2017年7月28日金曜日

血培からGNRらせん菌が検出されたら

滅多にないですが、出会うと困るのでまとめました

本当はもう少し鑑別になる菌がいるのですが、多くはこの二つです

ヘリコバクターシネジーか、キャンピロです

キャンピロはジェジェニとフィータスで対応が変わるので、
キャンピロまで同定出来たら、外注検査でその後を同定してもらいましょう


血培から、らせん菌が検出されるような状況を感染症の三角形で考えてみます


まずは三角形の真ん中は患者背景です

背景の時に考えるコツとしては、

体の内なる環境(免疫状態)と体の外の環境(暴露)を分けて考えることです


こんなへんてこな菌が血液から検出されるのだから、
背景に免疫不全がありそうだと思いがちですが、
そうでもありません

健常者でも一時的にキャンピロ(ジェジェニ)腸炎では血培陽性となることが多いです

しかし、培養陽性が判明した時点で、症状は軽快していることが多く、

ジェジェニとわかっていれば、治療不要というのが、あり得る選択です


ヘリコバクターシネジーも健常者で菌血症が起こり得ます

ペットのハムスターや犬との濃厚接触者は注意です

家族中で集団シネジー感染というのが、記憶に新しいですね


キャンピロは免疫不全者ももちろん菌血症を起こしますが、

健常人とはプレゼンテーションが異なります

健常人で菌血症になる時は、たいてい腸炎スタートですが、
免疫不全者の場合は、そうとも限らないのです

腸炎症状は乏しいことも多いので、お腹にばかり注目する必要はありません

むしろ、蜂窩織炎や関節炎、中枢神経感染、IEなどを合併してないかを注目すべきです


キャンピロの中でもfetusは侵襲性が強く、人工物が入っている患者さんでは、
人工物感染の可能性を検討した方が良いでしょう

また感染性の動脈瘤を作ることがあり、
キャンピロのフィータスの菌血症患者が急変した時は、
敗血症性ショックよりも大動脈瘤破裂に伴う出血性ショックを考えなければなりません



治療は菌それぞれで異なり、その時の状況でも異なるので、

一概に決めることは難しいですが、

キャンピロだとわかれば、アンピシリン + ゲンタマイシンあたりが

エキスパートの先生からすると、落とし所のようです

そして同定されれば、de escalationします









リンパ節生検

リンパ節生検は外科医の仕事ではありません

内科医の仕事です


もちろん、とるのは外科の先生ですが、ただ取ればいいというものではありません

とる前ととった後が勝負です

とる前には、疑わしい疾患の診断のために、

何の検査を出すかを外科医の先生に事前に伝えておかなければなりません


一番疑っている疾患は〇〇です

でも△△が鑑別になるので、生検して頂きたいです

結核はあまり疑っていないので、結核対応までは必要ないと思います

□□の検査を提出したいので、〇個リンパ節をとって下さい

みたいな感じです


そして、内科医も手術室に行きましょう

とったサンプルがどのようなものか、

何個とれたか、

あまりとれなかった場合は検査の優先順位を決めなければいけません


とったあとは、病理の部屋にいって、病理医に適切な情報を伝えたり、

ディスカッションをすることも重要な仕事です

なので、リンパ節生検のほとんどは内科医の仕事です


咽頭に所見ないけど、喉の痛みがひどい

喉が痛いと言われたら、当たり前ですが、喉をみます

すると意外に綺麗

赤みも乏しく、扁桃腺も腫れていない

少し赤いかな?程度

どうしましょうか?

タバコを吸っている人は喉は慢性的に赤いものです

痛みが強い割に、所見が乏しい時は、咽頭炎のゴミ箱診断をしてはいけません



見えていない所に所見があるかもしれません

まずは患者さんが訴える、
いわゆる「のど」をどこか明らかにすることが重要です

喉は色んな意味で奥が深いのです

有名なのは急性喉頭蓋炎です

これはどこにでも書いてあります

なのでこういう時は、まず急性喉頭蓋炎があるかどうか、つまり
気道狭窄をきたすような疾患がないかを見つけにいきます

次に有名なのは亜急性甲状腺炎でしょう

ですが、甲状腺が痛む疾患はたくさんあるので、飛びついてはいけません

特に亜急性甲状腺炎に対して、ステロイドいこうとする前には、
一度は立ち止まって考えてください

たまにあるのが先天的に瘻孔を持っている人の化膿性甲状腺炎です


咽頭や喉頭に炎症があれば、嚥下時痛があるはずです

ない時は放散痛を考えましょう

代表例は急性心筋梗塞です

心筋梗塞は人によって痛みがなかったり、喉を痛がったり、
肩を痛がったり、極めつけは、耳を痛がる人もいます


急に喉が痛くなった人を見たら、まずは血管系を考えましょう
炎症性の疾患ではそんなに痛みのピークは早く来ません

時間経過も鑑別疾患を絞る上で非常に有用です










Walk in SAH

大事ですよね、Walk in SAH

見逃しやすい状況としては、大きく二つあると言っている人もいます

1)くも膜下出血を想起出来ない病歴
2)CT撮ったけど、見逃した


1)くも膜下出血を想起出来ない病歴に関しては、
まずはよくある勘違いを払拭することです



非典型例が多い疾患(くも膜下出血や解離、心筋梗塞、肺塞栓など)は
カッチリしたゲシュタルトを作らず、
色んなプレゼンテーションでくるということを認識すべきですね

これは研修医になった時にぶつかる壁です

原因は国試の勉強方法にあると思います

典型例ばかりを覚えさせてしまい、病気のゲシュタルトを完成させ、
そのゲシュタルトに合わなければ、除外してしまう

この癖をまずはとることが、研修医にとっての最初の課題でしょう

でも、国試に主訴が眼痛で、眼に所見なし
診断はくも膜下出血

なんて問題出したら非難轟々でしょうから、仕方ないんですけど


臨床で足下をすくわれるのは、いつも
Common な疾患のuncommon なプレゼンテーションの時です

これはカンファレンスで好まれます

色んなカンファレンスにでたり、他人の経験を追体験することも重要ですが、

なんといっても見逃し症例は、M and Mカンファレンスを開き、
振り返りを行うことが大切です

意義はたくさんありますが、メリットの一つに
M(モヤ)andM(モヤ)を少しでも解消できることがあります

自分の中で消化できなくて、モヤモヤが残った症例は、
是非、カンファレンスに出して一緒に悩みを共有しましょう



2017年7月25日火曜日

多発性嚢胞腎が原因で透析中の患者の発熱

多発性嚢胞腎は非常に多彩な合併症を起こします

脳動脈瘤や高血圧は有名ですが、
弁膜症や憩室炎、嚢胞感染、尿路結石を起こすことがあります

なので、多発性嚢胞腎の人が発熱できた場合、感染を起こしやすそうな部位があるので、
そこから詰めていくことはリーズナブルかと思われます

また、透析をしている人の発熱というのも、一つのキーワードであり、
見るべきポイントがあります

太い針で何度も刺されるので、
シャント部の蜂窩織炎やそこからの血流感染をまず疑います

他にはASOになっている人も多いので、足は絶対にチェックしましょう

尿が少しでも溜まっている人であれば、膀胱からほとんど出てこない可能性もあり、
必ず尿培養や尿検査はしておいたほうがよいでしょう

例外は完全な無尿の患者さんです

あとは透析室はかなりの閉鎖空間であり、インフルエンザ時期になると透析室で
大流行するというのは、よくある話です

また透析患者さんは細胞性免疫が落ちているので、
結核のリスクでもあり、原因不明の咳嗽や微熱を見たら、
一度は疑った方がよいでしょう


結局、focus不明で嚢胞感染が否定出来ないとなった時が一番厄介です

なので、多発性嚢胞腎患者さんが発熱したら、

どこかに感染のfocusあってくれ!

と祈りながら、診察し、

どこにもなければ、やっぱりここかなという感じで、
嚢胞刺すかどうかの議論に落ち込んでいくことが多いです


嚢胞の感染があるかは非常に難問であり、
USもCTも感度が低く、MRIやPETを使い診断する事もありますが、
PETまでは現実的ではないので、
やってもMRIくらいでしょうか


実臨床では、嚢胞感染あるかもしれないけど、
抗生剤いってたら解熱してきたから、まあ今回は刺さなくてもよさそうだね

みたいな経過がよくあるパターンです

ただ抗生剤使っても治療経過が良くなければ、
やはりドレナージが必要なので、
MRIとってあたりをつけてから刺すかは、泌尿器科と相談が必要でしょう


嚢胞腎への感染は、

抗生剤の移行率の問題や画像検査の問題、

ドレナージのタイミングなど

議論すべき所がいっぱいあります

2017年7月23日日曜日

眼が腫れた

内科医はめったに出会わない主訴です

でもたまに眼科から紹介になったり、救急で出会います

ではいったい何に注意して診察すればよいのでしょうか

ポイントは失明する疾患、命の危険がある疾患を見逃さないことです

甲状腺眼症はすぐにではありませんが、放っておくと、重症の場合、
視力低下してきます

眼窩蜂窩織炎や海面静脈洞内に破裂した動脈瘤、副鼻腔炎の波及による海面静脈静脈洞血栓症などは、放置すると、命の危険があります

なので診察も大事ですが、積極的に画像評価に進むことが重要です

画像ではいったいどこに注目するかというと、

上眼瞼の腫脹の場合は、涙腺が腫れているのか、それとも上眼瞼挙筋が腫れているのか
を確認します

眼球全体の突出であれば、眼球に付着する外眼筋に注目します

甲状腺眼症の場合は、下直筋が腫れてくることが多いです

活動性が高い場合はSTIRでhighになります

甲状腺眼症はステロイドの適応がある人もいるので、
バセドウ病で眼が飛び出ている人を放置してはいけません

しかるべき専門家に紹介しましょう

放射線や手術の治療のオプションがあります


画像では他に、眼窩内の腫瘤や炎症がないかも確認します

もちろん、MRIのほうがよいですが、すぐとれなければCTからでもよいです

あとは眼静脈のうっ滞所見、海面静脈洞内、上眼窩裂周囲、副鼻腔を見ます

血流の評価やトロサハントのような疾患を探すのであれば、出来れば造影がよいです


まとめると、眼球突出の場合、

致死的な疾患を除外して、頻度が多い甲状腺眼症をしっかり認識する
甲状腺眼症にはたくさんの治療オプションがあることを覚えておくことが重要です







2017年7月22日土曜日

単、少関節炎のスマートな診断

なんてあるわけありません

愚直に病歴と身体所見をしっかりとることが重要です

でもただ漠然と病歴をとっても意味がないので、

ポイントは

  • ちょっと前に何をしていたか
  • 既往にならない既往を探す
です。

ちょっと前に感染でも、自己免疫でも、何かしらの誘引があることが多いです
疾患によって、誘引が異なるので、鑑別疾患を意識して、
何かの暴露がなかったか聞き出します

そして既往にならないような既往を探ります
つまりカルテの既往歴の所に書かれないような既往です

例えば、
  • 爪がボロボロになりやすい
  • 皮膚科にかかったことがあるけど、もうかかっていない
  • 日の光で焼けやすく、痛みがでる
  • 口内炎がよくでる
  • 結節性紅斑を疑わせるような、足の皮疹があった
  • たまに赤い便が出たり、下痢や腹痛がある
  • 腰が若い時から痛い
といったものです

病名にはなりにくく、大きな病気はないですか?

と聞いても出てきません

ヒントは過去カルテを見直すことです

たまに皮膚科受診歴があったり、眼科受診歴があったりすることもあります




急性の単関節炎の実際の考え方は、化膿性関節炎の除外が全てです
しかし頻度が多いのは痛風発作なので、痛風ならいいんだけどなあ、
と考えながら病歴をとります

難しいのは、化膿性っぽくはないけど、結晶誘発っぽくもない時です

その時に、上記を思い出して下さい


次は診察です

痛風はシステム1で一発診断できることが多いです

単関節炎で、足指の第1MTPなら、痛風でしょう

他の関節炎の場合でも、例えば耳介に痛風結節らしきものがあれば、
慢性の高尿酸血症がありそうだなとすぐにわかります

でもお酒は飲みませんなんて言われても、動じる必要はありません

次は皮膚と爪を見ます

皮膚では、乾癬や活動性のアトピーを探します

乾癬もアトピーも皮膚の細胞のターンオーバーが亢進するため、尿酸値が上昇します

いわゆる二次性の高尿酸血症の原因を探ればいいのです

他には、血液腫瘍や腎不全、薬が有名です

システム1で診断できなければ、システム2で全身くまなく診察しましょう



繰り返しにはなりますが、大事なのは化膿性関節炎を見逃さないことです

痛風っぽくても、原則、禁忌がなければ関節は刺しましょう


こむら返りと仮性肥大

訴えが強いのが、こむら返りです

確かに痛い

こむら返りになったことない人はいないのではないかくらい、よくある現象です

しかし、起こるといっても健常人ならたまにです

頻繁に起こる時は病気かもしれません

原因は何であれ、対処療法がよく効きます

みんな大好き、芍薬甘草湯です

日本の漢方の処方のNo1処方率とも呼ばれています

ですが、芍薬甘草湯は予防というよりも、本来はつったらすぐに飲むような薬だそうで、
予防にはあまりむかないようです

でもだいたい実感としては効果あるように感じます

予防には疎経活血湯 がよいという人もいますが、あまり大差ないように感じます

どちらも甘草の含有量が多いので、いつの間にか低K血症で足がつるようになった、

なんていうことにならないように、たまに採血しましょう

そして血圧のチェックを忘れずに



こむら返りの訴えを聞いたら、腓腹筋を診察しますよね

スルーされがちですが、たまにやたらと腓腹筋部が腫れている人がいます

筋トレしてる人なら、いいのですが、

そうでなければ病気かもしれません

痛みがある人とない人で考える疾患が違います

痛みがなければ、最低限、甲状腺のチェックはしておいたほうが良いでしょう

たまに成人発症の筋ジストロフィーはありますが、
そこは病歴次第で考えればよいと思います





2017年7月20日木曜日

精神科疾患かなと思ったら

内科の外来にも精神科疾患を患っている人が、
精神症状が悪化してくる事があります

または精神科疾患を指摘されていないものの、
家族におかしくなったと連れてこられる人もいます

そういう時は精神科の病気の人だー

といって、

いきなり、白旗挙げて、精神科に紹介するのはやめましょう
精神科に行く前に、内科的疾患の否定が大事というのは、よく言われることです

自分達のテリトリーにある病気が精神症状として出てくることもあります
精神科紹介した後に、高Ca血症でした、なんていう逆紹介にならないようにしましょう


考え方として、精神症状を巣症状と考えることもできます

しかし、他の高次脳と違って、精神症状をきたす部位が曖昧であり、
さらには主観的な訴えになるので、巣症状としては一般的には認知されていません

失語があれば、左のMCA領域に病変があるはず
という感じで、部位がある程度明確です

しかし、精神症状は辺縁系や大脳皮質、皮質下、視床、尾状核に及ぶ病変で起こることが多いですが、明確には断定できません

なので今の所は、正常な精神症活動は脳によって行われることは間違いないと
思われますので、
脳の機能を落とすような、脳の病気、もしくは全身性疾患をまずは疑うことが必要です

器質的な疾患を除外出来れば、統合失調症や躁うつ病といった
精神科の範疇の疾患を疑います



2017年7月19日水曜日

ワレンベルグ、その後②

ワレンベルグ、その後②

緊急編です

夜間に当直で、

「患者さんが急に苦しがっています。」と看護師さんから連絡です

見に行くと、ぜえーぜえー言っています。

明らかに聴診器が無くても聞こえるほどのstridorです
幸い、SpO2は96%です
本人は苦しいと言っています

さて、何を考えるかです。

ワレンベルグで入院し、2週間目の方

症状はしゃっくりが持続し、色々な薬を試している最中です
誤嚥性肺炎も合併し、抗生剤治療5日目で、酸素化は問題ないようです
嚥下障害があり、胃管挿入中

考え方は、直ぐに処置した方が良いかどうか、をまずは考えます
原因は何であれ、stridorは窒息の危険があるので、
緊急で気道確保が必要かを考慮します
物と人を集めます

気道確保の準備は当たり前として、今回は原因を考えてみます

今回の場合で多いのは、痰が声帯に付着していることです

ワレンベルグでは、半側の声帯麻痺が起きている事が多く、
上手く咳が出せないので、痰がなかなか取れません

なので、対応は頑張って咳をしてもらったり、吸引を試してみます
出来ればすぐにファイバーで覗ければ尚良いですが、
喉頭鏡を少し使って見えれば、それでもいいです

なので、原因不明のstridorを見たら、まずは動かない声帯にくっついた痰を考えます


稀な原因として、nasogastrictube syndrome(NGT)というものがあります
胃管を入れておいた人に、原因がよくわからないが、
両側の声帯麻痺をきたす疾患です

あまり認識されていない気がしますが、
両側声帯麻痺は、エマージェンシーです

半側であれば、多くは甲状腺手術や脳梗塞、大動脈瘤、肺がんのリンパ節転移です

なのでもともと声がかすれている人は、言われていないかもしれませんが、
片側の声帯麻痺があるかもしれません
そういった人は、反対側が麻痺を起こすと、急に窒息します

窒息というと、何か異物や腫瘍があるのかな?と
画像を撮りたくなりますが、画像で何もなければ、
両側声帯麻痺を疑いましょう

その鑑別として、NGTというものがあることを知っておきましょう
対応はまずは胃管を抜去して、早急に気道確保、
または呼吸状態に猶予があれば、
ファイバーや内視鏡で両側声帯麻痺を確認することが重要です

ワレンベルグの人が苦しがって、ヒューヒュー言っていたら、思い出してください









2017年7月17日月曜日

季節外れのインフルエンザ

たまに来ます

季節外れのインフルエンザ症状

この真夏にインフルエンザ〜?

って時は、本当にインフルエンザか、
インフルエンザmimicです

Mimicはだいたいキャンピロです

ただし、まれに海外渡航歴があると、本物がいます

海外渡航帰りの発熱と聞くと、
ウッとくる人もいるとは思いますが、
インフルエンザが見つかると、やった〜ラッキー
となってしまう人もいるのではないでしょうか

気持ちは分かりますが、ちょっと冷静になりましょう

本当にインフルエンザだけでしょうか

マラリアは絶対ないと言い切れますか?

インフルエンザだけでよさそうであれば、
対応はどうしましょうか?

簡単な説明で安易に帰すと、
一つの学校や地区でアウトブレイクしを起こします


もっとひどいことも起こりえます

農業関係者で中国に渡航し、鳥や豚に濃厚に接触してきた人は、
本当に普通のインフルエンザでしょうか?

新型インフルエンザの第一発見者として、
水際対策に貢献した医師として有名になるか、

アウトブレイクのきっかけを作った病院と医者で有名になるか

出来れば前者になりたいものです

いつ、どこで誰が出会うかは分かりませんから、心の準備はしておきましょう





ワレンベルグ、その後

ワレンベルグのことは教科書に詳しく書いてありますが、
その後のことについてはあまり触れられていないことが多いように感じます

ワレンベルグの診断は比較的慣れれば簡単ですが、
その後が実は大変です

まずはだいたいみんな熱を出します

もちろん、誤嚥性肺炎です
ただし、忘れがちなのが、副鼻腔炎です
経管が入ることが多いということもありますが、
軟口蓋の挙上不全が真の原因です

感染症以外では、めまいやしゃっくり、嚥下障害が問題です

しゃっくりがある人は、全然止まりません
薬使っても全然効果ないので、患者さんがだんだんイライラしてきます

でもだいたい2週間すれば治ってくることが多いです

他にはめまいやバランスの問題でリハビリが長期になります

リハビリでふらつきはだいぶ改善しますので、
歩行は問題なくできることが多いです

しかし、頭を振るとめまいが出やすいのは後々にも残るので、
長期的には、運転まで出来るようになるかが、PT、OTでは問題になります

しかしワレンベルグで最も苦労するのが、STさんです
一概にワレンベルグといっても重症な嚥下障害から軽症な人まで、
かなり幅があります

重症な人は本当に長期のリハビリが必要で、
よくやられるのが、バルーンを自分で飲み込み、
狭い部分を拡張させるというやり方です

嚥下障害が厳しければ、胃瘻を作ったり、食事のたびに、
経管栄養のチューブを飲み込み、自分で栄養剤を入れるという人もいます

という感じでだいたい決まった道順を辿るのが、ワレンベルグ、その後です


2017年7月16日日曜日

低酸素血症なのに

低酸素血症なのに、単純CTがきれい

ってこと、たまにありますよね

当たり前に思いつくのはPEですが、
その他にも色んなことに思いを馳せなければなりません

まずはガスをとって、AaDO2の開大をチェックします

そこでまた疾患が狭まります

開大してなければ、二型呼吸不全をきたすような原因疾患探せということになり、
開大していれば、シャント探せということになります

シャント疾患は座位と臥位の酸素化みると、ヒントになることがありますので
診断に困ったらやってみましょう






二型呼吸不全でよくあるのは、おじいさんならCOPDで
おばあさんなら亀背でしょう

そして、たまに神経疾患

特にALSは挿管してしまうと、他の疾患と挿管の意味合いが違うので、
二型呼吸不全を見たら一度はALSを考えます

探せ、繊維束攣縮です

瞬きしてたら見逃します

浮きが沈む感じのイメージです







2017年7月14日金曜日

無菌性髄膜炎

手足口病の流行に伴い成人のなんちゃって不明熱と
無菌性髄膜炎が猛威を振るっている今日この頃です

無菌性髄膜炎はなんちゃって不明熱になり得ます

なぜかというと、熱が出ている人はたいてい頭痛も伴っています
髄膜炎は激しい頭痛の場合は簡単に想起できますが、
熱が長引き解熱鎮痛薬が定期的に入っていると、
頭痛も少し和らいでしまい、髄膜炎が想起しにくくなります

一般的な身体所見や検査、画像で熱源不明の場合は
一度はルンバールするかどうかは考えなければなりません

もう一つ、無菌性髄膜炎が不明熱化する原因として、

CRP0.01で高熱がバンバン出るので、
CRP based medicineを実践している方々には訳わからん状態になります

CRPが上がらない発熱は実は鑑別がかなり絞れます

  • 結核
  • 悪性症候群
  • 心因性発熱
  • 薬剤熱
  • 悪性リンパ腫
  • 中枢神経感染症
  • 膿瘍
  • ウイルス感染症
などです
細菌性でも血液と離れた場所で感染している時は上がらないようです

それでは、無菌性髄膜炎を見たときの考え方と髄膜炎の治療の考え方のまとめです



最近、しっかり髄膜炎対応が出来るようになってきて、ステロイドが盲目的には入るので、余計に難しくなってきています
自己免疫疾患やパラネオ絡み、自己抗体絡み、結核性髄膜炎でもステロイドは効果あるので、一体何が効いたかさっぱりわからなくなってしまいます

かといって、最初から疑われる疾患全ての検査は不可能です
落とし所はステロイド行く前に、多めに血清保存しておいて、
後で情報が加わり、怪しければ精査するという方針くらいだと思われます

なので髄膜炎対応は実はとても簡単で、本当に難しいのはその対応後なのです

ポイントはどう治療を引き算するか、足し算するか

 



肩関節

肩関節の局所解剖です

肩関節は他の関節と異なり、押せばいいという問題ではありません

肩には多くの構造物があり、
ローテーターカフと滑液包の存在を知ることがまずは重要です

肩が痛い=五十肩で済ませないように

肩が痛い人をみたら、
肩の構造物のどこが痛みの中心かを考えながら診察をします

JAMA August 28, 2013 Volume 310, Number 8

によくまとまっています

ピットフォールは肩が痛いという割に肩に所見がないときはc5-6の神経根症を疑いましょう
そういう時は、腱反射で左右差やinverted reflexを見つけにいきます

また肩が痛くなった後に、肩周りの筋肉が萎縮してきたら、それはパーソネージターナーの可能性があります、いわゆる神経痛性筋萎縮症です









エコーをとにかく当てることが解剖の整理につながります

2017年7月13日木曜日

手掌、足底の皮疹

手足口病が猛威を振るっている今日この頃です
子供の感染症と思いきや、当たり前ですが、大人もかかります

面白いことに、こういう子供では特徴的な症状を出すウイルスは、
大人もそういった症状を出すかと思いきや、ちょっと違うんですよね

パルボなんか代表例ですね
他にも麻疹や手足口病もちょっと違います

大人の手足口病は皮疹がやたらと痛いようです
皮疹も子供のように水泡になりにくいようです
場所も手掌や足底とも限らないようです

子供はあまり高熱にはなりませんが、大人の場合、高熱が続くこともあります
1週間弱、高熱が続いた症例もありました

なので、手足口病の流行時期には、成人でなんちゃって不明熱症例が出てきます

このままいくと不明熱化していきそうな成人症例で、淡い皮疹もあるし、
リケッチアかな?でも暴露もないし、刺し口もないしなあー
うーん
抗生剤いきたいなあー
でもなあーフォーカスも菌もはっきりしないしなあー
うーん

と悩んでいると、いつの間にか解熱していった人の中には手足口病が混じっている可能性が高いと思われます

そういう人は子供を診断してしまったほうが早い症例があります
お子さんも熱や風邪っぽい症例の場合は必ずお子さんの診断名も聞きましょう

子供の場合は典型的な皮疹があれば簡単に診断できますので


死ぬ可能性のある咽頭痛

いわゆるkiller sore trhoatについてのおさらいです

喉頭蓋炎、咽後膿瘍、レミエール症候群、扁桃周囲膿瘍、Ludwig angina、アナフィラキシーが挙げられる事が多いかと思われます

この中で、喉頭蓋炎とアナフィラキシーは病態が他とは異なりますが、
残りは兄弟みたいな疾患群です。

どういうことかを今回は解剖にて説明します。

伝えたいことは、咽頭の解剖を覚えよう!というよりも、
こんな風に局所解剖の知識が必要になる場面って、臨床では何度もありますよねということ

例えば、
・肩の可動域制限や痛み→腱板の解剖を知らないと診察出来ない
・海綿静脈洞症候群→下垂体付近の局所解剖を知らないと診断出来ない
・手根管や足根管症候群→末梢神経系は中枢神経よりも難しい

そして今回の咽頭です


歯が感染のスタートになることが多いので、
熱源不明という前に歯をよく診察する癖をつけられるといいですね


あまり見ないので、忘れ去られそうですが、まずはLudwig anginanついてです


今度は冠状断できった図です。


歯から感染が波及する方向で、病態が変わってきます


Ludwig anginaの冠状断の図です


今度は横断像です。いつものCTで見るスライスです。


Lateral pharyngeal spaceともいったりしますが、
この傍咽頭間隙がやばいのです
                                     よくあるのは扁桃炎から扁桃周囲膿瘍でしょう。

                                             さらにやばいのが、咽頭後隙です。








2017年7月6日木曜日

ミエロパチーを疑ったら

ミエロパチーはたまに出くわします
内科医としての山があるとすれば、ミエロパチーはその一つでしょう
似たような状況は間質性肺炎の急性増悪

つまりやるべきことをしっかりやる
ルーチンはルーチンでやるときです

むしろ同じ思考過程に落とし込めるので、楽ではありますが、
詰めきれない時も多く、もやもやが残る領域です

そこを詰めていくのが、内科医としての腕の見せ所でしょうか


ミエロパチーを疑う時は、幾つかあります
  • 急に歩けなくなった人
  • 明らかなレベル形成を伴う感覚障害(むしろこの所見はミエロパチーを狙わないと、とれない所見。ささっさと手足触る、なんちゃって感覚チェックではダメです)
  • 脳梗塞かと思って、頭部のMRIが空振りで、よく見ると顔はスペアされていた
  • 大動脈術後の下肢の麻痺
  • GBSかなと疑った時
  • VB1欠乏かなと疑った時
  • 転倒後、手を痛がっていて、手が上手く使えない人
などなどです。疑う事が出来たら、次はしっかりとした感覚の身体所見をとりましょう。
あとは腱反射や直腸診も忘れずに。

ミエロパチーの時のように、身体所見がものをいう時ってありますよね。
そういう時に心がけていることは、

「一手間を惜しまない」

という事。

これが一番の診断への近道であるとよく感じます。

忙しい外来でも、面倒だなと思っても、一手間かけるべき時があります
その時は割り切ってしっかり病歴や身体所見をとりましょう








Clin Neuroradiol (2015) (Suppl) 25:183–187







2017年7月4日火曜日

緑内障の身体所見

高齢者の急な頭痛で、CTで出血なし
その時に狙うべき疾患は何か?

忙しい救急の現場では、HOTの情報から、CTをオーダーして
来院後、患者をしっかり診察せずにすぐにCTに行きがち
特にtPA対応モードならなおさら
そんな時にCTで出血がなかったら、解離や静脈洞血栓、RCVS、
下垂体卒中なんていう稀な病気が頭をかすめる
MRIなんてすぐに撮れないしなあ、と悩む

ここで、忘れがちなのが緑内障発作
緑内障の発作はこれまでに緑内障を指摘されたことがない人がほとんど

認知症の高齢者や寝たきりの人で、上手くコミュニケーションすら取れなくても
目を見れば一発でわかることもある

高齢者の嘔吐で病歴が上手くとれず、検査でも原因不明の時は、
稀に緑内障の発作の事もある

瞳孔をルーチンで見るのではなく、緑内障発作ではないか?という
観点でしっかり診察する事が大事

まさに目は口ほどにものをいう


海外渡航帰りの発熱

海外渡航帰りの発熱はたまに遭遇いたしますよね。
簡単なまとめです。







ポイントは海外渡航に引っ張られすぎて、
パニックにならないこと
いつも通りの問診にちょっと加わるだけ



2017年7月3日月曜日

原因不明の慢性腹痛

最近、ACNESが市民権を獲得し、uptodateにも記載されるようになりました。
というわけで、ACNESのような、どツボにはまりやすい
原因不明の腹痛の考え方を自分なりにまとめました。

ポイントは

  • 全身性
  • 腹腔内病変
  • 腹腔外病変
に分けて考えることで、それぞれを狙うのに何が必要かが見えてくる。

そしてプラスαを大事にすること。例えば、

  • 精神的な疾患を匂わせる人の腹痛
  • 皮疹を伴う腹痛
  • 関節痛を伴う腹痛
  • 吸収不良を伴う腹痛
  • 発熱を伴う腹痛


といった感じで合わせ技でも鑑別を狭めることが出来ます。









実臨床では、頻度も多いACNESをまず狙ってみることでしょうか。
ACNESのピットフォールは腹部以外に前胸部、側腹胸部、背部にも
同様の痛みを呈する事があるということです。ネッターで確認すれば、
肋間の皮神経が前壁、側壁、背側から出ていることがわかります。
大事なのはピンポイントでさせる痛みかどうかと
神経が皮膚に出てくる部位に一致しているかです。


はじめまして

美しい山に囲まれた小さな病院で総合診療科として勤務しています。
日々のカンファレンスや自分の勉強を記録にしていました。
自分のポケットの中だけでなく、皆様にもみていただき、
ご意見ご感想を頂ければ嬉しいです。

難しいことを簡単そうと思わせることができるのが、絵の魅力だと思います。
文章だと、何だか読む気がしないので、こういうまとめ方になりました。
汚い文字で読みにくい所がたくさんあると思いますが、ご容赦下さい。
何かの参考文献をもとにしていることが多いですが、記憶間違いもたくさんあると思うので、間違っている所があれば、教えて下さい。

気腫性骨髄炎

 

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