70代 男性の不明熱
前半は救急外来での対応、後半は不明熱のアプローチのいい復習になりました
救急外来で担当したら、咽頭痛と発熱のカテゴリーで考え、感染症から検索に行くのが重要です
killer sore throatの鑑別で進めていくと良いですね
後半は頸部リンパ節腫脹と不明熱のカテゴリーでした
安易に抗生剤きりがちですが、本当に切っても大丈夫か?は考えなければなりませんね
不明熱は時間との勝負です
不明熱のemergencyになる疾患の除外をしつつ、感染症・腫瘍・膠原病の流れで考えていきます
感染症ではIE、結核、慢性EBV、梅毒、CMVが鑑別ですが、今回の症例多分違うでしょう
外堀を埋めるイメージで除外していきます
ただし、TBは除外できませんので、頭の片隅に置いておきます
腫瘍ではリンパ腫(IVL、AITL、Bcell系)、リンパ増殖性疾患(サルコ、IgG4、キャッスルマン、TAFRO)が疑われます
ここの鑑別は取るもの取るしかないので、取れそうなものがあればさっさと取るのが大事です
自分で取れるもの(マルク)は早々にしてしまいます
MDSがらみの不明熱は他のmimicになりやすいので、早々に検索にいきたいのが理由です
他の検体(皮膚、リンパ節、肝臓、脾臓、側頭動脈、TBLBなど)は自分では取れないので、
とってほしいことをいかに相手に伝えるかが重要です
同じ施設なら自分への信頼もあり話がスムーズですが、
信頼がない状況(研修医の先生や他院へ出向中)では、
患者さんの状態がこのままだとよろしくないことや自分の考えをしっかりと伝えて、
生検の必要性を理解していただく必要があります
生検で提出するもの(TBのPCRや抗酸菌培養)、フロサイトメトリー、細菌培養など、
事前に打ち合わせておく必要があります
とったら、全てホルマリン固定に入れると細菌学的な検索が不可能になってしまいます
TAFROに限らず、リンパ腫も徐々に衰弱し、血小板が下がってきます
炎症性疾患の行き着く先は、血球貪食症候群です
血小板が下がると身動きが取れなくなるので、下がる前に取るものと取ることが重要です
自分の経験では外来でリンパ腫を疑って、血小板も10万近くあったので数日後に予定入院でマルクをしたことがありました
入院で病棟に上がってからすぐにマルクをしたら、穿刺部からの血が止まりにくくて、
穿刺した瞬間に血球貪食になって血小板が下がっている!生検は危ない・・・と直感したことがありました
案の定、血小板が急激に下がっていて、血球貪食になっており、
未診断でしたが、ステロイドでダメージコントロールtherapyに進んだ症例もあります
マルクなら自分でできますが、リンパ節や肝臓や脾臓を刺してもらうハードルを上げてはいけませんので、
血小板が保たれている間に早めにお願いしておくのがポイントです
不明熱の治療に関しては、3つの武器が印象的でした
抗生剤、ステロイド、IL6阻害
どこで、どの武器を使うかを考えなければなりません
point of no returnが来る前にそれぞれの治療を開始します
その見極めが体液貯留(腹水、胸水、浮腫)や血小板減少、食事量低下、見た目の悪さなど総合的な判断が求められます
TAFRO Switchとよく言われますが、どこでTAFROと診断して、えいや!と治療するかが悩ましいです
その Switchを押すのは、一人ではなくみんなと一緒に押すべきです
TAFROの診断はリンパ節をとってもすぐにはできません
生検後にどれくらい時間が残されているかが重要です
生検が終わったら、いつでも治療できるように待ち構えます
ステロイド入れるので、HBVやTB、副腎不全、感染の除外といった外堀を埋める作業をしておきます
詰将棋のように、もうTAFROかキャッスルマン、サルコイドーシス、リンパ腫しかない!という状況に持っていって、あとは生検が答えをくれるはず!みたいな感じで、ステロイドを入れます
抗生剤のエンピリック治療みたいな感じですね
あとでde-escalationするように、診断がつけばそれぞれの疾患に対してのtaeget therapyに移ります
もちろん待てるなら、待ったほうが良いです
生検がnegativeだった時のことも考えておきます
不明熱診療は詰め将棋のような感じで(詰め将棋したことない人すいません)、
次こうきたら、こうしよう。それがダメだったらこうしよう。
みたいな感じで何手先までも考えておきます
検査と治療の両方を考えます
実際には、途中で新しい所見が出ないかをひたすら待ちつつ、患者さんと家族に現状を丁寧に伝え、
励ましつつ、自分の今後のプランを伝えることが安心に繋がります
患者さんも家族も不安でいっぱいなので、容易に医療不信に繋がり主治医を交代させられたり、
セカンドオピニオンを希望される方もたくさんいます
二人三脚のイメージで一緒に進んでいくことが重要です
患者さんからの信頼がなければ、生検はできません
不明熱診療で一番求められるのは中腰力です
診断がついていない不安定さに耐えなければいけません
正直、とても辛いです
そして、周りの先生方を上手に使うためには、指揮者としての立ち振る舞いが必要です
現状は知らない音楽団にいきなりいって、オーケストラの指揮しなさいと言われているくらい大変な状況です
大変な状況ですが、患者さんのために汗流して頑張ってください
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