2017年8月17日木曜日

皮疹の考え方

今日の症例はとても勉強になりましたね

皮疹の考え方について学ぶいい機会でした


夏の墓参り後に、右腋窩を中心に、

前胸部、腹部、前腕に紅斑を伴う小丘疹が出現してきた48歳男性です

下肢や顔面には皮疹はなく、

小丘疹は全て同じくらいの大きさで、同じ性状

Same phase,same sizeと呼んでいい皮疹でした


このタームでよく言われるのは、単純ヘルペスの皮疹です

種まき理論と言われ、同じタイミングで、芽が出てきた皮疹と考えます


それが今回は身体の中から反応して、この分布をとったのか、

それとも身体の外から何かがこの分布を作り上げたのかが焦点になりました



皮疹は一発診断出来ますが、そのためにはトレーニングが必要です

何枚も皮疹の写真を見続けて勉強するという勉強会が、

皮膚科会ではよくあります


トレーニングすれば、絶対に伸びる分野だと思っているので、

誰でも上達します

研修医でも得意分野になれるところです


ただし、以前にも書きましたが、


写真をみてひたすら頭に叩き込むというトレーニング方法は、

システム1を鍛えているということです

ですがシステム2でも皮疹は考えることができます



変な皮疹をみて、


なんじゃこりゃ?


で思考停止しないために、システム2でも考えられるといいですね


平本先生の完全なるパクリですが、まとめてみました




よくある失敗は最初に皮疹に飛びついてしまうことです


美味しいものは必ず、最後にとっておきましょう


みたい気持ちをぐっとこらえて、

身体中を観察して、

分布を詳細に把握することが、一番重要です


まずは遠目でみるのです


そして近づいて皮疹を詳細に観察します




どんな皮疹でも、湿疹三角に当てはまっていれば、

それはステロイドが適応になる可能性があります

もちろん、感染症の除外は必須です



こんな感じで皮疹を考えれば、

皮疹に出会った時に

自分の想像力が試されていることに気がつきます


今回の症例でいえば、

なぜ、上半身だけ?

そしてなぜ前腕にも出ているのか?

ということがポイントです

例えばウイルスや細菌、薬が身体の中に入り、
免疫を介して、皮疹が出た時に

こんな変な分布になるでしょうか?

おそらくならないでしょう



ということは、外から何かしらの暴露で、

このような皮疹が作られたのではないかと考えることができます


その暴露が一体何だったのか?ということが次のポイントです


服の中に原因があった?

上半身裸で日光浴でもした?

上半身だけ、制汗スプレーでも塗ったのか?

汗に対するアレルギー?

色んな意見が出ました


こうやって色々、想像した上で、皮疹をみると

診断がつきます


皮疹は癒合傾向がありますが、

1つのユニットは紅斑を伴う小丘疹でした

そしてsame phase, same sizeな皮疹です

搔痒感も伴っています


墓参り ➕  夏  ➕ 特徴的な皮疹

の答えは、


毛虫皮膚炎です


多分。


証明は出来ませんが、皮疹はネットで見たものと瓜二つでした


毛虫皮膚炎も勘違いが多い疾患です

毛虫の毛、つまり毒針は目に見えないくらい小さいので、

刺されたことに気がつかない人がほとんどです

空中を浮遊して、いることもあります


毛虫皮膚炎の特徴は


搔痒感を伴う小丘疹で、

分布は上肢に多く、左右は非対称性

集簇している部分と散在している部分があり、

掻破によって皮疹は広がっていく


という事が挙げられます

そして、自分が毛虫に接触したと認識していた人は、

なんと10人中、2人という報告もあります



ちなみに、どうして一回消えたのかということも質問にあがりましたが、

毛虫の種類によっては、一旦出てから引いて、

数時間後に突然、ブワッと出てくるものもあるようです


なので病歴も毛虫皮膚炎を示唆していました



まだまだ夏は続きます


毛虫の好発年月は5〜9月です

まだ出会う可能性がありますので、

次はしっかり対応できるようにしておきましょう


ちなみに対応はセロハンテープで毒針を抜いたり、

シャワーで洗い流すそうです

そしてステロイド塗布です

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