アカラシアの見つかり方はいろいろあると思います
嚥下障害で見つかるパターンもあれば、
たまたま他の原因でとったCTで食道が拡張していた時などです
先日、98歳 男性が飲み込めないという主訴で初診外来を受診されました
本人は喉というよりは、
胸骨の後ろあたりで飲み込めないという症状でした
食べたものが逆流して出てきてしまって、
ご飯が食べられなくなってきたようです
症状は数か月前から出現し、ここ数日でさらに悪化し、
食事摂取が不能になってしまったため、受診されました
(→参考:治せるかもしれない嚥下障害)
明らかに咽頭期ではなく、食道期の問題でした
あとは、器質的な原因か、機能的な原因か考慮します
偶然、2か月前に肺炎・心不全で入院となっており、
その時のCTにてすでに食道がかなり拡張していました
目立った閉塞起点は分かりませんでした
拡張した食道の原因で多いのは、
強皮症とアカラシアです
強皮症らしさの所見がなかったので、
アカラシアが疑われました
アカラシアは食道の遠位筋層内のganglion cellの機能喪失が病態として
説明されていますが、どうして起こるのかは分かっていません
アカラシアの症状
GERDに比べれば、アカラシアは圧倒的に稀な病気です
ですが、症状はGERDと一緒です
そのため、アカラシアをいきなり疑うのは、難しいでしょう
普通、GERDといわれて治療されていることが多いと思われます
症状からアカラシアを疑うパールとして、
若年者のくり返す原因不明の胸痛や
若年者の原因不明な呼吸器症状(咳、咽頭痛、嗄声)が挙げられます
症状が出現してからアカラシアと診断されるまでに、5年くらいかかると言われます
逆にアカラシアは見逃しても、あまり痛い思いをしないということにもなります
ですが早く疑って、早く診断できれば、患者さんのQOLは上がります
頑固なGERD症状で、長引くようであれば、
一度は上部消化管内視鏡検査(GF)が行われることが多いと思います
しかし、そこでアカラシアを疑っていないと、
所見がなければ、NERDや難治性のFDということになってしまうので、注意が必要です
アカラシアの鑑別に、好酸球性食道炎や食道がんがありますので、
アカラシアを疑った場合は、下部食道の生検を行ったほうがよいと思われます
さらにアカラシアが疑わしければ、
バリウムやマノメトリーを行い、アカラシアを分類していきます
アカラシアの治療
アカラシアの治療は最近、ホットな分野です
なんといっても内視鏡的筋層切開術(POEM:Peroral Endscopic Myotomy)の
エビデンスが確立しつつあります
アカラシアまとめ
・原因不明の胸痛、難治性のGERD・FD、
原因不明の咽頭痛・嗄声・咳といったキーワードであれば、アカラシアを疑う
→診断までに5年かかっている
・逆に診断されなくても、何とか生きていける
→QOLは下がっているので、早期診断・早期治療を目指す
・治療の第一選択が変わりつつある
→POEMがPDに勝った
参考文献:JAMA.2019;322(2):134-144.
JAMA may12,2015 Volume 313,Number 18
Lancet 2014;383:83-93
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