2021年7月15日木曜日

爪楊枝 vs 魚の骨

80歳代 女性 主訴:腹痛(※症例は一部修正加筆を加えてあります)


Profile:認知機能は年相応で、ADLは自立しています
内服は便秘薬と降圧薬のみです
手術歴はありません
お酒は飲みません


現病歴:腹痛は1日前から徐々に出現しました
腹痛の部位はお腹全体とのことです
嘔吐はありませんが、食欲低下はあります
下痢はありません
食事が取れなくなってしまったので、来院されました


身体所見:38度の発熱を認めますが、他のバイタルは問題ありません
見た目はお元気そうです
腹部は平坦軟で、圧痛は心窩部から臍周囲に軽度あります
筋性防御はありません

血液検査ではWBCが軽度上昇しており、
肝胆道系酵素やAMYは正常です
尿検査では膿尿・細菌尿を認めています

超音波検査では腸閉塞や胆嚢炎はありませんでした


一体なんでしょう・・・
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発熱、膿尿、細菌尿があるので、尿路感染症でしょうか
腎盂腎炎も吐き気や腹痛を訴える人はいます

超音波では原因ははっきりしないので、CTを撮りました


診断は???


胃の幽門部にキラーんと光る細いトゲが突き刺さっています
そして、胃壁の肥厚を認めます


なんだこれ???

爪楊枝? 魚骨? 他の尖ったもの?



果たして、何を間違って食べたのでしょうか・・・

病歴の時点で異物を誤飲したエピソードは全くありませんでした

異食をするような人ではありません
認知症もありません



爪楊枝を飲み込んだら普通わかるでしょ?


と思いたくなりますが、

他の症例報告を調べてみると、
びっくりするほど、自覚がないようです


衝撃です・・・・



改めて聞くと、2日前に鯉を食べたとのことでした


鯉は皆さん食べたことはありますか?


長野県の佐久地方で有名な郷土料理です
とっても美味しいので、一度食べてみてください


食べたことがある人はわかると思いますが、
骨だらけです 笑


ということで、今回は(おそらく)鯉の骨が胃に突き刺さっていたと思われます

その後、自然に胃から抜けてしまって、保存的に加療した症例です


ポイント

・異物誤飲による消化管損傷の人は病歴ではわからない


・原因不明の穿孔・穿通・消化管の炎症を見たら、異物(爪楊枝・魚骨)を疑う


・異物による消化管穿通や穿孔は、内視鏡で摘出し保存的加療で治る症例もある

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お腹の中でキラーんと光る細いトゲを見たら

      

魚骨誤飲


異物を誤飲しても消化管穿孔・穿通にいたることは稀です
1%前後と言われます

普通は間違って飲み込んでも特に問題になることはありません


ですが、太めの魚の骨や爪楊枝は消化管を損傷する可能性があります

異物の中で一番多いのは、日本なら魚骨です
消化管穿通や穿孔の半分は魚骨が原因とされています


アメリカでは鳥の骨が多いです(ケンタッキーの影響でしょうか・・・)


魚骨の場合は、鯛、鰈、鰤、鯉が多いです


魚骨も爪楊枝と同様に、飲み込んだ自覚がない人がほとんどです

そのため、病歴で誤飲のエピソードがなく、
急に腹痛を主訴に来院されます

そして、いきなり穿通や穿孔、腹腔内膿瘍で見つかります


急性の経過と慢性の経過でくる人がいます


消化管を突き抜けて、腹腔内に膿瘍を作ったり、
大血管を損傷したりすることもあります


      

爪楊枝の誤飲

爪楊枝も大体同じプレゼンテーションです

爪楊枝と魚骨の違いは、CTでの見え方が異なります

魚骨は高吸収になることが多いですが、
爪楊枝の場合、低吸収から高吸収まで様々です


爪楊枝は水分を吸収すると、高吸収になる傾向がありますが、
消化酵素などの影響で、高吸収にならず、
どんなに目を凝らしても爪楊枝がわからないことがあります


原因不明の消化管穿孔で手術が行われて、
はじめて爪楊枝が原因とわかる症例もあります


そのため、原因がわからない消化管の炎症や穿孔は、
異物誤飲による消化管損傷の可能性があります

axialだけでなく、矢状断や冠状断でも探しましょう
可能であれば、MPR像を作成して異物がないかを探してください



治療

魚骨や爪楊枝による消化管損傷の場合、
内視鏡による摘出で保存的に加療できる例が多いです


ただ、当たり前ですが、

病変(周辺臓器との関係、腹膜炎、膿瘍)と全身状態で

ケースバイケースに考える必要があります




まとめ

・異物誤飲による消化管損傷の人は病歴ではわからない

→CTで初めて判明することが多い


・原因不明の穿孔・穿通・消化管の炎症を見たら、異物(爪楊枝・魚骨)を疑う

→いろんな断面のCTを見直す


・異物による消化管穿通や穿孔は、内視鏡で摘出し保存的加療で治る症例もある

→ケースバイケースで判断する


2021年7月11日日曜日

朝カンファレンス 〜CTを撮らない努力をどれだけしたか?〜

 35歳 女性 主訴:腹痛

※一部症例は加筆修正を加えてあります)


profile:4年前に胆石発作で救急受診歴あり


セッティング:救急車で来院

ディスカッションポイント:診断

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これまでの情報で何の病気だと思いますか?


まずは若年女性の腹痛となので、

子宮外妊娠を含めた婦人科疾患(卵巣捻転、卵巣出血、PID)を思い浮かべたいですね

あとは胆石発作があることから、また胆石発作の可能性もあります


ただ、若年女性が胆石を起こすのは稀な気もしますね

背景に遺伝性球状赤血球症(HS)がないかは気になります

家族歴を聞いてみたり、データを確認したいですね


HSのピットフォールとしては、貧血がないと鑑別に上がりにくいことです


Hbが下がっていなくても間接Bil上昇とLDH上昇だけの人もいますので、

見つかっていない人もたくさんいます


なんでも体質性黄疸としてはいけません


Hbが正常でも間接Bilが上昇していれば、

末梢血塗抹標本とRetを確認しましょう

そして脾腫の有無を確認しましょう


詳しくは・・・



N Engl J Med 2017;377:1778-84.


ではそんなことを考えながら、救急車で来てもらいましょう

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腹痛の人が救急車でくる場合、痛みが強いとうまく病歴が取れないこともあります

そんな時は患者さんに聞くよりも、
お腹に聞いてみた方が早い場合もあります


いつもの・・・現病歴→身体所見→検査→治療の順序で進まず、

身体所見・検査・治療(対処療法)→現病歴になることもあります


今回はいかがでしたか?


M「今回はそこまで痛みが強くなかったので、普通に現病歴から聞けました」

T「はい、ありがとうございます。」


現病歴の取り方ですが、上手にとれていますね

自分の中の病歴の上手な取り方は、フランス料理のコースを順番に聞いていく感じです


今日は朝何時にご飯を食べて、午前中は何時に仕事に行って、
仕事は何をしていたのか
そして、昼ご飯は何時に誰と何を食べたのか?
その後、午後の仕事はどういった内容で、
何時ごろ、何をしているときにお腹が痛くなったのか?
お腹が痛くなって、その仕事を中断したのか?
仕事を早退して、自宅に戻ったのか?
痛みがあって、どうやって対応したのか?
痛み以外に伴った症状はあったのか?
すぐに病院受診せず、しばらく様子みたのはどういった理由か?
救急車できたのは、移動手段がなかったからか?痛みが強かったからか?
救急車は誰が呼んだのか?
車内で揺られて、痛みが増強したか?


みたいな感じで、今日一日の流れを頭に思い浮かべるように病歴をとります

フランス料理何食べましたか?と聞かれても

お肉とスープとフルーツと・・・
えっと、なんだっけ???

ってなるのと同じで、


前菜は何で、次に出てきたのは何で、
メインは何で・・・

と時間を意識して聞いていくと、人は詳細を語ってくれます


OPQRST2は、ピックアップ問診です


お肉の味はどうでしたか?
スープには何が入っていましたか?
料理の時間は何分かかりましたか?


って言われても答えにくいですよね


病歴をとるときは、ストーリーを描けるようにとりましょう


ストーリーとして病歴をとることができたら、今度は痛みの経過図を頭の中で完成させましょう

図を描けなければ、患者さんと一緒に作りましょう
今回はこんな感じのようです



ずっと痛みはあるみたいですが、時折、突出する痛みが出現します

では身体所見をとっていきましょう



腹痛の身体所見は自発痛と圧痛部位、最強の圧痛点を分けて考えることが大事です


圧痛はないけど、痛みがある部位は放散痛のこともあります
圧痛がある場合、突出する圧痛点がないかを探します


最強の圧痛点があれば、カーネット徴候の出番です


今回は2箇所圧痛点があって、一箇所はカーネット徴候が陽性だったようです


ACNESっぽいですね・・・・


何度も言っていますが、ACNESは他の腹痛の原因に合併することがあるので、ACNESを見つけても他の病気がないとは言えません


さて、この身体所見からどんな鑑別を考えて、次に何をしましょうか?





腹痛と聞くと、すぐにCT撮りたくなってしまっていませんか?


専攻医の先生が名言を言ってくれました
「CTを撮らない努力をあなたはどれだけしたか?」


確かにおっしゃる通りです
若年者への被爆のことを考えると、CTは極力避けたいです


診断をつけることも重要ですが、検査をどれだけ控えるかも同じくらい重要です




抗菌薬のnarrow is beautifulと同じです

診断の世界では、Minimum test  is kindly for  wallet  and  patient ですね



そして、救急の現場ではスピードも大事です

救急の現場に慣れてきたら、診断できたか?
だけを振り返るのではなく、

どれくらいの時間がかかったか?
ということも意識するといいでしょう




はい・・・ということで、今回は鑑別も大事ですが、
マネージメントの順番が非常に重要です



自分だったら、ACNESっぽい所見があるのであれば、
そこにまずはUSを当てます


そうはいっても虫垂炎や卵巣捻転、
子宮外妊娠に伴う腹腔内出血、憩室炎、尿路結石、上行結腸炎、腹直筋血腫がないかを確認します


USで何もなければ、やはりACNESであろうと考え、
皮疹がないかを背部までしっかり確認します


そして、痛みの最強の部位を同定し、局所麻酔のアレルギー歴を聞いて、
本人にACNESという病気を説明して、皮下注射を行います


それで痛みが全て消えてしまえば、ACNESの診断で良いかと思います

この時点で、CTは本人がとても心配であれば撮りますが、
基本は撮らないと思います


痛みが微妙に残っていたり、効果がなければ、CTを撮ります

痩せ型の女性であれば、読影が難しいので、
虫垂や卵巣などの同定のために、造影も考慮します


ということで、自分なら・・・・

1、超音波検査
2、局所麻酔
(効果微妙なら)
3、血液検査+点滴(アセリオ)
4、尿検査(HCG)
5、3と4を待って造影CT

の流れですね


今回は、検査の流れが非常に大事です
漠然と全部やればいいというものではありません

検査はなるべく少なくしないと、患者さんが負担するお金も高くなります
検査は最小限で診断できるのが理想です


実際はどう進みましたか?




はい、実際は採血とルートがとられて、ブスコパンが使われたようですが、

無効だったみたいです

その後、アセリオが投与されました


超音波検査にて右鼠径部の痛みの直下にヘルニア?のような構造物があり、

肥厚した神経?もすぐそばにあったみたいです


他に胆石や腹水などの所見はありませんでした


局所麻酔はその時点では施行されず、尿中HCG陰性を確認してCTへ進んでいます


CTでも右鼠径部に左右差がある鼠径部の構造物があり、

USの所見と同様でした(読影はスルーされていました)


鼠径ヘルニアや閉鎖孔ヘルニアのような所見はなく、

虫垂炎や卵巣腫大、憩室炎はありませんでした



そこで、右鼠径部のヘルニア?構造物?による神経の絞扼が疑われ、

右下腹部の痛みに対して、超音波下に神経周囲のリリースが行われました

リリース後、痛みは消失しました


臍の右側の痛みに対しては、腹直筋と腹直筋鞘のリリースが行われ、

こちらも痛みは消失しました



ということで、どちらも神経絞扼が原因だった症例です


超音波やリリースに長けた先生が一緒だったので、

鮮やかに診断・治療ができていますが、

一般の我々だとこのプラクティスは難しかった気がします 笑



今回は皮下への局所麻酔は行われていませんが、

局所麻酔で痛みが消失したかどうかは、試してもよかった気がします


皮下の局所麻酔なら誰でもできます


局所麻酔で効果がなければ、さらにその下のリリースに進むというのが、

よかったのかなと思います


それにしても、今回の構造物はNuck管だったのでしょうか?

CT画像上は超音波で見られた構造物はとても小さいので、Nuck管なのかは不明ですね・・・



ACNESは浅そうに見えて、奥が深いですね 



神経が絞扼されている原因を突き詰めるというのは、大事な思考です


まとめ
・最強の圧痛点がある場合、腹膜刺激徴候を確認するのは当然だが、
 カーネット徴候も一緒にとる
→陽性(痛みが不変)と強陽性(痛みが増強)を分ける
 強陽性の場合、腹壁に問題があることを強く示唆する

・救急の現場では、検査の段取り・順序も大事
→少ない検査と短時間で診断できるのが、理想
 お金と患者さんに優しい医療を

・ACNESっぽい場合、なぜ神経が絞扼・障害されているかを考える
→皮膚に皮疹がないか、皮下に腫瘤や血腫がないか
 局所麻酔で改善なければ、超音波下でのリリースを検討

2021年7月8日木曜日

尿閉 後半 〜性別と年齢で考えることが違う〜

みなさんがみたことがある尿閉の患者さんはどんな患者ですか?

中年〜高齢の男性がほとんどではないしょうか?


むしろ、若い男性や女性の尿閉に出会ったことがありますか?



尿閉ほど、性別や年齢によって考えることが異なる疾患はないと思います


尿閉マップを頭に思い浮かべておく必要があります



①高齢 ×  男性 の象限

・BPHがほとんどです

・多くは+αが加わって発症します

 +αには、アルコール、薬、感染、血尿、外傷があります

 いわゆる「いつものパターン」です


・他には神経疾患に伴う神経因性膀胱も原因になりますが、

 救急外来では原因までは突き止められないと思います


 多系統萎縮症の頻度が多いことは、識として知っておいてもいいと思います




多系統萎縮症(multiple system atrophy,MSA)  の下部尿路機能障害は、

起立性低血圧よりも高頻度 かつ早期にみられ、運動障害に先行することがあります 

このため MSA の男性患者は、脳神経内科よりも泌尿器科を先に受診し、

MSA の診断が確定する前に前立腺肥大症として手術を受けている場合があります

しかし手術を行っても排尿障害 は改善せず進行してしまい、

数年後にMSAの診断がつく人が多いです



②高齢 ×    女性 の象限

薬が多いです

 特に過活動性膀胱を抑える抗コリン薬に注意が必要です


頑固な便秘(宿便)にも注意が必要です

 摘便で治ります

 尿に管を入れるのではなく、直腸に指を入れてください


・感染:尿道炎、膀胱炎でも起こり得ますが、まれです

・子宮脱なども原因になりますが、見ればわかります



高齢者の象限で注意が必要なのが、帯状疱疹です

腰仙髄領域にできた帯状疱疹が尿閉を合併する人もいます


423人の帯状疱疹の症例では、4%に排尿障害が合併していたという報告があります

腰椎仙髄領域の帯状疱疹に限ると、28.6%に合併するとも言われています


腰仙髄領域の帯状疱疹の場合、4人に1人は排尿障害を伴うと覚えておきましょう


厄介なのが、皮疹がない人がいることです


皮疹出現前に排尿障害が発生する人が14%

皮疹と排尿障害が同時に発生する人が31%

皮疹の後に排尿障害が発生する人が53%

泌尿紀要 60:87-90,2014年


ということで、8割の人は尿閉がある時には皮疹がみられますが、

約2割の人は尿閉の後に皮疹が出現します



「いつものパターン」の尿閉ではない・・・と感じたら、

ぜひ、帯状疱疹かもしれないと思い出してください


そして、

「今後、お尻や太ももにぶつぶつができたら、帯状疱疹なのですぐに来てください」と伝えることが重要です



③若年の象限

・無菌性髄膜炎と診断して入院してもらったら、

 途中から尿が出なくなる人がいます

 MRSと言われています


 知っていれば、びっくりませんが、知らないとびっくりします

 MRSと思ってもADEMではないか?という目で経過観察する必要があります


MRSについて


・若くても前立腺炎を起こす人がいます


・腰椎椎間板ヘルニアや脊髄病変から尿閉になる人もいます

 腰痛の有無は必ずチェックしましょう


・ダウン症のお子さんは尿閉を合併しやすいことが知られています




まとめ

・急性尿閉は性別、年齢で考える疾患が全然違う

→いつものパターンではないと思ったら、

 便秘、帯状疱疹、脊髄病変ではないか?と疑ってみる

尿閉 前半 〜みんなのこだわりポイント〜

 急性尿閉の患者さんを見たことないというお医者さんはいないでしょう

救急に出れば、必ず出会うcommonな症候です


本人の症状は辛いですが、医者としては、

「はいはい、尿閉ですね。尿カテ入れておしまいです。

 後日、泌尿器科受診してください」と楽勝ムードで対応していませんか?


急性尿閉にはいくつか、ピットフォールがあります

急性尿閉を見た時にここは注意している!というこだわりポイントを教えてください



・膀胱直腸障害があるかどうか?

→大事ですね、ただ、どうやって確認しますか?


 全例に直腸診していますか?

 病歴で腰痛があったり、便が我慢できない人は積極的に疑った方がいいですね

 

 ただ、尿閉患者さん全例で直腸診していいと思います

 前立腺炎や前立腺癌、宿便を調べることができるからです

 指の感覚は経験するしかありません

 


・「いつものパターン」で良いか

→そうですね、「いつものパターン」というのは、

 BPHを患っている高齢男性が、夕方にお酒を飲んだり、

 薬を飲んで夜や朝方にやってくる、というのが「いつものパターン」ですね

   

 では、薬は何を聞きますか?



 新しくのみ始めた薬が怪しいです


 新しくのみ始めた薬はない、と言われても、

 「市販や自宅にあった置き薬はのんでいませんか?」

 「吸入薬は使っていますか?」

 「最近、風邪薬や漢方の薬をもらってのんではいませんか?」

 「他の科に通院していませんか?」


という感じで、しつこく聞くことが大事です


「新規に始めた薬はない」と言われてからが勝負です



 抗コリン作用のある薬が代表的ですが、

 忘れがちなのが、

 市販薬、漢方(麻黄が含まれるもの)、

   他科の薬(精神科、泌尿器)、吸入薬(COPD)です



 入院中によくあるのは、不穏で暴れている人にリスパダールを出して、

 さらに不穏になっている


 よくみると、尿閉や便秘の不快感からきている不穏であった・・・


 これはあるあるですので気をつけてください



・膀胱タンポナーデではないか?

→大事ですね。血尿のエピソードがあるので、

 血尿の有無を確認しましょう

 超音波でコアグラがないか確認して、導尿で血尿があれば、

 しっかり洗浄することが重要です

 泌尿器科とも相談しましょう


 コアグラが大きい場合、普通のサイズの尿道カテーテルでは詰まってしまうことがあります

 その場合は洗浄用の三孔式の尿道カテーテルを入れて、

 コアグラをひたすらドレナージします

 その後、3wayバルンカテーテルに交換して持続灌流を行います


 血尿の原因としては出血性膀胱炎、膀胱癌、前立腺がん、抗凝固剤や抗血小板薬、

 出血傾向、シクロホスファミドの治療後、放射線照射後などがあげられます


参考:血尿とショック



・導尿後の利尿に注意する

→そうですね。ありますね。

 尿閉解除後の利尿。閉塞後利尿と呼ばれています


 よくあるのは、近医からひどい急性腎不全です!と紹介があって、

 超音波で確認すると、腎後性腎不全だった


 なんだ〜腎後性じゃん〜

 腎後性は腎機能戻りやすいから、ちょっと安心だね〜

 

 といっていると・・・入院後、5L尿が出ている・・・・


 えーーー

 急に多尿になってるんですけど・・・

 やばい、やばい、腎機能また上がってきているし、輸液しなきゃ〜


 と、どんどん輸液していると・・・・

  

 あれ?これ輸液しているから、多尿が続いているのか?

 どっちなんだ???


 ということになりやすいです


 閉塞後利尿によって多尿となり、必要なinが入らないと腎不全になることもあります

 そしてNaやK排泄によって、電解質異常を呈することもあるので、

 こまめに血液検査を行う必要があります


 たいていは経口の水分補給で対応できますが、

 あまりに多尿なときは、尿量を8時間ごとに評価し、

 その半分の輸液を継続することが提案されていますが、ケースバイケースです

 Hospitalist VOL.5 NO.4 2017.12 



閉塞後利尿について  (日泌尿会誌, 75巻, 1号, 1984年より)

長期間にわたる尿管閉塞の解除後、一過性に多量の利尿を経験することは多い

この現象をpost-obstructiVediuresis(POD)と言うが、はじめて臨床例での報告をしたのはWilsonら(1951)である

稀釈尿であるが、ときに多量のNaが排泄されることもある

ほとんどの症例で2~3日後には自然に尿量が落ちつき

たとえ水とNa のnegative  balanceが続いたとしても意識清明の患者では口喝を満すだけの水分摂取のみでやがて正常の平衡状態にもどる

したがって尿量に合わせてむやみに補液を続けることは

医原性の PODを長引かせることになる



ということで、何も考えず前日の輸液量をdoしていると、一向に治りません

毎日、評価しましょう




閉塞後利尿は入院した患者さんでは経験しますが、

尿閉が主訴で外来に来られた人がその後、閉塞後利尿になっているかをあまり気にしていませんでした


これからは、帰る時に一言伝えようと思います

「この後、大量に尿が出る人もいますので、しっかり水分とってください。

 あまりにも尿が多いときは、点滴が必要な人もいますので、来院してください」



そして導尿後に気をつけることは、一過性の血圧低下を起こすことがあります

そのため、ベッドに寝かせて導尿後、すぐに立ち上がって帰ろうとする、

クラクラして倒れてしまう人がいます


導尿後には一回、血圧は測っておいた方が良いでしょう


最後に導尿後に気をつけることは感染です

悪寒戦慄や発熱があれば、すぐに受診をお願いしましょう





導尿後に気をつけること3つ

1、この後、大量の尿が出る人がいます 

 しっかり水分とってください


2、導尿後、血圧低下する人がいます

 血圧が安定するまで様子みましょう


3、感染を合併する人がいます

 悪寒戦慄や発熱あれば、早めに受診してください




2021年7月4日日曜日

Hypertensive Heatbreak

今回のNEJMのCPSはタイトルで分かりそうですね


まれな疾患のまれなプレゼンテーションですが、

一度、出会うと忘れられない経過です


オススメ度:★★★☆☆


知っておくと、いつか救急外来で出会いそうな疾患ですね


今回はコメントなしです

こちら参考にしてください


 


                 

●慢性膝痛を有する 61 歳の男性が、待機的人工膝関節置換術予定であった

患者は建設現場長であり、生活は活動的で、20年間医療機関の受診はなかった

唯一イブプロフェンのみを内服していた

週に 4  5 杯のアルコール飲料を飲んでいたが、タバコ、違法物質、栄養補助食品等の使用はなし

家族歴には、兄弟に冠動脈疾患を認めた

術前診察では、血圧は178/92 mm Hg で、BMI体格指数  27.3 であった


身体診察は両股関節のみであった。患者は、頭痛、胸痛、息切れ、動悸等がないと報告した

ルーチン検査では異常なく、心電図では軽度の心室内伝導遅延を認めた

本態性高血圧症と診断され、ヒドロクロロチアジドが開始された

その後の外来での血圧は 140/82 mm Hg であった



○高血圧が慢性かは不明であるが、本患者は二次性高血圧原因のスクリーニングは適応でとならない

麻酔ガイドラインでは、過去 12 か月間の血圧の平均が 160/100 mm Hg 未満でのみ待機的手術が推奨されている

ただし、定期的な(longitudinal)血圧記録がない患者では、

血圧が 180/100 mm Hg 未満で待機的手術遅延は不要である

本患者では定期的経過観察がされておらず、慢性疾患の予防的健康診断が推奨されるべきである



●患者は、ブピバカインによる脊椎麻酔とミダゾラムとプロポフォールによる意識下鎮静で、単純左膝関節全置換術が施行された

術前血圧は 168/92 mm Hg 、術中血圧は 120  170 /60-90 mm Hg、心拍数は 60  80/分、酸素飽和度は 95% 以上であった


手術後 1 日目、患者が理学療法士とリハ施行中血圧が 216/99 mm Hg 、心拍数は 141 /あり、呼吸数は 20 /分で酸素投与された

酸素飽和度は 室内気で90% であった

胸部不快感、息切れ、頭痛、高度の疼痛等はなかったと報告した


心電図は、心室性期外収縮、左前枝ブロック、新規右脚ブロックを伴う洞性頻脈を示した ( 1A)

胸部 X 線写真では、右上葉気空間に不明瞭像(hazy opacity)とびまん性血管隆起があり、非対称性肺水腫を示唆する所見であった



○ブピバカインによる脊髄麻酔は、低血圧を(高血圧でなく)惹起する可能性がある

手術中の高血圧は、正常血圧患者よりも高血圧患者でよく見られるが、

術中血圧の急激な上昇では、痛み、低酸素血症、高炭酸ガス血症などの可逆的原因​​を常に考慮する必要がある

体液量過剰、喉頭鏡検査、気管内挿管、降圧薬中止等も、術中高血圧の原因となる可能性がある


重度高血圧 (収縮期血圧、>180 mm Hg) と胸部 X 線での肺水腫所見は高血圧緊急症を示し、二次性高血圧が疑われる

一般に、高血圧緊急症では、迅速な血圧管理を要する急性状態がない限り、

目標降圧は①最初の 1 時間以内に 180/120 mm Hg 未満、②その後 23 時間で 160/110 mm Hg 未満である

この経過(context)での肺水腫は、収縮期または拡張期の心不全による左心系充満圧の急激な上昇を示唆しており、本例では、迅速な降圧を要する状況である

 カテコールアミン過剰は、特に術後の状態で、高血圧緊急症の原因となる

降圧療法の中止、交感神経刺激薬使用、激痛の病歴等は認めなかった

褐色細胞腫はまれな疾患であるが、考慮の必要性がある。  

頭痛、動悸、発汗など、疑わしい症状や徴候に注意しながら、患者の術前の病歴を慎重に検討する

褐色細胞腫の患者では、ドーパミン受容体遮断薬(メトクロプラミド)、抗コリン薬(アトロピン)、カテコールアミン感作性麻酔薬(ハロタンやデスフルラン)、β遮断薬などの薬剤によってカテコールアミン危機(catecholaminergic crisis)が惹起されうる

これらの投薬を避け、血漿メタネフリンまたは 24 時間尿分画メタネフリンの検査を依頼する

また、メタネフリン値が報告されるまでに数日かかる場合があるため、断面画像検査(cross sectional imahing)も検討する



●ヒドララジンの静脈投与とラベタロール 20 mg のボーラス投与が 30 分かけて施行され、血圧は 187/95 mmHg に低下し、患者は集中治療室 (ICU) に入院した

診察上、患者は不快で発汗様で、心音は規則的頻脈で、雑音なし

びまん性ロンカイを聴取した

手術部位は清潔で乾燥しており、四肢も問題なし


HCO3- 17 mmol/lで、AG  26 mmol/lBUN 24 mg/dl(8.5 mmol/l)Cr 2.16 mg/dl (190 μmol/l; 術前基礎値 0.85 mg/dl [75 μmol/l] から乳酸値は 6.8 mmol/L 4 世代トロポニン T  3.96 ng/L 等であった。 


 患者は、高血圧の継続的管理目的にエスモロール点滴に変更した

フロセミドを複数回静注したが、無尿であった

頻呼吸と低酸素血症が急速に進行し、挿管 cisatracurium 鎮静させた

正面の胸部レントゲン写真は、肺水腫所見を認めた ( 2)



挿管後、血圧130/88 mg Hg で、心拍数126/分 回であった

術後 2 日目、ICU 入室約 12 時間後に心停止となり、心肺蘇生が開始された

エピネフリン、重炭酸ナトリウム、塩化カルシウムが投与され、循環が回復した(血圧、127/73 mm Hg)。バンコマイシン、セフェピム、メトロニダゾール、エピネフリン等が開始された。



〇心停止前の患者の四肢冷感、乏尿、乳酸アシドーシス等は、急性左心室機能不全心原性ショックの可能性があり、懸念された。低酸素血症とアシドーシスの進行により心停止が生じた可能性があるが、心電図は、別の原因として心臓伝導疾患を示唆している。



●蘇生後の患者の体温 39.9°C、血圧127/73 mm Hg、心拍123/分 回、呼吸数30/分 であった。酸素飽和度は 94% で、回換気量450 ml、呼気終末陽圧 14 cmH2のボリューム コントロールであった(人工呼吸器から100% の酸素濃度)。WBC 16,900/μlHb 12.0 g/dlPLT 165,000/μlNa 152 mmol/lK  5.1 mmol/lHCO3- 23 mmol/lBUN  40 mg/dl (14.5 mmol/l)Cr 4.62 mg/dl ( 410 μmol/l)INR(国際標準化比)は 4.8AST 26,240 U /l(10  50)ALT 12,080 U/l (10  50)ALP 96 U/l (40 130)T.Bil  2.6 mg/dl (44.5 μmol/l)(0.0  1.0 mg/dl [0.0  17.1 μmol/l])D.Bil 1.1 mg/dl (18.8 μmol/l; 0.0  0.3 mg/dl [0.0  5.1 μmol/L])乳酸 12.9 mmol/l (0.5  2.2)トロポニン T  12.42 ng/ml (<0.01) TSHは正常であった。メタネフリン分画測定目的で尿と血漿が外注された。



〇患者は現在、虚血性肝炎(「ショック肝」)、無尿性腎不全、心筋損傷、難治性低酸素性呼吸不全等の多臓器不全関連ショック状態にある。閉塞性冠動脈疾患を除外目的の経胸壁心エコー検査および冠動脈造影等の心臓評価が必要である。最終的に、低体温療法を開始する必要があり、本患者のように、命令服従、意図的動作等の不可能な患者や神経学的評価不能患者における心停止後の神経学的損傷の最小化で必要である。



低体温療法持続的静脈血液透析(CVVHD)が開始された。心電図は、 1 度房室ブロック、左軸偏位、左脚ブロックを伴う洞調律を示した ( 1B)。経胸壁心エコー検査により、左心室駆出率は 25% であり、局所的変動を伴うびまん性壁運動低下が認められ(中隔が最も壁運動が低下)た。右心室のサイズと機能は正常で、左心房は軽度拡大で、心嚢液貯留はなかった。緊急冠動脈造影では、冠動脈疾患は認められず、左室造影により、心尖部収縮性が保持された壁全体の運動低下を認めた (ビデオ 1)。  右心房圧は 12 mm Hg (0  5)、右心室圧は 29/12 mm Hg (<25/5)、肺動脈圧は 32/23 mm Hg (<25/10)、(肺動脈)平均圧は 27 mm Hg (≤20)、肺毛細血管楔入圧は 17 mm Hg (<12) 等であった。患者が 100% 酸素による人工呼吸を受けている間、肺動脈飽和度は 59% (人工呼吸器100% 酸素投与)であった。フィックの原理で計算された心拍出量と心拍数指数は、6.52 L//mm2対表面積 (4.0  8.0) および3.02 L/ (2.5  4.2) で、全身血管抵抗は 700 dynseccm-58001200)、肺血管抵抗は 123 dynseccm-5<250)であった。



〇急性プラーク破裂や閉塞性冠動脈疾患がないこと、および左心室機能不全のパターン (心尖部収縮性保持+心基部壁運動低下)は、ストレス (たこつぼ心筋症が疑われる。心尖部バルーニング(apical balooning)はストレス性心筋症の最も一般的なパターンあるが、他の症例(いわゆる逆たこつぼ心筋症)では、心尖部壁運動亢進+心基部壁運動低下も報告されている。ストレス性心筋症は、胸痛、呼吸困難、失神等が一般的に出現するが、本患者に見られたように、心不全、頻脈性不整脈、徐脈、突然の心停止、心原性ショック等を発症する可能性もある。右心系および左心系の充満圧上昇は、急性の両室機能不全と合致しており、ストレス性心筋症心停止後の気絶心筋、またはその両方によって説明可能である。ただし、心拍出量が保たれ全身血管抵抗が低下しており、心原性ショック単独というより、分布性ショック+心原性ショック混合状態と合致する。   


 ストレス性心筋症の病態生理の理解は不十分であるが、カテコールアミン過剰、冠動脈痙攣、微小血管機能不全等のすべてが仮定(postulate)されており、特に褐色細胞腫によるカテコールアミン過剰が最も懸念される。一般に、褐色細胞腫が疑われる場合には、画像診断前に生化学検査が推奨されるが、メタネフリンは、検査結果判明までの時間がかかり(slow turnaround time)、昇圧剤とアドレナリン活性上昇等により(カテコールアミン値が)上昇する可能性があるため、重症時は緊急の画像検査が適応となる。CTは、副腎腫瘤診断に高感度であるが、重症の本患者では不可能な場合があり、腹部超音波検査の方が有用な場合があるが(超音波は)感度がかなり低い。



●患者は手術前には無症状で日常生活も全く問題なく活動し、健康上の懸念はほとんどないと(本人が)考えていたと妻が報告した。手術後 3 日目に、間欠的な心室停止を伴う完全ブロック(heart block)が出現し、一時的右室ペーシングが留置された。その後の 2 日間で、ノルエピネフリン、バソプレシン、エピネフリン、フェニレフリン、ドーパミン等による昇圧を試みたが、ショックが進行多臓器不全が生じた。静脈動脈体外膜型酸素化(VAECMO)が集学的ショック チームによって考慮されたが、広範な多臓器不全ではあるが心拍出量は十分であったため、この(VAECMO)治療は不適応と考慮された。彼の血行力学的状態と呼吸状態は超不安定であり、放射線科での断面画像検査室には運搬不可能であった。   


手術後 5 日目に、患者は緩和ケア(comfort care)に移行し、その後まもなく死亡した。剖検では、求心性肥大を示す高血圧性心臓肥大(600 g; 正常範囲、270  360) が認められ、血管痙攣やカテコールアミン毒性を示唆する多発性心筋細胞壊死を認めた ( 3A および 3B)。冠動脈は開存しており、高度アテローム性動脈硬化は認めなかった。左副腎では、最大寸法 11.0 cm  280 g 副腎髄質から生じた固形塊(solid mass)が副腎皮質を圧排していた。肉眼的には、多彩な黄褐色からピンク色の切断面で中心は出血と変性領域を認めた ( 3C)。組織学的には、腫瘍は、中程度から大量の顆粒状の好酸球性両染性細胞質(eosinophilic-amphophilic cytoplasm)と不規則な形状の核を備えた大きな多角形細胞で構成され、頻繁に過色素症、多型、偽包有物が見られた ( 3D)。急性腎障害、肝臓壊死、小腸虚血、びまん性の上部消化管出血等の所見も認め、すべて心原性ショックと合致する。  


血漿中遊離メタネフリンおよび尿中メタネフリン分画の結果は死後に判明し、血漿メタネフリンは 194 nmol/L (正常値 <0.5)血漿ノルメタネフリンは 316 nmol/L (正常値 <0.9) であった。尿中メタネフリン排泄量は68,000 μg/gCr (正常範囲、29  158)、尿中ノルメタネフリン排泄量は52,000 μg/gCr (正常範囲、89  332) であった。


○副腎の病理学的所見および尿および血漿メタネフリン値の著明上昇から、褐色細胞腫と診断される。



解説

●褐色細胞腫は頻繁に議論されるが、非常にまれな副腎の新生物であり、主に中年成人に発生し、男女比は等しく100,000 人年あたり 0.6 の発生率がある1。この希少性と多種類の合併症により、臨床の場での検出(recognition)は困難であるが、本例のように、致命的な結果の可能性を考慮すると、早期の想起が不可欠である。  褐色細胞腫は、種々の臨床症状が他疾患を模倣するため、「偉大な虚構(great masquerader)」と呼称される。ほとんどの患者は典型的な三徴候(頭痛動悸一時的な発汗)を示さず、 10  15% は無症候である 15% は正常血圧であるが、持続性高血圧、発作性高血圧のいずれも認められる。半数以上は、腹部画像検査で腫瘍が偶然発見される。褐色細胞腫は、まれに、心不全、肺水腫、不整脈、腎不全、頭蓋内出血、多臓器不全(multisystem failure)等を生じるカテコールアミン危機として発症する。少数ながら心筋虚血、心筋炎、心筋症、頻脈性不整脈、徐脈などの心血管合併症を発症し、致命的になる可能性がある 3,4。  


●本患者で観察されたように、冠動脈疾患不在の心尖部過壁運動および心基底部と心室中部壁の無運動(akinesis)を呈する左心室機能不全は、ストレス性心筋症の亜型 (逆たこつぼ心筋症を強く示唆する。ストレス性心筋症(古典的たこつぼ心筋症)の最も一般的な形態は、心尖部バルーニングを伴う左心室機能不全を特徴とする。血管痙攣と微小血管虚血を示唆する多発性心筋細胞壊死を示す剖検病理報告書の記載は、この診断(ストレス性心筋症)の強吾な証拠となる。ストレス性心筋症の病態生理は十分には理解されていないが、カテコールアミン過剰と関連する微小血管機能不全および心筋気絶(stunningが関係していると考慮され、感情的ストレス、身体的ストレス、アドレナリン作動性亢進、カテコー​​ルアミン産生腫瘍等が誘因とされる。典型的たこつぼ心筋症と亜型の逆たこつぼ心筋症両者が褐色細胞腫患者で発生した症例報告がある5-7。他疾患の候補(precipitants)がない場合、ストレス性心筋症は即座に考慮すべきである。  



血漿遊離メタネフリンおよび 24 時間尿中分画メタネフリンは、褐色細胞腫の特徴であるカテコールアミン過剰の推奨スクリーニング検査である。 血漿遊離メタネフリンは、超高感度 (95  100%) 高特異度 (85  90%) を有する10 。従来のアッセイでの尿分画メタネフリンの感度と特異度は、血漿遊離メタネフリンよりわずかに低いと報告されているが、質量分析による尿分画メタネフリンは優れた感度 (97%) と特異度 (91%) を有する。随時尿で測定されるメタネフリンとノルメタネフリンはスクリーニングには非推奨であるあが、最近の報告では、これらの測定値(随時尿メタネフリンとノルメタネフリン)と24 時間尿測定値との間には高い相関関係があることが示されている 11 。測定高値例には擬陽性が存在するため解釈には注意が必要である12レボドパ、交感神経刺激薬、三環系抗うつ薬、利尿薬、αおよびβ遮断薬等の医薬品、生理学的および心理的ストレス、急性疾患等はすべて、メタネフリンとカテコールアミン値を上昇させる可能性がある。本患者では、ノルエピネフリンやエピネフリンを含む複数の交感神経刺激薬投与中に検体が採取され、カテコールアミン値が上昇した可能性がある。しかし、本患者でのカテコラミン異常高値は、交感神経刺激薬のみでの説明は不可能である。褐色細胞腫特定目的の画像診断は、生化学検査による診断示唆後にのみ実施すべきとする通常の推奨とは異なり1、( 褐色細胞腫が)強く疑われる重症患者では、(生化学検査結果判明までの長い時間とカテコラミン異常高値が生理学的ストレスと昇圧剤使用に由来することを考慮すれば)、早期の画像診断が推奨される。 造影CTは副腎腫瘍の空間分解能がMRIよりも優れているため、よりも好まれ、他の副腎腫瘍との鑑別にも有用である。10 Hounsfield units(ハウンズフィールド単位)未満 CT 値は、新生物が脂質に富むことを示し、褐色細胞腫が除外可能である。


  

●本患者の壊滅的な結果は、多くの教訓を提供する。患者には術前の膝痛以外の報告はなかったが、剖検所見からは、(今まで)無症候であったことに対する疑義が生じる。頭痛、発汗、動悸等の病歴情報があれば、高血圧の初期評価に影響した(が異なった)可能性がある。さらに、新規での高血圧診断ではあったが、即座の手術決定は、麻酔ガイドライン 13 には合致するものの、術前モニタリングや評価の追加が有用であった可能性もある。αアドレナリン受容体刺激で高血圧クリーゼが誘発または悪化する可能性があるため、褐色細胞腫では、αアドレナリン遮断薬を適切に使用せずにβ遮断薬を静脈投与することは禁忌である。最後に、褐色細胞腫が最初に考慮された際、断面画像診断を施行されていたならば、生前診断が出来た可能性がある。  


 心筋症と多臓器の危機はまれではあるが致命的な褐色細胞腫の症状である。本患者では、病歴の手がかりが欠如していたため、心原性ショック発症までは褐色細胞腫は疑われなかった。早期発見と適切な治療が壊滅的な結果を防ぎうる。本例は、褐色細胞腫(を常に)考慮する重要性を強調している。

 

         診断: 褐色細胞腫によるストレス心筋症




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