2020年6月25日木曜日

肝血管腫 〜いつものあいつが原因?〜

一人の内科医がカバーできる病気や出会える患者さんは、限られています

ですので、カンファレンスや勉強会で、
他の人が経験した症例から学ばさせてもらえることはとても貴重だと思います


今日は外来患者さんの不明熱の相談症例です
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消化器内科N「先生ー、外来で熱の原因が分からなくて困っている人がいます」

T「どうせ、サイトメガロか亜急性甲状腺炎でしょ?」

N「いやあ、でもリンパ節も腫れていませんし、肝酵素も上がっていないんですよ。
  
  そんな、面倒臭がらずに、まあ、聞いてくださいよー

  生来健康な40歳女性で、2週間前からの発熱です
  寒気があって熱を測ると、38度ありました
  他に症状はありません

  薬は飲んでいませんし、既往も特記すべきものはありません

  近医にいって採血とCTがとられました
  血液検査でCRP5と上昇していて、
  単純CTでは肝臓に腫瘤性病変があって、精査目的に紹介になりました

  僕もフィジカルとったんですけど、リンパ節も腫れていなかったですし、
  咽頭もきれいで、甲状腺に圧痛はなかったです
腹部は圧痛はなくて、肝巧打痛もなかったです

  他に身体所見上は熱源になりそうなところはなかったです
  もちろん、IEらしい塞栓兆候や心雑音もなかったです


  造影CTすると、肝の腫瘤は明らかに血管腫でした 
  
  それ以外に膿瘍もないですし、肺炎像もなかったです。
  尿検査も膿尿や細菌尿はありませんでした

  元気だったので、血培やだけとって、また外来フォローにしたんですけど、
  今後どうしたらいいでしょうか?」


T「ふーん、肝臓は血管腫だったんだね。ヘェ〜
  
  (画像見ながら・・・)

  あのさぁ・・・血管腫ってこんなに大きかったっけ???

  10cmくらいあるよ。

  めちゃくちゃ大きいね。これ、やっぱりおかしくない?」


N「あー、まあそうですね、普通の血管腫に比べるとだいぶ大きいですね。
  
  でも血管腫って熱出るんですか?」


T「こんだけ大きかったら、出てもいいんじゃない?
  
 あと凝固異常きたすことあるよね?
 カッサバッハメリット症候群だっけ?
 国試の勉強でやったよね。小児の首の巨大な血管腫のやつ。
 
 凝固大丈夫?」

N「そうなんですね。。。測っていなかったです」


T「じゃあ、また来たら測ってね

  あ、やっぱり巨大な肝血管腫ってFUOの原因になるらしいよ。
  google 先生すごいね〜」


N「そうなんですか・・・」
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肝血管腫について

健康診断のUSや他の目的で撮影されたCTで偶然見つかる機会が増えている

良性の肝臓の非上皮性腫瘍で基本は無症状
サイズも小さいものはフォローは不要のことが多い

女性ホルモンが増大に関与している可能性があり、
増大傾向にある場合、ホルモン剤の使用を聴取する必要がある

10%くらいが多発性


肝血管腫が悪さする時

大きくない血管腫は何もしない
5cm超えてくると悪さする可能性があり、
手術になる時は10cm以上のことが多い

症状出るとすれば、心窩部痛や早期膨満感などが多い

不明熱の原因になることもあるが、非常に稀
膿瘍合併例もあるが、これも稀

大きければ他の構造物を圧排することもあるし、稀に破裂する


大きければ大きいほど、凝固異常を合併する可能性が高くなり、
カッサバッハメリット症候群をきたす

もちろん、悪性が否定できなければ手術が望ましい


悪さをするときが治療を検討するタイミング

治療はTAEや手術になることが多いが、放射線も選択肢になる


肝血管腫とFUO

大きなものはFUOの原因になりうるが、レア
熱だけで、症状はないこともある

他に何もなければ、手術に踏み切る症例もあるが、とても勇気がいる

いきなり熱源を肝血管腫に結びつけるのではなく、
他の原因をとことん探すことが大事


今の時代ならPETまでとって、肝血管腫が光れば、切除の流れになるのかもしれない




まとめ
・人の症例から学ぶ

・肝血管腫は5cm以上あれば、悪さしてくることがある
→小さければ、放置

・肝血管腫はFUOの原因になるが、
他の病気をとことん除外することが大事


参考文献:uptodate
youtubeの追加解説動画:https://youtu.be/4GnGSxBolVc


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