2023年5月7日日曜日

視床梗塞を診断できるようになるために





症例振り返り


本日の症例は視床梗塞の症例でした

視床梗塞としては典型的な経過だったので、
視床梗塞のゲシュタルトを形成するためのいい症例だったと思います


脳梗塞では意識障害を来しにくいのが大前提ではありますが、例外もあります


意識障害が来る脳梗塞として

・広範な大脳半球の梗塞
・脳幹網様体賦活系(視床、内包膝部含む)
・島梗塞

+てんかん発作があります


脳梗塞らしくないけど、実は脳梗塞という場所は色々あります

島梗塞、側頭葉、後頭葉、脳梁、尾状核、視床、内包膝部・・・などです

一つのカテゴリーにできそうですね



診断できるようになるためには?



本症例を診断することは非常に難しいですが、誰でもいつかは診断できるようになります


どうやって勉強すれば、本症例を診断できるようになるかを言語化するのは難しいです

「勉強」というとちょっと違う気がします



あえていうならば、
疾患のゲシュタルトを自分の中に作っていくことで、
診断できるようになっていきます


ゲシュタルトというのは、疾患のイメージのようなのもです


疾患ごとにゲシュタルトができていくと、
あとはそのゲシュタルトに合うかどうかを当てはめる作業になります


ただ、疾患のゲシュタルトを作るのが大変です

同じ病気でもフェーズや重症度が異なると、
ゲシュタルトがかわります


解像度が高い疾患のゲシュタルトができるまでには、100例くらい経験しないと出来て来ないと言われていますが、



100例に全く根拠はないので、1例みるだけでも充分、ゲシュタルトはつかめます


ただ典型、非典型、色々なパターンを知っておく必要があります



現実は同じ疾患を100例も経験できないので、
症例報告やカンファで補うことができます
 

こうして自分の中にゲシュタルトが出来てくると、本症例も診断できるようになります



AKB48を見て、すぐにAKB48だとわかるように、
急にボソボソ話し出して意識障害のある患者さんを見たら、
すぐに視床梗塞だとわかるようになります


最初はAKB48って何?というところから、
何度も見たり聞いたりしていく上で、自分の中でAKB48というゲシュタルトが形成されていきます


別にAKBを勉強した記憶は皆さんにはないと思います 笑


でもAKBを認識できますよね(なんとなくでも)




そして皆さんはこう思うはずです

AKBって他のSKEやNMBやHKTとか色々あるけど、どう違うの?


これが鑑別疾患を思い浮かべるという作業です


診断の成長のステップとしては


1、鑑別疾患をあげることができる

 今回であれば、NCS、脳炎、肝性脳症、中毒、脳梗塞、電解質異常です

 

 この段階では、ほとんどの症候群は

 「語呂合わせ」「記憶術」「pivot and cluster」で対応できます


 意識障害:AIUEOTIPS

    咽頭痛:five killer sore throat

    市中の敗血症:5+1

 胸痛:five killer chest pain 

    ショック:SHOCK

    

といった具合です

これは記憶で対応できます


pivot and clusterとは、まず思いついたもの(AKB)をpivotとしておき、
鑑別すべきものをcluster(SKEやNMBやHKT)として考えます


この一連の流れは考えるというよりも、慣れれば自然に思いつくようになります



そして経験を積むと、鑑別疾患が広がっていきます



2、鑑別疾患を広げる

今回であれば、結核性髄膜炎、橋本脳症、中枢神経原発血管炎、CNSループス、APS、MS、傍腫瘍症候群などです


AKBでいうと・・・
どうやら坂道シリーズというのがあるらしい

乃木坂46、櫻坂46、日向坂46、吉本坂46も鑑別になるようだ



これが鑑別疾患を広げるという作業です
鑑別に上がらなければ診断はできませんので、できるだけ広く鑑別をあげられると良いです



3、優先順位をつける

疫学、文脈(病歴)、患者さんの背景、重症度、緊急性、治療可能性を考慮します
いわゆる3C(Common,Curable,Critical)です



本症例であれば、CSDHは頻度も多くプレゼンテーションが多彩であり、
治療が可能なため、まず疑いたい疾患です


髄膜炎や脳炎は重症度が高く、これもまた治療可能なため見逃したくない疾患です
首が硬かったようなので、早く診断・除外したいですね


一方、脳梗塞は?というと、頻度は多いですが、
tPAの時間を過ぎているのであれば、緊急で診断しにいく必要はあまりないと思われます

入院後の検査でもよいかもしれませんね



となると、頭部CT>髄液検査>MRIの順番になります


このようにその疾患の治療まで見越して、今すぐ診断すべきかどうか?を考えて、
検査の順番を組み立てる必要があります


除外すべき疾患は除外しつつ、同時並行に診断をつけにいきます



4、診断した後は、なぜその疾患が起きたか考える


診断がついたとしても、その疾患に至った原因を突き止める必要があります


例)誤嚥性肺炎がわかった
  誤嚥した原因はイレウスだった
  イレウスの原因は虫垂炎の穿孔だった


という感じで、一つの病気を見つけて満足してはいけません

本症例であれば、脳梗塞はあったが、なぜそれが起きたか?


IEや大動脈解離の可能性はないか?ということが大事です



5、診断がつかなかった時は、ゴールとなる疾患を思い浮かべる


 救急や初診の現場では、診断がつかないことも多いです


 その場合、症例の行き着く先(ゴール)を見据えると焦らなくてすみます



 ゴールになるような疾患群は、簡単には診断できません
 侵襲性が高い、時間がかかる、自施設ではできない、といった制約があります

 
 そのため、そこまで行かなければいいなあ・・・という思いで検査して、
 どこかで引っかかってくれ・・・という気持ちで検査を待ちます


 血液検査でわかるなら、高NH3か低Naかな
 頭部CTでわかるなら、CSDHかな

 といった具合で、期待しながら待つということが重要です
 
 どの検査でも引っかからなかった場合、目指す疾患がないと途方にくれてしまいます
 
 ゴールが定まっていれば、検査で引っかからなくても焦りません


 本症例であれば、MRIで何もなければ、てんかん発作や〇〇脳症が鑑別として残ります

 

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