腸閉塞後の嘔吐による 重症肺炎で挿管・人工呼吸器管理中の93歳男性
(※症例は修正・加筆を加えてあります)
もともとはADL自立しており、認知機能も問題なし
既往に慢性心不全、高血圧、CKDがあり、近医通院中
来院当日に嘔吐があり、救急外来受診
CTにて内ヘルニアから腸閉塞の診断で緊急手術の方針となった
手術を待っている間に大量嘔吐による誤嚥性肺炎を発症
その後、挿管・人工呼吸器管理となり、手術が行われた
手術所見は腸は壊死しておらず、腸切除は施行されず
整復後、ヘルニア門を閉じて手術終了となった
<ICU 入室時から7日目>
入室後の呼吸状態は重症肺炎・ARDS(P/F 100以下)の状況であり、
換気量少なめでPEEP高めで管理
しかし、吸気圧を高めに設定しないと、換気量が保てず
最高気道内圧が高めであり、肺の硬さの原因を探った
A/CのVCモードに変えて、吸気ポーズを行ないプラトー圧をチェック
肺のコンプライアンスの問題か、気道の問題かを確かめた
結果はプラトー圧が高めであり、肺のコンプライアンス低下と判断
やはりARDSの病態なのであろう
換気量が少ないためか、呼吸回数は28-32回と頻呼吸の状態
鎮静や鎮痛を増やしても、頻呼吸の状態が続いていた
乳酸が6と高値であり、呼吸性に代償をしようとしている状況
この状況でCO2をあげてしまうと、一気にアシデミアに傾いてしまうので危険であり、
換気回数がやや多いのは致し方ないと考えた
それよりも乳酸高値をどうにかしないといけない
乳酸を下げれば、呼吸努力も下がるであろう
術後はNAを0.2γで使用しつつ、Volumeも入れて管理していたが、MAP65前後と低めを推移
mottling score 2、CRT 10秒、無尿の状況が続き、微小循環障害を反映した乳酸上昇と考えられた
乳酸上昇は腸が壊死してしまった可能性も考慮したが、
肺炎からの敗血症性ショックの要素が大きく、まずは循環を立て直すことが先決
もちろん、VB1は補充
抗生剤はTAZ/PIPCで治療中
mini fluid challenge testや下肢挙上、SVV、IVC、末梢の皮膚をみて循環の評価を行い、
Volumeが圧倒的に足りていないと判断し、volume追加
腸管血流は良好とはいえず、ピトレシンの導入は行わず
ステロイドの併用も行わず
輸液負荷にて乳酸は少しずつ下がっていき、頻呼吸も改善していった
ICU2日目、volumeもかなり入り、MAPは70前後と保たれていたが、
徐々にMAPが低下し、mottling score拡大
CRTも5秒に戻っていたが、また10秒近く悪化傾向
乳酸も5まで上昇し、NAも上がっていった
NOMIと腹部コンパートメントが怖い状況であり、膀胱内圧測定
膀胱内圧15とやや高めではあったが、まだ様子みても良さそうな値であった
NOMIから腸が壊死した状況が頭をよぎったが、やはり循環を再評価
術後、心臓の動きは良好であったが、心機能低下してておりDOB開始
たこつぼ様ではなく、diffuse hypoの状態であった
心電図変化もなし
DOB開始後、EFは改善
その後、乳酸はさがり、CRTも改善していった
3日目には循環は改善傾向であったが、無尿の状態が続いていた
術後から凝固異常や血小板低下を認め、DICの状態は持続していたが、
明かな出血はみられなかった
AT3が40%となっており、アンチトロンビン製剤開始
4日目になっても無尿の状態が続き、CRRT導入
電解質や呼吸状態、アシデミア、BUN(尿毒症)での導入ではなく、
水分バランス管理のための導入
腎臓内科の以前の上司が、「CRRTは便利な利尿剤」と言っていたのを思い出した
5日目 in over がかさんでおり、out balanceへ
術後から血小板がどんどん下がっていくため、薬剤性の血小板減少の可能性もあり、TAZ/PIPCは中止
CRPやWBCの下りが悪く、血液培養と痰培養提出し、MEPNに変更
CRBSIも懸念し、VCM追加
USでは腸管壁は肥厚しており、腸蠕動はみられなかった
腸閉塞を疑うような腸液貯留や拡張はみられず、
カンジダリスクが高くなってきたため、経腸栄養開始
6日目 順調に除水でき、out balanceへ
とはいっても、四肢・体幹の浮腫は強い状態
両側胸水貯留もある
呼吸状態はP/F改善傾向であるが、吸気圧が依然として高く、SBTまでは難しい状態
NAはプロポ使用時のみ、使用するくらいで循環動態安定してきた
SATするとかろうじて開眼するが、指示は従えず
7日目 順調に除水でき、out balanceへ
CRRTにて連日、除水継続していた
凝固系はAPTT、PT延長しており、AT3も低め
アンチトンビン製剤は適宜補充
<ICU入室し1週間の経過サマリー>
ADLは良好だが、超高齢男性の絞扼性腸閉塞術後、
誤嚥性肺炎による敗血症性ショックでICU管理中
呼吸は重症肺炎・心不全が合併した状態ではあったが、日に日に改善
循環は当初、乳酸高値が持続し、大量のVolumeやDOBを要したが、NA漸減できており改善傾向
水分バランスは術後から無尿の状態が続き、CRRT導入し連日out balanceで回収中
意識はSATを行なっても、まだ悪い状態
痙攣様の動きはみられず 脳波検査は未施行
消化管はUSでは腸管の蠕動はみられず、排便なし
除水が進み、腸管からの吸収を期待し、経腸栄養はUP中
肝胆道系酵素は術後、高値であったが、緩やかに低下傾向
一方、Bilは上昇傾向であり、薬剤性を疑いTAZ/PIPCは中止
血液は敗血症に伴うDIC状態であり、アンチトンビン製剤適宜補充
血小板減少の原因にTAZ/PIPCの関与も考え、
感染症は血液培養・痰培養提出し、MEPN,VCMに変更し治療中
培養は何も生えず
家族との面談は頻回に行い、7日目にはかなり改善された様子を見て、
ご家族は安堵と涙を流される場面もあり
この時点で、気管切開や維持透析導入の可能性は半分以上あると見積もっていた
家族としては急変時フル対応を望まれている
<ICU8日目〜14日目>
8日目 連日の除水により、体幹の浮腫がとれてきた
リハビリ時に開眼し、手足の動きもみられるようになってきた
明らかに意識レベルが改善してきた
呼吸・循環動態も安定し、呼吸器設定も緩められているが、
痰の吸引ボトルには黄緑色の液体が少しずつ溜まっているのが気になっていた
9日目 除水にてout balanceを達成できているが、
透析回路が閉塞してしまうようになった
ナファモをヘパリンへ変更し対応
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