ほとんど無症状な肝嚢胞も巨大化したり、
肝臓全体を占拠するようになると、
症状を呈します
しかし、以下の症状を安易に肝嚢胞のせい、と決めつけてはいけません
他の原因がないことを検索しなければなりません
例えば、腰背部痛が実は膵癌だったとか、
食欲低下が、実は十二指腸潰瘍だったとか
肝嚢胞が症状と関係していることを証明するのは、実はとても難しいのです
一つの方法として、穿刺吸引してみるという選択があります
穿刺吸引して、肝嚢胞を縮小させたら、症状が消えた
ということであれば、間接的に証明になるかもしれませんが、
そのためだけに穿刺をするのは、リスクが高い気もします
肝嚢胞の症状
大きさと部位によって、症状は異なりますが
①嚢胞が大きくなってきて起こる肝腫大による症状と
②嚢胞内に何かが起きた場合に分けられます
(以下の頻度は、PCLDでの報告です)
①肝腫大によって起こる症状
(1)他臓器の圧排(よくある)
肝臓が大きくなりすぎて、
周辺臓器を圧排することがあります
胃・十二指腸の圧排によって、
食事をするとすぐにお腹がいっぱいになったり、
ひどいと、食事がとれなくなることもあります
そして、体重減少や低栄養に陥ることもあります
肺を圧排することによって、右肺の無気肺や十分に深吸気ができず、
息切れといった症状が出ます
(2)肝臓内の構造物の圧排(まれ)
肝内構造物を圧排することで症状が出ます
胆管の閉塞・狭窄によって、黄疸が出現することもあります
門脈を圧排することで、門脈圧亢進を来すこともあります
ひどい人は、門脈-静脈シャントを来します
IVCや肝静脈を圧排することで、
バッドキアリやIVC症候群を引き起こします
しかし、これらは非常に珍しいです
②肝嚢胞に何かが起きた場合
(1)出血(よくある)
10-30%にあるといわれており、比較的頻度の高い発生率です
突然の右季肋部痛で発症し、
数日続きます
CTでは、出血したばかりであれば、
診断できますが、
USやMRIのほうが診断しやすいです
治療は、痛み止めで、自然に軽快します
しかし
何度も繰り返すようなら、硬化療法を検討します
(2)感染(まれ)
10%以下の発症率です
腎嚢胞感染の方が多いです
CTやUSでは、どこに感染のfocusがあるかを判断するのは、
難しいです
なので、ここでもPETが有用とされています
(3)破裂
いきなり破裂することもありますが、
外傷が契機になることもあります
ここには書きませんでしたが、
多発肝嚢胞によって生じる消化器症状や呼吸器症状が、
精神的にも悪影響を与えているかもしれないという報告もあります
(Liver Int 2014 Nov;34(10):1578-83.)
それぞれどうなっているかの、画像です
肝嚢胞が症状を呈したら
・まずは、その症状が本当に肝嚢胞によって
起こっているかを検討する
→他疾患の除外を
・症状は肝腫大によるものと嚢胞に何か起きた場合がある
→前者は慢性、後者は急性
参考文献:Journal of Visceral Surgery(2018)155,471-481
Aliment Pharmacol Ther 2011;34:702-713
多発性肝嚢胞ガイドライン