臨床のパールや自分なりの考えをノートにまとめました。自分のポケットの中だけでなく、皆様にもみていただき、ご意見ご感想を頂ければ嬉しいです。実臨床への適応は自己責任でお願いします。
2021年4月18日日曜日
新型コロナウイルスをのりこえるための説明書 〜ワクチン編〜
2021年4月14日水曜日
ボス回診 〜教育回診の心得〜
今年からボス 回診がなくなったので、引き継いで自分が回診をすることにしました
症例相談を受けることはこれまでもありましたが、この回診はとても難しいですね
ボスの凄さを改めて実感しました
ボスは自然とできるカリスマでしたが、
自分は違うので、努力と振り返りで頑張りたいと思います
回診・症例相談で気をつけたいことや言われたことを備忘録として書いておきます
・参加者の一人一人に気を配る:つまらなさそうにしている人はいないか
・症例の内容と同じくらいプレゼンを意識する:プレゼンテーションについてもフィードバックする
「プレゼンは何のためにするかというと、相手を動かすためにする。
プレゼンテーターの本気度で相手が動くかどうかが決まる」 by T.S
・全ての情報を鵜呑みにしない:内容は全て聞いているが、全ては信じない
「君のことは信頼しているが、君がとった病歴や身体所見は信頼していない」by T.S
・誰が何に困っているかを間違えないようにする:研修医が困っていることと患者さん本人が困っていることは違うかもしれない
「誰が何に困っているか、それが重要なんだ」by T.S
・症例の全体像(時間軸・空間軸)を俯瞰するように把握する:チームのメンバーと同じ視点で考えても同じ意見にしかならない、別次元で考える癖をつける
・相談された症例の「アキレス腱」がどこかを探す:チームが進んでいる道とは別の道に答えがあるかもしれない
・teaching pointを探すが、話すぎないように、質問しすぎないように:何かを教えることが回診の目的ではない
・伝えたことは一回では伝わらない:頭でわかっていても、心からわかってはいない
「僕が今日言ったことは、よくわからないと思う。
でも、次、同じ状況になったら、そのときにわかると思うよ。」by T.S
・自分の診療スタイルは見られている:患者さんへの立ち振る舞いは、研修医は上級医と似てくる
・参加者全員に話す機会を作る
・プレゼンしてくれた人、参加してくれた人に感謝を伝える
順番を間違えないことが大事ですね
研修医や専攻医の勉強のために回診をするのではなく、
患者さんのアウトカムが良くなるようにという思考で臨むことが大事そうです
そして、いろんなバイアスに負けないことも症例相談を受けたときには大事です
最後はやっぱり井上ひさしさんの言葉が一番しっくりきます
難しいことをやさしく、
やさしいことを深く、
深いことを面白く、
面白いことを真面目に、
真面目なことを愉快に、
愉快なことはあくまでも愉快に
2021年4月10日土曜日
東京GIM 〜いきなりALS〜
本日の東京GIMは、呼吸困難の主訴で救急車で来院された60代男性の症例でした
今まで診断がついておらず、救急外来から入院となり、
入院後にALSの診断がついた症例です
今回は症例解説とは別で、身体診察の重要性について考えてみたいと思います
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今回のように「いきなり〇〇」という症例に救急外来で出会うと、
とてもびっくりします
救急外来で、
いきなりAIDS、いきなり進行した強皮症、いきなりALS、いきなりPOEMS、いきなりIVL・・・
診断がされていない慢性疾患の急性増悪パターンには常に注意が必要です
いきなり〇〇かも!?と気がついたら、
一度、立ち止まって考えることができます
いきなりALS症例に対して、挿管をしてしまってよいでしょうか?
あえてすぐにはしないという選択もあり得ます
「いきなり〇〇」という症例に出会うためには、
常に頭の片隅に鑑別疾患を立てておき、
身体所見をとる時にレセプターを生やしておく必要があります
身体診察の知識を知っているか、知っていないかの問題ではありません
レセプターを生やしているか、生やしていないかが問題です
病歴も重要ですが、なかなか病歴だけでは診断を確定することはできません
そもそも病歴がとれないこともあります
時間がなかったり、語れなかったり・・・
そんな時には、身体診察が非常に有用です
身体診察の名人には、病気が見えています
そういう先生に出会ったことがない先生もいるかもしれませんが、
本当にすごい先生は、次元が違います
身体診察は知識であり、技術であり、情熱と経験が必要な分野です
知識があってもこればっかりは難しい・・・
例を挙げます
甲状腺機能低下症で嗄声が起こることを知っていも、
目の前の患者さんの少しくぐもった声から甲状腺機能低下を疑えるでしょうか?
これまで一度でも、声で甲状腺機能低下を診断した先生がどれだけいるでしょうか?
MGで眼瞼下垂が来ることは学生さんでも知っていますが、
今、診察し終わった患者さんに眼瞼下垂があったかどうか、覚えていますか?
身体診察の名人と凡人の差はここにあります
身体診察はとりに行くものではなく、感じるものです
参考:身体所見
身体診察をとりに行っている時点で、ほぼ勝負は決まっています
ただし、狙ってとった身体所見で解釈が難しい時があります
それは、神経診察と皮膚診察です
この2つの診察を上達させるための一番の近道は、
自分が尊敬する人の診察風景を何度も目に焼き付けることです
身体診察の勉強は今も昔もベッドサイドにしかないと思います
身体診察をおろそかにしなければ、
患者さんに出会った瞬間に診断をつけられるという機会が増えていくと思います
そうすると、今回の症例のように「いきなり〇〇」という患者さんにも出会うでしょう
診断を早期につけられるようになれば、患者さんをより良い方向へ導いているはずです
それが、今回のように治らないALSだったとしても・・・
2021年4月9日金曜日
東京GIM 〜パズルのピース〜
3月のTGIMの症例はそんなプレゼンテーションあり!?という驚きの症例でした
心窩部痛の原因として鑑別にあげたことがなかったので、
とても勉強になりました
実際の流れとは少し違いますが、Clinincal Problem Solving形式でお届けします
コメントは自分の思考です
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50歳代 女性 主訴:心窩部痛(※一部、症例は加筆・修正を加えてあります)
Profile:20代で結核の既往あり
現病歴:入院3日前から心窩部痛が出現
吐き気もあり
食事摂取は難しかったが、水分摂取はできた
入院2日前、近医を受診
Xp、腹部US、胃カメラが施行されたが異常認めず
入院当日、心窩部痛と吐き気が持続するため、紹介となった
心窩部痛について
O:徐々に出現
P:部位は心窩部、食後に増悪
Q:何とも言えず
R:なし
S:3/10の強さ
T:持続痛
ROS:吐き気あり、発熱なし、下痢なし、生ものや肉類の摂取なし
既往:20代で結核(4剤で半年間治療)
内服:なし
アレルギー:なし
生活:夫と二人暮らし
喫煙なし、アルコールなし
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コメント
結核の既往歴以外には特記すべき既往のない50代の女性です
来院の3日前から心窩部痛が徐々に出現し、吐き気があります
食事がとれず、少量の水分しかとれていません
急性の心窩部痛のcommonな病態から考えると、
虫垂炎や胃潰瘍、膵炎、胆嚢炎、感染性腸炎、胃・小腸アニサキスを疑います
消化器以外の以外を考えると、心臓由来や血管病変も鑑別にあがります
まず、病歴では食事歴を細かく確認する必要があります
食事歴は「生モノは食べましたか?」とさらっと聞くと、
「食べていません」と返事が帰ってきますので、
ねっとりと聞く必要があります
「食べてないです」と言われてからが始まりです
心窩部痛が出る直前の食事を一緒に、一つ一つ振り返っていきます
思い出せない場合は、こちらから食材を言っていきます
BBQ、焼き鳥、焼肉、鳥刺し、寿司、お刺身、唐揚げ、卵料理、餅・・・
といった感じで、挙げていくと「あ、食べました」となることが多いです
特に小腸アニサキスは数時間後に発症する胃アニサキスと違って、
5ー7日以内の摂取で起こりますので、さかのぼって聴取する必要があります
今回はすでに腹部USや胃カメラで問題がなかったので、
胆嚢炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍の可能性は低くなっています
病歴で気になるのは、食後に増悪するという病歴です
ここも実は深く掘り下げて聞いてみたいところです
「食べた後に痛みが強くなります」と言われてからが始まりです
詳しくは:腹部アンギーナ
失神は病歴が大事だと言われますが、腹痛も病歴がとても大事です
失神の場合はその情景を映像化できるまで病歴をとりなさいと言われます
一方、腹痛に関しては、グラフ化できるまで病歴をとります
できれば病歴をとりながら、患者さんと一緒に痛みの推移のグラフを作ります
もちろん、急性腹症を疑うような痛みの強い場合やバイタルが崩れている場合は、
そんな暇はありません
一般外来に歩いてきた腹痛の患者さんの場合に限ります
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身体所見
バイタル T 36.8、BP148/80、P 70、RR16、SpO2 98%(RA)
頭頸部 異常なし
胸部 異常なし
腹部 平坦 軟 圧痛なし 腸蠕動音亢進・減弱なし
四肢 浮腫なし
皮膚 発疹なし 潰瘍なし
血液検査
WBC 14000, Hb 15, Plt 80000
凝固 異常なし
生化 電解質異常なし、腎機能異常なし
肝胆道系酵素上昇なし、Bil上昇なし、CRP7
ACTH 2.7, コルチゾール 10
レントゲン
心拡大なし 肺炎像なし
造影CT 両側副腎に血流低下
その他に特記すべき所見なし
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コメント
身体所見では心窩部に圧痛はなかったようです
腹痛の際には、自発痛と圧痛と最強点の圧痛は区別することが重要です
心窩部の自発痛はあるのに、
そこを押しても痛くないというのは、
実はそこに原因はないかもしれません
心臓由来や神経根痛、代謝、内分泌系、薬剤、偏頭痛、ポルフィリアなどを考慮します
頻脈や甲状腺中毒症の症状はありませんが、甲状腺はチェックしておきたいです
造影CTで両側の副腎の血流低下がありますが、
今回の病態にどう関わっているかわかりません
そもそも何なのかを放射線科の先生に相談したいです
副腎への血流低下ということは、副腎梗塞といった病態なのでしょうか
副腎梗塞が両側に起こるということは、かなり限られた状況です
両側の副腎出血の場合は、Waterhouse-Friderichsen 症候群が有名ですが、
両側の副腎梗塞はICUに入るような多発外傷でショックになる人で稀にみられます
まずうっ血が起こり、両側が副腎が腫大し、
その後、出血、梗塞を起こす人がいます
よーく見ると、なんだかボヤ〜っと腫大していることがありますので、
その目で見ることが重要です
副腎の解剖は面白いです
動脈は複数ありますが、静脈は1本です

副腎梗塞や出血は痛みが出現しますが、今回の腹痛の原因が副腎梗塞であれば、
なぜ、副腎梗塞が急に出現したのかが問題になります
結核の既往があり、副腎結核だとしてもこんなプレゼンテーションになるかは疑問です
APSや凝固系、過粘稠状態、背景に悪性腫瘍がないかの検索が必要になります
ただ一方で腹痛の原因検索も必要かと思います
副腎梗塞からの副腎不全の可能性はあり、副腎不全からの腹痛かもしれません
Lapid ACTH試験を行い、副腎不全の診断を詰めていくことになると思います
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経過
両側副腎梗塞の診断で入院
輸液とヒドロコルチゾンの投与が開始となった
入院5日目、CT再検されたが、
副腎の画像所見は変化なし
入院7日目、心窩部痛や吐き気は改善
食事摂取可能になり退院となった
ヒドロコルチゾン15mg内服継続し、外来で精査の方針となった
追加検査
ACTH負荷試験は正常範囲
APSのマーカーは陰性
ANA >40
抗SSA抗体陽性、抗SSB抗体陽性
プロテインS、C活性や抗原 正常
IgG 、IgM、IgA 正常値
補体低下なし
ANCA陰性
フォローの外来では自覚症状なし
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コメント
両側副腎梗塞が痛みの原因だったのでしょうか・・・
あまり経験がないので、ゲシュタルトがつかめませんね
副腎不全としてステロイドが開始となっていたので、
副腎不全の影響もあったのかもしれません
心窩部痛は改善してその後も出現ないので、
めでたし、めでたし?
ただ、なぜ両側副腎梗塞になったかが不明のままです
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経過
退院2週間後、顔面・四肢の浮腫を自覚
倦怠感も出現
退院20日後、倦怠感が増悪
食思不振も出現し、精査目的に入院となった
ROS:顔面の浮腫あり、吐き気あり、食思不振あり
四肢の浮腫あり
めまいなし、視力低下なし、口内炎なし
嗄声なし、咽頭痛なし、甲状腺腫大なし、下痢なし
咳なし、血痰なし、呼吸苦なし、関節痛なし、レイノーなし
身体所見
バイタル T 38/0、BP110/80、P 110、RR18、SpO2 98%(RA)
頭頸部 顔面に浮腫あり
頸部リンパ節腫脹なし
胸部 異常なし
腹部 平坦 軟 圧痛なし 腸蠕動音亢進・減弱なし
四肢 浮腫あり
皮膚 発疹なし 潰瘍なし
血液検査
WBC 6500, Hb 12, Plt 50000
凝固 異常なし
生化 電解質異常なし、腎機能異常なし
Alb 2.5と低下あり
肝胆道系酵素 ALP 700と上昇あり、Bil上昇なし、CR30
造影CT 腹水あり、両側腋窩・鼠径LN腫脹あり
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コメント
今回は心窩部痛ではなく、発熱、全身性の浮腫、血小板の更なる低下、Alb低下がみられています
CTでは腹水と全身のリンパ節腫脹があります
数日の急性経過で悪化しており、全身性の炎症が起こっています
それが感染なのか、自己炎症性疾患か、自己免疫性疾患か、腫瘍性か、アレルギー性かが問題です
感染であれば、急激に状況が悪くなっているので、敗血症になっていないかは心配です
感染症の原則に当てはまると、
宿主は? 30代で結核の既往のある50代女性
どこに?
フォーカスがはっきりしないので菌血症、IE
IEに伴う心不全の可能性も否定できず、UCGやECGはすぐに行いたいです
実はIEからの塞栓が副腎梗塞を起こし、
その後、膿瘍形成していた可能性もありますので、
その目で副腎をみる必要があります
腹水が出現していることから、原発性の腹膜炎の可能性もあります
実は前回も腹膜炎だったが、ステロイドで軽快したのかもしれません
何が?
いきなり菌血症でくるような、MSSAや連鎖球菌
他には皮疹はありませんがリケッチア、レプトスピラ、
肺炎があるかはわかりませんが、レジオネラ
結核の既往があるので、粟粒結核
HIVがあるかないかで鑑別が変わるので、
HIVの有無はチェックしておきたいです
全身性のリンパ節腫脹の鑑別で考えれば、
EBV、CMV、梅毒、TBなども考慮します
治療は?
頻脈がみられており、消耗が強そうであれば、
血液培養を採取後、抗生剤投与を開始します
感染症は治療しないと命に関わるので、ワンサイドカットのため、
抗生剤は投与するかと思います
一方で、非感染症の可能性も考えます
自然免疫系の炎症であれば、
AOSD、ベーチェット病を疑います
AOSDはプレゼンテーションが多彩なので、鑑別に残ります
血管炎も考えますが、大血管らしくはないです
となると、PNか小血管となりますが、
紫斑や痺れ、関節炎、腎障害、間質性肺炎といった血管炎を示唆する所見に乏しいです
ANCAも陰性であり、積極的に血管炎は現時点では疑えないかと思います
SLEはこの症例でもあり得えると思います
血小板減少もリンパ節腫脹も起こり得ます
リンパ節を生検すると、壊死性リンパ節炎の所見が得られれば、SLEの可能性が高まるかと思います
SSA、SSB抗体が陽性であり、シェーグレン症候群が背景にあるため、
シェーグレン症候群に伴う血管炎や血小板減少の可能性もあります
悪性腫瘍であれば、MDSに伴う全身性の血管炎パータンは診断が非常に難しいです
悪性リンパ腫の中でも特にIVLは鑑別にあがります
骨髄穿刺や生検を行い、MDSやIVL、播種性結核の検索を行いたいです
ですが、これまでの検査はある疾患のお膳立てです
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経過
入院後、血小板減少進行あり
胸水も出現してきた
UCGではEF良好
追加検査
甲状腺機能 正常
RPR 陰性 TPAb陰性
HBs 抗原 陰性
HCV 抗体 陰性
HIV 抗体 陰性
CMV、EBV 陰性
T spot 陰性
HHV 8 DNA 陰性
骨髄穿刺・生検 芽球なし
リンパ節 生検 Paracortical hyperplasia with lymphoplasmacytic infiltration
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最終診断:TAFRO症候群
Thrombocytopenia
Anasarca(pleural effusion and ascites)
Fever
Reticulin myelofibrosis
Organomegaly(Hepatosplenomegaly and lymphadenopathy)
2010年に日本で報告された全身性炎症性疾患で
頻度は、0.9-4.9人/100万人(日本)です
多彩な症状や所見があり、それぞれに突っ込んでいくと失敗する疾患です
こういった疾患は、パズルのピースを集める感じで診断します
診断はMajor categoriesから3つ、Minor categoriesから少なくとも2つですが、
最も大事なのは、他の疾患の除外が必要なことです
悪性腫瘍、SLE、シェーグレン症候群、AAV、リケッチア、ライム病、SFTS、POEMS、TTPなど
今回はSSAだけでなく、SSBまで陽性なので、
シェーグレンが背景にありそうですが、
どうやって除外するのか、除外する必要があるのか、よくわかりません
治療
キャッスルマン病に準じて治療
グルココルチコイド
治療抵抗例では、シクロスポリンAなどの追加を考慮
トシリズマブ、リツキシマブ
臨床で難しいのはいつTAFROとして治療に踏み切るかです
鑑別にはあがりますが、
実際にTAFRO Switchを押すのが、誰で、いつか?が問題です
一人では診断、治療したくない病気です
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TAFRO症候群と副腎梗塞
副腎梗塞を合併するTAFRO症候群の症例報告はあり
副腎病変(梗塞/出血)はTAFRO症候群の特徴的なCT所見
European Radiology (2020) 30:5588–5598
TAFRO症候群の病態
腎臓、副腎のリンパ管は大動脈へつながる
大動脈周囲の静脈、リンパ管排出が増悪し、鬱滞
大動脈周囲静脈、リンパ鬱滞が腎臓、副腎に波及し、梗塞
腎機能が増悪、浮腫が全身に波及し、臓器腫大
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まとめ
・診断困難症例では経過をフォローすることが重要
・副腎梗塞はTAFRO症候群の特徴的なCT所見
・血小板低下+副腎梗塞ではTAFRO症候群を鑑別に挙げる
2021年4月6日火曜日
Clinical Problem-Solving 〜Stalking the Diagnosis〜
N Engl J Med 2021;384:1262-7.
22歳 男性 主訴:進行性の神経異常
現病歴:1年前 痛みを伴わない視力障害が左目に出現し、
右目にも出現してきた
その後、4-6ヶ月で痺れや四肢の拘縮、体幹の筋力低下、失禁が出現した
1年で体重が6.8kg減少した
見当識障害が出現し、自分のことができなくなった
生活:発症の3ヶ月前にパキスタンからカリフォルニアにきた
配達の運転手をしていた
喫煙なし、飲酒なし、違法drugなし
家族歴:なし
経過:
画像検査で脱髄を示唆する所見があり、MSと診断された
ナタリヅマブで治療が開始されたが、改善なし
IFNに切り替わったが、症状は進行していったため、紹介となった
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(自分の思考)
これはMSと思わせて、違う病気パターンですね
MSの診断は実はとても難しいです
典型的な所見やデータ、経過が揃っていれば良いですが、
画像で白質病変があるだけではMSと言い切るのは難しいです
MSのような白質病変をきたす疾患として、
NMOやサルコイドーシス、中枢神経原発悪性リンパ腫、原発性中枢神経系血管炎、
神経ベーチェット、神経sweet病、CNSループス、シェーグレン症候群、PML、
サルコイドーシス、神経梅毒、HIV感染、結核・・・というように鑑別は多岐にわたります
本当はMS以外の疾患を除外しなければなりませんが、
脳生検を最初から行うことは少ないと思います
そのため、今回のように経過や造影MRI所見、髄液検査所見を総合してMcDonald criteria
などを用いながら、診断・治療することが多いです
ただ、今回は治療がうまくいっていないため、MS以外の疾患の可能性が高い状況です
一番嫌なのは、結核ですね
アジア系の出身であれば、神経ベーチェットも気になるところです
脳だけにとらわれず、他の病歴や所見もしっかりとらなければならないと思います
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体温は36.9℃、血圧は102/55mmHg、脈拍は75回/分、酸素飽和度は98%
心臓、肺、腹部の診察は問題なし
神経学的検査では、開眼しており病院にいることは認識していました
都市名や日付は認識できず、簡単な命令には従えたが、発語は少なかった
瞳孔は正円同大で、対光反射はなかった
視力は両側とも重度に障害され、光と指の動きのみを認識していた
四肢の筋力低下や筋トーヌスの亢進があった
反射は全体的に3+で、バビンスキー徴候は両側に見られた
触覚の感覚は問題なかった
小脳検査の結果は正常でしたが、
患者は介助なしでは歩けない状態でした
頭部の磁気共鳴画像(MRI)では、脳室周囲の白質に広い範囲で信号異常が見られ、
脳室に結節や軟膜の造影効果が認められた
視神経路に沿って対称的な信号異常が見られた
造影脊髄のMRIの結果は正常であった
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(自分の思考)
MRIではやたら脳室周囲の異常陰影が目立ちますね
脳室周囲炎といえば、アクアポリン4に関わるNMOをまずは考えたくなります
他には髄液内に病原微生物や腫瘍が存在することで、脳室周囲に炎症を引き起こすこともあります
この画像からは、まだ鑑別疾患は絞られません
やはり、慢性髄膜炎を引き起こすような感染症をまずは念頭においた方が良さそうです
結核、クリプト、癌性髄膜炎(リンパ腫や白血病)、神経梅毒といった疾患は
鑑別に上がるので、髄液検査を行いたいです
HIVの有無は鑑別疾患を考える上で、非常に重要なので早々にチェックします
この中でも結核をどうやって除外するかは非常に悩ましい問題です
もちろん、培養やPCR、ADA、IGRAを提出することになりますが、
状態が悪ければ、抗結核薬で治療を開始することも選択肢になります
結核性髄膜炎の場合、ステロイドを併用することもあります
ただし、併用したステロイドで色々がマスクされてしまうため、
ステロイドを使う前には、血清で自己抗体のチェックや生検を検討します
実臨床では、あとで追加できるように血清保存をたくさんとっておくのが重要です
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全血球数と生化学は、ナトリウム濃度が148mmol/Lであったことを除いて正常であった
腰椎穿刺を行い、3本目の脳脊髄液(CSF)を分析したところ、
透明な液体で、白血球数は11個(基準範囲、6個未満)
そのうち94%がリンパ球、6%が単球で、赤血球数は5個
グルコース値は44mg/dl、タンパク値は110mg/dlであった
オリゴクローナルバンドが認められた
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髄液検査では髄液糖が低いですね
慢性的な炎症が起きている証拠です
やはり結核を軸に考えたいところです
オリゴグローナルバンドはMS含む脱髄疾患で見られることが多いですが、
非特異的な所見ですので、MSと決まったわけではありません
ここでは慢性髄膜炎として鑑別を進めていくのが良いと思われます
感染症:結核、クリプトコッカス、梅毒、whipple病、コクシジオイデス、アスペルギルス、ムコール
自己免疫性疾患:SLE、シェーグレン、ベーチェット、神経sweet、血管炎
腫瘍性:リンパ腫(IVL含め)、転移、癌性髄膜炎
肉芽腫疾患:サルコイドーシス、GPA、LYG
脳生検が最後の切り札になリますので、それまでにできる限りの検査を提出しておきます
血液検査や髄液検査でわかればよいですが・・・
脳生検のハードルが高いんですよね・・・
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血液と髄液の細菌培養,抗酸菌と真菌の染色・培養は陰性
髄液の結核菌のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査は陰性
髄液と血清のクリプトコックス抗原検査は陰性
単純ヘルペスウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルス,西ナイルウイルス,デング熱,チクングニヤ熱,JCウイルス,ヒトヘルペスウイルス6の検査も陰性であった
上下部の内視鏡検査では腫瘍は見られず
内視鏡生検の結果、Tropheryma whippleiの証拠なし
抗核抗体,抗二本鎖DNA抗体,抗Ro(SSA)抗体,抗La(SSB)抗体
組織トランスグルタミナーゼ抗体,抗好中球細胞質抗体は陰性
アクアポリン-4に対する抗体も陰性であった
髄液の細胞学的検査およびフローサイトメトリー検査では異常認めず
硬膜、皮質、脳室周囲白質の生検が施行された
生検結果はマクロファージと散在するリンパ球を主成分とする細胞性の増加が認められた
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お〜
脳生検までやってますね
案の定、血液や髄液からは原因がわかりませんでした
残念です
髄液検査を繰り返し行うと結核やクリプト、癌性髄膜炎の感度が上がリますので、
脳生検の前には、髄液検査を繰り返すのも重要です
今回は脳生検まで行われましたが、肉芽腫や血管炎、腫瘍の証拠はなかったようです
困りましたね〜
せっかく生検したのに、こういうことがあるんですよね・・・
さて、どうしたものか・・・
やはり結核として治療せざるを得ない気がしますが・・・
それにしても、HIVやADAの話題が全く出てきませんね
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入院10日目にナトリウム濃度が急激に上昇し、165mmol/Lとなりました
1日の尿量は約3~4Lで、尿浸透圧は132mmol/kg(参考値、300~900)でした
プロラクチンは48μg/L(参考値、3.6~18.0)
コルチコトロピンは7ng/L(参考値、6~50)
卵胞刺激ホルモンは0.2IU/L(参考値、1~12)
黄体形成ホルモンは0.1IU/L(参考値、0.6~12.1)でした
コルチゾールは3μg/dl(基準範囲4~19)で、
合成コルチコトロピン投与後に12μg/dlまで上昇した
遊離サイロキシン値は8pmol/L(参考値10~18)でした
患者はヒドロコルチゾンによる治療を開始し、続いてレボチロキシンを投与しました
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なんと・・・下垂体までやられてしまいました
下垂体がやられる疾患と硬膜が肥厚する疾患は似ています
硬膜肥厚に加えて、下垂体病変があるだけでは決め手にかけます
下垂体の障害の分類は病態(原因)による分類、位置による分類、病理学的な分類があります
病態(原因)による分類
腫瘍:頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、下垂体腺腫
炎症:神経サルコイドーシス、GPA、リンパ球性下垂体炎、IgG4関連
感染:結核、梅毒
浸潤:ランゲルハンス組織球症(LCH)、non-LCH
薬剤:免疫チェックポイント阻害薬
位置による分類
・漏斗神経下垂体炎
・汎下垂体炎
・腺下垂体炎
病理学的な分類
・リンパ球性
・肉芽腫性
・黄色肉芽腫性/壊死性
・IgG4形質細胞性
・腫瘍性
下垂体病変の原因を調べるには3つのアプローチが必要です
1つ目は下垂体を狙った造影MRIで所見を探すことです
本症例のMRIはこんな感じでした
2つ目は下垂体以外の+αを探すことです
・膝の痛みや骨硬化があれば、エルドハイムチェスターを
・後腹膜線維症があれば、IgG4やGPAを
・肺病変があれば、結核やサルコイドーシスを
全身性疾患の表現系の一つとして、下垂体がやられることがあります
3つ目は、やはり生検です
病理学的に特異的な所見を探すしかありません
さて本症例の結末はいかに・・・
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下垂体の経蝶形骨洞生検が行われた
生検標本の組織学的所見は,鞍部上の中枢神経系胚芽腫と一致した
この患者は最終的に、下垂体性CNS胚芽腫と診断された
腫瘍性髄膜炎と実質的な浸潤性疾患を合併して重度の神経学的障害をもたらしたと推定されたが、
これらの部位における疾患の明確な組織学的または細胞学的証拠はなかった
患者はエトポシドとカルボプラチンによる化学療法を開始し、
続いて放射線療法を行われました
しかし、下垂体機能低下症は継続しており、
ヒドロコルチゾンとレボチロキシンの投与を受けています
また、神経学的にもかなりの障害があり、
日常生活のすべての活動において介助が必要となっています
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ということで、胚芽種(ジャーミノーマ)が最終診断でした
まさか、MSの鑑別にジャーミノーマがあるなんて、知りませんでした
ジャーミノーマは子供や若年者に起こる腫瘍で、
正中の構造物にできることは有名ですね
他にもジャーミノーマの面白い特徴がいくつかあります
・神経下垂体ジャーミノーマは、下垂体後葉炎やLCH、サルコイドーシスと間違いやすい
・ジャーミノーマの放射線感受性が高すぎて、
生検前にCTを行うと、腫瘍細胞が消失してしまうことがある
下垂体の中の小さなジャーミノーマの場合、CT撮影一回で消失してまい、
生検を行なっても、リンパ球浸潤のみの病理となりうる
・脳室上衣に沿って、脳室壁に広範囲に浸潤する特徴がある(脳室上衣下浸潤)
脳室壁に結節状の多発病変として抽出される
→NMO含め脱髄疾患や慢性髄膜炎と誤診されることがある
オリゴグローナルバンドも陽性になることがあるようです
・脳室上衣下浸潤は髄液播種ではないので、髄液細胞診では検出されない
ジャーミノーマは脳室壁全体を侵す腫瘍である
下垂体だけでなく、視床下部、松果体、大脳基底核にも起こる
・腫瘍マーカーがある
血液と髄液のHCG-βとAFPを調べる
血液中ではHCGは31%で上昇あり、髄液中では41%で上昇を認めたという報告あり
・治療は抗がん剤と放射線治療
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著者のコメント
この症例は、初診時の非特異的な所見と最終診断の稀少性のために、診断が非常に難しかった
討論者も治療チームも頭蓋内胚葉腫の存在を疑っていませんでしたが、
尿崩症の発症により下垂体茎(pituitary stalk)にたどり着き、最終的に診断を下すことができた
2021年4月4日日曜日
日本一朝早いカンファレンス 〜どこまでやるか?〜
本日の症例もディスカッションも大変勉強になりました
腹痛診療でみなさんが大事にしていることが聞けてよかったです
実際は自分は司会に徹しているので、今回はじぶんの思考過程も交えながら振り返ります
症例 40歳 男性 主訴:腹痛 (※一部修正や加筆を加えてあります)
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コメント
造影CTまでおこない腹痛の原因がわからない時、どうするか
というのも一つのカテゴリーです
全身性疾患や代謝疾患(DKA、高カルシウム血、薬剤)を考慮しますが、
本当は造影CTでもうつっている可能性があります
例えば、心筋梗塞は造影CTで実は染まっていない心筋がうつっている時があります
精巣捻転も横になった精巣が見えている時もあります
硬膜外に血腫ができている時もあります
今回の症例では硬膜外血腫や硬膜外膿瘍が気になりますね
そしてなんといっても帯状疱疹が一番の鑑別です
そのため、今回は帰宅の方針で良いかと思いますが、
その際には、
「帯状疱疹の可能性があるので、
毎日、ぶつぶつが出来てこないかは、
誰かに見てもらって確認してください」
と伝えて帰すことが重要です
背中だと自分だけでは確認するのが、難しいですので、
他の人にも見てもらうことが大事です
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症例を通じて
今回の症例は病歴で尿路結石やACNESを疑いましたが、
身体所見上は所見に乏しく、
USや造影CTまで施行したが、診断がつかなかったという症例です
結論はでませんでしたが、考えられることとしては、
筋膜疼痛、帯状疱疹、硬膜外膿瘍や血腫、LCNESでしょうか
自分の経験上、診断がつかない時は、
病歴や身体所見が十分にとれていない時が多いです
診断がつかなかった時は、病歴に戻ることをおすすめします
もう一つは、診断がつかなかった時にあとで電話で体調確認をすると良いです
初期研修医のうちは自分の外来でフォローすることができません
ですが、電話はできます
外来をやっていて一番貴重だと思うのは、その後の経過をフォローできることです
そこで診断がつくかもしれませんし、
病気の経過をワンポイントで見るよりも、
ツーポイントで見ると病気のゲシュタルトを掴むことができます
電話することは手間ではありますが、
患者さんからも感謝されますし、自分の経験にもなります
まさにwin-winです
特に造影CTを撮ったら後で、読影で何かを指摘されることもあるので、
必ず連絡先は聞いておくようにしましょう
医師として成長するスピードは人それぞれ、早い遅いはもちろんありますが、
こういった一手間をかけることが医師の成長のコツなのかと思っています
では、また来週〜
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