2019年8月20日火曜日

亜急性甲状腺炎

昼カンファの前座の症例です

50歳 男性 主訴:頸部のこり、1週間続く発熱

病歴:7日前から咽頭痛出現し、嚥下時痛あり
そのころから頸部のコリを自覚

翌日には発熱あり、近医受診
痛み止めで帰宅となりました

しかし、改善なかったので、3日前に近医受診
血液検査にてCRPが7ということで、抗生剤処方されました

抗生剤服用後も頸部のコリや発熱が持続するので、当院内科受診

薬:抗生剤、NSAIDS、レバミピド、カルボシステイン by 近医

既往:なし

ROS:発汗や震えはなし 体重減少なし


所見 バイタル 血圧 130/89、脈 90、体温 37.7度、SpO2 98%
見た目 お元気そう

咽頭は発赤なし 扁桃腫大なし
齲歯なし 痛がる歯はなし
頬の叩打痛なし

頸部LN 前頸部から両側下顎に1cm弱のLNが数個触れる 
両側顎下腺に軽度の腫脹と圧痛あり
甲状腺は圧痛・腫大もない

本人は両側の顎から肩が凝ったような痛みがあるという
どこがということは言えず、漠然と痛いとのこと

首の前屈で軽度痛みあり 回旋は痛いか微妙




血液検査にて炎症があることは間違いないのですが、咽頭には全く所見がありませんでした


正直よくわかりませんでしたが、
ポイントとしては、
咽頭に所見がないのに「のど」が痛いというカテゴリーです





本症例は石灰沈着性頸長筋腱炎か亜急性甲状腺炎かなと思い、血液検査とCTをとりました
CTでは前者は否定的で、血液検査にてT3,T4が上昇し、TSHが抑制されていました

ESRもしっかり80まで上昇していました



ということで、診断は亜急性甲状腺炎でよいかなと思います

すごいのは、CTの読影で甲状腺の周囲の脂肪織濃度上昇と腫大があり、
読影で亜急性甲状腺炎疑いになっていました

触診で腫大は全然わかりませんでした

甲状腺の診察は難しい・・・



今年、二人目の亜急性甲状腺炎ですが、
二人とも甲状腺というよりは、顎や首を痛がっていました


首や顎が痛いというと、他の疾患の鑑別が出てくるので、見落とされやすいです


さらに、
甲状腺に圧痛がないと、鑑別から外れてしまいそうですが、
甲状腺に痛みがない亜急性甲状腺炎もたまにあります


本症例はすでにNSAIDs 服用していても改善がなかったので、PSL使用し治療しました

亜急性甲状腺炎まとめ
・甲状腺に圧痛のない亜急性甲状腺炎もある


・顎や首が痛いという症状がメインの症例も多い


・甲状腺中毒症症状はあってもよいが、ないことも多い

光線過敏

夏といえば熱中症ですが、光線過敏の季節でもあります

症例ベースで考えてみます

両手の蜂窩織炎で入院となった患者さんです


70歳代 男性 主訴:両手が痛い

病歴:3日前から両手が赤くはれてきた 
   外来受診し、両手の蜂窩織炎疑いにて入院

薬:皮膚科より抗ヒスタミン薬と外用のステロイド剤

アレルギー:パセリ?

所見:発熱なし、見た目元気そう
両上肢から手背まで紅皮症の状態で、赤く腫れあがり、痛みあり
両手手掌はhyperkeratosis

上肢以外にも顔は鼻や頬に湿疹がみられ、首にも発赤があり
体幹には皮疹はなし


さて、この人は本当に蜂窩織炎でしょうか?


蜂窩織炎とは局所の細菌感染症です
両側上肢に同じタイミングで細菌が感染するというのは、可能性は0ではありませんが、低いですよね

両側にパッチ―に来る蜂窩織炎様の皮疹で有名なのは、ヘリコバクターシネジーです


ということで、両側の蜂窩織炎と聞いたら、
まずは本当に蜂窩織炎か?と思った方がよいです


本症例の追加病歴は
もともと会社員で、脱サラしてパセリ農家を始めたようです
パセリ農家をするまでは、皮疹とは無縁の生活でした


パセリ農家を始めてから、両手が荒れるようになったので、皮膚科受診しました
そこではパセリによる接触性皮膚炎と診断されたようです


パセリに触れないように手袋を色々変えましたが、よくなったり悪くなったりを繰り返していました

患者さんもなかなかよくならないので、皮膚科も3か所くらい転々と変わっていました
そして、今回acute on chronicの経過で来院されたという経過です


さて、acuteな部分は感染症でしょうか?


この症例は、病歴や皮疹の部位から明らかに日光過敏があると思われたため、
慢性光線性皮膚炎(CAD)と診断しました

入院による遮光とステロイド内服で、別人のように皮疹は改善しました


パセリは光線過敏を来す有名な植物です
太陽の光は身近すぎて、まさか光が諸悪の権化とはなかなか思いにくいですよね

では光線過敏症のまとめです


光線過敏症




光線過敏症とは、普通の人なら全く問題ないくらいの光で皮膚障害が出現する病的な反応です

注意しないといけないのは、炎天下に長時間いれば、
光線による日焼けは誰でも起こるので、程度問題という事です



光による皮膚障害


直接作用と間接作用があります


直接作用というのは、光だけで起こる反応で健常人にも起こります

急性であれば、日焼け
慢性であれば、光老化です


光線過敏症の機序として光毒性皮膚炎と光アレルギー反応というのがあります
しかしどちらも起こっていることが多く、厳密に分ける必要はないです


光による皮膚障害の間接作用というのは、光+α(免疫・薬・代謝etc)で起こる反応です
こちらが光線過敏症といわれます


内因性と外因性の因子があります
つまり、体の中からの因子と体の外からの因子です



まずは体の外からの因子を探るのが大事です
体に塗っているもの、口から入れたもの、貼っているもの、、、全てチェックします


光線過敏症と外因性物質

光接触性皮膚炎と光線過敏型薬疹に分けます

機序については、光毒性と光アレルギー反応の両方が起こっていることも多く、
どちらでもよいです


外因性物質で多いのは、薬なので、それぞれ薬と薬以外で考えます



外因性ではないとなると、内因性?ということになります

内因性のコツは年齢で分けることです


書いてはありませんが、SLEやSS、皮膚筋炎にも注意が必要です



光線過敏症の行きつく先

病気には進行すると、同じような病像を作るという特徴があります


例えば、心臓ならば、
弁膜症でも虚血でも心筋炎でも、行きつく先は心不全です


光線過敏症も治療がうまくいかず、ずっと光線過敏症の状態が続くと、
慢性光線性皮膚炎(CAD)になってしまいます








光線過敏症の三角形


真ん中に患者さんがいます

⓪患者因子:内因性か外因性かを検討します


①部位:光線過敏を疑うポイントとして、どこに皮疹が出ているかをしっかり診ます
表(日光暴露)と裏(被覆部はスペア)を確認します


特徴的な分布であれば、原因が特定しやすいです


②病態:光毒性と光アレルギーというのがあります
簡単にいうと、免疫が関与しているかどうかです
前述していますが、どちらも起こることが多いので、知識で知っておく程度です


③治療:結局、遮光がメインです
他は対処療法という感じです

しっかり生活指導と患者教育をしないと絶対に治りません




光線過敏症のまとめ
・太陽の光は身近すぎて、時に鑑別から漏れてしまう
→光を浴びただけで、湿疹を来すCADという病気を知っておく



・光線過敏症の原因には、内因性と外因性がある
→まずは外因性のチェックから、特に薬やサプリメント



・内因性は年齢や病歴である程度、疾患が定まる



参考文献:uptodate
J.Clin.Immunol.,34(1)8~12(2011)
アレルギー55(11) 1382-1389.2006
診断と治療 vol.95-No.9 2007(163)
医学と薬学・第60巻 第6号・2008年12月
Dermatol Clin 32(2014)355-361

2019年8月6日火曜日

偽性アカラシア

前回の症例の続きです


98歳男性  主訴:嚥下障害


ここ数ヶ月で出現した嚥下障害に加えて、数日前からさらに悪化して、

食事をとっても吐き出してしまうようになりました

病歴からは食道期の問題であり、

2か月前のCTでは食道が拡張しているのが分かっていました

CTでは明らかに閉塞起点になる腫瘤はありませんでした


食道の拡張から、強皮症やアカラシアを疑い、

強皮症の診察をしましたが、皮膚硬化やNFCCはありませんでした


そのため、アカラシアが疑われました

そして高齢であること、急速に進行が進んでいること、体重減少も認めたことから、

偽性アカラシアを強く疑いました


偽性アカラシア

偽性アカラシアとは二次性とも言われます

前回の原因が分かっていないアカラシアがいわゆる一次性アカラシアです


アカラシアが疑われた人の100人に2-4人は偽性アカラシアと言われています


二次性の特徴は後述しますが、

①高齢(55歳以上の発症)

②症状がはじまった期間が短い
(→急速に症状が進行している)

③体重減少が顕著である

が病歴では重要になります



そして、二次性は悪性腫瘍由来かその他に分けられます

悪性腫瘍由来の場合は、直接下部食道の筋層に浸潤するもの

パラネオ的な神経異常として、出現するパターンがあります



直接浸潤型の場合、

上部消化管内視鏡検査(GF)で粘膜面に腫瘍がある場合

ない場合があります


粘膜面に腫瘍病変が確認できないと、

一次性アカラシアと言われてしまう可能性があり、注意が必要です


悪性腫瘍由来っぽいけど、初回のGFで悪性所見が得られなかった場合は、

造影CTにて食道下部の壁肥厚や超音波内視鏡検査を行うと、

粘膜下や筋層に病変が見つかることがあります


ですが、造影CTや超音波内視鏡検査で異常がなくても、

フォローしていると、悪性腫瘍が見つかったということはありますので、


リスクがある症例は初回のどんな検査よりもフォローが大事になります




一次性VS二次性アカラシア

偽性(二次性)アカラシアで多い原因は胃の噴門部の癌や食道癌です


本症例も同日、GFしてもらうと、

下部食道に食物残渣が大量に溜まっておりましたが、

食道内に閉塞起点はありませんでした


食道を超えると、噴門部に進行がんを認めました

そのため、噴門部の胃癌が下部食道に浸潤し、

神経叢を侵し、偽性アカラシアを呈したものと考えました


しかし・・・


入院後、ばくばくと食事をして問題ないたため、

ただ食物残渣が下部食道に詰まっていた説も残っています



Tucker's criteria

Tucker's criteriaは有用です

偽性アカラシアを示唆する3徴です


①高齢

②症状の持続期間

③著明な体重減少

1978年に報告された論文ですが、今でも使えるのだからすごいですね

(Annals of internal Medicine 89:315-318.1978)

元文献にはそれぞれのカットオフの記載はなく、

ここ数年の論文はそのカットオフを模索するような感じでしたが、

2017年の論文が一番症例数も多く、ひとまずこのカットオフでよいのかと思います


①高齢:55歳以上

②症状の持続期間:12か月以内

③著明な体重減少:10k以上


上記の情報や病歴に加えて、


上部消化管内視鏡検査にて、


④胃食道接合部を通過するのが難しい

というのも偽性(二次性)を示唆する所見のようです


施行してもらった内視鏡医とディスカッションしたほうがよいですね


ちなみにこの論文では、偽性(二次性)のアカラシアだった全例が、

初回のGFで悪性所見を認めなかったため、

一次性アカラシアとして、治療が何度もされています

そして、フォローで何度か検査をしていくうちに、

悪性腫瘍が発覚してきたという流れのようです

何か月後や何年後に見つかったまでは記載がありませんでした


これまでの報告では、バリウムの所見で、

偽性の特徴(狭窄部位が長い、食道の拡張が狭い、左右非対称)がありましたが、

(Indian J Radiol Imaging .2015 Jul-Sep;25(3):288-295.)

今回の報告では、あまり有用ではなかったようです






Eckardt Scoreはあくまで、重症度を調べるもので、

一次性と二次性の区別には使えません



上記、4つのリスクで一次性と二次性の割合を比較しています

一つもリスクがないと、偽性(二次性)の可能性は0ということです


一方、リスクが4つそろうと、特異度が99.7%で

二次性の可能性が高まります


今後、検証が必要ですが、

現状では、有用な情報かと思われます


偽性(二次性)アカラシア
・高齢(55歳以上)、症状持続期間が短い(12か月以内)、体重減少が顕著(10kg以上)、GF時に胃食道接合部を超えるのが困難
→一つでもあれば、偽性の可能性が高まる



・偽性で多いのは、噴門部の胃癌、食道がん。最初のGFで所見がないからといって、除外はできない
→リスクがあれば、いつか癌が出てこないかフォローしていく

参考文献:Annals of internal Medicine 89:315-318.1978
     Indian J Radiol Imaging .2015 Jul-Sep;25(3):288-295.
     Aliment Pharmacol Ther 2017;45:1449-1458
        up to date
        日臨外会誌 75(5),1223-1229,2014 
           日臨外会誌 69(11),2836-2841,2008
     

アカラシア

アカラシアの見つかり方はいろいろあると思います

嚥下障害で見つかるパターンもあれば、

たまたま他の原因でとったCTで食道が拡張していた時などです



先日、98歳 男性が飲み込めないという主訴で初診外来を受診されました

本人は喉というよりは、

胸骨の後ろあたりで飲み込めないという症状でした

食べたものが逆流して出てきてしまって、

ご飯が食べられなくなってきたようです

症状は数か月前から出現し、ここ数日でさらに悪化し、

食事摂取が不能になってしまったため、受診されました
(→参考:治せるかもしれない嚥下障害)





明らかに咽頭期ではなく、食道期の問題でした

あとは、器質的な原因か、機能的な原因か考慮します


偶然、2か月前に肺炎・心不全で入院となっており、

その時のCTにてすでに食道がかなり拡張していました

目立った閉塞起点は分かりませんでした


拡張した食道の原因で多いのは、

強皮症とアカラシアです

強皮症らしさの所見がなかったので、

アカラシアが疑われました


アカラシアは食道の遠位筋層内のganglion cellの機能喪失が病態として

説明されていますが、どうして起こるのかは分かっていません





アカラシアの症状


GERDに比べれば、アカラシアは圧倒的に稀な病気です

ですが、症状はGERDと一緒です

そのため、アカラシアをいきなり疑うのは、難しいでしょう


普通、GERDといわれて治療されていることが多いと思われます



症状からアカラシアを疑うパールとして、

若年者のくり返す原因不明の胸痛や

若年者の原因不明な呼吸器症状(咳、咽頭痛、嗄声)が挙げられます


症状が出現してからアカラシアと診断されるまでに、5年くらいかかると言われます

逆にアカラシアは見逃しても、あまり痛い思いをしないということにもなります


ですが早く疑って、早く診断できれば、患者さんのQOLは上がります


頑固なGERD症状で、長引くようであれば、

一度は上部消化管内視鏡検査(GF)が行われることが多いと思います


しかし、そこでアカラシアを疑っていないと、

所見がなければ、NERDや難治性のFDということになってしまうので、注意が必要です


アカラシアの鑑別に、好酸球性食道炎や食道がんがありますので、

アカラシアを疑った場合は、下部食道の生検を行ったほうがよいと思われます


さらにアカラシアが疑わしければ、

バリウムやマノメトリーを行い、アカラシアを分類していきます




アカラシアの治療

アカラシアの治療は最近、ホットな分野です

なんといっても内視鏡的筋層切開術(POEM:Peroral Endscopic Myotomy)の

エビデンスが確立しつつあります



アカラシアまとめ
・原因不明の胸痛、難治性のGERD・FD、
原因不明の咽頭痛・嗄声・咳といったキーワードであれば、アカラシアを疑う
→診断までに5年かかっている


・逆に診断されなくても、何とか生きていける
→QOLは下がっているので、早期診断・早期治療を目指す


・治療の第一選択が変わりつつある
→POEMがPDに勝った

参考文献:JAMA.2019;322(2):134-144.
        JAMA may12,2015 Volume 313,Number 18
        Lancet 2014;383:83-93

2019年8月3日土曜日

夏の救急の難しいところ〜熱中症か、敗血症か、それとも・・・〜

夏本番の暑さを迎え、

熱中症の季節になりました


高齢者が発熱で来た時に、

部屋が暑かっただけで、

熱中症といってよいのでしょうか


感染症が先か、熱中症が先か・・・

夏の救急の難しいところですね

そこがテーマの昼カンファです            
(※一部修正を加えています)
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症例 85歳女性  主訴:発汗、活気低下  救急車で搬送

病歴:もともと夫と二人暮らし、つたい歩きのADL

家人より病歴聴取

3日前に夫が肺炎で入院したため、一人暮らしになっている

1日前から痰がらみの咳が出現し、食欲低下あり

来院当日はほとんど動けず、トイレには張って行っていた

夕方、家人が見に行くと発汗多量で、高温の部屋でぐったりしていた患者を発見し、

救急要請となった

バイタル
血圧163/87、脈90回/分、呼吸 22回/分、SPO2  96%(RA)、体温 36.5度、
意識 不穏状態、E3V4M5
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司会:はい、ありがとうございます

   こんな人が救急車で来院されました
   
   実際は病歴とる人がいて、診察や検査を出す人がいて、

   同時並行にいろいろが進んでいきそうですね

   まず何かしたいことはありますか?


研修医I:血糖値がみたいです


発表者:血糖は134mg/dLでした


司会:そうですね、まず意識が何だかおかしいですね

   意識障害と考えるのであれば、まずDo DONTといわれているように

   D:デキスターで

   血糖測定するのは、重要です


   さて、こういう普段のベースが分からない時に、
   
   本当に意識障害としてよいかは、どうやって確認しますか?


研修医Y:家族の人に普段と違うかを実際に見てもらっています

司会:その通りです!

   認知症の方や元々意識が清明でない方はたくさんおられますので、

   本当にいつもと違うのかを家族の人に確認しましょう

   逆に家族が来ていない時や普段のことを知らない家族が来たりすると、
   
   とても大変です


   さて、他に何か聞きたいことやしたいことはありますか?


研修医E:食事や水分はとれていましたか?

発表者:前日はパンを食べていたそうですが、当日はとれていなかったようです


研修医E:薬と既往を教えてください

発表者:既往は腰椎圧迫骨折や子宮筋腫で手術歴があります
  
    内服はエディロール、ベタニス、酸化マグネシウムを内服しています

研修医I:部屋は暑かったのですか?

発表者:はい、閉め切った部屋でとても暑かったようです


研修医I:汗もかいていたんですね?

発表者:はい、汗もたくさんかいていたようです


司会:それはどうして聞いたんですか?


研修医I:意識障害までくるような熱射病の場合、汗はかいていないことが多いと記憶していました

司会:そうですね、西伊豆の仲田先生がNEJMの熱射病の総説(NEJM,June 20,2019)を
   
   日本語訳でまとめてくれていましたね

   熱射病の観点からも汗はヒントになりますが、

   トキシドロームの観点からも汗はヒントになります
   (→参考:トキシドローム)

司会:他はいかがですか?

   何かやりたい診察はありますか?



研修医E:項部硬直をみたいです

発表者:項部硬直はありませんでした

司会:ありがとうございます

   では他の診察所見も教えてください
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見た目 もぞもぞと落ち着きなく、ストレッチャーから降りようとする
「トイレ行きたい」「トイレ行きたい」と何度も言う

頭頚部 項部硬直なし
    眼瞼結膜蒼白なし、眼球結膜黄染なし、充血なし
    咽頭発赤なし、扁桃見えず
    口腔内粘膜疹なし
    頸部リンパ節触れず 
    頸静脈 怒張なし、頸動脈雑音なし
胸部 呼吸音 左右差なく清
   心音 収縮期雑音あり 3/6 @3LSB
腹部 手術痕あり、下腹部 膨隆あり、圧痛なし
関節 腫脹なし

手足の粗大な麻痺はなし

診察後、尿カテ挿入し、混濁した尿が500mlあり

その後、やや不穏状態はおさまった
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司会:はい。ありがとうございます


   では今後の対応をどうしましょうか?


研修医I:意識障害があるので、頭のCTはとりたいです

    あとは、尿路感染症の可能性もあり、血培や尿培はとっておきたいです


司会:はい、ありがとうございます

   他、どうですか?


専攻医K:ガスも取りたいですね

     この時期でもまだCO中毒で運ばれてきた人いました


     閉め切った部屋で、自分で塗った壁のペンキをかわかすのに、

     暖房器具使って、COで運ばれてきた人がつい最近いましたね


司会:そんなこともあるんですね

   では、ガスもとりましょう

   結果はどうでした?

発表者:PH 7.49、PCO2 27、PO2 62、HCO3 20、乳酸 1.16、COHb上昇はありませんでした


司会:はい、ありがとうございます

   他にプランがある方はいますか?


指導医T:しゃべってもいいですか?


司会:ダメです 

   冗談です(笑)
 
   お願いします



指導医T:(全く・・・・)

 この状況で最も悩むのは、髄膜炎対応するかどうかです


    血培とって、すぐにステロイドいれたり、

    髄膜炎doseで抗生剤を入れるかどうかを非常に悩むと思います

    
    低体温の時もそうですが、熱射病の時も同じです

    結果的に体温の異常をきたしていて、
 
    体温の異常による意識障害なのか

    それとも体温の異常を引き起こした原因による意識障害なのか


    そこが毎回、このセッティングでは迷います

    そして、大抵迷った時は、やってしまうことが多いですが、
    
    マンパワーとその場の空気感も重要です

    
    おそらくこの状況では尿閉を解除して、意識が改善しているので、

    本気の髄膜炎対応はしないと思います



司会:はい、ありがとうございます

       はあ・・・

   それねー

   俺も今言おうと思ったのに、言っちゃうだもんなー


   そうなんです、ここで迷うのは髄膜炎対応するかです


   T先生には最後でコメントもらいますので、
   
   ちょっと静かにしててください (笑)



   では、実際はどうなりましたか?



発表者:はい、実際は頭部CTや感染のfocus探しのため、胸腹部でCTがとられています

    頭部CTは意識障害の原因になるようなものはなかったです

    胸腹部のCTでは、下肺の背側にわずかに浸潤影を認めました

    腹部には、目立った異常所見はありませんでした



司会:ありがとうございます
  
   では残りの採血はどうでした?

   AIUEOTIPSで考えると、電解質やアンモニアも出しますかね


発表者:電解質異常はありませんでした、アンモニアは提出されていません

    血算では、WBC上昇はありませんでしたが、NETは81%と上昇していました

    Hbや血小板の低下はなかったです

    生化では、CKが180と軽度上昇ありましたが、肝酵素やLDHの上昇はなかったです

   腎機能はBUNが22と軽度上昇していましたが、Crは0.7と正常範囲でした

   CRPは1.23でした


司会:尿検査はどうでしたか


発表者:えーっと、尿の比重は1.01でPHが・・・

司会:膿尿はありましたか?

発表者:ありました、白血球3+で細菌尿も3+でした

    グラム染色では、GPR多数、GPC chain少数、GNR middle少数がいました


司会:はい。検査も出そろいましたね

   では今回は肺炎がありそうで、尿路感染もありそうで、

   熱中症も鑑別になるといったところですかね


   さて、みんなだったらどう治療しますか?


研修医E:肺も尿路もカバーするとなると、

    肺が誤嚥だったら、アンピシリン/スルバクタムとかですかね


専攻医Y:尿閉もあったんですよね

     なんでなっているのかは分かりませんが・・・・

     やっぱり尿路感染がメインで、肺炎のCTはかなり微妙ですよね
  
     尿路感染症として治療するかな・・・



専攻医K:自分だったら、髄膜炎が否定しきらない状況であれば、

     CTRXの髄膜炎doseで治療します
   
     抗生剤投与後も意識障害が持続すれば、どこかでルンバ―ルします


     髄膜炎かもわからない状況で、

     最初からリステリアやPRSPによる髄膜炎を疑って、

     VCMやビクシリンも入れるのは、やりすぎな気もします


司会:そうですね。CTRXが落としどころですかね


発表者:実際はアンピシリン/スルバクタムで治療が開始されました

    入院後から担当になりましたが、翌日には意識もいつも通りになっていて、

    治療経過はとてもいいと思います

    そのため、ルンバ―ルはしていません


    熱も出ておらず、意識もいいので、

    細菌感染スタートで、ぐったりしたところに熱中症も合併したのかと思いました


司会:はい、ではそういうことで、今日のカンファは閉めたいと思います
   
   ありがとうござ・・・


指導医T:ちょっと待ってください!

    僕まだコメントしてませんよ!
   
    絶対わざとですよね 笑


司会:ごめん、ごめん

   じゃあ、こんな流れでよかったですか?



指導医T:ここまでの思考の流れはとてもいいと思います

     でも、惜しいんです!!

     もう一歩踏み込んでほしいです


専攻医K:レジオネラ?とかですか?


指導医T:まあ、それも考えますが、今回は違います

     専攻医Y先生がいいこと言っていました



外科Dr:尿のG染色でGPRっておかしくない?
   
    それって血流からの感染かもしれないから、

    IEの所見をしっかりとったほうがいいんじゃないですか

(※当院には、内科医にひけをとらない内科もできる外科医がいます)


指導医T:だんだん、近づいてきました


専攻医Y:ぼくなんて言いましたっけ?



指導医T:「尿閉」って言ってたよね

    なんでこの人、尿閉になっているのかな?


シーン

指導医T:風邪っぽい症状があったら、みなさんどうしますか?

    市販の風邪薬のみますよね?

    もしかしたら、この患者さんも飲んでいるかもしれません

    さらに、ベタニス飲んでますよね

    これだけでも尿閉になる人もいます

   (→参考:排尿障害)
    
    
   尿の検査で、一つかわいそうな項目があるんです


  いつも、検査結果として出ているのに、
  
  スルーされる項目があるんです


    みなさん、分かりますか?

シーン


研修医E:比重?

専攻医K:PH?


指導医T:はい、その通りです!

    PHです
    
    今回の尿のPHはいくつでしたか?

発表者:8.5とかなりのアルカリ尿になっていました


指導医T:尿のPHを積極的に見る時は限られています

  このセッティング(意識障害+UTI)は尿のPHをみる時です

     尿のPHがこれだけ高いということは、

     ウレアーゼ産生菌がいるということです

     つまり、ウレアーゼ産生菌が、アンモニアを作ってしまい、

     それが尿閉で外に出ていかないと、膀胱から体循環にアンモニアが流入し、

     高アンモニア血症を来します

     感染はあってもなくてもいいです


     
     今回はGPRがメインだったので、それはコリネバクテリウムの可能性が高いです

     そして、

      ウレアーゼを産生するコリネといったら、C.urearyticumです
  
     これは、本気で疑ったら、VCMで治療します

     βラクタム系に耐性があることも多いです


発表者:今日、尿培の結果がでて、コリネバクテリウムでした


司会:なるほど~

   確かにそうかもしれませんね(あまり腑に落ちていない感じ 笑)


   大変勉強になる症例ありがとうございました


最終診断:軽微な肺炎や尿路感染症
    (±高アンモニア血症±熱中症)
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高アンモニア血症の原因


ほとんどが、肝臓が原因ではあるが、

肝臓以外が原因の場合、

鑑別が多岐に渡り、診断が難しくなる


考え方としては、

①肝臓が悪くないか

②肝臓以外であれば、まずはシャント病態を疑う

③薬を疑う

④ウレアーゼ産生菌によるUTIや尿閉を疑う

⑤その他

そして、マクロの視点と尿素サイクルに関わるミクロの視点で考えていきます




今回のように、感染症 VS   熱中症

髄膜炎 VS    敗血症性脳症

といった図式にあてはめられてしまうと、


すっぽり、見落とされてしまうのが、

高アンモニア血症を伴うUTIです


アンモニアをとってさえいれば、気が付くのは容易です


ルーチンでアンモニアをとるのもありですが、


もともと膀胱に問題がある人が、感染症のようなプレゼンテーションできて、

尿閉になっている

ということであれば、アンモニアは狙って取りに行きます



たいてい、尿閉になっていれば、尿カテが入るので、

それが意図せずドレナージになっており、

アンモニアも減少に向かうので、レベルもよくなります



なので、尿閉に伴うせん妄や敗血症性脳症と片付けられている症例も多数あると思います




尿路感染症全例で疑うわけではありません

疑う状況があります


膀胱に問題がある×ウレアーゼ産生菌がいる×閉塞起点がある


といった状況がそろえば、尿のPHに注目します





まとめ
・熱中症と簡単に診断してはいけない
→熱中症になってしまった原因を探す努力が必要
 熱中症はただの結果かもしれない


・髄膜炎vs敗血症性脳症で悩むのもよいが、高アンモニア血症+尿路感染症も同時に考える
→いつもスルーされる尿のPHに注目する


・尿のG染色でGPRが多数みえて、尿のPHが8以上であれば、C.urearyticumの可能性大
→VCMの使い時かも

参考文献:泌尿紀要 62:421-425,2016年
     日本老年医学会雑誌 54巻4号(2017:10)
           臨床神経 2017;57:130-133
     日臨救医誌(JJSEM)2014;17:68-72
     日救急医会誌.2012;23:205-10
       日本内科学会雑誌 第102巻 第4号・平成25年4月10日 
     日集中医誌 2015;22:33-7.
          PLoS One.2015 Aug 20;10(8):e0136220.

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