2023年5月14日日曜日

病棟でカルテを書けば10倍いい仕事ができるよ

「病棟でカルテを書けば10倍いい仕事ができるよ」


という言葉を最近、思い出します・・・




近年は電子カルテの普及によって、いつでもどこでもカルテをかけるようになりました

電子カルテの前はいわゆる「紙カルテ」です


紙カルテは使い勝手が非常に悪いです


誰かが書いている時は、カルテが見当たらなくて書き込めません

どこにあるかもよく分かりません


もちろん、書くという行為が面倒で時間がとられます

そして、字が汚いと何て書いてあるかわからない・・・


検索機能なんてありませんし、以前の情報を探すのが一苦労です



ただメリットもあります


看護師さんやコメディカルとのコミュニケーションが頻繁になります

必ず病棟に行って書き込みますし、紙のカルテ情報だけではやりとりが難しいためです


そしてカルテに書き込む内容も厳選されます


余計なこと書いている時間はありません

必要最低限のことだけ書いてあります



電子カルテになった今はどうでしょうか?

コピペしまくってはいませんか?



患者さんに会う時間、カルテを書いている時間、

カルテを見ている時間、病棟にいる時間・・・


どの時間が長くなり、どの時間が短くなったでしょうか



患者さんの顔を見ている時間よりも、電子カルテの画面情報を見ている時間の方が、

何倍も多いのではないでしょうか?



もちろん、患者さんの医学情報を隅々まで確認しておくことは大事です


「患者さんのカルテは全部見ましたか?」


と指導される指導医の先生もおられます


カルテ情報が重要であるということに異論はありません



ですが、患者さんの顔は思い出せないけど、

病気と画像は頭に入っているような状況になっていませんか?



ベッドサイドに行っても患者さんは認知症があったり、寝たきりの人も多く、

コミュニケーションがとれない人も多いです


ですが、それは言語的なコミュニケーションです

言葉が使えない人とは、非言語的なコミュニケーションで対話します


言葉以外のコミュニケーション能力を鍛えることが、

身体診察を上達させる上では重要です


いつもより、

辛そうな表情だなあ・・・

呼吸が少し荒いかな・・・

手足の動きが鈍いな・・・

呼びかけに反応が悪いな・・・

足先がチアノーゼだ・・・

熱っぽいな・・・


全て身体所見です


患者さんの言葉ではないメッセージを読み取るのが

身体診察の極意だと思っています



カルテが中心になってしまうと、

入院中の患者さんの「いつもと違う」に気がつけないかもしれません



思い返してみると、医師としての成長や勉強になった場面は、

いつもベッドサイドでの診察です


そして診療で迷った時の答えも患者さんの中にあります



「患者さんに何が起きているか分からない時には、

 とりあえず、患者さんの傍にいるんだよ」


と教えてくれた医師がいました


本当にその通りだと思います


その意味が心から納得できるまでには、少し時間が必要かもしれません



病院によっては、個人にノート型の電子カルテを渡され、

いつでもどこでも、電子カルテを使うことができます


そうすると、どうなるでしょうか?


診察後にカルテをすぐに書くという「即時性」が失われます

いつでも書けるという心理が働くためです


そして病棟でカルテを書く習慣がなくなります

どこでも書けるためです


すると看護師さんとのコミュニケーションの機会が減ります


病棟にいる時間が多ければ、看護師さんから声をかけてもらえます

患者さんの些細な変化であっても、声をかけてもらえるのはありがたいことです



他職種とのコミュニケーションは、

性格とか、人見知りとか、そういったことよりも、

そこにいるかどうかの方がはるかに大事です



自分は受け取った個人型のノート型の電子カルテは、

そっと医局秘書さんに返しました



研修医の先生方、病棟でお会いしましょう


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