今週のNEJMのCaseを読んだ感想
N Engl J Med 2023;388:747-57. DOI:10.1056/NEJMcpc2211368
①感染症の除外がやや甘いのではないかと感じた
ステロイド投与前にはもう少し感染症側をしっかりと除外する必要があると思った
クリプトや結核のような慢性髄膜炎であれば、多発する脳梗塞の画像からは矛盾しない
頭痛や発熱がないことでは除外できず、クリプト抗原やADA、PCRの提出は必須であろう
実際は記載がないだけで提出していると思われるし、
文章中ではPACNSの疑いが非常に高いような書かれ方だったが、
実際はもっと悩んでいた気がする
感染症の非存在証明はそんなに容易ではない
過去に同様の症例で一度目の髄液検査ではクリプトは陰性であったが、
2回目の髄液検査で陽性になった症例を経験したこともある
疑った場合は再検を行うべきであろう
特に日本では結核の有病率が高いので、
もしかすると結核の治療を優先させていた可能性すらあると思われた
②Small-Vessel Cerebral Arteriopathyというカテゴリー
脳症血管病のカテゴリーの中に高血圧性のものと遺伝性のものなどがあると考えていたが、
Small-Vessel Cerebral ArteriopathyとSmall-Vessel Diseaseを分けて書かれていたのが新鮮だった
Small-Vessel Cerebral Arteriopathyという単語はあまり、調べてもhitはしなかったが、
とても参考になるカテゴリーであった
結局は治療が可能な病態である感染症と腫瘍を探すことが重要
脳生検までしないとPACNSを確定することは難しいが、脳生検のハードルは高い
(結局、本症例もされておらず)
ただ、造影MRIで脳血管を評価する方法があるので、そこまではできると思われた
PACNSは生検が難しいので、PNのような難しさを感じさせられる
③PACNSの鑑別に腫瘍由来の血管炎があることは知らなかった
腫瘍があって脳梗塞があると、すぐにCATやトルーソーに飛びつきがちではあるが、
血管炎を起こすという病態があることを知ることも大事
なぜなら抗凝固一辺倒では、再発を繰り返す症例の中に、
免疫抑制剤を使用することで再発を防げるかもしれない症例がいることを教えてくれた
治療方針の決定にも大事な知識であるが、
このような腫瘍が背景にある方に梗塞が起きた場合、剖検に至る症例も多いため、
脳の病理をみてもらうときに、血管炎があったか?という議論を病理医とすることも重要
④肺がんの治療は放射線ではなく手術の余地はなかったのであろうか
議論の末ではあると思われるが、素人的には傍腫瘍症候群からの血管炎を疑っているのであれば、肺がんの切除を行えば良いのでは?と思ってしまった
結局、PACNSと傍腫瘍症候群としての血管炎は病理では鑑別は難しい
肺がんがby stnaderなのか、真の原因なのか、どうやって見極めるのかが疑問に残った
肺がんを手術で切除し、血管炎がよくなるかどうかといった治療効果判定くらいしか思いつかなかった
⑤わざわざ、Drの名前を書いている意味は?
身内で「おー〇〇先生だ!」と盛り上がるため? 笑
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まとめ:症例のタイトル通り、再発する脳梗塞の症例の考え方が整理できた
PACNSの診断は他の疾患の除外の上に成り立つ最終診断である
いかに他の疾患を除外するか と
どのタイミングで免疫抑制の治療に踏み切るかが
実臨床では悩むポイントであると思われた