2017年10月18日水曜日

Road to RCVS

救急外来での主訴頭痛というのは、

意外に研修医にとっては、苦手意識は少ない

まずはくも膜下出血除外のために頭部CTを撮る事が多く、

あまり深く考えず、ややパターン化されている印象がある


確かに、突然発症の病歴じゃなくても、くも膜下出血のこともあるし、

意識消失が主訴のくも膜下出血もあるし、

若い人でもくも膜下出血を発症する人はいる


閾値を低くCTを撮るという事は、くも膜下出血の見逃しが減るかもしれない

しかし、CTでくも膜下出血がうつっているのに、

見逃されてしまうケースが増える可能性がある


本気ではなく、頭痛だから、めまいだから、失神したから

という鑑別なしで、念のために撮ったCTほど危ないものはない


これは感染症の世界でいうところの

固有の菌名があげられなければ、抗生剤を入れてはいけない

のと全くおなじで、

固有の疾患を疑っていると言えなければ、CTはとるべきではない


そういう時は、本気ではくも膜下出血を疑っていないので、

読影が甘くなってしまう危険がある


なので、患者の不安を払拭したり、患者の希望に沿うというメリットもあるので、

記念CTをとる事はあるとは思うが、

そういう時こそ、読影が甘くなっていることに、自分が気づかなければならない



絶対くも膜下出血に違いない!

と思ってCTをとれば、

どこかに出血があるはずだ!逆に、くも膜下出血じゃなかったら、何の病気なんだ?

ということになり、目を皿のようにして、出血を探すであろう



さて、ここからが本番

くも膜下出血の典型的な病歴なのに、

頭部CTで異常がない

あれ?困った



1,頭部CT陰性のくも膜下出血

2,そもそもくも膜下出血ではない病気


の2パターンを考えないといけない


ここで、研修医は雷鳴様頭痛という言葉を思い出し、

Uptodateなどを見ながら、鑑別をあげていく


そこでよく鑑別に出てくるのが、

RCVS、椎骨動脈解離、脳静脈洞血栓症、下垂体卒中である


他にもあるが、上記をまずはおさえておく必要がある


上記はMRIで診断する事が多いが、

いずれも狙わないとMRIをとっても見落とす可能性がある

そもそも撮り方を工夫しないといけないものばかりである



RCVSの場合は末梢の脳血管までMRAをとってもらわないといけない

RCVSは血管が攣縮する疾患だが、中枢側よりも末梢から攣縮するといわれている

一度、RCVSを見ると何でもかんでもRCVSに見えてしまうが、

しっかり他の疾患を除外する事が重要である



椎骨動脈解離はBPASも加えてもらう必要がある


静脈洞血栓症を頭痛だけで疑うかは議論のあるところではあるが、

疑ったら、SWIやMRVを追加しないといけない


下垂体卒中も下垂体を狙って撮らないと見逃す事がある


なので、2の流れで進めると、病歴だけでは難しければ、

結局MRIが必要な疾患が残る事が多い


救急ですぐにMRIを撮れなければ入院で経過をみるしかないと思う





1の流れで進めると

次にやることは、ルンバールである

しかし普通に考えて、痛み刺激や光刺激ですら

はばかられるくも膜下出血なのに、

腰に針を刺すという刺激はよいのであろうか

それで再破裂した症例はないのであろうか

というのが、長年の疑問であった


この疑問にストレートに答えをくれる文献がないので、


これこそエキスパートの意見やローカルルールを決めないといけない問題だと思う


個人的には、2の流れもあるので、MRIに進む事が多い


それで動脈瘤も探せるし、くも膜下出血も探す事ができる

MRIとCTでくも膜下出血がわかならなくて、ルンバールでわかった

という症例報告も実際にあるが、やはり症例報告もので稀である

Journal of Japanese Congress on Neurological Emergencies (2014) Vol. 26 : 32-37


結局どうしても分からなければ、脳外科の先生と相談するのがいいと思う

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