2017年10月21日土曜日

失神と痙攣

人は間違います

医者は誤診します


その原因は色々あって、

こうあって欲しいという心理的なバイアスがその一つです


この病気だったら、

帰せるし、フォローもいらないし、

患者さんも医者もハッピー


という気持ちがあったりすると、

その病気に当てはまるような情報を自然に集め、

当てはまらないような情報は、スルーしてしまい、

自分で正しいと思い込もうとしてしまいます


そんな時は、

何となく、診断が間違っているんじゃないか、

と深層心理で感じる事は多々あります

ですがこの思考を払拭するのは、わかっていても大変です


失神の場合は、いつもいつも、てんかん発作だったんじゃないか

ということが鑑別になりますが、

神経調節性失神だったらいいのに

と心で思いながら、診療をしてしまいます


例えば、若い男性が仕事中に意識を失って


救急車できた時を考えてみると、、、



病院に来てもまだ少しぼーっとしている

意識消失後の朦朧が長いのは、てんかん発作っぽいけど、

病歴だと、座って立ち上がった後だし、

起立性低血圧なんじゃないか?


目撃者は手をガサガサしていたって言ってるけど、

本人は自分で動かしてたって言っているし、

痙攣発作とは言えないんじゃないかな


もし、てんかん発作だったら、

この若者から運転免許を取り上げなければならないし、


医者としても辛いし、患者さんも辛い


うん、今回は仕事で疲れてたって言ってるし、


仕事中、何だか気持ち悪くなったって言っているし、


ちょっとよく分かんないところもあるけど、

神経調節性失神か起立性低血圧ってことで間違いない!


今日は帰ってもいいです

何かあったらまた来てね



みたいな感じで、自分がこうあって欲しい

という診断に、いつの間にか、

深層の自分が自分を誘導してしまう事はよくあります


しかし、それは全く患者さんの為にはなっていません

てんかんを見逃されて、ハッピーな訳ないです

患者さんからしたら、誤診されただけで、いい迷惑です




どうすれば防げるか?


これは前回の失神の病歴で、出てきた多人数がkeyです

病歴は多人数からとったほうがよいですが、

診断も多人数で行った方が間違いは少ないです


それは優秀な指導医がいるいない

という事は関係なく、

自分が声に出すか出さないかが重要です


声に出して、他人にプレゼンしてみると

自分の思考がよくわかります


ひどい時は、自分で喋っていて、完全に矛盾していることを口走り出します

自分も喋っていて、何でこんなこと話しているのだろう

と恥ずかしくなることさえあります


Out putすると、自分を見つめなおすことができ、

自分が深層の自分に誘導されていた事に気がつくことができます


そして、おまけで指導医のコメントも聞けます



そうですよね


意識朦朧しすぎですよね


この文脈で、ガタガタ動いていたら、

それは痙攣発作ですよね


みたいな感じで、我に帰ります




なので、一人で診療している、もしくはプレゼンをしなくなってきた

という人は黄色信号です




失神と痙攣の違いは知識としてはもちろん知っておいた方がよいです


ただ、本当に間違える時は、

知識レベルの問題ではなく、

バイアスによって起こることも知っておいた方がよいです





頭の中では綱引き状態です

ただ、心理的には失神であって欲しいと

思ってしまっているので、


どちらかというと、

最初から痙攣側に贔屓していた方がよいかもしれません


これは自分の思考の癖であり、

一人一人違うものです


思考の癖を早く掴むことが、

誤診を防ぐコツになります


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