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2025年8月17日日曜日

パルボウイルスの皮疹 〜ウイルス界の梅毒〜

パルボウイルスが昨年から今年にかけて流行しておりますね

パルボウイルスは大人がかかると関節炎や皮疹が主訴で病院受診されることもあります

そうなると、皮疹から梅毒や風疹、EBVなどの感染症や
膠原病(リウマチ、SLE)が鑑別となり、
焦って色んな検査が提出されている状況をたまに見かけます


銃弾爆撃的に検査がされた中でパルボウイルスの抗体が出ていれば、
まだ良いですが、抗体が提出されていないと、
ANA陽性や補体低下だけ拾ってしまい、SLE?となって、
ドツボにハマってしまう状況があります



ですが、流行状況やsick contact、皮疹から
パルボだけを狙って抗体を提出して、
パルボの一発診断ができれば、一番良いと思いませんか?



皮疹を見れば、何のウイルスか鑑別できます

ウイルス感染症に伴う発疹症のことをParaviral eruputionと呼んでいる論文もあります


Paraviral eruputionは、ウイルス側と皮疹側の両方の知識があると、
鑑別が絞りやすくなります


その中でもパルボウイルスはParaviral eruputionの代表です

パルボが面白いのは、その皮疹が多彩なことです



パルボウイルスのゲシュタルトをまずは知っておく必要があります

パルボは第一相(ウイルス血症)と第二相(免疫反応)で、
プレゼンテーションが異なります


第一相があって、第二相がくればわかりやすいですが、
どちらかが欠けていることもあります


特に第二相の関節炎や皮疹、浮腫を主訴に
初診外来にこられた場合は、診断が難しくなります



ウイルス感染症は子どもと大人でプレゼンテーションが異なる時があります

パルボや手足口病、水痘、麻疹、EBVなど
大人になって初感染した場合、子どもよりも強い症状が出やすいです


そのため、子どもは感染しても気が付かない程度で
sick contactがはっきりしなくても、子どもとの接触歴があるだけで、
かなり怪しい状況になります


パルボをもらう状況は家庭内や職場(保育園)であり、
圧倒的に子どもとの接触歴が重要です




血液検査でパルボを疑う場合は網状赤血球に注目します

貧血まではこなくても、網状赤血球だけ低下するパターンもあります


網状赤血球の値が極端に低くなっていると、
パルボかな?と疑ったりします


また血小板や好中球も下がる人が4-5人に1人くらいいます


皮疹の中では、紫斑が出ることが多いですが、
血小板減少に起因する紫斑ではないことがほとんどです

そこまで血小板が顕著に下がることはレアです



パルボの皮疹は多彩すぎて、何でもありかと思っていましたが、
意外にパターンがありました

ここでも子どもと大人で皮疹のタイプが異なります


大人の場合は、有名なリンゴ病の名前の由来の頬の紅斑は少なく、
大人で多いのは、手袋靴下型に広がる皮疹です

PPGSSというパターンです



自分もパルボのかかったことがありますが、PPGSSが出ました

痒くて痛くて、気持ち悪い皮疹でした 笑



PPGSSを知っておいた方がいい理由があります

「皮疹が出た時はパルボの感染力はない」
覚えている人もおられると思います


ですが、PPGSSの皮疹が出る時期は、
ウイルス血症の時期であり、感染力があります


そのため、一概にパルボの皮疹の時期は感染力はないとは言えませんので、
ご注意ください


PPGSSともう一つ、屈曲周囲病変パターンというのがあります

なぜか、関節の屈曲側に皮疹が出現し、
これもインプレッシブな皮疹となります


知らないと、なぜこんな場所に・・・となりますが、
知っていると、あーパルボの屈曲周囲パターンのやつですね


と一発診断できます




大人では4つの皮疹パターンに分けられるんじゃないか?という論文もありますが、

4つ以外にも多彩な皮疹を呈するのがパルボです

なので、基本の4つを抑えつつ、実は何でもありだよね
と覚えておきましょう



パルボは関節炎、皮疹、発熱、肝障害、髄膜炎、
血球減少など多彩なプレゼンテーションを呈します


個人的にはウイルス界の梅毒的存在だと思っています


だからこそ、このパルボを病歴や身体所見で診断できるといいですよね



誤診を防ぐため、多くの検査を出してでも、
診断できればいいんだ!という時代は終わりました


最近は正確性、迅速性、効率性、患者中心性、公平性を含めて
診断の質が望ましい時代になっています

いわゆるdiagnostic  excellenceが重視され始めています


誤診した症例を振り返ることはよくあると思いますが、
診断できた症例もプロセスを振り返る必要があります


検査は出し過ぎではないか?
病歴と診察で診断できたのではないか?
時間をかけすぎたのではないか?
患者さんにちゃんと説明して診断プロセスを辿ったのか?
・・・



diagnostic  excellenceを達成するためには、
診断能力を研ぎ澄ませなければなりません

日々勉強ですね


 

2024年5月26日日曜日

臨床における最難関の構造 〜前医の善意で疾患が豹変する〜

 まさに今回のNEJMのケースもピットフォールだらけでした


73歳 女性 皮疹が増悪してきたため転院搬送




今回の症状の出る8日前まではいつも通り元気でした

始まりは肛門の痛みで近医を受診し、造影CTにて肛門周囲に1.8cm大の腫瘤を認め、
パンチ生検が行われました

その後、入院となりピペラシリン・タゾバクタムやバンコマイシンが投与されました

(肛門周囲膿瘍としてGNRや嫌気性菌、黄色ブドウ球菌や腸球菌をターゲットにしたのでしょうか・・・それにしても広いスペクトラムですね)



入院2日目、生検では腫瘍は確認されず、肛門痛は軽減していました

膿瘍と判断されたためか詳細は不明でしたが、
オーグメンチン、ドキシサイクリンが処方され退院となっています

(生検した時の培養は?グラム染色は?とつっこんでしまいますが、
 つっこんでも何も出てこないので受け入れます。

 客観的な事実だけ受け入れて、感情は反応しないことが大事です
 実臨床ではお問合せをしましょう)



退院2日後(転院となる4日前)から鼠径部にびらんを伴う皮疹が出現してきました
掻痒感や痛みを伴っており、その後の3日間で会陰部や下腹部にも広がってきました

発熱や寒気はありませんでした

転院となる1日前に前医で精査が行われました
血液検査にて白血球増多、リンパ球増多、好酸球増多がみられました

CTでは左肛門周囲に直径2.4cmの炎症と軟部組織の肥厚が認められ、
左骨盤側壁、右外腸骨、左右鼠径リンパ節が腫大しており、直径2.1cmありました

スティーブンス・ジョンソン症候群の診断で、点滴とグルココルチコイドによる治療が開始され、更なる精査加療目的に転院となりました

(SJSにしては、好酸球増多が気になる・・・
 リンパ節が腫れすぎているのが気になる・・・
 被疑薬は?抗生剤だとしても少し早すぎないか?
 などなど、違和感があります

 臨床での違和感は非常に大事です
 

 前医を否定するのではなく、一回診断をリセットして考えることが重要です
 事実を淡々と集めます

 最初の肛門の痛みは粘膜疹の痛みとすれば、抗生剤が入る前からであり
 薬疹の可能性は下がるのではないか?
 
 もしくはそれより前に新たな薬が開始されていないかを確認する必要があります)



転院後、皮膚の掻痒感や疼痛はなくなっていました
眼痛、排尿困難、膣痛はありませんでした


湿疹と乾癬の既往歴があり、本症発症の3年前に診断されていました

治療は 乾癬に対しては、アシトレチン、ベタメタゾン、クロベタゾール、トリアムシノロンの外用が開始され、一定の効果がみられていました

湿疹はデュピルマブで治療されていたが、眼合併症のため6ヵ月後に中止されていました

(デュピクセントは内科医としては喘息の治療薬という認識でしたが、
 耳鼻科では鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、皮膚科ではアトピー性皮膚炎、
 慢性特発性蕁麻疹に使うことができます

 デュピクセントの副作用に精通しておく必要がありますね

 デュピクセント関連の結膜炎が有名です)



デュピルマブ関連OSDについて

皮膚病診療 42巻10号 (2020年10月発行)より

デュピルマブは,IL-4とIL-13の共通の受容体であるIL-4Rαサブユニットに対する完全ヒト型モノクローナル抗体であり,IL-4とIL-13のシグナルをブロックすることによりアトピー性皮膚炎や気管支喘息に奏効する

ADに保険適用された2018年春以後,大きく変化を遂げた同疾患の全身療法により,
速やかな寛解導入が期待できる.

高い治療効果が期待できる一方で,デュピルマブ治療をしたAD患者には特徴的に眼の副作用を認めた

デュピルマブによる眼合併症は,ADでは20~40%に及ぶ症例に発症すると報告されている
 
本邦におけるADのデュピルマブ市販直後6カ月調査結果概要(2018年4月23日~10月22日)では,全合併症410件中,眼合併症は191件(46.6%)にものぼる.

同合併症は多くは皮膚科医からの報告であり,感染性結膜炎,アレルギー性結膜炎,眼瞼炎,眼瘙痒症,重症のアトピー性角結膜炎(atopic keratoconjunctivitis:AKC)などさまざまな診断名で報告されている.




Eye (2021) 35:3277–3284









アトピー性皮膚炎の患者は、一般集団と比較して、
アレルギー性結膜炎、眼瞼炎、角膜炎、感染性結膜炎、円錐角膜などの眼表面疾患 (OSD) を呈する頻度が高くなります

デュピルマブ療法では、臨床試験で眼表面疾患の発生率増加が報告されています

興味深いことに、デュピルマブ関連OSDはアトピー性皮膚炎患者に限定されており、喘息や慢性副鼻腔炎の臨床試験では観察されていません

幸いなことにデュピルマブ関連OSDのほとんどの症例は軽度から中等度で一過性です



デュピルマブはインターロイキン (IL)-4/IL-13 受容体を標的とし、
2 型炎症の 2 つの主要なメディエーターである IL-4 と IL-13 のシグナル伝達を阻害し、
アトピー性皮膚炎の臨床徴候と症状の改善をもたらします



アトピー性皮膚炎患者はさまざまな眼表面疾患のリスクが高く、
アトピー性皮膚炎患者集団における最も一般的な眼合併症は結膜炎です

図1アトピー性皮膚炎患者によく見られる眼表面疾患


アトピー性皮膚炎における眼表面疾患の発生率と鑑別診断 

アレルギー性結膜炎、眼瞼炎、角膜炎などの眼表面疾患は、
アトピー性皮膚炎患者の眼科合併症としてよく知られており、
特に重症患者では32.4~55.8%の発生率が報告されています

アトピー性皮膚炎患者におけるアトピー性角結膜炎単独の発生率は25%~42%とされています

 アレルギー性結膜炎の臨床徴候や症状は診断に特有のものではないため、
幅広い鑑別診断を考慮することが重要です

OSDの誘因として、特に眼瞼皮膚炎を伴う場合は、
刺激性接触皮膚炎やアレルギー性接触皮膚炎を除外する必要があります


 直ちに眼科を受診すべき兆候としては、
眼の透明性の低下、視力低下、眼脂、眼圧の上昇などが挙げられます 

コンタクトレンズを装着している患者で目の充血がみられる場合は、感染性角膜炎のリスクが高いため、直ちに眼科を受診すべきです





免疫チェックポイント阻害薬が顕著な例ですが、
本当に・・・新しい薬は新しい病気を作りますね






その他の既往歴として、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、不安神経症、性器単純ヘルペスウイルス(HSV)感染がありました

最後にHSVが再燃したのは3年前で、バラシクロビルによる治療を受けていました

他の薬物には、アムロジピン、ドキセピン、ガブアペンチン、インスリングラルギン、インスリンリスプロ、メトプロロール、リスペリドンなどがあり、ロラゼパムは不安のために必要に応じて使用されていました

薬物アレルギーの既往はありません

今は仕事はしておらず、以前は看護助手として働いていました

彼女は黒人で、ボストン郊外に妹と住んでいた
彼女は非喫煙者であり、飲酒も違法薬物の使用もありませんでした


診察では腋窩、腋窩溝、頸部、下腹部、陰部、両大腿内側の皮膚に、
潰瘍性プラークを形成する単形性の潰瘍が多発し、膿性排膿と悪臭を伴っていました

爪と足の爪に爪甲ジストロフィーがみられた
両手の掌側と背側には、鱗屑、深い亀裂、漿液性痂皮がみられた

左上腕内側には紅斑を背景に、穴のあいた潰瘍を伴う単形でバラバラのピンク色の丘疹がありました

この変化に本人は気づいておらず、発症時期も不明でした

口腔および粘膜病変はみられなかった

圧痛のない腋窩リンパ節腫脹と鼠径リンパ節腫脹がありました


(粘膜疹がないことが強調されています
 ということは、SJSらしくないですと暗に言っている気がします

 それよりも皮膚にプラークや潰瘍ができており、
 悪臭や排膿があることから、何らかの感染症が疑われます


 梅毒やNTM、特にMycobacterium chelonae、結核、ハンセン病を考えたくなりました
 培養や特殊な染色で菌の同定をしたいです)



Mycobacterium chelonaeの皮膚病変

Acta Derm Venereol . 2019 Sep 1;99(10):889-893.



Mycobacterium chelonaeによる皮膚および軟部組織の感染を呈することがあります

このまれな感染症の臨床症状は人によって異なります

 罹患率が増加しているにもかかわらず、患者はしばしば誤診されます

正しい診断を下すためには、病歴聴取を注意深く行うことに加え、
組織生検によるマイコバクテリアの培養と病理組織学的検査が必要である

診断された後の適切な抗生物質治療が必要である






実際は・・・

病変の基部から採取した表皮細胞のサンプルをHSV核酸検査が提出され、
左腋窩と左上腕の皮膚のパンチ生検が行われた

カポジ水痘様発疹症(KVE)が考慮され、
アシクロビル、セフトリアキソン、バンコマイシンの静脈内投与が開始されました


皮膚生検標本の検査では、左腋窩にHSV感染と一致する変化があり、
左上腕に乾癬様皮膚炎が認められたが、T細胞リンパ増殖性障害による皮膚病変は認められなかった

鼡径部の傷の1つから採取された培養液では、緑膿菌が検出され、
セフトリアキソンが中止され、セフェピムが開始となりました 


(カポジ水痘様発疹症(KVE)をいつも想起できなくて、困っています・・・
 一度も自分で診断したことがないので、まだ自分の中に記号接地していないのでしょう・・・

 緑膿菌が血流感染して皮膚病変を作ることもあり、壊疽性膿瘡と呼ばれますが、
 今回は皮膚由来なのでしょうか

 水回りにいる菌なので、ジメジメした所で繁殖します)



緑膿菌による皮膚病変の色々





緑膿菌による毛包炎

緑膿菌感染に起因するとされる最もよく知られた皮膚疾患のひとつに、
「温水浴槽毛包炎」があり、温水浴槽、ジャグジー、プールの使用に起因します

温水浴槽毛包炎は、典型的には汚染された水に暴露されたそれまで健康であった人に発現する

これは、汚染された水に長時間浸った約24時間後に、
多数の大きく単形で有痛性の丘疹および膿疱が突然発現することを特徴とします

病変は水面に接する身体部位、典型的には体幹上部、腋窩、臀部および臀部に集簇します

Am J Clin Dermatol 2011; 12 (3): 157-169



緑膿菌感染だったり、HSVによるかポジ水痘様発疹症だったり、
いろんなことが皮膚で起きていますね


その後、CTが撮影され、肺に結節性病変が見つかり、
腋窩や鼠径のリンパ節腫脹がありました


A diagnostic test was performed. 
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診断は?って言われても困りますよね 笑


この時点で何を診断すればいいのでしょうか・・・と混乱してしまいました

3年前からある皮膚病変?
リンパ節腫脹?
肛門周囲の腫瘤?
肺病変?
新たな皮疹?
カポジ水痘様発疹ではなかった?
緑膿菌の皮膚病変?


全てを一元的に説明できるものを診断せよ、と解釈しました

そうなると、皮膚のT細胞性リンパ腫なのでしょう


もともと湿疹や乾癬と言われていた皮膚病変も実はT細胞性リンパ腫であり、
今回それが悪化してようやく診断に至ったのでしょうか


結局、皮膚とリンパ節生検を行うことが重要になるので、
行った検査は皮膚生検とリンパ節生検でしょう


もちろん、感染症(特にNTM)の除外はしておきたいですが




今回の症例は経過中に抗生剤が入ってしまったため、薬疹が疑われ、
ステロイドまで入ってしまっているので、診断が難しくなっています


臨床で難渋する状況が、このパターンです


つまり、誤診され間違った治療が入った状態の普通の疾患です



普通の診断過程を踏めば、
診断や治療に難渋しなかったであろう病気が、
ある検査をしなかったため、ある治療が入ったために
突然、困難症例に生まれ変わります


治療による修飾も加わり、わけがわかならい・・・と言いたくなる状況があります


例として挙げるとキリがありませんが、

・血培を取らずに始めた抗生剤によって血培が生えないIEに豹変

・RAやPMRの暫定診断で、血培を取らずに始められた生物学的製剤やステロイド
 あとで全身の膿瘍が発覚・・・

・検体をとる努力をせずに始めた抗生剤によって、
 何と戦っているかわからない化膿性椎間板炎

・出すものを出さずに始めたステロイドによってマスクされたリンパ腫

・VB12が測定される前にメチコバールが処方された痺れ

・MDS患者さんにEPO測定前に投与された輸血


などなど


治療による修飾やインパクトが強いのは、
やはりステロイドと抗生剤ですね



これは一つの構造であり、同じ現象です

数学で言うと一つの公式を使った計算式ですが、ただ係数が違うだけです



もちろん、適切な検査ができない環境や状況があるのは重々承知しています


ただ、そういう状況を作り出してしまうことは、
患者さんのデメリットになっていることは忘れないようにしたいです

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解説 抜粋

リンパ腫と白血病はまれであるが、紅皮症の重大な原因である
リンパ腫もこの患者の全身性リンパ節腫脹の原因となりうる

この患者は以前、T細胞リンパ腫のリスク上昇と関連するデュピルマブによる治療を受けていたことに注意することが重要である

(とてもびっくりしたのですが、この記事を書いている4時間前に

デュピルマブと皮膚リンパ腫の関係性 ─
 アトピー性皮膚炎患者におけるリスクと注意点 というタイトルで

  Yahoo!ニュースでも出ていました、NEJMに出たので書かれた気がしますね)




デュピルマブによる治療を受けた患者は、CTCLに類似した可逆的な良性のリンパ球集簇(lymphoid reaction:LR)が生じる可能性があることが示されています


日本皮膚科学会からもデュピルマブ適正使用に関する注意喚起が出されています

デュピルマブはIL-4受容体αに対する抗体で、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎、既存治療によっても症状をコントロールできない重症又は難治の気管支喘息、既存治療で効果不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に保険適用となっており、多くの患者さんに投与され、病気のコントロールに役立っています。  この薬剤のアトピー性皮膚炎に対する効果は臨床試験によって証明されているものの、アトピー性皮膚炎類似の臨床像を示したり、Th2優位であることが報告されたりしている他の皮膚疾患に対する使用については、効果や安全性は確認されていません。アトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患への使用は、倫理委員会の承認を得た後に、患者さんの同意のもとに臨床試験としてなされるべきであり、それ以外の適用外使用は厳に慎む必要があります。特に皮膚悪性リンパ腫については、デュピルマブ投与後に病勢が悪化した報告が集積されつつあり(文献1)、海外では死亡例の報告もあります。デュピルマブを患者さんに投与する際は、アトピー性皮膚炎と鑑別すべき疾患をきちんと除外し、適正使用ガイドラインを参照のうえ、ご使用いただくようにお願い致します。

  文献1:Sugaya M. Is blocking IL-4 receptor alpha beneficial for patients with mycosis fungoides or Sézary syndrome? J Dermatol 48: e225-e226, 2021

というわけで・・・

デュピルマブは眼病変と皮膚リンパ腫を悪化させたり、
引き金になる可能性が示唆されていることは勉強になりました





皮膚生検検査では、HSV感染と一致する変化が認められたが
皮膚T細胞リンパ腫の証拠は認められなかった

最終的な生検結果は免疫組織化学染色の方がより高感度であるが、
特定の皮膚T細胞リンパ腫に対する皮膚生検の診断収率はかなり低いことを認識することが重要である

皮膚生検で腫瘍性細胞がみられなかったとしても、この患者の紅皮症の原因としてリンパ腫を除外することはできない

セザリー症候群、菌状息肉症、成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)、血管免疫芽球性型(血管免疫芽球性T細胞リンパ腫またはAITLとしても知られる)などのその他の結節性濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫、および末梢性T細胞リンパ腫の「特定できない」亜型など、いくつかのタイプのリンパ腫が紅斑を引き起こすことがある

セザリー症候群、菌状息肉症、ATLL患者ではこの患者にみられたような顕著なリンパ節転移を示すことはまれである
これとは対照的に、AITL患者の大部分はびまん性リンパ節腫脹を呈する

さらに、この患者における好酸球増加と高ガンマグロブリン血症の所見も、AITLの診断と一致している

この症例では、肛門周囲液貯留の原因は定かではないが、広域抗生物質による治療にもかかわらず増大したことから、非感染性の原因と考えられる

AITL患者に生じる皮膚発疹は、全身性グルココルチコイドによる治療に非常に敏感であるため、皮膚生検を行う前にグルココルチコイド治療を行うと、皮膚を侵すAITL患者の診断結果が著しく制限される可能性がある


この患者は最初の病院でグルココルチコイドの静脈内投与を受けており、
この病院で行われた皮膚生検の診断結果に影響を与えた可能性がある

別の説明として、紅皮症を引き起こした腫瘍随伴性発作が考えられる
この症例では、末梢血のフローサイトメトリー、骨髄生検などの診断法も検討された、


最終診断:
結節性濾胞性ヘルパーT細胞リンパ腫、
血管免疫芽球型(angio-immunoblastic T-cell lymphoma)



まとめ

・致し方ない状況かもしれないが、
前医の善意によって診断が難しくなることがある

・それは臨床において最難関の構造である

・今回はステロイドやデュピクセントが疾患修飾した可能性がある

薬疹?かと思いきや・・・

昨日のNEJM のケースは、73歳の女性が皮疹が悪化してきたため、転院となった症例でした

皮疹が悪化してきて転院となることは、滅多にありません

重症の薬疹(SJS、TEN、DRESS)か、壊死性筋膜炎でデブリが必要な症例が疑われました


脱線ですが・・・

先日経験した症例は、カルバマゼピンを内服して8週間後に口腔内の痛みが出現し、

口唇や口腔粘膜がただれ、びらん・潰瘍を形成し、耳鼻科受診されました


視診のみでHSVが疑われ、抗ウイルス薬を処方されましたが、

粘膜病変は全く改善せず、数日後には全身に紅斑や丘疹、膿疱が出現してきました


皮膚科を受診されましたが、発熱もみられたため
皮膚科から内科に紹介入院となりました


血液検査では好酸球増多やリンパ節腫大を認めましたが、臓器障害はみられず、

カルバマゼピンに伴うDRESSと診断し、カルバマゼピンを中止し経過観察としました


抗てんかん薬に伴う薬疹はよく経験します


                           seizure . 2019 Oct:71:270-278. 


このレビューではDRESSは内服後、1-12週間以内に出現すると記載されています

SJSやTENは5日から4週間以内のことが多いです



DRESSの診断にはいくつかピットフォールがあります


ピットフォールその①

内服後、時間が経ってから皮疹が出現するので、

薬疹であることを患者さんもDrも疑えない


DRESSを疑った場合は、2-3ヶ月前までの処方を見直す必要があります






ピットフォールその②
全身の皮疹ではなく、粘膜疹が最初に出現することがある


少ない経験ではありますが、皮疹の前に粘膜疹(咽頭痛、口唇のただれ)から出現し、
診断に難渋したことがあります


喉の痛みが主訴でくるので、扁桃炎のカテゴリーで考えてしまうのですが、
何にも当てはまらず、既存の疾患群(溶連菌、IM、水疱性類天疱瘡など)っぽくもありません


その割に痛みが強いので困った挙句、HSVとして対応することが多いです

ですが、数日から1週間後くらいすると、全身に皮疹が出現し、
2ー3ヶ月前のお薬を見直すと、カルバマゼピンやラミクタールが入っていましたね・・・と気が付くことがあります


重症薬疹が全身の皮疹を伴わずに粘膜病変、
特に喉の痛みで来ることは知っておくと、いつか役に立ちます


DRESSとしばしば鑑別になるSJSの診断基準の副所見にもかかれていますが、
痛みでご飯が食べられなくなるほどです


副所見

3.全身症状として他覚的に重症感,自覚的には倦怠 感を伴う.口腔内の疼痛や咽頭痛のため,種々の程度 に摂食障害を伴う.

page1image3776853408

日皮会誌:126(9),1637-1685,2016(平成 28)



原因不明の喉の痛み(近医で抗生剤ローテーションがされていることが多い)を見たら、お薬を1-3ヶ月前に遡って確認してください

そして、全身の皮膚をチェックしてみてください


ピットフォールその③
急性の症状であり、腫瘍を忘れがち


DRESSの診断はとても難しいです
皮疹だけでなく、病歴や血液検査など総合的に考えて診断を下します


DRESSもSjSも粘膜疹はどちらも出現するので、
皮疹では見分けられないと割り切った方が良いでしょう


重症薬疹は急性の症状であり、発熱や皮疹が目立つため、
まずは感染症(麻疹、風疹、EBV、HIV、梅毒、播種性淋菌、IE、リケッチア、マイコ)を疑いたくなります

もちろん、その思考でよいのですが、
感染症ではなさそうだとなった時はギアチェンジのタイミングです


本当に薬疹で良いか、自己免疫疾患や腫瘍があるのではないか?という思考になります


自己免疫では、特にSLEやAOSD、菊池病が鑑別になることがあります


そこで自己抗体など測るのですが、陰性で帰ってきます

やっぱり薬疹(DRESS)かな・・・と考え、TARCやHHV6を測ろうかなと考えます



臓器障害も出てきたし、そろそろステロイド入れようかと思った時は注意が必要です



内科医が原則として心得ておくべきことは、

DRESSやSJSとしてステロイドを入れようした時には、
必ず皮膚生検やリンパ節生検を行ってから入れるべきということです


典型的でない薬のDRESSの場合、DRESSの診断は慎重になるべきです


特にもともと皮膚疾患(難治性のアトピー、乾癬)がある人の場合は、
診断が難しくなります


皮疹自体が長年の名残なのか、活動性があるのか、いつからなのか?が悩ましい時が多いです


そもそもの「アトピー」や「乾癬」の診断が違っている時があり、
最初からT細胞性リンパ腫の可能性があります





まとめ
・DRESSの診断は慎重に行う

・被疑薬が2-3ヶ月前に入っていることもあり、そもそも薬疹を疑いにくい

・粘膜疹から始まる重症薬疹がある

・重症薬疹と診断し、ステロイドを使う前には必ず皮膚生検を行う




2023年6月19日月曜日

MDSの3つの顔 〜前半 皮疹の考え方〜

悩ましいMDSの症例です(※症例は加筆・修正を加えてあります) 


78歳 男性が皮疹を主訴に来院されました

背景に無治療のMDSがある方であり、耳の皮疹が出現してきたようです

となれば、再発性多発軟骨炎ですね!



ボスが昔から口酸っぱく、言っておりました


「MDSの人は再発性多発軟骨炎を合併することがあるんだ。
 耳の赤みは狙っていないと見逃すから、
 注意して見ないといけないよ!」



10年以上前からそう教えられてきましたので、
MDSに再発性多発軟骨炎が合併するもんなんだなあ〜と漠然と思っていたら、、、

近年、名前がついてびっくりしました

2020年のNEJMにVEXAS症候群として発表されました


ユビキチン関連遺伝子変異による
VEXAS(vacuoles, E1 enzyme, X-linked, autoinflammatory, somatic)症候群という成人発症自己炎症症候群です


VEXAS症候群は鼻や耳の軟骨炎を発症し、皮膚症状をきたす人が多いです


これまでMDSの人に再発性多発軟骨炎が合併した人たちは、
VEXAS症候群だった可能性があるということです


現段階では名前がついていない疾患や症候群も
数年後には名前がついていると思うとロマンを感じますね 


「この症候群はいつか必ず名前がつく!」と今から言っておきたいものです 笑



今回の症例は両大腿部や右前腕にやや大きめの淡い楕円形の発赤を認めました
表面は綺麗であり、盛り上がっており、圧痛もありました

皮疹の考え方は「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」が人気ですね

とてもわかりやすくて、いい本ですが、
タイトルだけがちょっと・・・


皮疹については、いろんな先生から教えてもらっていたので、
誰も教えてくれなかったわけではない気がします 笑

皮疹の考え方(平本式)




鑑別診断もシステム1(直感)と2(分析的思考)で考えますが、皮疹も同じです


皮疹の場合は、システム1で終わっていることが圧倒的に多いですが、
内科医はシステム2で考える癖を持っておいた方がよいと思います


今回の皮疹は見た目の直感は脂肪織炎でした


あえて言語化(分析的思考)すると、

分布は上肢と両側大腿のみ、淡い楕円形の紅斑が斑状にみられる

範囲は拳〜手のひらサイズであり、境界は不明瞭

表面はきれいであり、紅斑は盛り上がっている
圧痛や熱感を伴っている


左右対称、上下肢の分布からは外的要因は考えにくく、体内の免疫機序が考えられる
血流に乗って詰まったような分布でもない
外傷や物理的なダメージがが働きやすい部分でもない

表面は平滑できれいであり、表皮の炎症(湿疹)はない
押せば消退する浸潤を伴う紅斑であり、
皮下・脂肪組織の充血(血管拡張)・浮腫が疑われる

熱感や圧痛を伴う紅斑であり、皮下・脂肪組織の炎症・細胞浸潤が疑わしい

システム2で考えても脂肪織炎でよいと思われます











脂肪織炎を疑った場合、2つ鑑別を忘れないようにしています

1つ目はリンパ腫
2つ目はヘリコバクター・シネジーです





これはヘリコバクター・シネジーの皮疹です

本症例の皮疹もこんな感じでした



日本の北海道や札幌の先生方のシネジー感染症の皮膚所見のまとめです
非常によくまとまっています

(以下引用)


H. cinaedi菌血症47例のうち34%(16例)に皮膚病変が認められました
いずれも高熱を伴う紅斑が突然出現した
 最も一般的な皮膚症状は表在性蜂巣炎で、
痛みを伴う紅斑や四肢の浸潤性紅斑を生じる

3例は浸潤した紅斑を示したが、6例の紅斑は浸潤はみられなかった
紅斑の直径は2~14cmで、1人の患者に見られた病変の数は2~12個であった

所見からは、Sweet症候群、固定薬疹、蕁麻疹、結節性紅斑などの鑑別診断が必要であると考えられた

5例とも病理組織学的には、網状真皮にリンパ球や好中球の炎症性浸潤がみられ、
軽度の脂肪の中隔炎が認められた

血管炎はみられなかった
Giemsa染色やWarthin-Starry染色では菌は検出されなかった


蜂窩織炎という言葉は、通常、真皮や皮下組織の炎症で、
細菌が原因と推測されるものを指します

しかし、H. cinaediの皮膚症状は、一般的な蜂巣炎ではなく、
「有痛性紅斑」や「浸潤性紅斑」がメインであることに注意する必要があります


 このような痛みを伴う紅斑は、細菌感染の典型的な皮膚症状ではないので、
容易に見過ごされる可能性があります

この菌は培養での増殖が遅く、血液培養で菌が確認できるまで、通常6〜10日かかる

培養結果が遅れると、スウィート症候群と間違って診断され、
不適切な治療を受けかねません

(引用終了)


というわけで、結節性紅斑の治療はNSAIDsやステロイドですが、

ステロイドで診断が遅れてしまう疾患(リンパ腫)と
ステロイドが害になってしまう疾患(H.cinaedi)を知っておきましょう





他の身体所見は問題なかったようです

お元気そうなので、血液培養や画像だけとって、翌週の外来フォローでも良さそうです

もちろん、本人の心配や都合で入院精査もありですね


では実際、脂肪織炎(結節性紅斑疑い)を見た時の対応です


精査の最終段階と治療の最終段階をイメージしながら、
逆算して診療を進めることが重要です



脂肪織炎の最終的な検査は生検になってしまうので、
そこに至らなくて済むかどうかは、他のヒント次第です

リンパ節腫脹と同じく、他の症状や所見がないかを確認します

病歴で溶連菌感染があった
ヘルペス感染があった
エルシニア感染があった
ベーチェットを疑う病歴があった

既往で潰瘍性大腸炎があった




皮疹をいくら見ても答えは分かりません

皮疹の答えを探したいのであれば、皮疹の周りを探すことが重要です


この理論は、ぶどう膜炎にも当てはまります



皮疹の周りにヒントがない場合は、皮疹をとるしかありません









実際は脂肪織炎は病理で白黒つかない時もあります・・・


結局、何だったのかよくわからないこともあり、

病理に引っ張られないというのも大事です



さて、本症例の結末は・・・





Where is the answer ?

吉田松陰先生を彷彿とさせるような先生達が集う 勉強会で症例提示させていただきました ※症例は一部修正・改変しております  

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