2019年5月28日火曜日

腎硬塞

腎梗塞は忘れた時にやってきます


発作性心房細動があり、NOAC内服中でしたが、

コンプライアンスが悪く、脳梗塞を発症してしまった高齢男性がいました

梗塞内に出血も伴い、やむなく、NOACは中止となりました


そろそろ、出血もおさまったり、NOACを再開しようとしていた矢先、

やたらと、腎機能がベースより悪化していました



あれ??


腎機能悪化させる薬剤いれたかな? 

→入れていません


脱水になる要素はあるかな?

→しっかり、食事食べています


エダラボンでも入れたかな?

→入れてません


腎後性?

→尿はでています



ということで、よくよく血液検査をみると、

LDHがやたらと上がっているではありませんか


もちろん、貧血の進行はなく、Bilも上がっていません

CKもあがっていません


ASTとALTは、LDHに引きずられて少々上がっていますが、

LDHの上がりのほうが大きいです


となると、snap diagnosisできます


抗凝固していないAfがあり、LDH上昇を伴ったAKIとくれば、

腎梗塞しかありません


入院中にもこのように発症しますが、

入院中はいろんな原因で腎機能が悪化しますので、

見過ごされていることも多いのではないでしょうか


腎梗塞を早期に診断できたのは、半分以下だったという報告もあり、

腎梗塞は見過ごされやすい疾患の一つです


特に急性の背部痛や側腹部痛を主訴に来院されるため、

尿路結石と間違えられてしまいます


また発熱や膿尿、CVA叩打痛も陽性となり、

腎盂腎炎とも間違られます


LDHを測定しておらず、ASTやALTのみ測定していると、

原因不明の肝障害と誤診してしまうこともあります



一度、経験すると、腎梗塞にしか見えてきませんが、

稀な疾患のため、すぐに忘れてしまいます


なので、たまに思い出しましょう




腎梗塞の原因


たくさんありますが、

ダントツで多いのは、Afからの塞栓です


他に、コレステロール塞栓も原因になりますが、

コレステロール塞栓は本幹ではなく、末端で詰まることが多いので、

ややプレゼンテーションが異なります


コレステロール塞栓を疑った時は、

Blue toe や好酸球上昇を意識的に探しに行きましょう


腎梗塞の治療

とりあえず、ヘパリンですが、

発症して間もなければ、血栓溶解療法や血管内治療も検討されます

脳梗塞と違って、何時間以内がよいかは、よくわかっていませんが、

症例報告レベルでは多数の予後改善の報告があります


この辺は、施設のマンパワーや施設の方針によると思われます





腎梗塞のpit fallです


一番のpit fallは、LDHの上昇がないことを理由に、

腎梗塞を否定してしまうことです

LDHの上昇は発症して間もなければ、まだみられません

心筋梗塞のトロポニンと一緒です


なので、尿路結石を疑い単純CTをとったが、

石がない場合に、

次に考えることは造影CTです

その前に、腎機能の確認のため、採血を行いますが、

そこで、LDHの上昇がなくても、いいんです


あれ、LDHがあがっていないから、腎梗塞ではないのかな?

と思う必要はありません

翌日には、上がります




腎梗塞まとめ
・診断した時は、腎梗塞にしか見えないので、
 診断は簡単に思ってしまう

・しかし、尿路結石っぽい人の中にこっそり、
 隠れているので、忙しい救急の現場だと、
 鑑別から抜け落ちてしまう

・思いつくポイントは、
 「石がなかった尿路結石疑い患者」
 「解離がなかった大動脈解離疑い患者」
 「やたら痛がる腎盂腎炎疑い患者」
 「LDHの単独上昇を伴うAKI」
 「単純CTで原因不明の腹痛

・原因は心原性が多いので、
 とりあえず、Afがみつかっていなければ、
 Afを探しましょう

・治療は抗凝固が絶対で、
 血栓溶解や血管内はcase by caseです



1 件のコメント:

今さらきけない疑問に答える 学び直し風邪診療

風邪の本といえば、岸田直樹先生や山本舜悟先生の名著があります 自分もこれらの本を何回も読み、臨床に生かしてきた一人です そんな名著がある中で、具先生が風邪の本(自分も末席に加わらせていただきました)を出されるとのことで、とても楽しみにしておりました その反面、何を書くべきか非常に...

人気の投稿