2017年8月29日火曜日

治療抵抗性肺炎

3日という数字は感染症の治療効果判定として、よく使われます

3日の間で、治療効果を見極めて、

その経過をもとに次のステップを踏みます


そのため、疾患のtime courseを知っておく必要がある

とはよく言われることです


疾患によっては、

腎盂腎炎のように2ー3日解熱しないこともあります

結核や梅毒のように、一見悪化する疾患もあります

膿瘍のようにダラダラ熱が続く疾患もあります


今回は肺炎です

治療抵抗性肺炎とは、72時間以内に改善しない肺炎とされています


そこでの考え方は診断に戻ることです

感染症の三角形をもとに診断した過程を全て見直します

背景、感染臓器、起因菌、治療内容

それぞれに漏れがないかを考え直します


感染側を一通り考えたら、次は非感染症側を探ります

好酸球性肺炎や腫瘍、器質化肺炎、IgG4関連疾患、サルコイドーシス、

膠原病に関連する肺疾患、薬剤性肺炎、過敏性肺臓炎などです




こうなると、病歴の洗い直しが必要ですが、

病歴だけでは、診断はできないことが多いので、

結局、HRCTをとり、

その後、気管支鏡検査へ進む事が多いです

そして、鑑別にあがった疾患に必要な検査を提出します


なのでブロンコで分かる疾患を知っておく必要があります




2017年8月27日日曜日

臀部痛

胸痛や背部痛、腹痛、関節痛、頭痛についてはどの症候群の本にも書いてあります

しかし、臀部痛に関してはあまり書いてないので、作ってみました



臀部痛の場合も他の痛みの考え方と同様に、解剖を考えます

大事なのは、坐骨神経と仙腸関節です



坐骨神経は人間の神経の中で最も太く、

下肢の筋肉全てに関わっています

L4-S3の神経がまとまってできており、

その走行に何か問題があると、坐骨神経痛として痛みを生じます


坐骨神経が梨状筋やその周囲の双子筋に挟まれると、

梨状筋症候群と呼ばれます


梨状筋と坐骨神経は解剖に個人差が大きく、

挟まれやすい人がいるようです

梨状筋は普段、使わない筋肉なので、

急な運動や過度の肉体労働で起こることがあります



しかし梨状筋症候群含め、坐骨神経痛はあくまで症候群であり、

病名ではありません


原因が椎間板ヘルニアのこともあれば、

周囲の筋肉内血腫に圧迫されて起こることもあります

仙腸関節炎や閉鎖孔ヘルニア、内腸骨動脈瘤が原因のこともあります


そのため、坐骨神経痛と診断しても、あまり意味はありません

その背景まで、思いを馳せなければなりません


ポイントは仙腸関節に問題があるかどうかです



仙腸関節に問題があるかどうかを調べる身体所見には

仙腸関節の圧痛

パトリックテスト

ゲンスレンテスト

があります




坐骨神経痛の身体所見は色々ありますが、

SLRテストはあまりいい身体所見ではありません

股関節疾患でも陽性になり、

高齢者で身体が硬くなっても、陽性になります


そのため、SLRテストの補完のため、他のテストも知っておくと便利です




まとめると、

臀部痛の人をみたら、坐骨神経痛らしさをみるために、

色々な身体所見をとります


そして坐骨神経痛でありそうならば、

その背景にある疾患を考えます

そこでのポイントは仙腸関節炎があるかどうかです


パーキンソン病の探し方

パーキンソン病には運動症状と非運動症状があります

非運動症状が出現した時点で、パーキンソン病は発症していると考えられます

そのため、運動症状が出た時点で、

ある程度進んでいるパーキンソン病であると考えられるようになってきました

早期に発見すれば、進行を止められるわけではないのですが、

患者さんのQOLはあげられるかもしれません


パーキンソン病かな?

と疑ったら、運動症状はもちろんですが、

非運動症状も探しましょう

運動症状の有名な覚え方はTRAPという語呂です

しかし、このTRAPにはトラップ 罠があります

一つ一つの診察をこのtrapを意識しながら、とるようにしましょう




非運動症状の覚え方はSCODです


Sleep disorders. REM睡眠行動障害、睡眠障害

Consitipation 便秘

Olfactory deficit 嗅覚障害

Depression うつ病




特に、本物のREM睡眠行動異常症があるとその二人に一人は、

パーキンソン病やMSA、DLBといったαシヌクレイノパチーになると言われています


パーキンソン病を疑った時は、運動症状だけでなく、非運動症状にも目を向けましょう

失語について

上手く喋れない人を見たら、

まずは構音障害なのか、失語なのかを見極めが大事とよく言われますが、

その前に、意識障害ではないかという目で見る必要があります


急に喋らなくなった人が実は肝性脳症だった

なんてことはよくあります


なので、喋らなくなったから、失語だ!脳梗塞だ!

と突っ走らず、意識障害をきたす疾患を同時に考えます


意識障害でなくても心因性の反応で、喋らなくなる人もいます


意識障害でなさそうならば、失語 vs 構音障害の鑑別です

構音障害は咽頭や口周りの筋肉がうまく働かず、言葉が上手く出てこない状態です

失語は口や咽頭の筋肉の動きに問題はありませんが、

読む、話す、聞く、書くのどれかがやられている状態です


普通に診察していれば、だいたいどちらか分かりますが、

物品呼称をさせたり、文章を読んでもらったり、復唱させてもいいです


ですが、どちらもかぶっている時もあり、悩ましい時もあります



失語に関しては、よく言われるのは、運動失語と感覚失語です

その見極めは流暢かどうか、努力して頑張って喋っているか、どうかです

努力して、なんとか喋ろうとしている人は、運動性失語です


一方、感覚性失語は流暢にしゃべる事が出来ますが、

情報量は少なく、あまり意味が伴っていません


あまり知られていませんが、失語はfocal signです

つまり脳梗塞の局在診断に使える徴候です


MCA領域にブローカ野もウェルニッケ野も存在するため、

中大脳動脈症候群とも考える事ができます

皮質がやられることで生じるため、多くは塞栓性の脳梗塞で見られることが多いです

穿通枝の梗塞で起こるラクナの型は幾つかありますが、

ラクナ梗塞で失語だけ出るなんてことはありません

まずはこの原則を知っておく必要があります



しかし、現実は甘くはありません


前大脳動脈や後大脳動脈の梗塞でも失語が生じることはあります

さらには穿通枝の梗塞でも失語は起こりえます

そういったものは皮質下性失語と呼ばれます


代表的なものに視床の障害で起こる視床性失語というものがあります

視床性失語の最大の特徴は、ボソボソ喋り、自分からはほとんど喋らないことです


内包膝部の梗塞でも同じような失語になるのは、

視床と大脳皮質をつなぐ経路であり、視床がやられたのと同じことが起こるからでしょう

視床がやられると、様々な症状がでるので、いまいち、

局在診断がはっきりしない時は、視床の梗塞かもしれません


特に急に元気が無くなった人を見たら視床梗塞を疑います




急に出た失語の場合は、脳卒中が鑑別ですが、

緩徐に進行する失語を見たら、変性疾患や腫瘍性病変、脱髄疾患を考慮します


変性疾患でも病歴が上手くとれない場合は脳梗塞と診断されてしまう人もいます


認知症の中には、失語がメインにくるものもあります


意味性認知症、進行性非流暢性失語、logopenic progressive  aphasiaがあります






これらは色々なパターンの失語でくるので、

古典的な分類の〇〇失語とは分類が出来ません


なので無理やり型にはめようとせず、

そういった失語がメインの認知症もあるのだということを知っておきましょう

認知症のみかた

認知症の人に出会った時には、3つのパターンがあります


1,いわゆるtreatable dementiaで考える時

最近はtreatableなものでも時間が過ぎてしまえば、treatableではなくなってしまうので、

Potentially reversible dementiaと言います

認知症の人全例で治療出来そうなものの検査を行ってもよいと思いますが、

特に、年齢が若い、進行が早い、時に強く疑います


2,物忘れが酷くなったと家人に連れられてくる時

この場合はtreatable ではない認知症の初期の可能性があり、

詳細な神経診察や種々の検査を行います

ポイントは皮質下症、つまりパーキンソニズムを伴っているかです

パーキンソニズムがあれば、脳血管性やCBD、DLB、PSPを疑います

最初ははっきりしないことも多いので、定期的なフォローが必要です

パーキンソニズムは運動症状よりも非運動症状の方が早くでるので、

そちらの確認も重要です

つまり、REM睡眠行動異常、うつ病、嗅覚障害、便秘を聞きます









上記2つのパターンは認知症診療の王道というか、

よくあるシチュエーションですが、

実はもっとよくあるシチュエーションがあります

それが3つ目のパターンです


3,時間のたった認知症がある入院患者

もはや、いつからか不明で、コミュニケーションもままならない人が

誤嚥性肺炎で入院となった

なんてことは日常茶飯事です


背景の認知症は何であろうか?


と一瞬考えて、ま、いっか。

治療には関係ないし、

認知症に関しては、もう治療出来ないし、

とスルーされるのが普通だと思います


確かに、完成された認知症はもはや診断は不明の事が多いですし、

診断しても意味はないかもしれません


しかし、たまに一発逆転が起こります


DLBの人のアリセプト

パーキンソン病の人のLdopa

橋本脳症の人にステロイド

非痙攣性てんかんの人に抗痙攣薬

副腎不全に対して、ステロイド

甲状腺機能低下に対する甲状腺ホルモン

うつ病患者への抗うつ薬


などで、劇的に改善する人はたまにいます



ご飯も食べなかった認知症の人で、看取りが近いとのことで、引き継いだ人で

背景の認知症はDLBではないかと疑い、

アリセプト少量入れたら、

数日後には食事食べるようになり、自宅に帰った人もいます


どんな人でも、もう遅いと諦めずに、

やはりいつでも治療可能かもしれない疾患への配慮が必要だと思います


場合によってはチャレンジテストのような形でもありだと思います



では、本人からは病歴をしっかりとれない人の認知症をどう診断するか?

家人からの情報も得られない場合は身体診察でパパッとあたりをつけます



自分なりの診察法ですが、

まずは寝ている姿勢をみて、斜めになっていることが多ければ、

パーキンソニズムがあるのではないかと疑います

いわゆる斜め徴候です

そして身体が少しでもピクついてないか確認します

ミオクローヌスを探します

あれば、橋本脳症やCJD、NCSEかもと思いますが、

どんな認知症でも出ることがあるのであまり飛びついてはいけません


そして、自己紹介をしながら、両手を触ります

その時に強制把握があれば、前頭葉の障害を疑い、

続いて手掌を擦り、手掌オトガイ反射を見ます


顔をみたついでに、吸引反射を見ます

そして下顎反射や口輪筋、眼輪筋の反射みます

あれば脳血管性かなと思います


もう一度、手に戻り、強制把握を確認し、rigidityを確認します

なさそうなら、計算をさせて負荷をかけつつ、rigidityをみます


次は足をみます

クローヌスやバビンスキー、チャドックは何もなくても出来るので、

簡単にとってしまいます

あれば脳血管性による錐体路徴候を疑います



こんな感じで、流れるように診察が出来るので、それほど時間はかかりません

完成されてよく分からない認知症のスクリーニングの診察としては

これくらいでいいかなと思います

上記の診察で、何かおかしいと感じれば、ググッと詰めにいきます


横紋筋融解症

横紋筋融解症の考え方です

夏に起これば、まずはコクサッキーを疑い、

冬に起これば、インフルエンザを疑い、

肺炎があれば、レジオネラを疑い、

アルコール飲みなら、アルコールを疑い、

敗血症があれば、敗血症に伴うものを考えます


わかりやすい時はいいのですが、原因が詰めきれない時もあります


その場合は腎臓を守るための対処療法を行うしかありません


Pit fall として、横紋筋融解症と思っても実は心筋由来ということがあります

心筋も横紋筋ではあるので、一緒にやられている、

つまり心筋炎になっている時がありますので、

CKが著明に高値の症例は全例で、心臓の評価をしておいたほうが良いです


心臓までやられる原因は、

アルコールや薬剤性、ウイルス性、抗SRP抗体関連の筋炎などです


特にウイルス性の時は詰め方が難しいです

血清のペア抗体では陽性率が高くないため、

筋生検の生検体をPCRにかけなければなりません





横紋筋融解症も心筋炎も

嵐が過ぎ去るのを待つような印象で、

ひたすら耐えしのぐというイメージです

ただし、治療可能なものもあるので、それは落とさないようにしたいものです


感染症側はもちろん、治療可能なものは治療することが多いですが、

自己免疫が絡んだ時にステロイドやIVIgは選択肢にはなるので、

一度は考慮した方が良いかと思われます












2017年8月24日木曜日

あちこち痛い

あちこち痛い人、よく来ます

先日は3ヶ月間あちこち痛くて、寝返りも打てなくて、

手もこわばってしまって動かしにくいという70歳代の人が来ました


そうかと思えば、1日前からあちこち痛くて、動けなくなって、

車椅子で入ってきた70歳代の人も来ました


1人目はPMRかな?という感じの分布の痛み方で、

PMRの時の痛みで有名な、帰ってきたウルトラマンの場所の痛みでした

血液検査でも炎症反応上昇しており、PMRっぽかったです


2人目はウイルス血症の時のような、節々の痛みという感じで、

よくよく皮膚をみると赤い小丘疹がパラパラと出ており、

孫が手足口病に最近なったとのことでした

手足口病による痛みかな?という感じで、対処療法としました



どちらの人もあちこち痛くて、動けないくらいという感じでした


まず、こういう人をみて思うのは、

身体中が痛いって言うけどさあ、結局どこよ!?です



ということで、あちこち痛い人が来た時の考え方です



大事なのは、まず痛みの分布を理解して、解剖を突き止めることです

そこで大事な解剖は滑液包です

滑液包は学生時代あまり勉強した記憶はありませんし、

いったい、どこにあるのかもよくわかりませんでした


でも実は大事な解剖で、関節がある周囲に、滑液包がたくさんあります


滑液包炎を起こす疾患は山ほどありますが、

有名なのが、PMRです


なので高齢者があちこち痛いと言いだしたら、

まずはPMRじゃないかという目で診察することが大事です

PMRはこれがあったら、PMRと確定できるものはありません


どれだけ臨床像がPMRに見えても、除外の方がはるかに大事です


治療の反対側にある疾患はなんだ?という目線で、

診療に取り組むと地雷を踏まなくて済みます

tPAの時の大動脈解離のときのように


PMRの時はやっぱり感染症です

骨メタ見逃してもそこまで、ダメージは大きくないですが、

硬膜外膿瘍を見逃して、四肢麻痺になってしまったとかでは、

ダメージが大きすぎます




痛みの解剖がイマイチよく分からなければ、次に神経の問題を考えます


神経支配に沿っていたり、痛みがチクチク痛いような時は、

神経で説明がつくかを考えます

神経支配でもよく分からなくても、

パーキンソン病は痛みを訴える人がいます


あとは、small fiber neuropathy が最近はhotな所です

ただし確定するには生検が必要なので、
臨床的に疑って対処療法しているということが多いです

神経でも説明がつかなければ、薬剤や中毒、うつ病を疑います


薬はDPP4阻害剤が有名になってきました


中毒では、シガテラ中毒はドライアイスセンセーションといって、水に触れると、

ドライアイスに触れた時のように痛みを感じてしまう特徴的な所見があります

シガテラ中毒は南国の魚を食べて発症しますが、シガテラ毒による神経毒で

半年以上続く人もいます



余談ですが、

本当に今年の手足口病は大流行してますね


大人がかかるとインフルエンザ並の強い頭痛と筋痛が出る人もいれば、

咳が強く出る人もいれば、皮疹がない人もいたりと、

手足口病の原因ウイルスのプレゼンテーションの幅の広さに驚きました


もう、ボルムホルム病とか、手足口病とか、名前つけないでほしいです

ただのコクサッキーやエンテロ感染なので、

インフルエンザみたいに、

コクサッキー病とかでいい気がします


手足口病なんて特に、固定概念を植え付けてしまいそうなネーミングです


皮疹は手足口より、膝、肘、お尻に目立つ事も多いですし、

皮疹ない人もたくさんいます



なぜ、そんな事を言い出したかというと、自分もやられたからです

多分



お盆はリスク

ということがよくわかりました



冬のインフルエンザはお正月に家族中が集まって流行がひろがります

夏のコクサッキーはお盆で、家族が集まりひろまります



家族が集まると、孫から孫へ

そして大人やおじいちゃん、おばあちゃんに病気が流行します

今年は手足口病がお盆で集まった家族の中で大流行を起こしました


そしてある大人は咳が強く、

ある大人は咽頭痛が強く、

ある大人は頭痛、高熱、筋肉痛が強く、動けないくらいになり、

ある大人は全く無症状


といった具合に人それぞれでプレゼンテーションが異なるのだと

身をもって体験出来て、非常に勉強になりました


2017年8月23日水曜日

Road to 後天性血友病

突然、三角筋に血腫が出来た

突然、腸腰筋に血腫が出来た

なんて人、絶対おかしいですよね

でも最近、そんな人達によく出会います

ということで、変な血腫に出会った時のまとめです



有名なのは腹直筋血腫ですが、腹直筋は子供が跳ねていたとか、
筋トレしたとか、何らかの誘引があることもあります

スポーツや咳でも起こるようなので、外傷と呼べるような誘引がないこともあります


腹直筋ならまだしも、腸腰筋に血腫が出来ていたら、

絶対おかしいですよね

ということで、普通は色々調べます


そしたら、APTTだけやたらと延長していました

もちろんヘパリン使ってない人です

その時の考え方のまとめです



 このカテゴリーに落ちて行った時に、行き着くのが後天性血友病です

先天性とは異なり、自己抗体が出来て、凝固を阻害します

そのため、自己免疫性疾患と考えられています


余談ですが、血液疾患と自己免疫性疾患の繋がりは奥深いですね

例として、
再発性多発軟骨炎とMDS

MDSと血管炎、ベーチェット病

AITLと自己免疫性疾患

などなど。

血液✖️膠原病は今後のhotな分野だと勝手に思っています

余談でした


では後天性血友病をどう診断していくかのまとめです

ポイントはクロスミキシングテストです



後天性血友病は実は思っているほど少なくはないようです

高齢化に伴い、免疫の異常や腫瘍が現れて、そこに付随してくるため、

主に中年から高齢化の病気です

高齢者の何気ない老人性紫斑を繰り返す人の中には、

もしかしたら、後天性血友病の人がいるかもしれません

APTTの延長だけで出血や血腫を作ったことない人もいるので、

症状ないからといって、APTTの延長をスルーしないようにしましょう


治療は三本柱です





出血死と同じく、感染症での死亡も多いので、

おそらく今後の治療はリツキサンがメインになっていくと思われます

意外に頭蓋内出血で死ぬ人は少ないみたいです


ただ、身体中があざだらけになっていき、

筋肉そこら中で血腫になっていくこともあり、

非常に恐ろしい病気です


バイパス製剤も普通の病院には置いていないので、

薬剤師さんにどうやったら使えるか、

いつになったら使えるか

を確認しておく事が重要です



原因不明の大量出血

身体の中で大量に血が出る場所は限られています

外傷の時にこれはよく言われることですが、
頭蓋内出血ではショックになるほど、血は出ません

ある程度、血が溜まるスペースが必要であり、それを探しに行くのがFASTです

ではFASTでわからないけど、大量に出血しうる場所はどこでしょうか?


答えは、大腿部や臀部です

よくあるのは、大腿骨頸部骨折の人のショックでしょう

頸部骨折は転倒のエピソードがあれば、簡単に疑えますが、

認知症のある人とかだと、病歴がとれず、

数日後に気がつかれるということがあり得ます


原因不明の大量出血の時に、消化管でもなく、

胸腔内や腹腔内でもなく、

後腹膜腔でもなければ、一度はパンツで守られている部位に目を向けましょう

大腿部や臀部はルーズな組織であり、血がたまりやすいので時に盲点になります

でもみたらすぐにわかるので、パンツずらしてしっかり診察するのが大事ですね



そして、血腫は不明熱にもなり得ます

有名な話として、、、

脳外科の手術後の患者さんで手術後、熱が下がらないということで、

髄膜炎か!?と疑われました

ですが、色々検査しても何も出てきません

身体所見上、熱源となりそうな所はありません


しかし、

よくよく診察してみると、後頭部に巨大な血腫がありました


血腫が引けていくと自然に解熱していきました


という話を聞いたことがあります

後頭部の血腫も盲点になるので、

まさかこんな所に、という常識を忘れて全身をくまなく診察する事が大事です








2017年8月17日木曜日

皮疹の考え方

今日の症例はとても勉強になりましたね

皮疹の考え方について学ぶいい機会でした


夏の墓参り後に、右腋窩を中心に、

前胸部、腹部、前腕に紅斑を伴う小丘疹が出現してきた48歳男性です

下肢や顔面には皮疹はなく、

小丘疹は全て同じくらいの大きさで、同じ性状

Same phase,same sizeと呼んでいい皮疹でした


このタームでよく言われるのは、単純ヘルペスの皮疹です

種まき理論と言われ、同じタイミングで、芽が出てきた皮疹と考えます


それが今回は身体の中から反応して、この分布をとったのか、

それとも身体の外から何かがこの分布を作り上げたのかが焦点になりました



皮疹は一発診断出来ますが、そのためにはトレーニングが必要です

何枚も皮疹の写真を見続けて勉強するという勉強会が、

皮膚科会ではよくあります


トレーニングすれば、絶対に伸びる分野だと思っているので、

誰でも上達します

研修医でも得意分野になれるところです


ただし、以前にも書きましたが、


写真をみてひたすら頭に叩き込むというトレーニング方法は、

システム1を鍛えているということです

ですがシステム2でも皮疹は考えることができます



変な皮疹をみて、


なんじゃこりゃ?


で思考停止しないために、システム2でも考えられるといいですね


平本先生の完全なるパクリですが、まとめてみました




よくある失敗は最初に皮疹に飛びついてしまうことです


美味しいものは必ず、最後にとっておきましょう


みたい気持ちをぐっとこらえて、

身体中を観察して、

分布を詳細に把握することが、一番重要です


まずは遠目でみるのです


そして近づいて皮疹を詳細に観察します




どんな皮疹でも、湿疹三角に当てはまっていれば、

それはステロイドが適応になる可能性があります

もちろん、感染症の除外は必須です



こんな感じで皮疹を考えれば、

皮疹に出会った時に

自分の想像力が試されていることに気がつきます


今回の症例でいえば、

なぜ、上半身だけ?

そしてなぜ前腕にも出ているのか?

ということがポイントです

例えばウイルスや細菌、薬が身体の中に入り、
免疫を介して、皮疹が出た時に

こんな変な分布になるでしょうか?

おそらくならないでしょう



ということは、外から何かしらの暴露で、

このような皮疹が作られたのではないかと考えることができます


その暴露が一体何だったのか?ということが次のポイントです


服の中に原因があった?

上半身裸で日光浴でもした?

上半身だけ、制汗スプレーでも塗ったのか?

汗に対するアレルギー?

色んな意見が出ました


こうやって色々、想像した上で、皮疹をみると

診断がつきます


皮疹は癒合傾向がありますが、

1つのユニットは紅斑を伴う小丘疹でした

そしてsame phase, same sizeな皮疹です

搔痒感も伴っています


墓参り ➕  夏  ➕ 特徴的な皮疹

の答えは、


毛虫皮膚炎です


多分。


証明は出来ませんが、皮疹はネットで見たものと瓜二つでした


毛虫皮膚炎も勘違いが多い疾患です

毛虫の毛、つまり毒針は目に見えないくらい小さいので、

刺されたことに気がつかない人がほとんどです

空中を浮遊して、いることもあります


毛虫皮膚炎の特徴は


搔痒感を伴う小丘疹で、

分布は上肢に多く、左右は非対称性

集簇している部分と散在している部分があり、

掻破によって皮疹は広がっていく


という事が挙げられます

そして、自分が毛虫に接触したと認識していた人は、

なんと10人中、2人という報告もあります



ちなみに、どうして一回消えたのかということも質問にあがりましたが、

毛虫の種類によっては、一旦出てから引いて、

数時間後に突然、ブワッと出てくるものもあるようです


なので病歴も毛虫皮膚炎を示唆していました



まだまだ夏は続きます


毛虫の好発年月は5〜9月です

まだ出会う可能性がありますので、

次はしっかり対応できるようにしておきましょう


ちなみに対応はセロハンテープで毒針を抜いたり、

シャワーで洗い流すそうです

そしてステロイド塗布です

ALSの身体所見

ALSは毎年1人は出会うか出会わないか、くらいの頻度でしょうか

個人的にはIEと同じくらいで、あまり稀ではない印象です

その目で見ると、出会う事ができます

その目で見ないと、通過していきます



しかし、自分も最初に診断した時は、診断に時間がかかってしまい、

反省し勉強し直しました

勉強した後は、ALSを疑う閾値がかなり低くなりました


そして疑った時にやる事もルーチン化されてきた感じがします


ALSの身体所見といえば、有名なのはsplit handです

ただ末期になれば、全ての手で萎縮が来ます




次に有名なのはfasciculationでしょう

皮膚の一部がピクンと一瞬、落ちるイメージです

釣りをした事がある人は、浮きが沈むイメージを思い浮かべて下さい


診断のためには
4領域の上位、下位運動ニューロン障害を探す事が重要です

そのためには普段あまりとらない反射をとります


Fasciculationは見た目では分かりにくい事もあり、

ここでも超音波を使うことで、

筋肉の中の線維の束が、グルンと動くのが確認できます


特に舌の場合は、難しいので、超音波の方が簡単にとれます




陰性所見も重要ですが、痺れや痛みはALSの人で訴えられる人は多い印象ですが、

一応、感覚障害は陰性所見に含まれています

体重減少はALSの人にはよくみられる所見で、

食べているのに痩せてきます


神経の世界では、神経疾患を診断する過程において、


Atypicalな所見は1つまではあってもいいですが、

2つatypicalが揃うと、診断を再考した方がよく、

3つ揃うと多分、その疾患ではありません


と言われているそうです

しかしALSにはALS plus症候群というものがあり、

陰性所見であるはずの神経徴候を伴うこともあり、

何事にも例外があるのだと思っておいた方がよいです

しかしまずは原則を知ることが重要なの

陰性所見があれば、ALS以外の病気を疑いましょう

診断のためのポイントはいかに他の疾患の除外に成功するかです


残念ながら、頚椎症にALSが合併する時があるので、

その時が一番悩みます






合わせ技で、ALSっぽく見えることもあります





普通、ALSは数ヶ月や数年の経過があり、

最初は整形で頚椎症と言われたり、

診断がつかなくて、Dr shoppingになります


徐々に所見が揃ってくるので、最終的にはALSと診断するのは、容易です

しかし呼吸筋麻痺型の場合はいきなりAlSと診断されることもあります


ALSは、「後医は名医」になりやすい疾患の1つです


ALSの初期症状は本当に非特異的で摑みどころがない印象を受けます


やられる部位によっても症状が異なるので、


それぞれみていきましょう




球麻痺型は誤嚥性肺炎を繰り返す中高年では一度は疑った方がいいです









1つ1つを分解すると簡単そうですが、全部が合わさると、

なんだか摑みどころがなくなります



どうでしょうか。

この流れだとALS以外に見えないと思いますが、

忙しい外来でこの病歴の一部しか聴取できないと、

どこを狙っていいのかよくわからなくなってしまいます



なので、簡単にこの人、ALSかも!?

というスイッチを入れるポイントだけ、覚えておけば、まずはいいと思います


それは


体重減少です


もちろん、甲状腺機能異常や癌がないことが前提ですが、

食べているのにどんどん痩せていくのが、

ALSを疑うきっかけにある事がしばしばあります


原因不明の体重減少があれば、まずは手を見て

Split handを探しましょう


そして筋肉のピクつきを探しにいきましょう


それだけで、十分スクリーニングになるはずです

脳梗塞には三回騙される

脳梗塞を疑う状況はたくさんあります

有名なのは、fastと呼ばれる語呂で、

顔面の歪み、上肢の麻痺、呂律不良が早期発見のサインとして啓蒙されてきました

その様な状況で来院されれば、脳梗塞をもちろん疑いますが、

実は脳梗塞じゃなかった、何てことはたまに経験します


特にtPAや血管内治療が可能となり、time is brainと言われる昨今、

脳梗塞の診療はスピードが命です

そのため、じっくり考えている暇はなく、落とし穴にはまることがあります

もっとも有名で、M and Mカンファのネタにもなりやすいのは、大動脈解離でしょう

解離にtPAをうってしまったという症例報告は後を絶ちません


tPA適応になった患者の全例で解離を否定するために、

ルーチンで胸部のCTやUSをしている施設もあります

理由は大動脈解離の10-55%は胸痛や背部痛がないという報告があり、

臨床状況からは100%解離を否定することはできないからでしょう


しかし、脳梗塞を合併した解離の症例には特徴もあります

  • 右側の脳梗塞が多い、つまり左に症状がある時は注意                                                                  
  • →解離が上行大動脈から腕頭、総頸へと続いていくため
  • 血圧が脳梗塞の割に低い、 sBP130以下のことが多い
  • 血圧の左右差がある人が多い
  • Dダイマーが高値になりやすい

という人に多いですが、もちろん確率論なので、当てはまらない人もいます

そのため、まさかないよね。と思いつつもしっかり解離を除外する事が、

脳梗塞の診療においては重要です


低血糖は看護師さんも知っているくらい有名になりました

tPAや血管内治療が全盛期となり、

今後は脳梗塞と診断する前に解離の除外も同じくらい有名になってきそうですね



そんなわけで、脳梗塞の診療のまとめです


まず診察ですが、診察で部位と原因をある程度予測できます

部位診断は当たり前ですが、神経診察が重要です

ポイントは2つです

1つ目は皮質症状(失語、運動失行、観念運動失行、失算、半側空間無視、着衣失行など)が
あるかどうかです


皮質症状があれば、塞栓の可能性が高まります

例外は視床の梗塞です

視床の機能は語ると長くなるので、また今度にしますが、

皮質がやられた時の様な症状が出るので、注意が必要です


部位診断で大事なもう一つは、後方循環の症状があるかどうかです

つまり、脳神経の異常や小脳失調、視野障害の有無を確認します

後方循環の症状があれば、椎骨動脈解離の可能性を一度は考えます


NIHSSをスピーディにとれることも重要ですが、

部位診断のための神経診察もできる様になりましょう


次に脳梗塞の原因ですが、これは一般的な診察が重要です

熱があれば、IEや血管炎を疑います

心雑音があれば、IEや大動脈解離、心臓粘液腫を疑います

頸動脈雑音があれば、頸動脈狭窄やA to aを疑います

足の指にblue toeがあれば、コレステロール塞栓を疑います

四肢の末梢や眼瞼結膜に塞栓徴候があれば、IEを疑います

頭痛や後部硬直があれば、慢性髄膜炎(結核やクリプト)からの梗塞を疑います


といった感じで、一般的な診察を蔑ろにしてはいけません


しかしこの様に診察して、脳梗塞を疑ったとしても、

脳梗塞には三回騙されるタイミングがあります


まずは画像評価前です

有名なのは低血糖です

それ以外にも代謝性脳症や痙攣、単神経麻痺など色々ミミックはあります


次に騙されるのは、DWIです

DWIでhighになった場所を見て、脳梗塞だ!と突っ走ってはいけません

しっかりADCmapも見ましょう


ADCmapで高信号を呈している時は脳梗塞ではなく、PRESを疑います


最後にDWIもADCmapも両方見て、

脳梗塞に間違いないとなってからもまだミミックは存在します

脳腫瘍や膿瘍も同じ様な画像になる事があります

もちろん、血管支配に沿っていない事が大きく鑑別点ですが、

一見しただけでは、分かりにくいこともあります


そして脳梗塞だとしてもプラスαがある事があります

例えば、脳静脈洞血栓症や血管炎、解離に合併したもの、

髄膜炎に合併したもの、帯状疱疹ウイルスに伴う血管炎などです





毎回、脳梗塞を見る時にこの思考過程を踏めば、

脳梗塞全例でシャドーボクシングならぬ、

シャドーシンキングをする事ができ、身体に染み込ませる事ができます


100人の脳梗塞をみて、100人は普通のアテローム性や塞栓性の脳梗塞かもしれませんが、

101人目はクリプトコッカス髄膜炎に伴う脳梗塞かもしれません


シャドーしておかないと、絶対に鑑別にあがりませんので、

一瞬頭に思い浮かべて、

でも違うよな

という手順を踏む事が重要です


その目で見ると、実はIEだった!

なんていうケースも一瞬で診断できる様になります

2017年8月15日火曜日

下腹部痛 男性ver.

今日の症例は、男性の下腹部痛でした


70歳 男性  主訴 下腹部痛   救急搬送

既往に中垂炎を抗生剤で治した事がある

下腹部正中の痛みが2,3日前から間欠的に出現

一度は良くなったが、再度悪化し来院

熱はないが、腹膜刺激徴候がしっかり認められる

やや非典型な経過ではあるものの、アッペが破裂した腹膜炎かなっていう感じですね

CTで糞石を伴う腫大した中垂と周囲の脂肪織濃度上昇があり、

やはり中垂炎の破裂に伴う腹膜炎でした


このように下腹部痛は腸管からの痛みの事が多いですが、

まずは腸管以外の痛みではないかということを疑う事が大事です


心電図の所見も派手なものがあると、そこだけしか見ない傾向があるのと同じく、

腹痛なら腸管をまずは考えたくなりますが、

まずは腸管外のものに想いを馳せる事が大事です


特に痛みのある所しか診察しないと、陰囊や鼠径部を見落とします


なので、痛みがない部位から、外堀を埋めるように、

痛みがある部位へ向かって所見を取っていきます




下腹部痛はピットフォールが満載です

特に精巣捻転はよく言われることですが、本当に注意しておいた方がいいです


先日、経験した症例は、そんなんあり!?というプレゼンテーションでした


生来健康な20才の男性で、主訴は頻回嘔吐と臍周囲の痛みでした

Wall inで来られましたが、

診察しようとしてもずっと、おえおえ吐いていて、とても辛そうでした

腹痛は臍のやや左側にあるものの、腹膜刺激徴候はありません

陰部の自発痛はあるか?と聞きましたが、陰囊は痛くないとのことでした

しかし念のため、陰部もチェックしましたが、腫脹も圧痛もありませんでした


造影CTでは若干、小腸に液体貯留が目立ちましたが、下痢の訴えはありませんでした


結石はなく、虫垂炎なく、腸重積も、内ヘルニア、鼠径ヘルニアもなく、

原因不明で、あえて言うなら、腸炎疑いで入院になりました


入院翌日には腹痛も嘔吐も軽快したため、キャンピロや毒素性の食中毒だったのかなあ

という感じになりました

CTの読影も腸炎疑いでした


しかし、入院翌日の夜から、左の陰囊の自発痛が出現し、

二日目の朝には左の陰囊がパンパンにはっていました

陰囊は高位に位置しており、長軸は横軸に傾き、

明らかに精巣捻転の所見が揃っていました

しかし、精巣挙筋反射は保たれていました

精巣捻転の時の精巣挙筋反射は感度、特異度ともに非常にいいのに、

変だなあとは思いました

再度、精巣挙筋反射をとると、挙上はするものの、反対側に比較すると、

わずかであり、精巣挙筋反射の有無だけでなく、

左右差を見ることも大事だなと思いました


その後、USが施行され、精巣捻転と診断され、手術になりました


ショックだったのは、最初の造影CTを見直すと

半分くらい陰囊が撮影されており、

しかもその時から造影効果不良で、横向きになっていました

なので最初から精巣捻転を疑っておけば、造影CTで気づけたはずでした


幸い精巣は壊死しておらず、捻転を解除し、その後無事に退院となりました


教訓としては下腹部痛や臍周囲の痛みを見たら、CTをとるとは思いますが、

CTにて原因が不明な時は、陰囊がうつっていれば、陰囊もチェックしましょう

陰囊痛がないと、あまり真剣に陰囊をまじまじと診察するのは、躊躇われますが、

やはり好発年齢の男性や好発の時間帯(朝方発症)の場合は強く疑い、

恥ずかしがらずに、ルーチンで診察することをお勧めします

コツは直腸診の時に陰囊も見てしまうのが良いのではないかと思います



若者の下腹部痛は精巣捻転を、高齢者の下腹部痛はAAAをまずは除外しましょう

CTを撮ったら、写っているもの全て見よう

下腿潰瘍

下腿の潰瘍は皮膚科から紹介になることもあります

皮膚や眼科の症状は、全身疾患の一症状として出現する事があり、連携が非常に重要です

下腿潰瘍から、全身疾患、例えば血管炎や結核が見つかる事もあり、
適切にマネージメントしたいものです


下腿潰瘍の多くは静脈弁不全によるうっ滞性皮膚炎の成れの果ての事が多いです

特に立ちっぱなしで仕事をしている人には静脈弁不全は必発で、

個人的な印象では、料理人、特に寿司職人に多い気がします

なので頻度的にいうと、まずは静脈性を疑います


後は場所や潰瘍の深さ、その他の症状、皮膚所見、既往から詰めていきます


場所は下腿の足関節より遠位の場合、静脈性の事は少なく、

静脈性の場合は下腿1/2より遠位、足関節より近位の事がほとんどです

潰瘍の深さは動脈性の方がもちろん深く、辺縁が明瞭な事が多いです

とはいってもクリアカットにこれは、絶対動脈性の性状だから、

静脈性は考えなくてよいとは断言できません

混合性もあるので、静脈性、動脈性どちらの鑑別も考える必要があります

その他の症状として、血管炎を示唆する症状や先行感染、ASOを示唆する所見などなど

結局、鑑別が膨大になるため、全身のROSをとることが重要です

皮疹として探すのは、リベドや触知する紫斑、うっ滞性静脈炎を示唆するような色素沈着や拡張した静脈です

リベド、特にラセモサであれば、皮膚の中〜小血管レベルで血栓が出来たか、
もしくは血管炎が起こっている事を強く疑います

触知する紫斑があれば、IgA血管炎を含めた小血管炎を疑います

小血管炎の場合、ANCA関連血管炎と免疫複合体性血管炎に分けられます

免疫複合体性血管炎の場合、クリオやIgA血管炎をまずは考えます


IgA血管炎は臨床所見にとても幅のある病気で、
多くは薬剤?として見落とされているのではないかと思います

ではなぜ見落とされて問題にならないのでしょうか?

恐らく、IgA血管炎の軽症例では、下肢挙上で軽快する症例もあるため、

生検までされず、結局、勝手に良くなっちゃたけど何だったんだろうね?

で終わっている症例も多いのではないかと思います


しかしIgA血管炎は皮疹が出てから、腎症状や腸管症状が出現する例もあるので、

皮疹が良くなったから、終わりではありません

尿検査や腎機能は少しフォローした方がよいかと思われます


IgA血管炎を疑ったときは、早めの生検が必要です

血管壁からのクリアランスが早いので、なるべく生検時は新しい紫斑を狙います

時間が経ったものだと、IgAが出ない症例もあるので、

時間が経過した症例の病理は解釈が難しくなります


HEでは単一臓器の血管炎であるCLAと区別がつかないので、

直接免疫蛍光染色が鑑別には重要です


下腿潰瘍は多くの鑑別がありますが、ここでも結核が出てきます


バザン硬結性紅斑は潰瘍を作る事があります

結節性紅斑との違いは場所と潰瘍形成です

下腿の屈側に出来た潰瘍は一度はバザン硬結性紅斑を疑いましょう



静脈性や動脈性以外にも
神経性、代謝性、外因性、腫瘍性、血液疾患、感染性、薬剤性、遺伝性、皮膚疾患、

といった様々な鑑別が残ります

本当にいやな症候群ですね


2017年8月13日日曜日

感染症と皮疹

最近、皮疹のいいまとめが多いので、とても勉強になります

皮疹を見て一発診断出来ると、カッコイイので、

皮膚科医には常に憧れています


画像と皮膚から診断する思考過程は、紛れもなくsnap diagnosisですが、

そこにシステム2(分析)を加えるとさらに診断に有用です

というか、知らないと答えられないシステム1(直感)の思考過程では、

初学者は見落としてばかりになってしまいます

なので感染症と皮疹について、システム2でまとめてみました


入院したての頃の皮疹でやばいのは
点状出血とリベドでしょう

点状出血はIEや髄膜炎菌や肺炎球菌性の髄膜炎などなど

死にそうな病気でお目にかかります

リベドはその目で見ると、色んな状況で出まくっています


リウマチの定期外来で待っていた患者さんが、

「ちょっと待合にいる時に寒かったんですよね」

と言っていました

症状は寒気のみでした

血液検査でも炎症反応は上昇ありません

クーラーに当たったせいかな?と

帰そうとした時に、

自分の目の前で、みるみるうちに

患者さんの両側の前腕の色が変わっていきました

リベドでした

それを見た瞬間、

はい。血液培養とって、入院ですね

という流れになりました

後日、血液培養で大腸菌が検出されました

リベド怖っ!

と思いつつ、

リベドに救われた瞬間でした




入院後、皮疹が出る症例もあります
その時は大抵薬の事が多いのですが、

稀に感染症に惹起された血管炎のことがあります

その場合、診断に悩む事も多いです

そこでのポイントは地図と年表を描くことだと思います

こじれた症例、多数の既往や薬が入っている症例ほど威力を発揮します

カルテが電子化された弊害として、

手書きで血球の推移や投薬をグラフとして書くことが大幅に減ったため、

患者さんの歴史や現在地の全体像が掴みににくくなってきました

神経変性疾患を疑っている症例や不明熱症例、
血球が変化してきた症例、皮疹が出てきた症例、膠原病を疑う症例

などなど、使い所は満載です





是非困った症例があれば、

まずは地図と年表を描いて頭の中を一度整理する事をお勧めします


時間はかかるし、面倒くさくて、

こんなんで診断出来るのかと思うかもしれませんが、

自分の中ではこれが一番の診断の近道だと思っています

急がば回れですね



自分で診断出来なくて助けて欲しい

と、上級医に泣きつく前に、

地図と年表を作って、とことんにらめっこしてから

白旗降りましょう


上級医は研修医がどこまで本気で悩んだかが知りたいのです

もちろん、時と場合を選びましょうね

死にそうな患者を目の前に地図と年表作っている暇はありませんから


倫理の勉強会

TED にジル・ボルト・テイラーという 脳科学者が脳卒中になった時の話があります  

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