元々四つん這いで歩行している高齢女性が、
意識障害を主訴に救急外来受診しました
受診後、徐々にレベルは回復し、
家族がみてもいつも通りになりました
MRIをとっても、血液検査をしても、心電図検査をしても、
脳波検査をしても、原因はみつかりませんでした
そのため、非痙攣性発作疑いとして、
入院して経過観察をしていましたが、
意識を失うことなく、経過しました
そのため、
退院しようか、といっていた矢先に、
食事のために車椅子にのせて、
移動した時に、意識消失と痙攣発作が起きました
やっぱり痙攣発作だったんだ!
ということで、抗てんかん薬を入れそうになりますが・・・
その前に、念のため、起立性低血圧の要素はないか確認するため、
シェロングテストを行いました
そうすると、30も収縮期血圧が低下してしまいました
そして、浮動性めまいも出現したため、すぐに横に寝かせました
その後も再現性が確認されたため、
起立性低血圧は確実にある
という結論になりました
そのため、
症候性てんかん
VS
起立性低血圧がひどくて、脳の血流不全により、痙攣をおこした
という図式になってしまいました
なので、まずはメトリジンを入れて
起立性低血圧の治療をして、
意識消失発作がどうなるかを、確認している際中です
これまでに見てきた起立性低血圧で困ったのは、
アミロイドーシスとMSAです
座位になったら、すぐに意識がなくなってしまって、
ベッドアップすらも高い角度でできませんでした
今回の症例はDM性と考えています
正常な反応
そもそも、正常な場合に、
起立の姿勢をとると、
下肢や内臓に500-1000mlの血液が貯留し、
venous retuenが減少し、心拍出量が低下します
しかし、すぐに血管を収縮させる機構(交感神経、RAA系)が働き、
血圧低下は、収縮期で10以下、拡張期はむしろわずかに上がります
そして、脈は軽度上昇するのが、自然な反応です
起立性低血圧の診断
まず、5分以上、安静・臥位でいます
これ、忘れがちです
その後、起立してもらい、
1,3,5分で血圧を測ります
多くは、3分以内に変化がみられるので、診断できます
特に1分以内に測定することも大事とされています
これは、最初の2分間(特に1分以内)の血圧低下が、
有害な健康転機に関係していたとされているからです
(JAMA Internal Medicine September 2017 Volume 177,Number 9)
また、1分以内に測らないと、
途中で症状がでたら、
終了しないといけないので、中断の危険があります
個人的には、立ち上がってもらってから、すぐに血圧を測ります
シュコシュコと血圧計をもんでいたら、
あっという間に、30秒くらいたってしまいます
そして、終わったらまた血圧を測ります
計3回くらい、ややゆっくり目に測っていれば、
ちょうど3分くらいたちます
これは、いわゆるシェロング試験(能動的起立試験)です
いっぽう、大学病院の循環器でよく行われているのは、
head up tilt table試験(受動的起立試験)です
シェロング試験はとても、簡単で有用な試験なので、
是非覚えてください
いずれの試験においても
収縮期血圧が20mmHg以上、
拡張期血圧が10mmHg以上の低下で、
起立性低血圧(Orthostatic Hypotension:OH)ありとなります
起立性低血圧の症状
立った直後に意識を失えば、
誰でも起立性低血圧を疑いますが、
頭重感やかすみ目、首から後頭部の痛みといった症状の場合、
起立性低血圧を疑えるでしょうか
高齢者の首から上の間欠的に出現する
よくわからない症状は、
起立性低血圧のことがあります
起立性低血圧は
非神経性と神経性に分けて考えると分かりやすいです
まずは、non neuroからです
non neuroの場合、医原性のことがあります
そして、治療で治ることも多いのが、特徴です
そして、心臓に問題がなかったり、脈を落とす薬がなければ、
脈は上がります
一方、神経性の場合は、
脈が上がらないことが多いです
そして、長年の糖尿病や背景にMSAやアミロイドーシスがあったりと、
治らないことも多いです
神経性を疑った場合は、
まずはパーキンソニズムがないかを疑いましょう
起立性低血圧の原因のまとめ
まずは急いで対応が必要な、
大量出血や脱水(特に、入院中のいつの間にか高血糖)がないか注意しましょう
そして、頻度は多くはないですが、
徐脈性の不整脈やsever なASといった流出路狭窄の問題も考えます
そして、なんといっても多い、薬について考えます
上記がどれでもなければ、
神経性を疑い、神経診察を細かく行います
起立性低血圧の原因まとめ
・起立性低血圧を疑う時は、出たり消えたりする高齢者の首から上の原因不明な症状や失神、痙攣発作
・疑ったら、シェロング試験を行う
・原因は非神経性(non neuro)と神経性(neuro)を考える
・しかし、薬が悪さしていないかどうかは常に考える
参考文献:神経治療32:334-337,2015
Curr Opin Cardiol.2018 January;33(1):66-72.
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