2017年8月15日火曜日

下腿潰瘍

下腿の潰瘍は皮膚科から紹介になることもあります

皮膚や眼科の症状は、全身疾患の一症状として出現する事があり、連携が非常に重要です

下腿潰瘍から、全身疾患、例えば血管炎や結核が見つかる事もあり、
適切にマネージメントしたいものです


下腿潰瘍の多くは静脈弁不全によるうっ滞性皮膚炎の成れの果ての事が多いです

特に立ちっぱなしで仕事をしている人には静脈弁不全は必発で、

個人的な印象では、料理人、特に寿司職人に多い気がします

なので頻度的にいうと、まずは静脈性を疑います


後は場所や潰瘍の深さ、その他の症状、皮膚所見、既往から詰めていきます


場所は下腿の足関節より遠位の場合、静脈性の事は少なく、

静脈性の場合は下腿1/2より遠位、足関節より近位の事がほとんどです

潰瘍の深さは動脈性の方がもちろん深く、辺縁が明瞭な事が多いです

とはいってもクリアカットにこれは、絶対動脈性の性状だから、

静脈性は考えなくてよいとは断言できません

混合性もあるので、静脈性、動脈性どちらの鑑別も考える必要があります

その他の症状として、血管炎を示唆する症状や先行感染、ASOを示唆する所見などなど

結局、鑑別が膨大になるため、全身のROSをとることが重要です

皮疹として探すのは、リベドや触知する紫斑、うっ滞性静脈炎を示唆するような色素沈着や拡張した静脈です

リベド、特にラセモサであれば、皮膚の中〜小血管レベルで血栓が出来たか、
もしくは血管炎が起こっている事を強く疑います

触知する紫斑があれば、IgA血管炎を含めた小血管炎を疑います

小血管炎の場合、ANCA関連血管炎と免疫複合体性血管炎に分けられます

免疫複合体性血管炎の場合、クリオやIgA血管炎をまずは考えます


IgA血管炎は臨床所見にとても幅のある病気で、
多くは薬剤?として見落とされているのではないかと思います

ではなぜ見落とされて問題にならないのでしょうか?

恐らく、IgA血管炎の軽症例では、下肢挙上で軽快する症例もあるため、

生検までされず、結局、勝手に良くなっちゃたけど何だったんだろうね?

で終わっている症例も多いのではないかと思います


しかしIgA血管炎は皮疹が出てから、腎症状や腸管症状が出現する例もあるので、

皮疹が良くなったから、終わりではありません

尿検査や腎機能は少しフォローした方がよいかと思われます


IgA血管炎を疑ったときは、早めの生検が必要です

血管壁からのクリアランスが早いので、なるべく生検時は新しい紫斑を狙います

時間が経ったものだと、IgAが出ない症例もあるので、

時間が経過した症例の病理は解釈が難しくなります


HEでは単一臓器の血管炎であるCLAと区別がつかないので、

直接免疫蛍光染色が鑑別には重要です


下腿潰瘍は多くの鑑別がありますが、ここでも結核が出てきます


バザン硬結性紅斑は潰瘍を作る事があります

結節性紅斑との違いは場所と潰瘍形成です

下腿の屈側に出来た潰瘍は一度はバザン硬結性紅斑を疑いましょう



静脈性や動脈性以外にも
神経性、代謝性、外因性、腫瘍性、血液疾患、感染性、薬剤性、遺伝性、皮膚疾患、

といった様々な鑑別が残ります

本当にいやな症候群ですね


0 件のコメント:

コメントを投稿

今さらきけない疑問に答える 学び直し風邪診療

風邪の本といえば、岸田直樹先生や山本舜悟先生の名著があります 自分もこれらの本を何回も読み、臨床に生かしてきた一人です そんな名著がある中で、具先生が風邪の本(自分も末席に加わらせていただきました)を出されるとのことで、とても楽しみにしておりました その反面、何を書くべきか非常に...

人気の投稿