2021年7月17日土曜日

ラクトバチルスの逆襲

ポイント
・ラクトバチルス(乳酸菌)は人間にとって有益な菌

・ただし、時に逆襲にあうことがある

・ラクトバチルスはバンコマイシン耐性のことが多い

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ラクトバチルス(乳酸菌)は人間にとっていいことをしてくれる菌の印象が強いですね

抗生剤を処方するときに、一緒に整腸剤を出すこともあります


食物中にも含まれていて、乳酸菌が入っていると体にいい印象を受けます


乳酸菌はグリコーゲンから乳酸を産生し、
腸内や膣内のフローラを安定した状態に保ってくれています

そして、CD腸炎を起こすような悪玉菌の繁殖を防いでくれています


このように良いことだけして、体に害は全くないと思いきや・・・・

まれに乳酸菌が人間に牙をむくことがあります


乳酸菌は口腔内、消化管、膣内に常在しており、
ひょんなことから、血流に入り込んでいると思われます

しかし病原性は強くはないので、すぐに免疫に除去されますが、
弁膜症が背景にあると、傷ついた弁に付着して感染性心内膜炎を発症することがあります


免疫不全がなくても発症します


IEのプレゼンテーションとしては、亜急性のIEとしてくることが多いです
緑色連鎖球菌のようなIEのイメージです


病原性が弱いためか、発熱がない症例も多く、
case reportでは診断に時間がかかっている症例が多かったです


普段はコンタミとして扱われそうですが、
文脈次第では真の起因菌として考えなければなりません


治療はバンコマイシンが耐性のことが多く、ペニシリン系で治療します
アミノグリコシドを併用している症例が多いですが、決まった治療はありません



    

プロバイオティクスは時に体に悪さすることがあります

特に心雑音がもともとある人や弁膜症を持っている人、
免疫不全の人は、プロバイオティクスは慎重に使った方が良いかもしれません


   


まとめ
・ラクトバチルス(乳酸菌)は人間にとって有益な菌
→腸内環境、膣内環境、ヨーグルトなどの発酵に使われる

・ただし、時に逆襲にあうことがある
→心雑音がある人、弁膜症がある人、免疫不全の人でIEを起こすことがある

・ラクトバチルスはバンコマイシン耐性のことが多い
→ペニシリン系±アミノグリコシドで治療する


醸成された腰痛 〜基本を忠実に守る〜

今回のNEJMはタイトルに騙されました

絶対、結核だと思ったんですけどね〜


オススメ度:★★★☆☆

情報の出し方が実臨床と即していなかったので、★は少なめです

ですが、研修医の先生が読んでも、上級医の先生が読んでも、
学べるポイントがあります

是非、読んでみてください




67歳の男性が、1週間の腰痛(横になると悪化しspasm様と訴える)を主訴に

コネチカット州のかかりつけ医を受診した


倦怠感があり、食事調整と運動により、3か月間で意図的に10kg減量した

発熱、悪寒、寝汗、足の脱力感・知覚異常、仙骨部知覚障害(saddle anesthesia)、尿・便失禁等はなかった

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コメント


はい、腰痛です


急性の腰痛は他の痛みと違って、病気が見つかることが多いので、

あんまり苦手意識はありませんが、みなさんはどうでしょうか?


腰痛のアプローチはいわゆるred flagサインをチェックすることが大事です


発熱、体重減少、安静時(夜間)の痛み、寝汗、麻痺、感覚障害、膀胱直腸障害、

ステロイドuser、悪性腫瘍の既往などを確認します



解剖学的には、

整形外科的(脊髄、硬膜、神経根、椎体、椎間板、椎間関節、筋肉、靭帯)な問題か

内臓の病変(脾臓、膵臓、十二指腸、胆嚢、腎臓、尿管、大動脈、後腹膜)かを考えます




腰痛は増悪・寛解因子があることが多いです


後腹膜臓器(例えば膵炎)であれば、背中を丸める胸膝位をとると痛みが軽快します

整形外科的な問題の場合、動作で悪化することが多いです


増悪寛解因子を聞くことで、ある程度、臓器を絞ることができます



ですが、動作で悪化する大動脈解離の人もいましたので、絶対ではありません



今回の症例は安静時にも痛みがあるみたいですね


spasm様というのが、何を意味しているのか分かりませんが、

筋肉がこむら返りを起こすような感覚でしょうか・・・


時折、こういう表現される方はいらっしゃいます

神経痛や筋膜疼痛のことが多いです



帯状疱疹、硬膜外血腫・膿瘍、椎間板ヘルニアからの神経根症状、椎体圧迫骨折、

椎間板炎・膿瘍が鑑別としてはあがります



さらに倦怠感や体重減少があることから、慢性炎症を示唆します

上記の中では、IEからの硬膜外膿瘍、IEからの椎間板炎、結核による椎間板炎・冷膿瘍がmost likelyです



中でもタイトルと合わせるなら、結核でしょう 笑

冷膿瘍と言われるように、結核の膿瘍は痛みが少ないことがあります

(もちろん、痛みが強いこともあります)



今回の体重減少が「意図的」となっていますが、本当に10kg体重減少するような運動や食生活だったのでしょうか


まずはそこを詳しく聞きたいです


本人が言っている「自分で痩せた」は、

実は「病気で痩せた」だけなのかもしれません

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既往歴

1年前の鼠径ヘルニア修復と10年前の虫垂切除術

小児期から心雑音が聴取され、来院8ヶ月前に経胸壁心エコーでは弁は正常であった


内服:81mgのアスピリンを服用していた

薬物アレルギーはなく、喫煙、飲酒、違法薬注射等はなかった

家族歴では、母親に結腸直腸癌、父方叔母に骨髄腫があった


患者は50歳から大腸内視鏡検査(直近は来院1か月前)を受け、特に問題なかった。

以前は塗料製造業を営み事務職であったが今は退職している

コネチカット在住で、森で夏のハイキングを楽しんでいたが、虫刺の記憶はなかった

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コメント


はい、既往歴や内服、社会歴が出てきました


気になるのは、心雑音です

IEを疑っているので、この心雑音はいただけませんね


来院の8ヶ月前にTTEが施行されていますが、問題なかったようです


じゃあ、心雑音の原因は何なんでしょうか?



弁の問題でなければ、機能性や先天性心疾患(動脈管開存、心房中隔欠損など)なのでしょうか


いずれにせよ、今回心雑音があるのであれば、再度TTEは施行しておきたいですね



バイアスピリンはなぜ内服しているかは謎です 笑



1ヶ月前に大腸カメラがされていますね

健康に気を使っている真面目な人な気がします



今回はやたらとコネチカットが出てきます 笑

コネチカットの風土病は分かりませんが、ダニ媒介疾患を疑っている病歴の取り方ですね


ただ、腰痛だからといってダニ媒介疾患を考える?という気もします

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身体診察では、体温は98.3°F36.8°C)で、他のバイタルサインも問題なかった

BMI26.4


心尖部で以前の検査と合致する汎収縮性雑音を聴取した

脊椎部の圧痛はなかった

深部腱反射は両膝で2+

脾臓は、吸気時肋骨縁下で触知された

子宮頸部、腋窩、鼠径部等のリンパ節腫脹は認めなかった

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コメント


発熱はないみたいですね

だからといって、慢性炎症がないとは言えないので、あまり気にせずいきましょう



やはり心尖部に汎収縮期雑音があるみたいです

普通はMRですが、前回の超音波では指摘はありませんでした


もともと心雑音がある人の場合、性状や大きさが変わっていないか?という耳で聞きます


身体所見の取り方の注意点としては、

定性検査のように(ある・なし)とすると、経過観察に使えません


定量検査のように浮腫(+++)や心雑音2/6のようにすると、

以前と異なるかどうかが分かります


ただし、自分の中での基準になりますので、他の人のカルテとは比べることはできません


一番いいのは、定量的な要素を文章や数字で記述することです


浮腫の場合、

一見して下腿浮腫が目立つ 皮膚は光沢をおびパンパンに張っている

→靴下の痕がわずかにつくくらいまで改善


とか


CVA巧打痛の場合、

軽い巧打でも著明な痛みがある

→強く叩いても、痛みはわずかになってきた



このように記述すると、他の人にも定量的に身体所見を伝えることができます



腱反射は定量的な記載が多いですね

2+となっていますが、病的意義があるかどうかは不明です


硬膜外膿瘍や血腫を疑っているので、腱反射の亢進は嫌な所見ですが、

神経診察はピンポイントで伝えられても、意味がありません


できれば全部記載して欲しかったです



脊椎の圧痛がないのは意外でした

巧打痛があるかは知りたかったです



脾臓を触知しにいっているのが、えらいですね

腰痛できた人に脾臓の診察するかと言われると、したことないです



この文脈で脾腫があるとすれば、やはり慢性炎症に伴うものと考えます

今回の場合、IEが強く疑われますので、塞栓徴候を探しに行くべきです


検査としては、血液培養は必須です

あとは一般的な採血や画像検査(腎機能が許せば、造影まで)、心臓超音波検査を行います


肺に少しでも影があれば、痰で結核菌の検索も行いたいです

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血液検査


Hb10.5g/dlMCV 94 flPLT 137,000/μlWBC4600/μlで、分画は正常であった

Cr1.33mg /dl118μmol/l)、Ca8.1 mg /dl2.0mmol/l)、alb 2.9 g /dlTP7.0 g /dl(正常値、6.6 8.7)、

ALTPTaPTTD-ダイマー、フィブリノーゲン正常


血清鉄70μg/dl12.5μmol/l)(正常値、60179μg /dl[10.732.1μmol /l])、

TIBC206μg/dl36.9μmol/l))(250450μg/dl [4581μmol/l])、

フェリチン929 ng/ml(通常値、20370


LDH 287U/l(正常値、118242)であり、ハプトグロビン10 mg/dl未満(正常値、30200)、

網状赤血球産生指数0.8であった


直接クームス試験陰性


末梢血塗抹標本では低色素性赤血球を示し、球状赤血球(spherocytes)や破砕赤血球(shistocytes)は認めなかった

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コメント


はい、ツッコミどころ満載です 笑


こういうのがたまにあるのが、あんまりNEJMのよくないところです・・・



まず思うのが、CRPとESR教えてよ!ってことです


この文脈ではCRやESRは重要な情報です

慢性炎症があるかどうかは、今回の症例のポイントです




TPとAlbのギャップやフェリチン上昇があるので、CRPもESRも上がっているものと予測はできますが・・・

慢性炎症があれば、これくらいの貧血も矛盾しないでしょう



ただ、慢性炎症の場合、血小板が上がることが多いので、今回はむしろ下がっているのが気になります


脾腫による脾機能亢進やTMAのような病態、血液疾患が鑑別になります




ハプトグロビンは血管内溶血を示唆しますが、絶対ではありません

血液内科の先生に聞くと、参考程度にしているみたいです


そもそもRPIも上がっていないので、溶血は最初から疑いません

自分ならハプトは出さないですね



一応、考えます・・・


血管内溶血は免疫機序と非免疫機序で分けられます

免疫機序の代表的な検査はクームス試験ですが、今回は陰性でした


ということは、非免疫機序を考えますが、末梢血のスメアでは破砕赤血球はないみたいです



感染症では赤血球内に感染するマラリアやバベシアでも溶血が起こります

旅行歴や地域での流行状況を確認します


clostridium perfringensの敗血症でも溶血は起こりますが、激烈な経過ですぐになくなってしまいます

入院してから亡くなるまでは、9.7時間という報告もある恐ろしい病気です


胆管炎からの敗血症性ショックで溶血性貧血を伴っていたら、clostridium perfringensを疑ってください

疑って治療しても救命は非常に困難ですが・・・・




ということで、今回の貧血はなんでしょうね・・・

溶血性貧血で進めてもいいことがない気がします



ただの慢性炎症に伴う貧血でよいと思います 

ハプトグロビンなんかより、早く血液培養の結果を見せてほしいです 笑



慢性炎症に伴うポリクローナルな免疫グロブリン上昇が疑われますが、

一応、M蛋白がないことは検査するのでしょう


多発性骨髄腫でも腎障害や腰痛、貧血はあてはまりますが、

炎症が強い疾患ではないので、全体像が合わないですね




こういった感じで、検査結果で鑑別疾患が新たに出てくることって日常診療でもありますよね


今は、完全に検査に引っ張られて議論しています

こういう時、誤診します 笑


検査をみるのではなく、患者さんに戻った方がいいです

パズルのピースを見るのではなく、全体像を見直すべきです

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血清タンパク質電気泳動では、1.87 g/dlのγグロブリン(正常値、0.71.5)、

0.7g/dlの個別の異常ガンマ領域バンド等が、血清免疫固定法ではモノクローナルIgMκバンドが検出された


 24時間尿免疫固定法では、モノクローナル遊離κ軽鎖弱い遊離λ軽鎖等が示された

免疫グロブリンの定量的評価では、IgG1700 mg/dl(正常値、7001600)、

IgM 269 mg /dl(正常値、40230)、IgA 257 mg /dl(正常値、70400)であった


血清軽鎖の測定では、κ9.35 mg /dl(正常値、0.331.94)、λ5.99 mg /dl(正常値、0.572.63)、

κ/λ比が1.56(正常値、0.572.63)であった(正常値、0.261.65


血液塗抹標本ではバベシア、アナプラズマ、エールリヒアは陰性であった


骨検査では、右上腕骨と左大転子に透明性変化lucencies)が見られ、溶解性病変が懸念された

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コメント


また検査、検査です

これは誤診の道、まっしぐらパターンです



検査に引っ張られて、次の検査を出しています

薬の副作用のカスケードと似ていますね 笑



そうはいっても検査に救われることもあるので、一応、考えましょう



ポリだと思ったら、モノクローナルなIgMが検出されてしまいました


ですが、IgMの上昇は軽度で、IgGも上昇しています

κ/λ比も正常です



本当にM蛋白があるのでしょうか??

やっぱり慢性炎症に伴うポリクローナルな免疫グロブリンの上昇の気がします



骨は一部溶けているといっています

MMを疑っていれば、そう見えても仕方ないかもしれません


MMが背景にある人の慢性炎症なのでしょうか?


ここまでくると骨髄検査もするのでしょう

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来院2週間後、患者は血液専門医を受診

骨髄生検が施行され、1013%(正常、23%)のポリクローナルな形質細胞を認めた

骨髄腫や癌細胞はなく、骨髄細胞数は正常であった


胸部、腹部、骨盤CTでは、脾腫(14.9 cm)を認めたが、リンパ節腫脹はなかった


胸椎と腰椎MRIでは、溶解性骨病変は認められなかった


抗核抗体は陰性で、RF 20.9IU/ml、(正常値、<15.9)、クリオグロブリンは判別不能であった

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コメント


はい、いつの間にか2週間経過しています


そして専門医に紹介され、骨髄生検されています

やはり、MMを示唆する所見はなく、慢性炎症に反応しているだけのようですね



CTやMRIでは目立った異常はないみたいです


クリオグロブリンは判別不能とのことですが、

検体採取や提出がどのようにされたかを確認する必要がありますね


よく脇に挟んで、急いで持っていったものです・・・




さて、いろんな検査が出てきましたが、


血液培養は?? 笑



この流れは血液培養とっていないですね・・・




みなさん、救急外来セッティングでは、血液培養は閾値低めにとっていると思います


ですが、多忙な予約外来中であったり、専門外来に〇〇目的に紹介できたり、

夕方の最後にきたりすると、血液培養のハードルが上がります


今回もそのような状況だったのだと推察されます

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初診3週間後、直径36 mm触知可能な紫斑、数百個が患者の前下肢に出現し、

股関節まで広がった(図1


PLT74,000/μlHb9.5g/dlに低下した




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コメント


ようやく検査から患者さんに戻ってきました 笑



足に紫斑が出てしまいました


紫斑をみたら目をつむって皮膚を触って、ぶつぶつが触れるか確かめます


ただし、全部触れる必要はありません

触れる部位と触れない部位もあるので、何箇所か触ってみてください



今回は触知できるようので、小血管炎が疑われますね


血小板減少や出血傾向の紫斑は触知しませんが、

血管炎の場合は触知できることが特徴ですね




ですが、Hbと血小板が下がってきました

これは嫌ですね〜


貧血だけなら、慢性炎症でもよいですが、血小板まで低下しているので、

やはりTMA病態が気になります



TMAは原疾患を探す必要があります

TTPと思っていたら、IEだったということもありました



IEは色々(脳梗塞、TMA、腎炎・・・)合併しますし、

他の病態(血管炎、PMR)を模倣します


こういう時は軸足を感染症から外してはいけません



ティアニー先生のパールにもありますね


1、FUO

2、Multiorgan involvement

3、Ischemic symptom in young Pt

4、Neuropathy (unknown cause)

5、Palpable purpura


これらを見た時は、血管炎を疑う

そして、同時に感染性心内膜炎を考える


Before steroids and CPA are prescribed,

blood culture  and  TEE  must be perofmed  !


とレクチャーでは度々、お話されていたと聞いています



ということで今回も小血管炎を疑うセッティングではありますが、

まずはIEの否定からスタートです



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その後の数週間で、多数の検査結果が判明した


HIVHBVHCVは陰性であった


EBV-VCA-IgG陽性、EBV-VCA-IgM陽性、EBNA-IgG陰性で、EBV-PCRは陰性であった

CMV、パルボウイルスでは、PCR陰性でIgM抗体が陽性であった

Mycoplasma pneumoniae IgMは陽性


 C355mg/dl(正常値、81145)、C4  21 mg/dl(正常:1639)、

ESR 66mm/hr(正常値、025)、CRP 118.4 mg/dl(正常値、0.13)、

ANCAスクリーニングは陰性であった


右大腿部から皮膚生検では、微小血管での赤血球の血管外漏出所見、

血管壁のフィブリノイド壊死や管腔内微小血栓の所見が認められた(図2




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コメント


ようやく出てきました、CRPとESR 笑


上がってますね そりゃそうです

このタイミングだと、もはや遅いですので逆にいらないですね




いろんなウイルスに対するIgMが陽性ですが、PCRは陰性なので全て偽陽性なのでしょう


ANCA偽陽性と同じ理屈で、慢性炎症(IEや結核、癌、自己免疫性疾患)があると、

いろんな免疫グロブリンが増えてしまって、偽陽性率が高くなると思われます


補体低下はIEでもありえます


混合型クリオグロブリン血症でも補体は下がりますが、

普通はC4が低値でC3は正常から軽度減少なので、

今回は合わないですね



生検が行われていますが、小血管炎と血栓があること以外に情報は分かりません

血栓の原因はIgMが増えた過粘稠によるものか、TMAによるものでしょうか



小血管炎を疑ったら、IEを疑い、さらにIVLも疑った方が良いです

今回の生検では、IVLではなさそうということはわかりました



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初診8週間後、発熱労作性呼吸困難が発症し、患者は入院となった


体温は100.3°F37.9°C

血圧は101/54 mm Hg、心拍数は100/分、呼吸数は17/分、酸素飽和度は94%(室内気)であった


身体診察では、下腿の広範囲の紫斑下肢浮腫とともに

前胸部から左腋窩にかけての3/6の汎収縮性雑音いつもとは異なる心雑音)が聴取された

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コメント


はい、絶対IEです 


MRが悪化して心不全になってしまいました

こうなる前に見つけたいですね


血液培養と超音波の結果が出てくるでしょう


血液培養陰性のIEだったら、厄介ですね・・・

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12時間以上間隔をあけて採取した2セットの血液培養は、

バンコマイシン耐性のラクトバチルスが陽性であった(最小発育阻止濃度(MIC)、>256μg/ml


僧帽弁後尖の脆弱性(flail)と(前後)両弁尖の重度肥厚と高度僧帽弁逆流、左心室収縮機能70%

左室内収縮末期径(男性の正常値、2.54.03.3cm

左室内拡張末期径指数(拡張期直径(cm)÷体表面積(m2))3.2(正常2.23.0)

右心室収縮期圧74mmH等が経胸壁心エコーで示された


経食道心エコーでは、重度の僧帽弁逆流、僧帽弁後尖の高度逸脱(prolapse)、

可動性エコー密度を含むP3の脆弱性を伴う粘液腫様僧帽弁が認められた





MRIは複数の急性塞栓性梗塞を示した


腰椎MRI再検では、脊椎椎間板炎や他の感染性合併症所見は示されなかった


追加の問診で、プロバイオティクスは未使用だった


患者はアンピシリン静注で治療され、血液培養は2日で陰性化した


また、うっ血性心不全に対してはフロセミドが投与された



最大限の医学的管理にもかかわらず、心不全は悪化し、

入院3週間後、自己僧帽弁に対し生体弁置換術(bioprosthetic replacement)を受けた


元の僧帽弁は、後尖に大きなvegetationがあり、弁尖は完全破壊され、

小さなvegatationグラム陽性桿菌を含む壁在血栓等を認めた


術後4週間の抗菌薬静脈投与を継続した

退院時、腰痛と貧血は改善していた

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コメント


なんと、ラクトバチルス!でした


まれですね〜

乳酸菌の逆襲です・・・



だからBrewingなのですね

乳酸菌の発酵とIEのぐずぐずした要素をうまく取り入れたタイトルでした


結局、腰痛は感染に伴う非特異的な痛みだったみたいです



今回は血液培養をとらないとここまでこじれるのか・・・というのがよく分かりました

どんな状況でも、血液培養は必要だと思えばしっかりとるようにしたいですね



この症例をみて、

総合診療医や家庭医の役割は、

感染性心内膜炎を診断するために存在しているのかもしれない・・・とさえ、思いました



あとは、検査に振り回された印象が強いですね

検査ばかりみていては、診断できません


検査とにらめっこしている時は、誤診しかけている時です


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診断:感染性心内膜炎(ラクトバチルス菌)

 


 

                            Teaching Points 


・発熱、貧血、甲状腺機能亢進症で心雑音が生じる可能性はある。

脾腫は、一部の血液疾患(真性多血症)リウマチ疾患浸潤性疾患脾臓梗塞等で出現


Fe正常、TIBC低下、フェリチン増加炎症性貧血(慢性感染症、自己免疫疾患、癌等)


グロブリンギャップ(TP-alb上昇多発性骨髄腫が疑われる

κ/λ正常、血清κ+λ軽鎖増加+複数の尿中λ軽鎖の存在:ポリクロ免疫グロブリン血症


IgM単クローン性免疫グロブリン血症+ポリクローナル免疫グロブリン血症

混合性クリオグロブリン血症(自己免疫疾患リンパ腫C型肝炎などの慢性感染症等由来)


触知可能な紫斑は、混合型クリオグロブリン血症、ANCA陽性(または陰性)の小血管炎

古典的メルツァーの3徴候:触知可能な紫斑、倦怠感、関節痛


クリオグロブリン検査は偽陰性のことが多い。(前もってのincubationと迅速な運搬必要)


ウイルスPCR陰性+IgM高値:血清学的偽陽性を示唆(RF活性、自己免疫疾患感染

C4正常+C3低値遺伝性補体欠損症代替補体経路活性化(感染症、aHUSC3腎症等)

 

感染性心内膜炎(IE

心雑音、発熱、貧血、PLT↓、脾腫、RF、クリオ陽性、炎症、血管閉塞性皮膚病変等で考慮


分類:原因菌、障害弁、基礎疾患の弁膜症、心臓デバイスの存在、危険因子等で分類

修正デューク基準感度は80%。高齢患者の3分の2以上は初診で誤診される


高齢患者抗菌薬使用患者黄色ブ菌緑色連鎖球菌以外では、発熱がない場合がある


筋骨格症状2344%。点状出血紫斑2040%(疾患後期に発生する8,10

腰痛は、免疫複合体沈着による微小塞栓と梗塞で惹起される可能性がある


免疫活性化非特異的所見(polyγ↑、クリオ、低補体、RFウイルス性IgM抗体梅毒反応)



手術適応

心不全、巨大可動性vegetation、輪状膿瘍、真菌や薬剤耐性微生物感染、陰性化しない

血液培養、適切な抗菌薬投与中での再発性塞栓や拡大持続性vegetation


抗菌薬 

標準治療は6週間の静脈投与


切除弁グ染色は、死菌が多い。弁培養陰性なら菌なし。血培陽性は真の感染と見なすべき


ラクトバチルスによるIEはまれ主に僧帽弁)

転帰は通常良好心臓外合併症(脾膿瘍、塞栓性脳卒中、真菌性動脈瘤)が報告

40%は発熱がなく体重減少が3分の1に認められる

気腫性骨髄炎

 

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