2023年5月17日水曜日

面談で大事にしていること

自分のチームに来てくれる先生に伝えたいことはたくさんあります


診断、病歴の取り方、身体所見、症候学、カルテの書き方、脳波や画像の読み方・・・

伝えたいことは山ほどありますが、最近は厳選しています


自分が一番大切にしていること、こだわっていることを優先的に伝えようと思っています


それは患者さんや家族との「面談」です



医師の成長の機会は、

P(プレゼン)、D(ディスカッション)、F(フィードバック)です


面談も実は、PDFだということに最近気がつきました


家族へのプレゼン:病状説明

家族や多職種とのディスカッション:ACPやSDM、多職種カンファ

指導医や多職種からのフィードバック:面談後の振り返り


になっているのです



面談力には医師の力が凝集されています



話す言葉やスピードは適切か?

診断プロセスをわかりやすく、話せているか?

そのプロセスは論理的か?

治療は患者さんの意向に沿っているか?(SDM)

procedure oriented で話しているか?goal orientedか?(ACP)

威圧的な態度でないか?患者さんの感情に寄り添っているか?(NURSE)

時折、ユーモアはまじえているか?(ユーモアスキル)

参加している全員に気を配れているか?(ファシリテーション)


・・・などなど


面談にはコミュニケーションスキルだけでなく、診断過程を開示したり、

治療法や予後についての知識を共有したり、医師としての全ての能力が問われる場面です


たまに、面談のことをムンテラやIC、教育という先生を見かけますが、

個人的には、どの言葉も適切であるとは思いません


実際に行っていることと、その言葉の定義に解離があるためです





面談については、誰も教えてくれません

というよりも誰も教えられません


誰も教わっておらず、先輩の背中をみて育ち、

いい意味でも、悪い意味でも「適当に」面談をこなしてきたのだと思います



自分ももちろん、そうでした


何をどうやって話したらいいか、分からない・・・

何が正解なんだ???



自分自身がとても苦労したので、自分の型を一回作ってしまって、

それをブラッシュアップさせることにしました


研修医の先生達が困らないようになるべく言語化して、伝えています



面談の方法について近年、多くの本が出ていることは、

それだけニーズが高まってきた証拠だと思います


面談に自信のない人はぜひ一度、自分なりの型を身につけてみてください




面談の質は患者さんのアウトカムに影響すると常々思っています


面談によって得られるものはたくさんありますが、

一番は患者さんや家族との信頼関係です



信頼関係を築くためには、3つ重要なものがあると思っています


それは、面談の質、寄り添った時間、

患者さん・家族の理想とするアウトカムです


時間がなくても信頼関係は結べます

面談の内容次第です



救急外来でCPAになり、ROSCしたものの、

再度CPAになりそうな人がいるときに必要なのは、緊急ACPと緊急グリーフケアです


時間がないからこそ、面談の質が求められます



面談力が圧倒的な先生は存在します(面談力というよりは、人間力ですかね)



いつまた心肺停止になるかもわからず、家族は動揺しています

そんな緊迫した場面にも関わらず、救急で初めて出会った患者さんの家族の心を癒し、

「先生に出会えて良かった」と言って、笑顔で泣いているご家族と医師の姿を目にしたことがあります



衝撃的でした


その時から、信頼関係を結ぶために必要なのは、時間ではないのだ

ということを強烈に意識するようになりました




ですが、思ったところで、いきなり面談が劇的に上手になることはありません


自分にできることは、なるべく頻回に面談するという時間を使うことでした


例えば、ICUに入った患者さんは特別な理由がない限りは、毎日面談すると決めています


「医者の仕事の半分は面談だから」

と言ってくれた指導医の言葉を思い出しながら、dutyがない時間は面談で埋めてきました



こまめに面談を行うことで、ご家族から嫌がられることはありません

ちょっと面談頻度多いかな?くらいがちょうどいいかもしれません




面談後は、ご家族とともに患者さんのもとに行って、

患者さんとご家族との関係を垣間見ながら、

その時間と空間を共有するようにしています


この場面で色々な発見があることが多いので、とてもおすすめです



面談の具体的な流れは上記のイラストですが、

面談時に意識している抽象的なイメージがあります


それは、患者さんやご家族と自分の波長を合わせるということです


治療の方向性を合わせるという認知データ的な部分は大事ですが、

感情や精神的なところで、相手の波長に合わせるのはもっと大事です


いわゆる共感と呼ばれるものです


相手の波長に合わせて、話し方や話す内容、相槌の仕方を変えています



勘違いしないでいただきたいのは、

テクニックやスキルを用いて、いい面談をしましょうということではありません

頻繁にやればいいというわけでもありません


心を込めて行いましょう、ということです



大切なことは、どれだけたくさんのことをしたかではありません

どれだけ心を込めたかです


マザーテレサの言葉の通りです



患者さんをどれだけたくさん診たかが大事なのではありません

どれだけ心を込めて患者さんに向き合えたかの方が大事です



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