2019年6月30日日曜日

多発性肝嚢胞をみたら

PCLD(Polycystic liver disease)は、

CT、超音波検査にて、15以上の肝嚢胞が確認されるもので、

肝内胆管の形成異常のため、発症する遺伝性疾患です


たまにやたらと、肝臓の嚢胞が多い人っていますよね


ただ、肝嚢胞があっても症状のない人が多いので、

偶然、健診や他の目的でとったCTでみつかることが多いかと思われます


そんな多発する肝嚢胞を見た時のまとめです


多発性肝嚢胞性疾患(PCLD)は、大きく二つあります


①肝嚢胞あり、腎嚢胞あり  → ADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)


②肝嚢胞あり、腎嚢胞なし  → ADPLD(常染色体優性多発肝嚢胞性疾患)


ADPKDは有名ですよね

遺伝性の腎疾患で最も頻度が多く、なじみがあるかと思います

頻度は3000人に一人と言われています 


ADPKDも腎臓だけでなく、肝臓に多発する嚢胞を作りますが、

こちらは、末期腎不全で亡くなることが多い疾患です


一方、ADPLDは腎嚢胞はできませんので、

腎不全にはなりません


ADPKDとADPLDの違い

ADPLDは10万人に一人なので、ADPKDに比べれば、稀な疾患です

ですが、ADPKDは末期腎不全というゴールがあるため、

必ず腎臓内科の目に触れますが、

ADPLDは無症状であり、肝障害もほとんどないため、

生前には気が付かず、

亡くなってから見つかる人も多い疾患です

そのため、頻度はもっと多くなると思っています



ADPKDは、腎不全にもなりますし、

脳動脈瘤や大腸の憩室、心臓の僧帽弁異常をきたしますが、

ADPLDは、そういったことは起こしません


ADPLDの患者さんは、基本無症状ですが、

3%に重度な症状がでることがあります



肝嚢胞はどちらの疾患も、

女性がリスクファクターになっており、

エストロゲンが悪さをしているようです


経産婦やエストロゲン製剤を内服していると、

増大傾向になります


そのため、症状がある多発性肝嚢疾患の割合は、

圧倒的に女性に多いのが特徴です


腎嚢胞にはエストロゲンは関係しません




多発性肝嚢胞の分類

Giagot分類がよく使われますが、

他の分類もあります

Qian分類やSchnelldorfer分類が有用の時もあります


治療方針の決定にもなりますので、

Schnelldorfer分類が総合的で、よいかと思われます


Giagot分類




Schnelldorfer分類



多発性肝嚢胞疾患の治療

希少な疾患のため、疾患の自然史がよく分かっていませんが、

症状がなければ、治療しないというのは、ルールのようです


症状がある場合に限り、治療を行います


まずは、エストロゲン製剤を使っていれば、中止します

内服薬では、ソマトスタチンアナログ製剤がありますが、

保険適応外です



多発性の肝嚢胞は、動脈から血流を得ており、門脈からは血流はないので、

TAEで嚢胞の縮小効果があります




多発性肝嚢胞性疾患(PCLD)まとめ

・遺伝性疾患であり、ADPKDとADPLDがある
→腎に多発する嚢胞があれば、ADPKD
 頻度もADPKDの方が多い


・ADPLDは、脳動脈瘤や弁異常、大腸憩室は合併しない
→ルーチンでの検索は不要


・肝臓に膿疱が多発していても、ほとんど無症状
→症状がある時にのみ、治療する

参考文献:Journal of Visceral Surgery(2018)155,471-481
          Aliment Pharmacol Ther 2011;34:702-713
          多発性肝嚢胞ガイドライン 



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