2020年6月13日土曜日

研修医の先生との対話〜ヒエラルキー〜

腎盂腎炎で治療中の患者さんに対して、
週明けに採血をオーダーしようとしていた場面

T「この人の採血、次にいついれる?」

研修医「えーっと、月曜日に入れようと思っていました。」

T「なるほど。
 そうすると、今は金曜日の夕方だね。
 自分のオーダーが今後どんな未来になるか想像できるかな?」

研修医「いやあ、想像できません。」

T「まだお医者さんになったばかりだから、見えないと思うんだけど、
 医者ってかなりの権力者なんだ。

 自分のオーダー一つでいろんな人が動いてくれる。

 そこを自覚しないといけない。
 知りませんでしたのままだと、他職種の信頼は得られない。

 例えば、金曜日の夕方に月曜日の採血をオーダーすると、
 採血スピッツは誰が用意するか知ってる?」


研修医「病棟の看護師さんですか?」

T「そうだね、平日の日中にオーダーすれば、スピッツやラベル貼ってくれるのは、
  検査科の人たちで、スピッツも届けてくれるけど、
  この時間だと、夜勤の看護師さんがスピッツを集めてラベルを自分で出して、
  セットしないといけないよね。」

研修医「確かに。。。それは大変ですね。」

T「採血実習やったでしょ?月曜日の採血どうだった?」


研修医「めっちゃ、大変でした。」

T「笑 そうなんだよね。
  みんな月曜日に採血したいから、オーダーするけど、集中するからね。

  できれば理想は水曜日。病態が落ち着いていればね。
  それが難しいなら、火曜日。
  病態が不安定で、どうしてもみたいなら、月曜日。

  月曜日に採血をオーダーする時は、心の中でごめんなさい。と思いながら、
  オーダーします。」

研修医「なるほど、水曜日ですか。」


T「医者って実はヒエラルキーの一番上にいるんだよ。
  研修医であってもね。
  あんまりその自覚はないと思うけど。

  例えば、この患者さん、尿検査フォローする?」


研修医「はい、腎盂腎炎で入院されたので、明日尿のグラム染色をして、
   菌が消えていることを確認しようと思います。
   
   週明けにもう一度、尿検査をオーダーする予定です。」


T「なるほど。みんな腎盂腎炎の治療効果判定に尿検査をオーダーするよね。
  それって本当にいる?

  僕は一度もオーダーしたことはない。
  
  だって、何がみたいの?

  菌が消えているかどうかをみたいのであれば、自分でG染色したらいいでしょ?」

研修医「確かに。」


T「尿検査、特に尿沈渣の検査ってどうやっていると思う?

 技師さんが顕微鏡をのぞいて、確認してくれいるんだよ。

 1個ならいいけど、何個もあると、とても時間がかかって、大変な作業だね。
 
 だから特に尿沈渣を出す時は、本当に必要かしっかり考えようね。」


研修医「わかりました」

T「知っておかないといけないのは、
 自分たちの指示で多くの人が動いてくれる、
 簡単にいうと人の時間を奪っているんだ。
 
 だから自分の指示には、責任とその自覚がないといけない。

 そしてもう一つ、医師からの指示には他職種は意見を言えないことが多い。
 よっぽど変な指示でない限りね。

 医師が必要と判断したということは、患者さんのためになっているということだから、
 よっぽどのことがない限り、不平や不満、反対意見は出てこない。
 
 なので、医師という職業は自分が出した指示に対して、フィードバックを得られにくいんだ。
 
 フィードバックがないこと=自分が正しい
  
 という構図になってしまって、どんどん傲慢になっていく。
 
 裸の王様にならないように注意しよう。

 そのためには、日頃から話しかけられやすい状態でいること。
 できるだけ、自分にフィードバックをくれるような姿勢でいることが大事だね。」


研修医「わかりました。」 

T「(まあ、君は大丈夫だよ)
  最後に。
  
 自分が出した検査やオーダーはなるべく、自分で処理しよう

  うちの腎臓内科の先生は画像検査をとる頻度が多いんだけど、
  看護師さんに協力して、必ず自分で患者さんを運んでいるからね。

  偉いよね。

  あの姿を見たら、CTや血培オーダーして、
  はい、あとよろしくーってできなくなるよ。


  昔、こんな研修医がいてね。

  看護師さんにバイタル1検にしても良いかと聞かれて、
  研修医の先生としては、3検して欲しかったんだって。

  でも看護師さんの業務量を減らすために、1検にしたんだけど、
  その翌日からどうしたと思う?

 自分で患者さんのバイタルを3検し始めたんだ。


  偉いよね。(猪突猛進系の研修医だったけど。)」


まとめ
・自分が指示した先の未来を想像できていますか?

・自分の指示やオーダーが、誰かの時間を奪って働かせていることを自覚しよう

・裸の王様にならないように常に感謝の心を持ち、自分で出したオーダーは自分で処理しよう
  

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