症例カンファレンスも悩ましい神経疾患でした
ボスが常々言っていましたが、
「神経疾患で難しいのは中枢じゃないんだ
一番、難しいのは末梢なんだ。末梢ができるのが本物の神経内科医だ。」
やっぱり、末梢神経難しいかったです
解像度が低いなあ・・・と改めて再確認しました・・・
60代の女性が左上肢に力が入らないという症状で精査となりました
結論としては、神経生検で血管炎を疑う病理であり、
非全身性血管炎性ニューロパチー(non-systemic vasculitic neuropathy; NSVN)という結論になりました
臨床神経 2016;56:88-92)より
非全身性血管炎性ニューロパチー(non-systemic vasculitic neuropathy; NSVN)は
他臓器組織に障害を伴わず、末梢神経 に限局する血管炎と定義される
腓腹神経生検あるいは短腓骨筋生検で病理学的に神経上膜の小動脈の壊死性血管炎がみられる
NSVN は単一臓器を侵す血管炎 single-organ vasculitis(SOV)という概念に含まれ、
治療反応性良好な一群の疾患と考えられている
だが、当初 NSVNと診断された症例のなかには、
のちに他臓器の障害が出現し全身性血管炎と診 断される例があり、
NSVN は単に暫定的な診断に過ぎず、
背景となる全身性血管炎を常に強く疑うべきであるとする意見がある
Collins らの報告では、NSVN 症例の 71%(34/48 例)で 赤沈 1 時間値が 20 mm 以上の亢進を認めたことを報告がある
→本症例は炎症反応は上がっていませんでした
NSVN はのちに他臓器の障害が出現し全身性血管炎と診断 される例は多く、
臨床的に NSVN と診断された 32 例のうち、
34%が約 5 年の経過で全身性血管炎と診断されている
Greenberg らは、NSVN は単に暫定的な診断に過ぎず、
背 景となる全身性血管炎を強く疑うべきであると述べているが、
全身性血管炎がないことを確認するために必要な経過観察の期間や、
全身性血管炎を検索するための検査手段につい てはこれまで定められたものはない
本症例の学び
・ニューロパチーで発症する血管炎の症例を最後まで一人で診断することはないが、
NSVNの経過(後遺症が残ってしまう)を知っておくと、初動が変わる
→なんだかよくわからない痺れですね・・・
手根管と腰かな?リリカ出しておきますね・・・
と適当に時間を過ごしていると、治療のタイミングを失ってしまうこともある
なるべく早く神経内科医に相談しなければならないニューロパチーもある
・慢性経過でadditiveに悪化してくる神経疾患のpivot and clusterとして、
CIDP(typical,atypical)、血管炎(小〜中、全身性、非全身性、原発性、二次性)、
アミロイドーシス、感染症(梅毒、ライム病、ハンセン病)、神経サルコイドーシス
MNN、ALS、M蛋白関連・MAG抗体関連、代謝(VB12、葉酸、Cu、DM)、
中毒・薬・アルコール、遺伝性(圧脆弱性、CMT、家族性アミロイドーシス)、パラネオ
→現実的には、CIDP?かもと思ったら、血管炎を想起する
その場合、pivot and clusterで鑑別を詰めていく
・CIDPを考えたら、typicalかatypicalか
→末梢専門の神経内科医はたくさんはいませんからね・・・
神経治療学 2019 年 36 巻 4 号 p. 439-444
・できる検査は、血液検査、画像評価、神経伝導速度、髄液検査、神経生検になる
いかに生検でしかわからない疾患(血管炎、アミロイドーシス)の外堀を埋めるか
・多発単神経障害の場合、神経伝導速度検査が大事
軸索型か脱髄型かで、血管炎側(生検)へ進むか、CIDP(MRI)へ進むか決まる
・血管炎の場合、単神経障害が急に(突然気づかれる)出てくることが多い
→起きているのは虚血なので
非全身性血管炎性ニューロパチー(non-systemic vasculitic neuropathy; NSVN)は
BRAIN and NERVE 68 (3):213-221,2016にまとまっています
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