2019年7月21日日曜日

ギランバレー症候群(GBS)

treatable dysphagiaで有名なのが、VZVで、

もう一つが、ギランバレー症候群(特にPCB,AOP)です


ギランバレー症候群は非常に有名ですが、

疾患のゲシュタルトが頭に入っていますか?


「先行感染の後、足の動きが悪くなり、

上向して、両側の四肢の筋力が低下し、腱反射が出なくなる」

というのが、国試的ですが、

臨床で出会うギランバレーは、このプレゼンテーションだけではありません



ギランバレーを鑑別にあげた時には、

ギランバレー症候群の何?まで言えると理想ですね


ギランバレー症候群です

というのは、

脳梗塞です

といっているのと同じです


どこの?なんで?

が気になりますよね



ギランバレーは何らかの先行感染があって、自己抗体が産生され、

神経障害を来します





ギランバレーの難しいところは、臨床像が様々ということです


重症度は、軽症から最重症まで幅が広すぎです

そして、症状にも亜型(バリアント)が多すぎます


ギランバレーがどういう分類になっているかを確認しておきます

①臨床像での分類:GBS、MFS、BBE、PCB、AOP etc

②自己抗体による分類:抗GQ1b、抗GT1 etc

③病態による分類:AIDP(脱随)、軸索型のAMAN、AMSAN、AMCBN


PM/DMと似ていますよね

PM/DMも今や抗体ごとの臨床像が明らかになってきており、

今後はGBSも、もっとそういう傾向になっていくのでしょう


前回の症例は、結局、

double seronegativeのMG(重症筋無力症)だと思っていたら、

抗ガングリオシド抗体が陽性で帰ってきて、PCBの診断になりました

IVIGやステロイドパルスで治療し、

2週間後くらいには、軽快し食事摂取もできるようになりました

ステロイドはどんどん漸減し、

その後も再燃なく、経過しています



しかし、抗GM1が陽性になり、他は陰性でした



これまでの報告例では、

喉周りがやられるのは、抗GT1の報告が多いので、

本当にGBSの亜型のPCBやAOPだったかは、謎が残ります

しかし、AOPの報告例が少なすぎるので、

まだ分かっていないことも多いのだと思います



本症例は咽頭筋の急性の麻痺で、途中、頸部の筋の筋力低下が出現しました

しかし、上肢の筋力は問題ありませんでした


無理やり、臨床像から名前を付けるとすれば、

PCBとAOPの中間になるのであろうと思います


病名は人間が恣意的につけているだけなので、

病名が大事だとは思いません


大事なのは、病態です

つまり、この患者さんに何が起きているか?

の方がよっぽど重要です



それさえ、分かれば治療はできます


GBSの治療は割愛します




ギランバレー症候群のまとめ
・軽症から超重症まで、重症度に幅がある疾患
→軽症例は見逃されている可能性大



・ギランバレー症候群という鑑別をたてるなら、もう一歩、先へ
→臨床像、自己抗体、病態で分類する



・バリアントが非常に多彩なので、急性に出現した何らかの神経異常に関しては、ギランバレー症候群を鑑別にあげる
→非典型が典型くらいのつもりで


参考文献:Lancet 2016;388:717-27
up to date
NEJM 2012;366:2294-304
BRAIN and NERVE 71(6):581-587,2019



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