以上、カンナビノイド悪阻症候群のまとめでした
大麻は非常に興味深い草です
海外ではカンナビノイドの作用をうまく使って医薬品が作られたり、
代替医療として使われておりますが、日本ではまだ厳しく取り扱われているので、
カンナビノイド悪阻症候群はメジャーな疾患ではありません
ですが、カンナビノイド悪阻は海外では増えており、論文も多数出ています
この病気は日本での認知度は低いですが、
今後増加する見込みであり、救急外来に出ている方は必ず出会う疾患だと思います
大麻の検挙数は毎年増加傾向で、今後も慢性中毒者は増え続けるでしょう
大麻の慢性中毒者が増えるということは、
カンナビノイド悪阻になってしまう人も増えるということです
カンナビノイド悪阻は知っていれば、一発診断が可能です
何といっても「熱いシャワーで嘔吐が軽快する」という特徴があるためです
ですが、この疾患は知っていても、想起しにくいのが困ったところです
嘔吐や下痢、腹痛という非常にコモンな感染性腸炎症状で来るためです
自然に軽快するので、毒素性の腸炎だったのかな?という感じで、
原因を突き詰めることや外来フォローすることもなく、終わることが多いです
大麻の病歴がなければ、
1回目の受診でこの疾患を診断することは、不可能だと思います
謎の胃腸炎疑い病歴が3回、4回重なっていくと、
流石に、これ胃腸炎じゃないな・・・と気がつきます
ですが次に想起されるのは、
腹部片頭痛やポルフィリア、DKA、鉛中毒、側頭葉てんかんといった疾患群です
ここにカンナビノイド悪阻症候群もpivot and clusterで入れていただければと思います
謎の胃腸炎疑いの既往が溜まっている人をみた時は、
カンナビノイド悪阻症候群を疑って、
「熱いシャワーやお風呂に入ると、
気持ち悪さが和らぎますか?」
と聞いてみましょう
この疾患であれば、半分以上の人で当てはまります
注意点としては、熱いシャワーで軽快するのは、
小児で多い周期性嘔吐症(CVS)でもみられます
そのため、
「熱いシャワーで軽快する謎の胃腸炎症状を繰り返している人」まできたら、
CVS(周期性嘔吐症)かCHS(カンナビノイド悪阻)のどちらかになります
あとは、大麻の慢性使用があるかでしか、鑑別は進められませんので、
医者患者関係を良好にした上で、病歴聴取を行ってください
CHSは診断、治療、マネージメント、
全てが大変な病気です
一度、経験されるとわかりますが、精神科的アプローチや集中治療管理が非常に大変です
吐き気と嘔吐が強すぎて、病棟中に「オエーーーーー」という叫び声が響き渡ります
鎮静がされていない場合は、夜勤の看護師はつきっきりになります
(本当に地獄絵図です・・・)
鎮静や抑制しないと、点滴抜かれまくりますし、暴れまくります
吐き気止めを入れるのですが、いつものやつは全く効果ありません
かなり辛そうなので、みていてこちらが辛くなります
いつもの吐き気止めに加えて、知っている吐き気止めを使いまくるのですが、
あまり効果はありません
ハロペリドールやベンゾジアゼピンで鎮静するしかないのです
カプサイシンクリームをお腹に塗ると効果があるようですが、効かない人もいます
一番効くのは、熱いシャワーなので、最終手段として熱いお風呂に点滴しながら、
入れてあげるのはありかもしれません
CHSは嵐のように過ぎ去っていくので、
いかにこの辛い時期を乗り越えるかがポイントです
一度、経験するとゲシュタルトが強烈に残ります・・・
出会いたくない疾患No.1ですが・・・