2021年6月13日日曜日

東京GIM (前半)

肺胞出血と急性腎不全のプレゼンテーションできた若年男性

→血管炎が疑われる状況でしたが、

 腎生検や眼底所見から結果的に悪性高血圧症だった症例



 肺胞出血と聞くと、血管炎やSLEか?と考え、

 抗基底膜抗体、ANCA、ANAなどなど提出して、

 とりあえずの広域抗生剤で感染症側をワンサイドカットすることが多いです


 できれば、とるもの(採血、生検)をとって、

 すぐにステロイドパルス、エンドキサンパルス、血漿交換!という流れになります


 この症例では抗生剤の投与はしなかったということで、すごいなあ・・・と思いました

 血圧も下げるのも忘れずに行っており、流石でした



 この症例は来院時より著明な高血圧があり、

   バイタルが重要であることを改めて勉強になりました

 実際に患者さんや検査データを目の前にするとパニックになりそうですが、

 バイタルにも注目していきたいと思います

  

(追加解説)

 血管炎以外に薬剤や凝固異常、感染症、肺水腫でも肺胞出血は起こります

 肺の微小血管が破綻すればいいので、原因はたくさんあります


 肺水腫が原因のこともあり、

 肺水腫の鑑別も同時に考えなければなりません

 

 特に今回の症例では右優位であったため、

 右優位の片側性の肺水腫も鑑別に上がりました

 右側優位の急性肺水腫は急性の僧帽弁閉鎖不全症で起こります


 僧帽弁後尖の異常による重症僧帽弁逆流症では、

 逆流が解剖学的に右肺静脈に直接吹き込みやすく、

 右肺のみに肺水腫を発症する場合があります



片側の心原性肺水腫は珍しい症状であるため 、

最初は肺炎などの呼吸器疾患と誤診されることが多いです

適切な治療の開始が遅れ 、その結果、死亡率が上昇します


後部僧帽弁尖の索状破裂による急性僧帽弁逆流は、

片側心原性肺水腫の主な原因と考えられています

患者の命を救うためには、肺炎との迅速な鑑別が重要である

Journal of Cardiology Cases 17 (2018) 8588 本文より

肺炎との鑑別

 



肺水腫を疑った場合は、心雑音をしっかり聞きましょう


 

 実は特殊背景がある場合の肺水腫


 ・腎動脈狭窄による電撃性肺水腫 (flash pulmonary edema)


                   

 参考:心不全のみかた


    ・褐色細胞腫や悪性症候群に伴うもの   参考:褐色細胞腫クリーゼ


                 


 ・妊娠高血圧に伴うもの   参考:妊娠高血圧 

 ・薬剤、違法薬物

 ・鎌状赤血球症のAcute chest syndrome   参考:鎌状赤血球症



 特殊な状況

 ・窒息後:陰圧性肺水腫

 ・アブレーションの数ヶ月後:肺静脈狭窄症

 ・輸血後:TRALI

  ・レプトスピラの治療後


       

高齢者の心不全だけ見ていると、若者の心不全や肺水腫がきた時にびっくりしますね


若年者の急性肺水腫をみた時のポイントは、

心筋炎でないか?

指摘されていない基礎疾患を持っているのではないか?

特殊な状況だったのではないか?

と考えることですね


     

3 件のコメント:

  1. いつも勉強させていただいております。最近のブログにつきまして、スマホやipad経由だと画像をクリックしても拡大して(鮮明に)見られないのですが、以前の仕様には戻ったりしないでしょうか?

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  2. すいません。コピペがダメみたいです。一番したのウェブバージョンで見ると、きれいに見えました。

    返信削除
  3. かしこまりました、ありがとうございます!

    返信削除

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