片側の目の周りを痛がる人をみたら、どう考えたほうがよいのでしょうか
国際頭痛分類 第三版 ベータ版をみると、
第一部:一次性頭痛
第二部:二次性頭痛
第三部:有痛性脳神経ニューロパチー・他の顔面痛及びその他の頭痛
となっています
それぞれの疾患をすべて考えなくてはならず、
とても大変ですが、
結局、頭痛の場合の構図は、
一次性 VS 二次性です
一次性と言われる頭痛には、
片頭痛
緊張型頭痛
三叉神経・自立神経性頭痛(TACs)
その他の一次性頭痛疾患
があります
ポイントはそれぞれに対抗馬・mimic、
つまり二次性に起きてくる疾患があり、
二次性をいかに除外するかということが重要です
・片側の目の周りを痛がる人をみたら
考えるポイントは2つです
「視力予後」と「生命予後」
この二つの軸で鑑別をたてるとよいと思われます
①眼科疾患の可能性を疑う:視力予後
目、もしくは目の周りが痛い人に対して、
眼科疾患を思い描くのは当然でしょう
目の診察(毛様充血、眼球圧迫で圧痛あるか、視力低下など)を行い、
緑内障やブドウ膜炎、眼内炎といった危険な眼科疾患をチェックします
疑ったら、すぐに眼科コンサルトしましょう
②GCA(巨細胞性血管炎)の可能性を疑う:視力予後
巨細胞性血管炎(側頭動脈炎)に伴う頭痛の性状は様々です
神経痛様の頭痛の時もあります
なので、高齢で新規に発症した場合、
いかなる性状の頭痛でも、GCAを疑った病歴や診察を行います
疑えば、血液検査でESRやCRPをみましょう
③細菌感染症を疑う:生命予後
目の周りの感染は脳に近いため、危険です
特に歯、副鼻腔、顔面に感染がある場合、静脈にのって
感染性海面静脈洞血栓を起こすことがあります
感染の波及により髄膜炎や脳炎、脳梗塞、下垂体壊死を発症することもあり、
致死率は30%とも報告されています
そのため、発熱を伴った目の周りの痛みは、
血培をとり、画像評価(MRI)の閾値を低くしましょう
髄膜炎の合併があると考えれば、ルンバ―ルも早期に行いましょう
④下垂体疾患を疑う:生命予後、視力予後
もともと下垂体腺腫がある人に、下垂体卒中が急に発症することがあります
下垂体卒中では、中枢性の副腎不全となるため、
時に致死的になります
大きいものでは、視交叉の圧迫が強い場合、視野障害も伴います
その場合、早急に除圧を行わないと、視覚に障害を残すため注意が必要です
そして、何より下垂体卒中を疑うことが重要です
疑わないと、CTやMRIをとっても、気が付きません
⑤自殺しそうな頭痛を疑う:生命予後
三叉神経痛やTACsは、自殺さえ頭をよぎる痛みと言われています
まさか、そんなはずなかろうと思うかもしれませんが、
頭痛がひどすぎて、リストカットして救急受診された人もいました
そのため、三叉神経痛やTACsと思った場合、
あまりに痛みがひどそうな場合は、外来フォローとはせず、
入院にて治療をお勧めします
以上のステップを踏みつつ、下記のように考えます
①まずは目の周りの痛みなのか、目の痛みなのか
②そして、三叉神経領域の痛みなのかを診察します
三叉神経領域の痛みであれば、
③自律神経症状の有無をチェックします
自律神経症状がなければ、
典型的三叉神経痛か、
有痛性三叉神経ニューロパチー(つまり二次性三叉神経痛)を考えます
ポイントは、典型的三叉神経痛には、
①トリガーゾーンがあることが多い
②V1領域はまれ
という事です
なので、トリガーゾーンがなくて、
V1領域の三叉神経痛の場合、
典型的三叉神経痛から疑うのは、センスがありません
二次性から疑います
典型的三叉神経痛とは、
血管が三叉神経にあたって生じていると考えられるものです
二次性の最大の鑑別は、帯状疱疹です
特に皮疹のでないZoster sine herpateは鑑別が非常に困難です
疑ったら、髄液をとってVZVのPCRを出しつつ、
治療せざるを得ないかと思われます
三叉神経領域の帯状疱疹を疑った場合、
皮疹を探すと思いますが、
皮疹のピットフォールとして、
口腔内や鼻腔のチェックが漏れることがあります
また、三叉神経と頸神経は核のところで、交通があるため、
後頭神経領域に皮疹がでていることもあります
そのため、皮疹のない帯状疱疹という前に、
鼻腔や口腔内、後頭部もしっかり、皮疹をチェックしたか確認しましょう
自律神経症状、つまり流涙や鼻汁、充血、浮腫といった症状を伴う場合、
TACsを疑います
TACsの中には、
群発頭痛、SUNCT/SUNA、発作性片側頭痛、持続性片側頭痛といったものがありますが、
まずは群発頭痛の特徴をしっかりおさえることが重要です
なぜなら、TACsがとても稀な疾患であり、
出会うとしても、群発頭痛のことが多いからです
群発頭痛は、働き盛りの男性に多く、
お酒を飲んで、夜に起きることが多いです
片頭痛と違って、
暴れまわるくらいの痛みです
七転八倒するような痛みをみたら、TACsとRCVSを疑います
TACsの中での鑑別は、持続時間とインドメタシンの効き具合で分けられます
ポイントは患者さんと一緒に痛みの図を完成させることです
なかなか、痛がっている時は、病歴をとれないことが多いですが、
落ち着いたら、しっかり痛みの性状と持続時間を確認しましょう
TACsにもmimicというか、二次性があります
たくさんありすぎます
たくさんあるので、
検査・画像で分かるものと
分からないものに
分けると分かりやすいかもしれません
TACsを疑っても、
初発の場合や非典型的な症状の場合、治療抵抗性の場合は、
必ず二次性を否定します
つまり、造影MRIを撮影します
見るところは、海綿静脈洞やその周囲、眼窩、副鼻腔、下垂体、血管です
撮影方法に注意しないと、よく見えないことがあります
特にトロサハントはその目でみないと、絶対に分かりません
画像検査で分からないものの代表は、
GCAと帯状疱疹です
片側の目の周りを痛がる人をみたら
まとめ
・「視力予後」と「生命予後」の軸で考える
①眼科疾患の可能性を疑う:視力予後
②GCA(巨細胞性血管炎)の可能性を疑う:視力予後
③細菌感染症を疑う:生命予後
④下垂体疾患を疑う:生命予後、視力予後
⑤自殺しそうな頭痛を疑う:生命予後
実際の診察の順としては、
(1)目の周りの痛みなのか、目の痛みなのか確認
(2)三叉神経領域の痛みなのかを確認
(3)自律神経症状の有無を確認
その後、一次性と二次性を鑑別していく