2022年8月25日木曜日

真実はいつも一つ?

 60歳代 男性 

主訴:自宅で倒れた(※症例は修正・加筆を加えてあります)


救急車で来院


救急隊からの情報:家族から救急要請

朝から具合が悪そうだった

急にバタンという音がして、見にいくと倒れていた


救急車を呼んで5分くらいで意識は戻ってきた

鼻血が出ており、顔面に擦過傷がある


救急車内のバイタルは、意識がJCS一桁

BP 111/85, P 70, SpO2 95%, RR 22, T 35.7

特に麻痺はなく、会話可能

瞳孔不同なし


あと10分後で到着予定。家族は後で来院予定

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Q, 10分間で何をしますか?


T「はい、あと10分後に来られます。

  皆様だったら、この間に何をしたいですか?何を考えますか?」


G「失神なのか、意識障害なのかを考えます。

  失神であれば、不整脈が心配なのでモニター心電図をつけて

  12誘導心電図をとりたいです。


  意識障害の可能性もあるので、デキスターで血糖測定を行いたいです。」


T「素晴らしいですね。その通りです。

  他に10分間待っている間に何かしたいことはありますか?」


K「カルテをチェックしたいです。当院かかりつけですか?」


T「そうですね、カルテチェック大事です。

 カルテから情報をすぐに吸いあげることは、一つの技術です。

 コツは色々あります。


 ・入院したことがあれば退院サマリーを見る

 ・サマリーがない時は他院への紹介状を探す

 ・画像を確認する(元々、脳や腹部に動脈瘤があるかをチェック)

 ・読影一覧を見る(読影依頼を読むと既往がわかることもある)

 ・採血結果、心電図などの検査歴をチェックする

 

 この方はどうでした?」


E「ドックでかかった時に胸のCTが撮られていましたが、異常はありませんでした

  他に情報やカルテはありませんでした」


T「ありがとうございます。ではそろそろ10分経ちましたね。

  患者さんに到着してもらいましょう」

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ではそこに患者さんが実際いると思って、病歴をとってみてください


G「ここはどこかわかりますか?」


Pt「ここどこですか?病院ですか?」



G「病院です。お名前いえますか?」


Pt「〇〇です。今何時ですか?

  ここは・・・病院ですか?」



G「ここは病院です。今日は何があったか覚えていますか?」


Pt「今日・・・わかりません。倒れたんですか?

  ここは・・・病院ですか?」



G「はい。病院です。今は何月何日かわかりますか?」


Pt「うーん。わからないです。

  ここは・・・病院・・・ですか??」

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E「といった感じで、何度も同じことを聞いていました。

  

  他には、手足の麻痺はありません。動かしにくさもないです。

  痺れやめまい、吐き気、動悸、頭痛や胸痛など、どこかが痛いということもありません。


 既往は糖尿病や脂質異常症で近医から薬をもらっているようですが、

 何を飲んでいるか詳細不明でした。」


T「はい、ありがとうございます。


  バイタルも救急隊からのものと変わりはないようです。

  血糖や心電図はどうでしたか?」



E「血糖は116と正常でした。

 心電図もST-T変化はなく、洞調律でした。

 肺塞栓を疑うようやS1Q3T3や陰性T波はありませんでした。」

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Q、追加で病歴や診察で加えたいことはありますか?


T「他に聞きたいことはありますか?」


G「こういうのは初めてですか?」


E「はい、はじめてのようです。」



G「朝はなんともなかったんですか?」


E「わかりません。本人の記憶がないのでよくわかりませんでした。」



T「ありがとうございます。この状態をProblem listにすると、

 何という医学用語に落とし込めますか?」


G「失神ですか?」


T「そうですね、一見、失神のように見えますが、

 失神の定義を思い出してみてください。


 失神は一過性の脳血流低下に伴い意識消失を起こしますが、

 基本的にはフルリカバリーする病態です。

 

 この方はフルリカバリーしていませんね。この時点で失神とはいえません。」


G「では意識障害として考えます」


T「そうですね、一見、意識障害のように見えますね。

 ですが、本当に意識障害でしょうか。


 意識障害と間違いやすい症候群があります。 

 失語と難聴は意識障害と間違えてしまうことがあります。


 そしてもう一つ、記憶障害です。


 この方は、開眼しており、会話もできます。さらに指示も入ります。

 意識はしっかり保たれている印象がありますね。


 見当識障害があるので、意識が清明とはいえませんが、 

 メインとしてのProblemは、記憶障害だと思います。


 そうすると、記憶障害、つまり健忘は、前向性と逆向性健忘に分けられます。


 記憶に関する脳障害が発現した時点が明らかな場合は、

 障害時点以降の情報の記憶障害を前向性健忘といい、

 障害以前の情報の記憶障害を逆行性健忘と呼びます。


 そのため、逆行性健忘がどこから始まっているかを確認する必要があります。

 また前向性健忘があることの証明をするために、自分の名前を覚えておかせる必要があります。


 今回はどちらもありそうです。」


E「はい、名前は覚えさせませんでしたが、時間はお伝えしたものの、

 何度も聞かれたため、前向性健忘はあったと思われます。


 逆行性健忘に関しては、振り返ってどこから覚えているか、

 どこからの記憶がないか、までは詳細に確認していませんが、

 当日の記憶はありませんでした。」


T「はい、ありがとうございます。

 では今後の検査やプランを考えるために、鑑別疾患を挙げてみましょう。」

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Q、鑑別は?


G「低血糖発作、てんかん発作とかでしょうか?」


T「いいですね、ではてんかんを疑ったら、次は何をしますか?」


G「脳波を撮りたいです。」



T「そうですね。脳波とりたいですよね。でも脳波はすぐにはとれません。

 脳波をとる前に、病歴で聞いておきたいことはありますか?」


g「前兆とかですか?」


T「そうですね、てんかん発作の場合は(脳梗塞の場合も)必ず、

 どこの部分の発作かを考えるようにしましょう。


 今回はてんかん発作があるとすれば、どこになるでしょうか?」



K「記憶障害が出ているということは、海馬や側頭葉とかでしょうか」


T「その通りですね、側頭葉てんかんの可能性はあると思います。

 そうすると他に聞きたいことはないですか?」


K「匂いの変化とかでしょうか?」


T「素晴らしい!その通りです。

 他には、上腹部不快感(吐き気)、デジャブ感といった前兆があったかどうか知りたいですね。」


E「そこまでは聞いていませんでした。」



T「わかりました。てんかんの検索をもう少しするのであれば、

 入院してから脳波をとるという方針でしょうか?」


G「はい、入院して経過はみた方が良いと思います」


T「わかりました。他の意見ありますか?」


K「SAHも鑑別でしょうか?」


T「鑑別になりますし、鑑別の上位ですね。

 SAHは痛くない時もまれにあります。

 ただ、あえてSAHっぽくないところを挙げるならどこでしょうか?」


K「えー・・・頭痛がないところでしょうか。」


T「頭痛がないSAHは確かにっぽくないですが、

 頭痛がないSAHもあります。




J Stroke Cerebrovasc Dis . 2016 May;25(5):1208-1214

Atypical Presentation of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: Incidence and Clinical Importance  .


 日本から報告されたこの論文では、SAHの3.8%に頭痛がなかったようです。


 頭痛のないSAHは、atypical presentaitionと称されており、

 診断間違いや診断遅れが多く、

 その結果、再破裂をきたし、予後が悪くなっていました。


 この症例でSAHらしくないところは、バイタルです。

 血圧が上がっていませんでしたよね?

 

    SAHにも関わらず血圧が上がっていない時は、たこつぼ心筋症を合併しているとか、

 出血性胃潰瘍を合併しているとか、血圧が下がる+αの要素を考えた方が良いです。


 さて、てんかん発作やSAHが鑑別にあがりました。他にはいかがですか?」


U「不整脈」


T「そうですね、失神と考えるのであれば、不整脈、特に徐脈を考えたくなります。

 今回の受傷は受け身が取れず、バタン!と倒れています。


 いわゆる、drop attackです。

 drop attackとは姿勢を維持する筋の脱力または 

 脚の筋の異常収縮によって生じる突然の転倒です。


 これは、一気に脳血流が減るような徐脈性不整脈やSAH、

 てんかん発作でみられる病態であり、かなり鑑別が絞られます。


 drop attackの場合、意識があるかどうかが重要です。

 

 意識がある状態でもdrop attackは起こります。


 snap diagnosisとして、意識消失のないdrop attackの診断はただ一つです。

 それは、前庭性drop attack、つまりメニエール病の発作です。


 前庭性drop attackはTumarkinによって最初に報告されたためTumarkin otolith crisisと呼ばれます。

 

 知っていれば、診断は容易です。

 患者さんは「地面に急激に引っ張られたような感じ」と表現されます


 JAMAにビデオがありました。衝撃映像です。


JAMAの動画

 

Tumarkin Drop Attack Recorded by Video Surveillance

JAMA Neurol. 2020;77(7):897-898. doi:10.1001/jamaneurol.2020.0884


 

 頻脈性の不整脈で意識を失う時は、

 ヘナヘナ〜(コナン君が麻酔針を使って、毛利小五郎を寝かせる時のような感じ)

 と失神していくため、drop attackになりにくく、外傷を伴うリスクは減ります。

 

 重大な外傷を伴う失神をみた場合は、失神というカテゴリーに加えて、

 drop attackである。という認識を持ちましょう。


 さて、他に鑑別はありますか?」



U「SAH以外の脳出血とか、脳梗塞とか。」


T「そうですね。海馬がやられるパターンの脳梗塞でもよいかもしれませんね。」



U「あとは倒れて頭を打っていそうなので、脳震盪とか。」


T「ありがとうございます。結果としての脳震盪はあってもよいですね。

  他に鑑別はどうでしょうか?」



W「全向性の健忘がありそうなので、一過性全健忘(TGA)は鑑別になります。


  ただし、TGAは外傷がないことが前提になっているので、

  この症例では外傷を伴っていることから、違うのですが、

  外傷+TGAのような状態でもよいかもしれません


  TGAを起こすような息みや怒責がなかったかは確認したいです。」



T「はい、ありがとうございます。

  そうですね、会話のパターンからはTGAっぽいですよね。」






T「他にコメントはありますか?」


S「今起きていることは、外傷と健忘ですが、なぜ倒れたかが問題ですね。

 そういえば、救急隊の話では朝から具合が悪かったんですよね?

 
 それが何かがまだわからないので、そこに答えがある気がしますね。」


T「ありがとうございます。

  その通りですね。今起きている事象だけではなく、

  遡って考えていく必要がありそうですね。

 

  色々、鑑別が出ましたが、一度、Problem listとして整理してみましょう」

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60歳 男性 主訴:自宅で急に倒れた


救急隊からの情報:家族から救急要請

朝から具合が悪そうだったの

急にバタンという音がして、見にいくと倒れていた


救急車を呼んで5分くらいで意識は戻ってきた

鼻血が出ており、顔面に擦過傷がある


<problem list>

#a  drop attack  

 -1  顔面擦過傷 -2 鼻出血

#b  全健忘

#c  朝からの体調不良


#1  糖尿病で治療中(詳細不明)

#2  脂質異常症で治療中(詳細不明)


血液検査:トロポニン0.07とごく軽度高値、それ以外は問題なし

ガス:異常なし

単純CT:頭蓋内に出血なし、顔面骨の骨折なし

UCG:やや心臓は全体的に壁運動低下あり

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Q、どうマネージメントしますか?


T「さあ、一通り検査が出揃いました。

  皆様ならこの後、どうしますか?」


G「入院してモニターをつけながら、失神の精査をして、

  脳波をしたいです。」


T「素晴らしいですね。他にご意見ある人はいますか?」


・・・・・


T「はい、ありがとうございます。みなさん、同じ意見ですかね。


 では、僕の診断をお伝えします。


 この症例は肺塞栓か、もしくは、心筋梗塞+不整脈です。


 そのため、この時点で造影CTを撮りにいきたいです。

 もちろん、心電図の再検やトロポニンの再検も行います。


 理由は、トロポニンの軽度上昇です。

 腎機能が良いにも関わらず、トロポニンがわずかでも上がっているのは、

 無視してはいけません。絶対におかしいです。


 この方は確実に心臓に何かが起きています。

 その何かが、肺塞栓か心筋梗塞だと思います。」




E「はい、ありがとうございます。


 自分もトロポニンのわずかな上昇を重くとらえて、

 この結果をみて再度心電図を撮りました。


 すると、来院時はみられませんでしたが、

   Ⅱ、Ⅲ、aVfでST-T上昇が出現していました。

    reciprocal  changeもありました。 

  

 ということで、STEMIと診断しすぐに緊急カテーテル検査となり、

 #3が閉塞していました。」



T「なるほど、STEMIになっていたのですね。


  でもST上がっていてよかったですね。

  上がっていなかったらどうしていたんですか?」



E「どうしてたんでしょうね・・・

 

  後で遅れてやってきた妻に病歴を聞くと、

  朝方、胸を痛がっている様子があったと、お話されていました。

  なので、ACS疑いでモニターをつけながら入院で経過をみていたと思います。」


T「やはり、胸痛はあったんですね。 


  ですが、外傷契機の脳震盪で来院時は、全健忘になってしまっており、

  胸痛の病歴が本人から聴取できなかったのが、難しかったですね。

  

  drop attackの原因は、VTでもよいのですが、

  右冠動脈閉塞に伴うSSSやコンプリートAV blockだったのかもしれませんね。


  いや〜、すごい経過でしたね。」




症例の病態まとめ

①右冠動脈閉塞 →  ② 徐脈性不整脈(疑い)→ 

 ③ drop attack →  ④ 顔面外傷 → ⑤脳震盪(全健忘)


 まるでドミノ倒しですね


 外傷によってTGAのような状態で来られてしまうと、病歴が抜けてしまうので、

 診断が非常に難しくなるということがよくわかりました。


こういった症例の考え方としては、

いわゆる根本原因分析(RCA:Root cause analysis)で考えるとよいかと思います


つまり、「なぜなぜ」を繰り返す分析アプローチです

「なぜ、発生したのか」と原因を掘り下げていきます


 この方に会ってまず、思うことは、


 「なぜこの人は今、TGA様の状態なのか?」

 「TGAは外傷があってはいけないが、全健忘は外傷が契機なのか?」

 「ではなぜ、外傷を起こしたのか?」

 「失神で外傷を伴うとしたら、それはdrop attackではないか?」

 「drop attackといえば、意識があったのか?」

 「意識がないdrop attackといえば、

 急激な脳血流downによるものであり、徐脈性不整脈が原因ではないか?」

 「では、なぜ徐脈性不整脈が起きたのか?」

 「SNやAVNを栄養している血管の閉塞が原因か?」

 「そう考えると、朝の具合の悪さはACSだったのか?」



今回の症例では問題点はいくつかありましたが、根本的な原因はたった一つでした


#a  drop attack  

 -1  顔面擦過傷 -2 鼻出血

#b  全健忘

#c  朝からの体調不良


#1  糖尿病で治療中(詳細不明)

#2  脂質異常症で治療中(詳細不明)


全てのproblemが心筋梗塞に収束していくという診断過程が共有できてよかったです


真実はいつも一つとは限りませんが、

今回は一つの疾患が全ての引き金になっていましたね


ありがとうございました


まとめ

・多発するproblemが目の前に現れたら、

 時系列に沿って考え、根本原因分析(RCA:Root cause analysis)を行なう


・顔面外傷やTGA病態といった目の前の目立った表現系に目を奪われることなく、

 根本の原因を見失わないようにする




2022年8月24日水曜日

慢性〇〇の考え方

 慢性に続く病態は色々ありますが、急性に比べて鑑別が膨大であり、

系統だって鑑別をあげるのが苦手な人もいるのではないでしょうか?


例えば、不明熱は慢性炎症ですし、慢性髄膜炎、慢性関節炎、慢性下痢など

慢性と名のつく症候群は、鑑別から診断に辿り着くのが難しいことが多いです



慢性に続く病態に出会った時の考え方について、自分の頭の中を開示します

あくまで一例ですので、参考にできるところだけ参考にしていただければ幸いです


解説動画


慢性に続く病態で多いのは、感染症、免疫異常、腫瘍の3つです



①感染症のカテゴリー

ここではいつもの感染症の原則が大事になってきます


(1)患者背景:さらにここで3つ、免疫状態・曝露・余力

(2)感染部位

(3)原因微生物

(4)治療

(5)適切な経過観察





慢性〇〇であっても感染症が鑑別になるのであれば、

この5つから逃れることはできません


慢性に続く感染症といえば、

(1)患者背景:DMの人、HIVの人、免疫抑制剤使用中 

       →こういった背景の方は、普通の感染症が長引くことがあります


(2)感染部位:中枢神経感染症はCRPが0のこともあり、発見が遅れることがあります

        全ての臓器の膿瘍、筋骨格系感染症、

                         感染性心内膜炎、大動脈など

      フォーカスがはっきりしない部位が慢性になりやすいです


       →熱源が不明の感染症の熱源探しの方法を参考にしてください


                     

                  



(3)原因微生物:なんと言っても結核です 

         結核はどこまでいっても除外が難しいので、頭の片隅に常に置いておきます


         結核を鑑別に考えた場合、

         NTMや真菌もクラスターとして一緒に考える必要があります

         クリプトコッカス、カンジダ、アスペルギルス、ムコール、コクシジオイデスなど


         あとは血管が好きな梅毒やサルモネラなんかもあり得ます


         IEになってしまった場合は、どんな微生物でもありです


         ウイルスでいえば、EBVが代表的です

         寄生虫ももちろん、鑑別になってきます



慢性病態では、感染症をとことん考えることが重要になります


特に感染性心内膜炎は慢性に続く感染症の入り口のような病気で、行き着く先は結核です


その中に多くの鑑別疾患があるというイメージを持っています





②免疫異常のカテゴリー


免疫といえば、

局所免疫や自然免疫、細胞性免疫、液性免疫、補体、サイトカインなど

免疫に関わるものは、色々ありますが、ここでは「ざっくり」で考えます


(1)自然免疫系の病気(自己炎症性疾患)

(2)獲得免疫系の病気(自己免疫性疾患)

(3)リンパ節腫脹+α


この3つに分けると、頭の中が整理されます


(1)自然免疫系の病気(自己炎症性疾患)


好中球やマクロファージが活性化して、燃え上がるようなイメージの病態です

結晶誘発性の関節炎やAOSD、ベーチェット、家族性地中海熱といった疾患です


血液検査でマーカーとなるような抗体は見られず、

病歴や診察が診断根拠になることが多い疾患群です



(2)獲得免疫系の病気(自己免疫性疾患)


抗核抗体を測定すると、ヒントになることが多い病態です

ANA関連疾患と呼ばれ、SLE、SS、PM/DM、SSc、MCTDなどがあります


もちろん、獲得免疫系の病気も自然免疫の異常もきたしているので、

クリアカットに分けることができませんが、あくまでメイン病態がどこか?という分け方です



(1.5)中間に位置する疾患

関節リウマチはACPAやRFといった項目を測定できます

ANCA関連血管炎やRAはやや獲得免疫よりに位置しています


脊椎関節炎や大血管炎、PMRは診断につながるような血液検査で測定するものがなく、自然免疫よりに位置しています


(3)リンパ節腫脹+α


非腫瘍性のリンパ増殖性疾患とサルコイドーシスと
IgG4関連疾患がメインになります


非腫瘍性のリンパ増殖性疾患では、
菊池病、キャッスルマン病、POEMS、TAFRO、MTX-LPDといった疾患が挙げられます



免疫異常の場合も感染症の原則と同じように考えることができます

違うのは、原因が微生物ではなく、自分の免疫であるということです


(1)患者背景:年齢や性別が免疫異常には重要になります

(2)障害部位:各疾患ごとに障害されやすい臓器があります

(3)原因の免疫異常:どの細胞、悪さしている抗体、何のサイトカイン、補体の関与

(4)治療:(2)と(3)がわかれば、使う薬も決まってきます

(5)適切な経過観察:これはどの病態の治療でも大事です



③腫瘍のカテゴリー


(1)リンパ腫

(2)MDS/白血病

(3)その他


の3つを考えます


(1)リンパ腫

リンパ腫の場合、原因となった細胞や遺伝子異常などで分類が細かくされています


臨床で重要なのは、

塊を作っているか、作らないタイプかに分けることです(國松先生より)


塊を作るタイプの普通のリンパ腫であれば、画像や診察で見えていますので、

生検すれば診断がつくことが多いです


問題は塊を作らないタイプです

有名どころでは、IVLです


「砂」をイメージしてもらえれば良いと思いますが、

腫瘍細胞がサラサラの砂のように、血液中を移動していきます


そして、狭い血管で詰まって症状を出したり、出さなかったりします


狭い血管に潜んでいるリンパ腫細胞を探しますので、

IVLを疑った場合は、ランダム皮膚生検が行われることが多いです


ただ、IVLが有名になってきたため、

不明熱→IVL疑い→ランダム皮膚生検の流れが、閾値低く行われすぎている印象です


不明熱に手当たり次第、皮膚生検を行うのはナンセンスです


そこで、「どんな人にランダム皮膚生検をすべきかどうか」という臨床的疑問を

解決しようとしてくれた素晴らしい研究があります


 2019 Mar 14; 133(11): 1257–1259.




これは亀田の先生方が出されたスコアで、更なる検証が必要ではありますが

ランダム皮膚生検をするか迷った時につけてみると、参考になります




IVL以外の塊を作らないリンパ腫は、

他の実質臓器に潜れこんだり、画像で見落としやすい部位に隠れるタイプです


肝脾原発のリンパ腫や皮膚T細胞性リンパ腫、鼻型NK/T、咽頭、中枢神経原発などです



(2)MDS/白血病


MDSやHTLV1は白血病へ移行することがあり、

さらには免疫異常もきたすことがあり、注意が必要です


MDSの場合は、トリソミー8症候群が重要であり、

トリソミー8があるだけで、免疫異常をきたすことがあります


(3)その他

腎癌が有名ですが、炎症や熱だけではなく、

さまざまな症状(皮疹、関節痛など)をきたすことがあります


腫瘍による骨転移や播種性骨髄癌腫症があると、

まるで血液疾患のように白赤芽球症をきたしたり、汎血球減少をきたすこともあります


                  


この図のいいところは、
それぞれのカテゴリーから漏れてしまうところをカバーしてくれることです


例えば
①感染+②免疫異常
①感染+③腫瘍
②免疫異常+③腫瘍

というように、それぞれが合わさった病態があります


例えば、
①感染+②免疫異常=
反応性関節炎、リウマチ熱、パルボウイルス感染、COVID19、MIC-S、GBS(ギランバレー)など


①感染+③腫瘍=CAEBV、HIV/AIDS/リンパ腫など


②免疫異常+③腫瘍=
MDS関連(血管炎、ベーチェットlike、VEXAS)、トリソミー8症候群、
血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(angioimmunoblastic T-cell lymphoma :AITL)に伴う自己免疫疾患
HTLV1関連疾患(HAM、関節炎)
paraneoplastic syndrome(傍腫瘍症候群)など



まとめ
・慢性病態の時には、①感染症、②免疫異常、③腫瘍の3つのカテゴリーと、
①+②、①+③、②+③のカテゴリーで考えてみる

・感染症の原則は、全てのカテゴリーでも応用できる

<感染症>

(1)患者背景:免疫状態・曝露・余力

(2)感染部位

(3)原因微生物

(4)治療

(5)適切な経過観察


<免疫異常>

(1)患者背景:年齢や性別が免疫異常の疫学には重要

(2)障害部位

(3)原因の免疫異常:どの細胞、悪さしている抗体、何のサイトカイン、補体の関与

(4)治療:(2)と(3)がわかれば、使う薬も決まってきます

(5)適切な経過観察



<腫瘍>

(1)患者背景:年齢や性別が腫瘍の疫学には重要

(2)発生部位と転移部位:いわゆるstage

(3)原因の細胞:どの細胞が腫瘍化したのか、遺伝子異常の有無、EBVの関与、ホルモンの関与

(4)治療:(2)と(3)がわかれば、治療法が決まってきます

(5)適切な経過観察




頭部外傷のマネージメント 第三部















頭部外傷のマネージメント 第一部から第二部

 


頭部外傷① 解説動画









2022年8月17日水曜日

新型コロナウイルス感染をのりこえるための説明書 〜変わってきたこと・変わらないこと〜



オミクロン株BA.5編

7月〜8月にかけての第7波はひどい状態です


ウイルスの脅威は以前よりもなくなっているにも関わらず、
なぜ現場は以前よりもひどい状態になっているのでしょうか・・・



新型コロナウイルスが見つかってから、はや2年と8ヶ月が経ちました



この間で

変わってきたこと、変わるべきこと、変わらないこと

について解説していきます




ウイルスが流行すると、情報も増えてきます

ですが、自分にとって必要な情報はそれほど多くはありません


情報や知識は多ければ多いほど、よいというわけではなく、
その情報が正しいかどうかの方が重要です


もう一度、情報を整理していきましょう




第7波はこれまでとは桁違いの大きさです


新規感染者が多すぎて、新規死亡者も増えてきています



感染者が多すぎる一方、医療従事者の感染者も多く、
一部の医療機関は機能が停止しています


病院の中の一つの病棟でクラスターが起きて、
ようやく終息したと思ったら、
今度は別の病棟でクラスターが起きるというのは日常茶飯事です

クラスターが起きた病棟はしばらく使えなくなります




以前のようにクラスターが起きた病院がニュースにでることはなくなりました

なぜなら、クラスターはどの病院でも頻繁に起きているからです



外からの感染者の増大に加えて、内からの感染者増大のダブルパンチに
医療従事者はこれまでにないくらい疲弊しています



もちろん、医療者の疲弊や医療機関の機能不全で
一番、困るのは患者さんです


救急車の受け入れ困難や自宅療養中に亡くなられた例などが
連日のニュースで取り上げられるようになってきました




感染者が多すぎる→外来に殺到・クラスター発生→スタッフが疲弊→
スタッフが離脱(身体的・精神的疲労)→マンパワー不足→さらにスタッフが疲弊


感染者が多すぎる→スタッフが離脱(感染)→マンパワー不足→さらにスタッフが疲弊



この悪循環を断ち切るためには

・感染者を減らす
・感染者が外来に殺到しないようにする
・スタッフの業務量軽減
・マンパワーの補充
・スタッフのエンパワーメント


などの対応が考えられます



感染症が流行する時の3要素は


社会の要因・個人の要因・病原体の要因


の3つです


この3要素が複合的に絡み合って、大流行を引き起こします




日本の新規感染者は世界でもトップクラスです

ですが、海外でもBA.5は流行しています


それでは、なぜ日本と韓国が突出しているのでしょうか?


ここにも多くの要因があると考えられています


アメリカを含む海外ではBA.1の流行が非常に大きく、

BA.1に感染した人は、BA.5に対して一定の免疫ができるため、

BA.5に感染しにくくなります



一方、日本はBA.1の流行があまり大きくなかったため、

BA.5の流行が大きくなってしまったと考えられています



ですが、もっと大きな要因があると思います



それは、「他国が全例検査や全数報告をやめたから」です


こんなに感染者が多く、重症化も減ったウイルスに対して、

真面目に検査や報告をしていたら、時間がいくらあっても足りません



というわけで、感染者が多すぎますし、以前ほどウイルスの脅威はなくなったため、

他の国では、全例検査や全数報告をやめています


これが日本が世界でトップクラスの感染者を誇るからくりだと思います


ちなみに韓国もまだ全数報告しています


マスクを着けている人が多い日本の新型コロナ感染者数が、世界最多なのはなぜ?




最近、病院に行った人はお分かりだと思いますが、
病院はどこも混雑しています


外来の電話は鳴りっぱなしで、患者さんが殺到しています

現場はまさに地獄絵図で、スタッフは上層部が思っている以上に疲弊しています



患者さんはそんな裏事情は知る由もありません


病院に来られる患者さんが辛いのはわかりますが、

そこで働いているスタッフも同じくらい辛い状態でいることは、

知って欲しいと思います



患者さんにも、上層部にも・・・





というわけで、悲惨な現場の声を聞いてくれた4学会が声明を出してくれました



簡単にいうと、


「ほとんどの人は、

今のコロナは家でゆっくり休んでいれば、自然に治ります。


慌てて病院に行かなくても大丈夫です。

自宅にいても検査や症状への対応はできます。


病院に行って欲しい人やタイミングをお伝えします。」


ということです




「コロナかも!?と思ったら、すぐ病院へ!」


の思考を変えていきましょう


「コロナかも!?と思ったら、まず学校や仕事を休みましょう」



そして、


①今の症状を確認してください


どんな症状がありますか?


すぐに病院受診した方が良い症状もありますので、

当てはまれば病院へ電話相談してから、受診を検討してください





②すぐに病院受診するほどの症状がなければ、

自分自身を振り返ってみてください


年齢は?


妊娠中ですか?


持病はありますか?

定期的に病院に通院していますか?

日頃から飲んでいる薬はありますか?


持病がなくても高度肥満やヘビースモーカーの方、

ワクチン未接種の方は重症化リスクです


重症化リスクを持っている人は、

軽度な症状でも病院受診を検討していただければと思います




(重症化リスクのない軽症な方の場合)

今、病院に行って長い待ち時間と引き換えに得られるものは、

「コロナの検査結果と解熱鎮痛剤」です



「コロナの検査結果と解熱鎮痛剤」は
病院に行かなくても自宅と薬局で得られます



重症化リスクがなく軽症者には、
コロナに対する特別な薬は処方されません



内服のパキロビットやラゲブリオは国が管理しており、

インフルエンザのタミフルのように簡単に処方できる薬ではありません






今のコロナ(インフルエンザも)は、
ほとんどの人は抗ウイルス薬は必要なく、
自宅でゆっくり休んでいれば自然に治ります





仕事を休むため、学校を休むために検査証明を求めて患者さんが病院受診すると

病院の機能が停止してしまうので、ここに歯止めがかかればいいなあと思っています



子どもがコロナにかかったかもと思っても、

ほとんど同じ流れになります



兵庫県立こども病院 感染対策部、感染症内科の先生方が、

作られたものを一部修正して作ってあります


お子さんがコロナに罹ったらどうする? 自宅療養のポイント ver.1.1



佐久医療センター小児科を中心に佐久医師会の方が作られた

こどもの病気 とおうちケア」のマニュアル

も大変参考になります







変わり続けるウイルス

人間社会は変わることができないところもありますが、

ウイルスは変異を続けています


アルファ(第4波)→デルタ(第5波)→オミクロンBA.1(第6波)→オミクロンBA.5(第7波)


と第4波以降は新たな変異ウイルスが流行を作り上げています


変異ウイルス毎に伝播性と免疫回避能力は上がり続けており、

波がだんだんと大きくなっています



幸い病毒性は(ワクチンの効果もありますが)

元祖の武漢株よりは、減ってきています



このようにウイルスは急速に変わり続けており、

医療も負けないくらいのスピードで対応し続けています


情報がどんどんupdateされていくため、ついていくのが大変です



社会や制度もどんどん変わってきています


ですが、社会のシステムや制度は簡単に変えられるものではありません


そのため、変化のスピードとしてはゆっくりです


このギャップに今、現場が苦しんでいます



ですが、ようやく・・・


「岸田首相は8月15日に厚生労働相ら新型コロナウイルス対策の関係閣僚と協議し、

全ての感染者を確認する「全数把握」の見直しの検討に着手するよう指示した」


と報道がありましたが、


遅かれ早かれ、全数把握はしなくなるのでしょうから、

できるだけ早くしてほしいものです・・・


中止するなら、業務量がピークの今だと思いますが・・・




さて、変わってきたウイルスですが、どのように変わってきたのでしょうか?


今、流行しているのは、オミクロン株から派生したBA.5と呼ばれるものです



BA.5の臨床的な特徴を5つあげてみました


①症状はいつもの「風邪」や「インフルエンザ」っぽくなってきています

中でも「咽頭痛」や「倦怠感」が強いという人が多いです


BA.5の臨床症状は、フランスやイギリス、日本から出ていますが、

どの国も大きく変わりないようです


新型コロナ オミクロン株亜系統BA.5による症状の特徴は?

症状の頻度、症状が続く期間について



Lancet 2022;399:1618-24


以前は特徴的といわれていた味覚障害や嗅覚障害は、少なくなってきています



②年齢によって症状が異なります


これは以前からそういう傾向はありました


高齢者は熱が出にくいというのは、コロナに限らずです



コロナの流行で感じたことですが、


「高齢者は風邪ひかない」というのは、


正しくは

「高齢者も風邪はひいているが、症状が目立たず、

風邪というプレゼンテーションではなく、

誤嚥性肺炎や普通の細菌性肺炎というプレゼンテーションで来る」


のではないかと思っています



③国立成育医療研究センターや国立国際感染症研究センターからの報告では、

デルタ株流行期と比較し、オミクロン株流行期では、

子どもで「けいれん」の頻度が多かったようです



救急外来で「熱性けいれん」で来られた場合、

しっかり感染対策が必要です



④重症化する頻度は以前より増えているわけではないようです


重症化のタイミングに関しては、

以前よりも早くなっていることが広島県のデータから報告されています



ですが、重症化の定義がここにきてよくわからなくなってきています


なぜなら、オミクロン株流行後、

途中で細菌感染が合併して酸素化が悪化するケースが増えているためです


これを重症化とするのか、

それとも軽症例に合併した誤嚥性肺炎として報告するのか・・・


今の重症例や死亡例は上記のパターンと

真の重症化が混ざって報告されていると思います



⑤潜伏期は平均3日


これは以前と変わりません


曝露があってから平均、3日たつと発症するケースがほとんどですが、

オミクロンでも約17%は6日目以降に発症するため注意が必要です


医療機関や高齢者施設でも濃厚接触者の待機期間を短縮しても安全なのか?


コロナに対する治療は色々変遷がありました


治療薬があるというのは、一般の方もご存知かと思いますが、

自分がその適応かどうかを知っている人はあまりいないと思います


残念ながら、ほとんどの人にはこの薬(抗ウイルス薬)の恩恵はありません


抗ウイルス薬の恩恵が得られるのは、

高齢者、重症化リスクを複数持っている人、ワクチン未接種の人です


広島県のデータでは、重症化リスクが高い人の割合は、全体で11%しかおらず、

89%の方は重症化リスクが低い人だったようです



まとめると、


重症化リスクがなく、ワクチン2回接種していて、

軽症であれば、そのまま自然治癒する可能性が非常に高いので、

余計な抗ウイルス薬は飲まなくてO Kということです





ウイルスの変化に伴い治療も変化してきています


中等症Ⅱ以上の治療に変化はありませんが、
軽症者の治療が目まぐるしく変わってきています



特に辛いのは、抗体製剤が使えなくなってしまったことです

一回投与で安全性も高かった抗体製剤が使えなくなったことは、
非常に残念です


というわけで、選択肢が限られました



軽症者の治療は

1、ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビット®︎)
2、レムデシビル(ベクルリー®︎)
3、モルヌピラビル(ラゲブリオ®︎)

の3つに絞られました




日本のコロナ診療の手引きは、第8版までup dateされています

最初はとても有用でしたが、

・あまり変化がない部分が多い
・変異株にあっていない記述が多い
・治療の推奨が分かりにくい

といったことで批判されております



治療に関しては、「NIHのガイドライン」が推奨も分かりやすく、
up dateも頻繁であり、参考にされる先生が多いです




NIHのガイドライン(2022/8/8 最終更新日)では、
軽症者(入院や酸素が不要)で重症化リスクのある患者さんへの治療は


ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビット®︎)(AⅡa)をまずは推奨

使えない場合には、レムデシビル(ベクルリー®︎)(BⅡa)


上記の代替薬として、モルヌピラビル(ラゲブリオ®︎)(CⅡa)


Rating of Recommendations: A = Strong; B = Moderate; C = Weak 

Rating of Evidence: I = One or more randomized trials without major limitations; 
IIa = Other randomized trials or subgroup analyses of randomized trials; 
IIb = Nonrandomized trials or observational cohort studies;



となっています



というわけで、パキロビットをまずは使うべきなのですが・・・・


日本の現状は真逆です


厚生労働省によりますと、

8月9日時点の使用実績は、

ラゲブリオが約38万4700人分

パキロビッドは約2万6200人分

となっています



これにも色々な理由はありますが、

・パキロビットを扱っている薬局が少ないこと
・パキロビットを処方する手間が多いこと
・薬の相互作用が多く、処方対象となる人が少ないこと
・医師の知識不足

などが挙げられます


この問題に関しては、薬剤師さんとの連携をはかり、
解決できるところもたくさんあると思います





ワクチンによって臨床像が変わってきました


大阪大学の山本 舜悟先生や
埼玉医科大学総合医療センターの岡 秀昭先生も
言っておられましたが、


重症化のゲシュタルトが変化してきています


オミクロン以前のコロナはいわゆる「クリニカルパス」通りに対応できるくらい、
同じような経過をたどることが多い病気でした


高熱が持続する人が、7日前後で急激に肺炎が悪化し、
7-10日前後でHFNCや人工呼吸器を検討する


そのため、ある程度の経過の予想も立ちますし、
治療も決まっていました



ですが、オミクロン以後はそのような悪化パターンをとらず、
誤嚥性肺炎や一般細菌の肺炎のような浸潤影が出現し、
じわじわ悪化してくるパターンがみられてきています


まとまった報告は論文としては見つけられませんでしたが、
今後、そういった症例報告が増えてくると思います



そのため、肺炎が悪化した場合に以前のように
安易にステロイドを入れるのは慎まなければなりません


いわゆる以前のようなコロナ重症化が起きているのか、
細菌感染の合併が起きているのか、

検討が必要かと思われます






弱毒化したオミクロンやワクチン接種しているにも関わらず、

重症例や死亡者が増えているのは、なぜでしょうか?



それは、ぎりぎりの状態で生きてきた超高齢者や
フレイルが進んだ高齢者に
感染が広がっていることが大きいと思われます


ウイルスの病毒性というよりも、個人の余力が影響しています



若い元気な人であれば、高熱が出て
食事が1-2日とれなくても、すぐに復活します


ですが、高齢者の場合、

もともとの臓器が限界に近い状態で
なんとか薬を使ってバランスを取っていたところで、

高熱が出て食事が数日でも取れなくなると、
一気に生命維持のバランスが破綻します



コロナがきっかけではあるものの、

結局は心不全の悪化や食事摂取不良からの老衰、
誤嚥性肺炎などが死因になっています





このように、コロナのゲシュタルトや死因は変わってきていますが、

余力のない高齢者をいかに守るか、

ということは変わっていません






不易流行

ウイルスの変異に始まり、治療薬の変遷、
ワクチンによる臨床像の変化、
そして社会の変化・・・


世の中は目まぐるしく変化し続けており、
その速度は加速しています


変化についていくことはもちろん大事ですが、
一方で変わらないこともあります


それは・・・

基本的な感染対策
感染者への配慮
思いやりの気持ち、感謝の心を持つことです



変化していくことに目を奪われがちですが、

変わらず大事なものにも目をむけるべきではないでしょうか







気腫性骨髄炎

 

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