2017年8月27日日曜日

認知症のみかた

認知症の人に出会った時には、3つのパターンがあります


1,いわゆるtreatable dementiaで考える時

最近はtreatableなものでも時間が過ぎてしまえば、treatableではなくなってしまうので、

Potentially reversible dementiaと言います

認知症の人全例で治療出来そうなものの検査を行ってもよいと思いますが、

特に、年齢が若い、進行が早い、時に強く疑います


2,物忘れが酷くなったと家人に連れられてくる時

この場合はtreatable ではない認知症の初期の可能性があり、

詳細な神経診察や種々の検査を行います

ポイントは皮質下症、つまりパーキンソニズムを伴っているかです

パーキンソニズムがあれば、脳血管性やCBD、DLB、PSPを疑います

最初ははっきりしないことも多いので、定期的なフォローが必要です

パーキンソニズムは運動症状よりも非運動症状の方が早くでるので、

そちらの確認も重要です

つまり、REM睡眠行動異常、うつ病、嗅覚障害、便秘を聞きます









上記2つのパターンは認知症診療の王道というか、

よくあるシチュエーションですが、

実はもっとよくあるシチュエーションがあります

それが3つ目のパターンです


3,時間のたった認知症がある入院患者

もはや、いつからか不明で、コミュニケーションもままならない人が

誤嚥性肺炎で入院となった

なんてことは日常茶飯事です


背景の認知症は何であろうか?


と一瞬考えて、ま、いっか。

治療には関係ないし、

認知症に関しては、もう治療出来ないし、

とスルーされるのが普通だと思います


確かに、完成された認知症はもはや診断は不明の事が多いですし、

診断しても意味はないかもしれません


しかし、たまに一発逆転が起こります


DLBの人のアリセプト

パーキンソン病の人のLdopa

橋本脳症の人にステロイド

非痙攣性てんかんの人に抗痙攣薬

副腎不全に対して、ステロイド

甲状腺機能低下に対する甲状腺ホルモン

うつ病患者への抗うつ薬


などで、劇的に改善する人はたまにいます



ご飯も食べなかった認知症の人で、看取りが近いとのことで、引き継いだ人で

背景の認知症はDLBではないかと疑い、

アリセプト少量入れたら、

数日後には食事食べるようになり、自宅に帰った人もいます


どんな人でも、もう遅いと諦めずに、

やはりいつでも治療可能かもしれない疾患への配慮が必要だと思います


場合によってはチャレンジテストのような形でもありだと思います



では、本人からは病歴をしっかりとれない人の認知症をどう診断するか?

家人からの情報も得られない場合は身体診察でパパッとあたりをつけます



自分なりの診察法ですが、

まずは寝ている姿勢をみて、斜めになっていることが多ければ、

パーキンソニズムがあるのではないかと疑います

いわゆる斜め徴候です

そして身体が少しでもピクついてないか確認します

ミオクローヌスを探します

あれば、橋本脳症やCJD、NCSEかもと思いますが、

どんな認知症でも出ることがあるのであまり飛びついてはいけません


そして、自己紹介をしながら、両手を触ります

その時に強制把握があれば、前頭葉の障害を疑い、

続いて手掌を擦り、手掌オトガイ反射を見ます


顔をみたついでに、吸引反射を見ます

そして下顎反射や口輪筋、眼輪筋の反射みます

あれば脳血管性かなと思います


もう一度、手に戻り、強制把握を確認し、rigidityを確認します

なさそうなら、計算をさせて負荷をかけつつ、rigidityをみます


次は足をみます

クローヌスやバビンスキー、チャドックは何もなくても出来るので、

簡単にとってしまいます

あれば脳血管性による錐体路徴候を疑います



こんな感じで、流れるように診察が出来るので、それほど時間はかかりません

完成されてよく分からない認知症のスクリーニングの診察としては

これくらいでいいかなと思います

上記の診察で、何かおかしいと感じれば、ググッと詰めにいきます


0 件のコメント:

コメントを投稿

今さらきけない疑問に答える 学び直し風邪診療

風邪の本といえば、岸田直樹先生や山本舜悟先生の名著があります 自分もこれらの本を何回も読み、臨床に生かしてきた一人です そんな名著がある中で、具先生が風邪の本(自分も末席に加わらせていただきました)を出されるとのことで、とても楽しみにしておりました その反面、何を書くべきか非常に...

人気の投稿