2019年4月11日木曜日

神経診察の難しさ

神経診察は3つの難しさがあると思います

①神経診察が多すぎて、何をとっていいのか分からない
 ・脳神経、運動、感覚、小脳、歩行、認知機能、高次機能などいっぱいありすぎ

②診察の手技に自信がなく、うまく取れているのか分からない
 ・腱反射が上手く出せていないのか、それとも本当に出ていないか判断できない

③とった所見の解釈ができない 
 ・rigidityっぽいが、力が入っているだけなのか、よくわからない


今回は①について個人的な考えを述べたいと思います



神経診察は、ケースバイケース

と誰かが言っていました

その通りで、患者さん毎にとるべき所見は、ばらばらです

ですが、時間のない時は、重要性の高い所見は落とさずに診察することが大事です

脳梗塞を疑っている人に、嗅覚検査は重要度が下がるでしょう

ですが、パーキンソン病を疑う人には嗅覚検査は重要です


時には、疾患特有の所見を取りに行く必要があります

例えば、ALSを疑うのであれば、下顎反射や線維束攣縮などです


このように、症例ごとにとるべき神経診察は異なります


では上級医の先生はどのように、

症例ごとにとるべき神経診察を選んでいるのでしょうか


自分としては、このような感じです


症状とTPOTPと鑑別疾患が重要です






神経診察は時間がかかります

そのため、TPOがかなり重要です

これが他の診察との大きな違いです


なので、自分が診療をしている状況を、一歩引いて見なおします


診察している時間は、発症して何時間経っているのか

日中や夜間帯か、

場所は診療所なのか、救急外来か、病棟か、

状況は時間をかけて診察できるか、できないか

応援をよべば誰か来てくれるのか、来てくれないのか

人(患者)は神経診察に協力できるか、脳梗塞リスクはあるか


といったように、

TPOにP(person もしくはpatient)を加えたTPOPと、

症状とPをもとにした鑑別疾患から、

とるべき神経診察は変わってきます


例えば、左上下肢の脱力という主訴でも、発症して一時間であれば、

すぐにNIHSSをとったり、応援をよんだり、画像評価にすぐに行きます






一方で、同じ主訴でも

発症して、1日たっていれば、

すぐにNIHSSをとったところで、tPAに行けるわけではないので、

じっくり診察して、病変部位やetiologyを明確にする必要があるかもしれません





しかし、状況が混んでいる外来となると、



そんなに細々、診察していたからといって、

大きく治療方針が変わらないのであれば、ざっくりとした診察でもよいかもしれません


年齢によっても疑う病気は変わってきます

疑う病気が変われば、とるべき所見も変わります




両下肢の脱力が高齢に起きたら、まずは普段のADLや認知機能を確認したいですよね




このように疑う疾患が異なれば、

とるべき所見は変わります

ですので、疑えないと診察できません



例えば、めまいです

小脳やBPPV、メニエールとかは思いつくかもしれません

そして、それらを疑った所見をとります

しかし、これではワレンベルグ症候群は診断できません

狙って神経診察をする、

つまり○○眼鏡をかけて診察する必要があります



このようにcase by caseで神経診察が異なるのは、

TPOPと鑑別疾患が毎回異なるからだと思います



最近、自分がとった神経診察はどのような状況で、

どんな鑑別疾患を想起して、

神経診察をしていたのか、

思い返してみると、

とってなかった神経診察や

とったけれど、あまり必要なかった診察が見えてくるかもしれません




1 件のコメント:

  1. ワレンベルグ症候群は身体所見で疑わないとMRIで見逃してしまいます

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