2023年6月19日月曜日

MDSの3つの顔 〜後半:骨髄不全と白血病化と・・・〜

 実際は入院にて精査が行われました


血液でわかるものは出しつつ、皮膚生検を行いました

痛みが強かったので、NSAIDsで治療が行われました

そして、マルクも施行されました



MDSの人が具合が悪くなったら、かなり身構えます

他の慢性疾患、例えばRAやSLE、担癌患者さんの場合は、
ある程度、何が起きるかが想像できますが、

MDS患者さんの場合は、ありとあらゆるものが鑑別になるので、非常に厄介です




もう一つ、患者さんの背景で嫌なものがあります


それは「免疫チェックポイント阻害薬を使っている人」です

こちらも、内分泌的な緊急症や心筋炎、間質性肺炎など
緊急性が高い疾患が鑑別になりますので、非常に身構えます


MDSと免疫チェックポイント阻害薬使用中の方の具合が悪いという非特異的な症状は、
閾値低めに網羅的に検査を行う必要があります





本症例はCTにて肺のGGOと小葉間隔壁の肥厚がみられました


MDSに軟骨炎に皮疹に肺病変に・・・


10年前だったら、なんだこの疾患は???

となっていましたが、今では診断名があります


一番最初に鑑別になったVEXASですね




VEXASも名前の通り、多数の症状の組み合わせで形成される一つの症候群です


自分がよく言っている「パズルのピース系疾患」ですね



TAFROやPOEMSなどと同じような感じで、
一つ一つに突っ込んでいっても、診断に辿り着かないこともありますが、
広角レンズで見ると診断がつきます


ただ、ここで問題があります


本当にVEXASでいいの?問題です


これはTAFROの時も同じですが、
誰かが、これは「〇〇だ!」とスイッチを押すような感じで治療がスタートします


もちろん、診断に特徴的・特異的な結果が帰ってきて、
自信を持って治療できる時は、よいのですが、
時には診断が困難な事例もあります


本当に〇〇でいいの?問題を解決するためには、
他の疾患を除外が必要です



特に「感染症から軸足をそらしてはいけない」という格言通り、
感染症の否定を頑張る必要があります


ですが、実際は感染症の存在証明も非存在証明も困難であり、
「ワンサイドカット」という臨床的手法を用いることが多いです


つまり、感染を100%除外できないのであれば、
治療してしまうという考え方です


これからステロイドを大量に入れる人にとって、
数日の抗生剤治療で失うものはほとんどありません


抗生剤を使うかどうかは、感染症科や呼吸器内科、膠原病科とも
ディスカッションが必要で、みんなの意見をまとめる必要があります







MDSの人の具合が悪い症状は、

本当にMDSがらみなのか、
それとも別の事象が起きているのか、揺さぶられます



ですが経験上、結局、MDS関連のことが多いです


この時の軸足は、最初は感染症にあり、
ワンサイドカットを行いますが、
途中からはMDS関連に乗っかっているイメージです




結局、本症例はマルクにて好中球の空胞変性が多数みられ、
肺病変や皮疹、軟骨炎と合わせて、VEXAS症候群が強く疑われました

VEXASは診断も難しいですが、治療も決まったものがないので、
大学病院や血液内科がある高度医療機関での治療がよいかと思われます



MDSには3つの顔があります

①骨髄不全、血球減少
②腫瘍性増殖、白血病化
③自己免疫疾患合併

です



特に自己免疫性疾患は、診断名のある膠原病や皮膚疾患の場合もありますが、

診断がつかない変な関節炎や皮疹、血管炎もあります

その場合は、何と(保険病名をつけて)治療するかが問題になります


一方でトリソミー8症候群やVEXAS症候群のように、

知っておくと一発で診断できるような症候群もあります



簡単にいうと、

MDSの患者さんに消化器症状が伴った場合は、トリソミー8を

肺病変や皮膚、軟骨炎を伴った場合は、VEXAS症候群を疑いましょう

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