると、アルコール多飲なので、肝硬変からの静脈瘤破裂は心配

喀血だとすると、肺胞出血や心不全が心配




CTでは両側肺野に斑状陰影がみられる

COVID時代であれば、COVIDはチェックするであろう

普通の細菌性肺炎像ではなさそうではあるが、異形肺炎は鑑別

何かを吸い込んだように見えるが、

急性好酸球性肺炎やPCP、ウイルス性肺炎、肺胞出血は鑑別


画像だけでは鑑別は多岐にわたるので、原因検索のためには気管支鏡検査が必要

造影CTにて肺塞栓や異常血管の有無、消化管出血の原因検索を行いたい

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血液検査

軽度の低Na(131)、低k(3)、BUN16、Cr1.2

AST 107,ALT 67,ALP 115

Tbil 2.0,WBC 8000, Hb 11.8,plt 95000,INR 1.1

尿検査 血尿なし、円柱なし

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血液検査はびみょう〜

決め手にかける非特異的な異常ばかり

BUNがあんまり上がっていないので、消化管出血はそれほどでもないのか


Crが上がっているが、もともとなのか不明

肝酵素上昇は飲酒の影響もあるが、今回のイベントでも良いであろう

血小板低下があり、アルコール多飲からの肝硬変の影響か?


これだけでは鑑別は何も変わらない

もともと肝硬変になるような他の原因がないかはチェックする

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気管支鏡検査


血性分泌物あり、肺胞出血に矛盾せず


ドキシサイクリン追加

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消化管内視鏡検査ではなく、気管支鏡検査が実施され、

肺胞出血が確定した


肺胞出血の原因は様々


感染でも自己免疫疾患(グッドパスチャー、AAV、SLEなど)でも

心不全でもあり得る


今回はドキシサイクリンが追加となっているので、

レジオネラやレプトスピラ、リケッチアを念頭に治療されたようだ


BALで検体が取れたので、原因微生物の検索を行いたい

レジオネラを疑い尿中抗原をだし、PCR提出する

CMVやHSVも鑑別ではあるが、免疫正常と考えれば可能性は低い

HIVはチェックしておきたい

HIV陽性だと話がガラッと変わる

PCPもあり得る状況になる


HIV陰性であれば、血管炎としてステロイドパルスや血漿交換を検討することになるであろう

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レジオネラ尿中抗原 陰性

肺炎球菌 抗原陰性

HIV  陰性

インフルエンザやパラインフルエンザ、RS、ヒトメタニューモ、アデノウイルスのPCRは全て陰性

血清PCR バベシア、エーリキア、アナプラズマは陰性

血液培養 陰性  BAL検体 細菌培養陰性


その後、患者は急変

ショックになり、酸素化低下し、

肝障害(AS T ,ALT 4桁、Tbil 12)、腎障害(無尿)になった

Hbは横ばい、INRも横ばい

UCG  心収縮 良好

腹部US  肝臓や腎臓は問題なし


挿管し昇圧剤開始となり、腎代替療法が行われた

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えーーー急変!!

ブロンコのせい?


経過はよくわからないけど、急変してショックになってしまった

肝障害はショックリバーのせい?


ショックの原因探さないといけない

敗血症:ありうるが、ゾシン、バンコ、ドキシで治療されている

    しかも血液培養陰性

    あるとすれば、TSSか

    ドレナージしなければいけない病巣がどこかにあるのかも


心原性:超音波からは否定されている


閉塞性:詳細な記載はないが、Dshapeをきたすようなmassive PE示唆する所見なし


出血:Hb低下なく、大量出血したという記載もない


アナフィラキシー:経過からはありうるかもしれないが、

      流石にすぐ対応すればここまでならないであろう


ホルモン:褐色細胞腫のクリーゼのど重症の場合は心臓動かなくなるので、違いそう

     甲状腺クリーゼは鑑別だが、経過が急すぎるか、一応チェック


免疫:capiary leakみたいな病態であれば、ありうるか

   AAVやグッドパスチャーの血管炎でもショックにはならないであろう

   PNの動脈瘤破裂とからならありうるので、造影CTで出血ないかはチェック必要だが、

   流石にショックまできたしているので、USでわかるであろう


経過が急すぎる・・・

なんだこれは・・・???


肺胞出血、消化管出血、腹痛、発熱、血小板低下、突然の急変、重度の肝障害、腎障害・・・



!?


そういえば、以前に同じような症例に出会ったことがあった


この経過は、

レプトスピラのJarisch–Herxheimer 反応だ!


だけど、血管炎側として治療もしないといけない

ステロイド入れて、血漿交換はするだろう

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その後、ステロイドが入り血漿交換が実施された

提出していた自己抗体は全て陰性

腎生検 血管炎やSLE示唆する所見なし ICなし


血管炎やSLE病態が否定され、免疫抑制や血漿交換は中止となった

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自己免疫側は除外されたため、感染症が残る鑑別の上位に上がった

感染症であれば、曝露歴が非常に重要になる


本文の記載には、できるだけ早く最近の旅行歴や暴露歴を聴取せよと


A detailed history of recent travel and possible exposures is 

critical and should be obtained as soon as possible.


そういえば・・・


生活・社会歴:多くを語らず不明


だったなあ・・・


改めて家族から病歴を聴取すると・・・


数週間前にアメリカに到着する前のことである

リオグランデ川を泳いで渡り、荒野をハイキングして入国していた

入院の4日前にマサチューセッツ州に到着した・・・



これで確定ですね

これは、レプトスピラです

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血漿交換前に採取した検体のレプトスピラに対するIgM抗体の定性検査の結果は不明確であったが、1週間後に採取した検体で行った再検査の結果は陽性であった


解説

重症のレプトスピラ症にはペニシリンを7日間投与し、

軽度から中等度の疾患にはドキシサイクリンを投与する治療法が選択されます


この患者が受けた治療は、

ピペラシリン・タゾバクタムとドキシサイクリンであり、7日以上投与された

それぞれがレプトスピラ種に対して活性を持つことが予想されるため、

重症のレプトスピラ症は十分に治療されたと考えられる


レプトスピラ症は、長期にわたる二相性の経過をたどることがあるが、

第二の免疫介在性相は、

通常、レプトスピラのクリアランス後に起こるので、

抗生物質治療の長期化は望ましくない


抗生物質の投与開始時に細菌の抗原が放出されることで急性の免疫反応が起こる

Jarisch-Herxheimer反応は、20~40%の患者に発症する


抗生物質の投与開始から数時間後にショックと呼吸不全を起こしたこの患者の急激な臨床悪化の原因となったと考えられる

レプトスピラ症の病態には、抗体や免疫複合体が重要な役割を果たしているため、

グルココルチコイドなどの免疫抑制療法が提案されているが、

グルココルチコイドと血漿交換の有効性を示す証拠は限られている


汚染された水や土壌への曝露を避け、

都市部でのげっ歯類の駆除などによりリスクを軽減することが、

ヒトにおけるレプトスピラ症の予防の鍵となります


この患者さんは、米国とメキシコの国境にある荒野で危険な旅をし、

その間にレプトスピラにさらされたと思われます


生命を脅かす非特異的な症状と診断の遅れという危険な臨床経過をたどりました

この症例の診断のためには、渡航歴や曝露歴を含む詳細な病歴が重要でした

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いかがでしたか


興味深いですねえ〜


最後に病歴が大事っていうのが、いいですね〜


でもレプトスピラって、抗体はすぐに結果でないですし、

今回の症例でもそうでしたが、尿中のPCRが陰性のこともあります


診断したくてもすぐにはできない病気であり、

レプトスピラであることを信じ続けながら、他のケアもしていくという難しい治療が迫られます


レプトスピラの難しいところ3つ

1、診断が難しい:症状が非特異的、抗体やPCR提出にハードルがある

2、治療が難しい:抗生剤投与後の二相性の反応の時に、急変しわけが分からなくなる

3、鑑別が広い:血管炎やIVLといった病態も鑑別になるので、除外が大変


内科をしていると10年に一度くらい出会う疾患だと思っています

原因不明の黄疸と抗生剤治療後に急激に悪化していく時に疑います


参考:レプトスピラ


2021年3月26日金曜日

昼カンファ 〜諦めたら診察終了です〜

 87歳 女性 主訴:食思不振(※一部症例は加筆・修正を加えています)


Profile:認知症が進行しており、会話はうまくできない。施設入所中


現病歴:来院の2ヶ月前から徐々に食事量低下

    他に変わった症状はなかった


    来院の2週間前から食事は3食のうち1食しか食べられなくなった

    食べても1/3の量程度

    ここ数日は水も飲めていない 


    来院10日前から発熱あり

    嘱託医より、セフゾンが3日分処方

    解熱得られず


    来院8日前に食思不振も続いているので来院

    バイタルは問題なし

    血液検査ではCRP4以外に目立った異常なし

    胸腹部CTでは少量胸水のみ 背側の肺は無気肺で潰れている

    腹部 便秘気味 目立った異常なし

    入院してもせん妄のリスクもあり、施設でお看とりの方針で帰宅


    その後はすぐに解熱得られたが、食事は取れず

    食事も水分もとれない状態が続いた

    嘱託医より、補液目的に再度紹介となった


    輸液で改善するかみて欲しいとの依頼

    改善しなければ、施設で看取るので戻してくださいとのこと


既往:腰部脊柱管症、認知症、慢性心不全、高血圧、便秘

内服:アムロジピン、フロセミド、スピロノラクトン、アリセプト、酸化Mg

   →ここ1週間は内服もできていない

生活:施設入所中、もともと伝い歩きだったが、食事量が減ってからは寝たきり


バイタル BP 150/100, P 90 reg, SPO2  96% , RR20 , T 36.8

見た目 横向きに寝ている 眉間に皺が寄っている

意識 見当識障害あり、指示はいらず

触ると全身痛がる

「痛い痛い」と

粗大な麻痺はなし

口腔内 乾燥目立つ 残歯は汚い

頸部LN触れず

心雑音なし 呼吸音 清

四肢 浮腫なし 関節 腫脹なし

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ディスカッション①どう対応しますか?


W「はい、ありがとうございます。

  ではみなさんどう対応しますか?」


N「やっぱり高齢者が具合が悪くなった場合は、

 薬が悪さをしていることが多いので、薬の関与を考えたいです。」


W「大事だね。

 この人はどうかはわからないけど、

 一般的に薬が原因で食事が取れないというのは多いよね。


 今回はすでに薬は飲んでいないみたいだけどね。」


N「そうですね・・・じゃあ、違いますね・・・」


R「自分はやっぱり、高齢者でよくある感染症を考えたいです。

  少し前にセフゾンを内服されているので、感染性心内膜炎は考えます。

  血液培養は必ず取りたいです。塞栓徴候はありましたか?」


T「ありませんでした。」


N「関節は他動的に動かしたり、自動的に動かすとどうでしたか?」


T「じゃあ、診察してみてください。

  自分が患者さん役になりますので。」

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追加診察

腹部 どこを押しても痛がる

「痛い痛い」


上肢を動かそうとすると、嫌がる 

時折、痛がる


肩を挙上させると、嫌がる

時折、痛がる


首は硬くない 

回旋運動で痛み誘発されず


下肢 膝触ると痛がる 腫脹や熱感はなし


N「熱感や腫脹はないですね・・・」


T「熱感までは再現できませんよ。笑」


N「よくわかりません・・・」


T「最初みてくれた研修医の先生も全身痛がって、よくわかりません・・・

 という感じで、諦めていました。

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ディスカッション②全身痛がる人をみたらどうするか?


R「病歴に戻っていいですか?

 痛がるのはいつからですか?いつも痛がるのですか?」


T「大事ですね。

  施設の人に電話で聞いたところ、半年前くらいからどこ触っても痛がっていたようです。

  特にお風呂とかで、お腹のお肉のところを触ると痛がっていたようです。」


R「うーん・・・今回のような痛がり方も同じなのですか?

  食事とかで痛みが出ますか?」


T「そうですね、ここ数日は痛みの訴えも多かったようです。

  触らなければ、痛がらないのですが、オムツ交換とか移動で痛みが出るみたいです。

  食事はそもそも食べていないので、食事で痛くなるかはよくわかりません。


  全身を痛がる人の診察はコツがあります。

  ブログ読みました?」


N「読んでません。笑」


T「今、調べていいよ。」


W「検索しにくいんだよね、ブログ・・・」


N「Ever noteに貼るのがおすすめです。」


T「すいません・・・・」











T「こういった全身を触ると痛がる人の診察にはコツがあります。

  

  まず大事にしていることは、痛みがない部分があるかということです。


  痛みがない場所を見つけることが大事です。


  そうすると、上肢や首、胸を触ったり、押しても痛みの訴えはありませんでした。

  再現性を確認することが大事で、何度も触ることが大事です。

  何度も触って、再現性があることもわかりました。

  

  そして、両側の大腿部〜下肢を触ると痛がりました。

  お腹も痛がりました。これも再現性がありました。


  本当にどこを触っても痛がる人の場合は、診断はとても難しいです。

  ですが、今回のように痛みがない場所がある人の場合は、

  丁寧に診察すれば、診察はちゃんとできます。


  痛みがある場所を見つけたら、

  次に、痛みが出る条件を探します。

  

  触っただけで痛みが出るのか、

   動かすと痛みが出るのか、

   押すと痛みが出るのか、

   叩くと痛みが出るのか・・・


     そうすると、大腿部から下肢にかけては、触っただけで痛みが誘発されました。

  押しても痛がりますが、あまり痛みは誘発されませんでした。


  お腹も触っただけでも痛みは誘発されました。

  押すとさらに痛みが誘発されました。


  最後に痛みの強さの比較が重要です

  

  場所の比較:大腿と腹部の比較、左右の比較、

       胸と腹部の比較

  時間の比較:ずっと触ってどうなるか

  誘発の比較:触る、押す、動かす、叩く

 

 痛がる部位と条件が分かれば、どこが最も痛いかを探します

 

 均等に痛がるようなら、全身的な問題(PMR、低K、甲状腺機能低下、薬剤、副腎不全など)を考え、

 不均等に痛がるようなら、局所的な問題(骨折、炎症など)を考えます

 

 痛みの強さは

 声だけ「痛い痛い」というのか

 表情が変わって、明らかに苦悶様か

 手が出てくるほど、嫌がるかどうか で見極めます。


 この方は足とお腹を触ると圧倒的にお腹を痛がりました。


 足は最初の数秒は触っていると、痛がりましたが、

 ずーっと触っていると、痛みの訴えは消えました。

 途中で押したりしても痛みの訴えはありませんでした。


 ですが、お腹は押している間中、ずーっと痛がりました。


 右と左の腹部を押すと、右で痛み方が強かったです。

 

 丁寧に診察をすると、全身痛がる人ではなく、

 腹部全体に痛みがある人になりました。

 足の痛みと腹部の痛みは別問題ということがわかりました。


 そうすると、鑑別も変わってきますよね。

 この方の診断は病歴と診察でほぼ決まります。


 患者さんが認知症でコミュニケーションとれないからといって、

 諦めてはいけません。諦めたら診察終了です。」


W「そうですか〜

  他に聞きたいことや診断何かわかる人いますか?」


N「腸閉塞でしょうか?

  蠕動音はどうでした?」


T「普通でした。

  ではヒントを出していきますね。血液検査とCTを出します。


  血液検査ではCRP10まで上がっていました。

  WBCも上昇していました。あとは脱水で腎機能が悪くなっていました。

  肝胆道系酵素は上昇していませんでした。


  CTでは頭部には何もなかったです

  胸部にはわずかに肺炎像がありましたが、ごく軽度でした。

  胸水は少し減っていました。

  腹部では、結腸全体に軽度の壁肥厚がありました。

  前回のCTでは便秘でしたが、便が全てなくなっていました。」

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診断は?

 

T「診断はなんでしょうか?」


聴衆・・・・


T「実は、この方の病歴でもう少し聞いて欲しかったことがあります。


  抗生剤が数日入った経緯があったので、施設の人に追加で聞いてみました。


  下痢はありませんでしたか?


  そうすると、ここ数日は下痢が頻回でオムツの交換が大変だったとのことでした。

  

  この下痢のエピソードと腹部の痛がり方と、

  炎症反応とCTの結果をみて、CDIだと確信しました。

  

  オムツをずらすと、案の定、泥状の便があったので、

  自分でそれをすくってCDの検査を提出しました。

  提出後、すぐにアネメトロ®︎の点滴を開始しました。

  

  その後、CDトキシン・抗原陽性という報告を受けました。


  入院後はアネメトロ®︎投与して、下痢は改善し腹痛も改善傾向です。

  CRPも下がりました。


  ただ食事は相変わらずとれていないので、

  食事摂取不良や大腿部痛に関しては、違う原因があるのだと思っています。

  おそらく認知症がかなり進行していることによる食事摂取不良や

  腰部脊柱管狭窄症に伴う下肢痛だと思います。

 

  残念ながら、こちらはtreatbleではない気がしています。」


W「なるほど〜

  ありがとうございます。

  確かにCD腸炎は治せるから、見逃したくはないですね。


  食思不振はよく消化管以外から考えようとは言うけれど、

  やっぱり消化管のトラブルのことも多いよね。

  

  今回はそれ以外にも嘔吐とかの病歴も聞けなかったので、

  消化器症状のROSはしっかり聞くべきでしたね。」



N「CD腸炎かぁ・・・それは鑑別で言えたなあ・・・」



T「そうですね。全員知っている病気ですよね。

   

  ただ、この人はいろんな目眩しがありました。

 

  ・点滴だけしてほしいという紹介

  ・看取りが近い

  ・認知症でうまく病歴や所見がとれない

  ・数日前にフルワークアップがされている

  ・全身をもともと痛がる(慢性経過?)

  ・最近食べられていない(亜急性経過?)


  ですが、

  

  抗生剤が数日前に入った後に下痢が出現して、

  食事がとれず、お腹を痛がっている


  と聞けば、誰もがCD腸炎を想定できたと思います。」


W「そうだね、最初の方に薬は大事だよ〜っていったのに、

  今飲んでいる薬だけではなくて、少し前に入った薬も大事だね。


  いつも心に薬と結核とCD腸炎ですね。」



T「実臨床はCDのような綺麗に出来上がった音楽を聞いて、

  何の歌かを当てるゲームではありません。

       これは国試です。



  臨床推論は人混みの中の雑音に混じったかすかな声を聞き分けて、

  答えにたどり着く非常にむずかしい作業です。

  

  地下鉄の駅を歩くと、いろんな音が聞こえてきます。

  同じように病歴をとればとるほど情報は増えますが、雑音かもしれません。


  何が雑音で、何が重要か・・・

  ここが実はAI診断の苦手なところです。

  

  臨床で一番むずかしいのは、

   何が雑音で、何が真の音かを見極める作業です。

 

  改めてそのことに気がついた非常に教訓的な症例でした。ありがとうございました。」


まとめ

・全身を痛がる人の診察にはコツがある

→痛がらない部位を探す、痛がる条件を探す、痛みの強さを比較する


・高齢者が具合悪くてやってきた時は、まず薬が原因でないかを疑う

→入院中はCDIを想起しやすいが、外来ではCDIを想起しにくい


・実臨床の病歴は雑音だらけ

→雑音の中で本当の答えにたどり着く音を聞き分ける力が診断力

 

皮疹の見方

皮疹の見方 皮疹の見方と言っても状況によって考え方が異なる。 皮疹だけをみてどう考えるかだけではなく、 どんな文脈で皮疹が出てきたか、 が重要である。 我々が皮疹に出会う状況は皮疹と全身症状のバランスによって3つに分けられる。 ① 全身症状がメイン(発熱、関節炎、ショックなど)だ...

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