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2025年10月4日土曜日

誤嚥性肺炎について自分なりに思うこと 〜診断と治療のピットフォール〜

今回の國松の勉強会は「 誤嚥性肺炎」でした


誤嚥性肺炎を3つに分類(usual 、Mendelson、DAB)してあり、

興味深かったです


誤嚥性肺炎には沢山のピットフォールやパールがあるので、

勉強会では伝えきれなかったこと(思い)をまとめてみました


ポートフォリオや試験よりも一人の誤嚥性肺炎患者さんの診療をみれば、

内科レベルが判断できるくらい内科要素がぎゅっと詰まっています


①診断についてのピットフォール

(1)「初めての誤嚥性肺炎」を診断する時

(2)「何度も繰り替えす誤嚥性肺炎」


誤嚥性肺炎の診断で最も気をつけなければならないのが、

「初めての誤嚥性肺炎」を診断する時です


これまでのカルテや病歴から誤嚥性肺炎の既往があるか必ず確認しましょう

また、面倒ではありますが、その根拠も確認してください


誤嚥性肺炎はこれがあれば、絶対誤嚥性肺炎!

といえる単独のマーカーみたいなものはなく、合わせ技一本と除外診断です


既往の誤嚥性肺炎は盲目に信じないでください    


あなたの誤嚥性肺炎の診断が、 

将来、患者さんに烙印が押されたように

カルテ上で一人歩きする恐れがあります



初めて誤嚥性肺炎を診断するときは、本当に誤嚥性肺炎でよいのであろうか???

と自問自答し、疑心暗鬼になってください


これまでの経験で初回の誤嚥性肺炎と診断された患者さんをみにいくと・・・


ヒトメタニューモやRSの気管支炎・肺炎だったり、

肺塞栓だったり・・・色々ありました


COVID以来、ウイルス性の気管支炎・肺炎が多いことに驚かされます

余計な抗菌薬は不要であり、感染対策が必要になりますので注意しましょう


もちろん、ウイルス感染に誤嚥性肺炎が合併していることも多々ありますが、

「誤嚥性肺炎全員にフィルムアレイを行うべき」と言っているわけではありません


ウイルス感染の流行が周囲でなかったか、鼻水はなかったか?といった病歴聴取や

誤嚥性肺炎にしてはやたらと咳が多く、喘鳴があるなあ・・・

といった違和感を大事にして欲しいのです




(2)「何度も繰り替えす誤嚥性肺炎」


感染症の三角形で考えると、患者背景(免疫・暴露・余力)が最も大事です



誤嚥性肺炎というためには、

神経筋(嚥下機能、咳、意識)や消化管に構造的・機能的な問題があるはずです


そのため、

「基礎疾患のない50歳男性が誤嚥性肺炎を繰り返す」などあり得ません


それは、診断できていない基礎疾患があるはずです

例えば、筋ジストロフィーやALSなどの神経筋疾患です


もしくは誤嚥性肺炎ではありません

例えば、結核、リポイド肺炎、肺塞栓、肺がん、好酸球性肺炎、過敏性肺臓炎など


この中でも最も注意したいのが、結核です



結核は抗菌薬投与にて何となく効いたように見える時があります


抗菌薬投与で解熱し、酸素化も改善し施設に退院したら、

後日、抗酸菌培養が陽性になって帰ってきて青ざめる・・・


といったことがあります


そのような症例を振り返ってみると、画像上、tree in budがあったり、

塵肺の既往があったり、縦隔のLNが石灰化していたり・・・


言われてみれば、結核を疑わないといけないのですが、

前向きに見ると、誤嚥性肺炎で矛盾しないように見えてしまいます



排菌している結核を見逃すと、自分だけでなく、

コメディカル(特にSTさん!)に多大な迷惑をおかけしてしまいます


結核を見逃さないための最初の一歩は、

「繰り返す誤嚥性肺炎の人の中に結核が混じっている」

という事実を知っておくことです


これが「何度も繰り替えす誤嚥性肺炎」のピットフォールです




誤嚥性肺炎の免疫は何を考えればよいのでしょうか?


免疫は感染症が発症しないように体に備わった防御機構です


誤嚥性肺炎の場合、

口腔内の環境(唾液あるか?口腔内不衛生か?)、嚥下機能、咳ができるか?

といった局所免疫が重要です


免疫というと、好中球やステロイド、免疫抑制剤、血液疾患といったものが

想起されがちですが、局所免疫に着目する視点も重要です



誤嚥性肺炎に曝露があるのでしょうか?


曝露は微生物からの曝露だけではありません

例えば、PPIや抗コリン薬、BZP系などの薬の曝露も重要です


局所免疫を落とすものと考えてもよいかも知れません


余力に関しては、言わずもがな終末期において誤嚥性肺炎が起こります


誤嚥性肺炎を発症することで、一段階死に近づいていくイメージです


聖隷浜松病院で行われた研究が参考になります

Dysphagia . 2024 Oct;39(5):837-845.  


退院後の生存時間中央値は約1年で、退院5年後の生存割合は13% 

→つまり2人に一人は1年以内に亡くなっています


退院時の栄養経路別の生存時間中央値は、

経口摂取で約1年8か月、経管栄養で約9か月、点滴で約1か月 

→胃瘻や胃管を入れれば、いつまでも生き続けられるわけではありません

 家族に説明する時に一般論の数字として参考になります


死亡率と関連する主たる要因は、男性(HR2.4)、BMI<18.5(HR2.2)、

退院時経管栄養(HR1.7)、点滴(HR4.4)

→点滴が高いのは点滴を選択した時点で亡くなることを前提としているのでしょう

 


ただ、間違えてはいけないのは、誤嚥性肺炎自体の予後が悪いのではなく、

誤嚥性肺炎を起こす背景の予後が悪いとうことです


Eur Geriatr Med. 2024 Feb 3;15(2):481–488. 



こちらの報告では誤嚥性肺炎と診断された患者さんは、

生存率が低かったですが、それ自体が独立した予後因子ではありませんでした


命に関わるかどうかを左右するのは、

「誤嚥性肺炎かどうか」よりも虚弱さ(フレイル)や心肺疾患、年齢でした


「この人は誤嚥性肺炎だから予後が悪い」というわけではなく、

「この人の虚弱度・フレイルはどうか」「他に持っている病気は何か」

を考えなければ、予後予測を間違える恐れがあります



このように

①全身状態悪化・フレイル進行の表現系としての誤嚥性肺炎(予後が悪い)と

②局所免疫の破綻(嚥下だけ、消化管だけ)の表現系の誤嚥性肺炎(予後が良い)は

プレゼンテーションが異なります


①全身状態悪化・フレイル進行の表現系としての誤嚥性肺炎の人たちは、

いつもギリギリで嚥下を行っていると考えます


つまり、体調不良→嚥下の悪化につながり、誤嚥性肺炎を発症します


このような状況ではドミノ倒しの最後に誤嚥性肺炎があると思いながら診療を行います


この人は確かに、いつでも誤嚥性肺炎を起こしやすい背景がある・・・

だが、なぜ、今日このタイミングで誤嚥性肺炎を発症したのか?


それには理由があるはずです



誤嚥性肺炎から始まる臨床推論です

誤嚥性肺炎を診断したら終わりではありません



プロブレムリスト

# 誤嚥性肺炎

もともと脳梗塞が背景にあり、誤嚥性肺炎を繰り返している88歳男性

3日前からの微熱と痰がらみ増加あり、

本日酸素化低下を認め、施設から救急搬送となった


CTにて両側下葉にコンソリデーションを認め、

痰のグラム染色はpolymicrobial pattern


上記より、誤嚥性肺炎に矛盾せず、セフトリアキソンでの加療を開始

嚥下リハビリ、口腔ケアを行い、早期の食事摂取を目指す



よくあるカルテですよね 笑


これで終わっていないでしょうか?


いつでも誤嚥性肺炎を起こす人ではありますが、

ではなぜ「このタイミングで」起こしたのでしょうか?


例えば・・・


ショートステイから帰ったばかりで、自宅での食形態が変わった

介助者が慣れておらず、食事の姿勢や介助が変わった

せん妄があり、クエチアピンが新規に追加された後だった

施設でCOVIDが流行しており、COVIDも併発していた

心不全が悪化し、痰が多くなっていた


などなど


誤嚥性肺炎に至った原因に今後の対策が詰まっています


誤嚥性肺炎の手前に「何か」があることが多いので、

「何か」を見落とさないようにしましょう


逆に言えば、誤嚥性肺炎ドミノの手前が分からない時は、

本当に誤嚥性肺炎か?と疑った方がいいです




②局所免疫の破綻(嚥下だけ、消化管だけ)の表現系の誤嚥性肺炎


全身状態が比較的よく、余力があり元気そうに見えるのに、

誤嚥性肺炎を起こしている場合はしっかり原因を特定し、

積極的に特異的な治療や予防を検討していくことが大事です


treatable dementiaならぬ、treatable dysphasiaの考え方です

治せる可能性のある嚥下障害


簡単にいうと嚥下障害以外に目立った症状がなく、

急速に進んだ嚥下障害は要注意です



嚥下のトラブルでなくても、例えば食道裂孔ヘルニアがひどければ手術を検討する

実は背景に強皮症があり、食道の動きが悪いかもしれない

カルシウム拮抗薬が逆流を助長しているかもしれない

便秘がひどくて、胃内容物が貯留しやすい


といった消化管のトラブルがないかも考えます



②治療についてのピットフォール


近年、嫌気性菌のカバーは不要ではないか?という報告が続いており、

誤嚥性肺炎=アンピシリン・スルバクタムの構図が崩れてきました


Chest. 2024 Jul;166(1);39-48.

Open Forum Infectious Diseases, Volume 12, Issue 3, March 2025, ofaf133



嫌気性菌カバーをする必要はないというのは、ピットフォールでも何でもなく、

常識になりつつあります


誤嚥性肺炎に限らず抗菌薬選択は、ケースバイケースであり

個々の症例で痰のグラム染色を行い、過去の培養結果を参考にし、

全身状態を判断しながら、抗菌薬の選択を行います



誤嚥性肺炎にパスで抗菌薬が入っている病院がありますが、

一番作ってはいけないパスだと個人的には思います


軽症〜中等症:スルバシリン

重症:ゾシン、メロペン


となっていた病院がありますが、本当にやめてほしいと思っていました


ただの耐性菌製造パスになってしまいますし、

緑膿菌がいるかどうかは、痰のグラム染色みればある程度わかります


緑膿菌が過去に検出されたり、今回緑膿菌が検出されたからといって、

緑膿菌をターゲットに治療しなくても治癒することは多々あります



國松の内科学にも書いてありますが、

ほとんどの誤嚥性肺炎はアンピシリンで治ります


最初から見えている細菌を全てターゲットに治療する必要はありません



治療経過が悪い場合に痰のグラム染色を再検して単一菌が増えていれば、

その時に初めて治療ターゲットにすればいいだけです



手術予防の抗菌薬のパスならわかりますが、

誤嚥性肺炎パスは抗菌薬を選択する力や適切な経過観察する力が

失われますのでやめた方がいいと思います

もしパスが必要なら、デフォルトはアンピシリンにしてはいかがでしょうか?



誤嚥性肺炎の治療の本質は、抗菌薬の選択ではなく、

いかに誤嚥を予防するかということです


誤嚥性肺炎の治療が抗菌薬の選択だと思ってしまうことが

誤嚥性肺炎治療のピットフォールです



誤嚥を予防するために考えうることは全て行います


意識レベルをよくする(例:日中の覚醒を促す努力)

口腔内の衛生を保つ(例:歯科衛生士や看護師さんの協力)

食形態を適切にする(例:栄養科と相談)

食事姿勢を適切にする(例:STさんと相談、VE、VF)

嚥下や意識レベルに悪化するような薬をやめる(例:抗コリン薬、抗精神病薬)

胃からの逆流を防ぐ(例:食べた後の姿勢、CCBをやめる)

消化管の蠕動をよくする(例:ガスモチン食前)

便秘を改善させる

oral frailに対してリハビリを行う

低体重・低栄養に対して介入(例:簡単にいうと体重を増やす努力をする)


上記介入は誤嚥性肺炎に抗う対応です


これらは今後の生活をより良く保ち、長期予後を保ちたいと

皆のコンセンサスがあれば全て行うべきです



誤嚥性肺炎にST入れて終わりと思っている人もいるかもしれませんが、

STさんからすると大変迷惑な話です


STリハビリを入れているにもかかわらず、

栄養に無頓着で入院中にどんどん痩せていっている人がいますが

これは片手おちです


車で例えるなら、片方のタイヤだけで進もうとしている状況です

リハビリと栄養が両輪ないと、真っ直ぐに進みません


リハビリをするのであれば、「頑張る」と決めたわけであり、

栄養含めて他も頑張ってください


簡単にいうと、体重を増やす努力もしましょう


STさんがどれだけ頑張っても、体重が減っていってしまっては、

嚥下状態は改善しません



誤嚥性肺炎の予防はバンドルです


一つ一つの効果は小さいかもしれませんが、

積もり積もって大きな効果になります


そのため、一つ一つを全て頑張るのか、

それともdying processとして、無理しないで余生を安楽に過ごすか

大きな方針・ゴールを立てることが、

治療を始める上で重要になります


ゴールを決めずに治療を開始することは、

車で例えるなら、目的地もなく走り出している車です


ゴールを立てるためにはSDMやACPが必要です


SDMやACPなしに誤嚥性肺炎の治療をすることは、

その場しのぎであり、やることをやっていない

「怠慢」であると自分自身を戒めています




まとめ

・診断のピットフォール

初回の誤嚥性肺炎は、誤嚥性肺炎ではないことが多い

繰り返す誤嚥性肺炎の中に「結核」が紛れ込んでいる


・治療のピットフォール

嫌気性菌をカバーしないでいいのは常識になりつつある

抗菌薬の選択ではなく、誤嚥をいかに防ぐかが治療の本質


・誤嚥性肺炎は内科医の要素が全て詰まった疾患




2022年4月9日土曜日

主治医交代①

主治医交代


スポーツの世界なら試合の途中で選手が交代することは当然ですが、医療の世界で主治医が交代するときは、引き継ぎを除いては稀ではないでしょうか


医療者側の申し出の交代ならまだしも、

患者さん側から申し出があることは、

何かトラブルがあった可能性が高いと思います


みなさんはこれまでに何度、担当医や主治医を交代することになりましたか?


私はこれまでに二度経験しました。


その経験は私の医師人生において忘れ難い事件になっており、もはやトラウマになっています。


ですが、医師としての自分を形成する重要な出来事だったと今では思います。


1回目の主治医交代劇は、初期研修医になって3ヶ月目のことでした。



ある大学病院の血液内科で研修医としてスタートした私は、

充実した日々を過ごしていました。



血液内科の患者さんは採血が非常に難しく、

毎朝早朝から苦戦しながら採血をしていました。


採取した血液を自分でスライドガラスにうつして塗抹標本を作り、グラム染色のように顕微鏡を覗く毎日でした。



ある日、悪性リンパ腫疑いで入院した患者さんの血液を顕微鏡でみると異型リンパ球がたくさんおり、

結局EBV感染による伝染性単核症だったこともありました。



病棟業務にも慣れ始めた頃、

悪性リンパ腫の高齢女性の担当になりました。



その患者さんは明るく非常に元気でしたが、

中枢神経浸潤が疑われたため、

メソトレキセートの髄注を行うことになりました。



すでに髄注は何度か経験していたため、

いつものように髄注を行いました。



手技中は特にバイタル変化もなく、滞りなく終了しましたが、問題はその後でした。



患者さんが、髄注の数時間後に急に頭を痛がり始めました。



やや錯乱したような痛がり方であり、

只事ではないと思いすぐに上級医に一報を入れつつ、

クモ膜出血疑いでCTを撮影しました。



しかし、出血はありませんでした。


続いてMRIを撮影しましたが、出血や血管攣縮はありませんでした。



ほっと一安心しつつも、原因不明の頭痛であり、

頭を悩ませました。



頭痛が少し治ったところで診察を行うと、

眼球運動障害や複視、めまい、吐き気が見られました。



自分が投与した髄注に何か問題があったのではないか、と非常に不安でした。




患者さんは頭痛の訴えが強く、食事摂取が低下しADLが落ちていきました。


そんな中、弱っていく母の姿を見ていた娘さんが医療事故ではないかと憤慨されておりました。




髄液注射に何か問題があったのではないか?と疑われ、

実際に現場にいたスタッフや物を用意して現場検証が行われました。




当時は、自分の医師人生はこれで終わった・・・と本気で思いました。



そんな状態で仕事を続けるのは、

とても辛かったですが、なんとか仕事は続けました。



ですが、毎日、上司や同僚のもとで泣いていた気がします。



もちろん、その患者さんの担当は外されましたが、

毎日、患者さんのもとには行きました。



よくよく病歴を聴取すると、

座位や立位で増悪する頭痛であり、

症状からは硬膜穿刺後頭痛(もしくは低髄液圧症候群)であろうと目星はついていました。



「硬膜穿刺後頭痛は腰椎穿刺後の合併症であり、どれだけ予防策(細い針にする、抜く時には内筒を入れて抜くなど)を講じたところで発症してしまうことはあります」


と伝えた所で患者さんやご家族には言い訳のようにしか聞こえません。



今さら診断名を患者さんに伝えるより、

もっと大事なことは患者さんをよくすることだと考えました。




数日が経過し、頭痛や他の脳神経症状は改善していきましたが、


「抗がん剤を打って治療するはずだったのに、病院にきてもっと具合が悪くなってしまった」と


明らかに精神的に落ち込んでいました。



抑うつ傾向であった患者さんを励ます方法はないかと考えました。





医師になって間もない自分に何ができるだろう・・・




そこで考えたのは、

患者さんの経過を記録する日記を病室に置き、

毎日の様子を書き込むことでした。



自分だけでなく、病棟のスタッフやリハビリスタッフの方にもお願いし、

介入したことやできるようになったことをノートに書き込んでいただくことにしました。



自分の中で1時間は患者さんと話すことを業務の一環として毎日、病室に通いました。



正直、病室に入るのは怖かったですが、

自分にできることをやろうと思い、毎日、患者さんの顔を見にいきました。




そこにいた自分は初期研修医ではなく、

患者さんを心配する一人の人間だったのだと思います。



幸い患者さんは後遺症もなく、1ヶ月後に退院されました。





最後に患者さんは、



「今度、入院するときもあなたが担当になってね」と声をかけてくれました。





この事例で学んだことは、


「医師としてできることがなくても、

 一人の人としてできることはある」ということです。





医療の世界は時に残酷で、

患者さんを良くしようと思って行った行為が

逆に患者さんを苦しめてしまうことがあります。




私たちは合併症や副作用を避ける努力や事前の説明は行いますが、

もっと重要なことは、その後の対応です。



「責任は自分にはなく、ある一定数起こる副作用であり仕方なかった」


「事前に説明したのだから、後で文句を言われても困る」



という態度は、誠実な対応とはいえないでしょう。







研修医のみなさん




医師としての勤務が始まり、辛いことの連続だと思います。

今はただ辛いだけかもしれませんが、数年後にその意味が分かります。



大事なことはいつも後にしか分かりません。



今はただ、目の前の患者さんをよくすることだけを目指して頑張ってください。




みなさんは医師としては微力かもしれませんが、

一人の人としてできることはたくさんあります。


それを忘れないで下さい。


2021年4月14日水曜日

ボス回診 〜教育回診の心得〜

今年からボス 回診がなくなったので、引き継いで自分が回診をすることにしました


症例相談を受けることはこれまでもありましたが、この回診はとても難しいですね

ボスの凄さを改めて実感しました


ボスは自然とできるカリスマでしたが、

自分は違うので、努力と振り返りで頑張りたいと思います


回診・症例相談で気をつけたいことや言われたことを備忘録として書いておきます


・参加者の一人一人に気を配る:つまらなさそうにしている人はいないか


・症例の内容と同じくらいプレゼンを意識する:プレゼンテーションについてもフィードバックする

 「プレゼンは何のためにするかというと、相手を動かすためにする。

  プレゼンテーターの本気度で相手が動くかどうかが決まる」 by T.S


・全ての情報を鵜呑みにしない:内容は全て聞いているが、全ては信じない

 「君のことは信頼しているが、君がとった病歴や身体所見は信頼していない」by T.S


・誰が何に困っているかを間違えないようにする:研修医が困っていることと患者さん本人が困っていることは違うかもしれない

「誰が何に困っているか、それが重要なんだ」by T.S


・症例の全体像(時間軸・空間軸)を俯瞰するように把握する:チームのメンバーと同じ視点で考えても同じ意見にしかならない、別次元で考える癖をつける


・相談された症例の「アキレス腱」がどこかを探す:チームが進んでいる道とは別の道に答えがあるかもしれない


・teaching pointを探すが、話すぎないように、質問しすぎないように:何かを教えることが回診の目的ではない


・伝えたことは一回では伝わらない:頭でわかっていても、心からわかってはいない


「僕が今日言ったことは、よくわからないと思う。

 でも、次、同じ状況になったら、そのときにわかると思うよ。」by T.S


・自分の診療スタイルは見られている:患者さんへの立ち振る舞いは、研修医は上級医と似てくる


・回診で試されているのは、プレゼンターではなく自分自身

・参加者全員に話す機会を作る


・プレゼンしてくれた人、参加してくれた人に感謝を伝える



順番を間違えないことが大事ですね


研修医や専攻医の勉強のために回診をするのではなく、

患者さんのアウトカムが良くなるようにという思考で臨むことが大事そうです


そして、いろんなバイアスに負けないことも症例相談を受けたときには大事です


最後はやっぱり井上ひさしさんの言葉が一番しっくりきます


難しいことをやさしく、

やさしいことを深く、

深いことを面白く、

面白いことを真面目に、

真面目なことを愉快に、

愉快なことはあくまでも愉快に

2020年11月26日木曜日

家庭医目線 〜基本のき〜

Disease oriented modelからDisease illness modelへ


研修医の先生の所信表明では、毎年、
「病気ではなく、人として患者さんをみれるようになりたいです」
という表明があります

それはつまり、患者さんに起こっている事柄をdiseaseとしてではなく、
illnessとして捉えるということかなと思っています


diseaseは客観的な異常と捉えられ、生物医学的な問題であり、
illnessは患者さんの解釈に基づく主観的な思いです


diseaseというのは疾患で、illnessとは病いと訳されます


例えるならhouse(住居)とhome(家庭)のような関係です
houseは冷たい感じがしますよね
homeはあったかい感じです

deiseaseとillnessはそういった温度差があります



illnessなんだけど、diseaseではないとされがちな疾患もあります

身体表現性疾患や慢性疲労症候群といった疾患は、
客観的な異常が出てこないので、疾患として認識されにくいですが、
本人はとても困っています


逆に、illnessではないんだけど、diseaseにされがちな疾患もあります

糖尿病や脂質異常症、高血圧、認知症などは、
客観的な異常がありますが、患者さん本人は困っていないので、
病いを患っているという認識はないことが多いです

ある時、医者にかかって、急に病気扱いされます
そこからillnessが始まります


このように目の前の患者さんの問題が、
diseaseとillnessのどちらなのかを見極めていくことが重要で、
プライマリケア医は、diseaseとillnessの両方にアプローチすることが必要です


そのために、BPSモデルがあります


BPSモデルは、
Disease oriented modelからDisease illness modelへ変換するための基本的な考え方です



患者さんの背景(context)を知ることも重要です
自分は環境と呼んでいましたが、家庭医学的には背景(コンテクスト)と呼びます

PCCMの考え方で出てきます


患者さんの背景を理解するための手法がダイアローグ(対話)です

ROSやTo do listのように穴埋め的に聞いていくものではありません



家庭医の目線は鳥の目と魚の目を持つことだと思っています
虫の目は専門家の目線です

そのためのツールに名前が付いている感じで、
それぞれの理論はとても似通っています


症例に応じて、アプローチの方法は多少違いますが、
基本はBPSモデルでまずは考えるくせを身に付けましょう




まとめ
・BPSモデル(Bio,psycho,social)で患者さんを考える癖をつける
→disease orientedな対応をしていないか?

・患者さんの背景(コンテクスト)を知る
→そのためには対話(ダイアローグ)が必要

・家庭医目線は、鳥の目・魚の目
→focusを自由自在に操り、時間を行ったり来たりする


2020年11月10日火曜日

研修医の先生との振り返り 〜看取り編〜

90歳 男性 心不全の末期で、お看取りになった方


T「お看取りしたことある?」


研「あります」


T「どうする?」


研「えっと、目に光を入れる前に眩しいですよ、と声をかけて、

 対光反射を確認します。

 そして、胸の音をききます。10秒間聞くのが大事だと習いました。

 その後、ご家族さんが時計を持っていたら、その時刻で死亡確認の時間とさせてもらいます。

 死亡確認の後、他の上級医の先生方がいつも気の利いたセリフを言っているので、

 何か言おうとは思っています。


 今回であれば、苦しくない最期でしたよと伝えようと思います。

 あとは、心臓が止まっても耳は聞こえると言われますので、ぜひ話しかけてあげてください、ということと、

 昨日お食い締めをしたので、そのこともお話しようと思っています。」


T「・・・・そっか。気の利いたセリフねえ。。。」


研「〇〇先生がとても素敵な言葉を仰っていたので、 

 そういういいなあと思った言葉を自分なりに言おうと思っています。」


T「・・・・なるほどね。わかった。じゃあ、行こうか。」

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病室へ


ご家族「あ、先生、ありがとうございました。」


研「それでは皆さん揃われましたね。

  では最後の確認をさせていただきます。」


研「〇〇さん、眩しいです。ごめんなさい。

  目に光が入ります。 

  胸の音も聞きますね・・・

  はい、今確認させていただきましたが、目の光に対する反応がありません

  胸の音を聞いても、呼吸と心臓の音が聞こえない状態です。

  この3つの兆候をもって、死亡確認とさせていただきます。

  ご家族さんの中で時計を持っていらっしゃる方はおられますか?」


息子さん「はい・・・」


研「〇時△分ですね、私の時計ともズレはありませんので、

  〇時△分 死亡確認とさせていただきます」


ご家族「ありがとうございました。。。。」


研「最後は穏やかな表情で苦しくはなかったと思います。」


ご家族「・・・」


研「心臓が止まっても耳は聞こえると言われますので、

 よかったら是非、声をかけてあげてください」


ご家族「・・・」


研「昨日もすり下ろしたリンゴを食べることができて、よかったと思います」


ご家族「・・・ありがとうございました。」


研「それでは、失礼いたします」

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振り返り


T「どうだった?」


研「いやあ、なんだか最後は居辛くなって出てきてしまいました。

  うーん、やっぱり難しいですね。。。」


T「そうだね。お看取りは難しいよね。

 究極のお看取りはどんな感じだと思う?」


研「先生がそう仰るということは、医者が居なくてもいいという感じですか?」


T「あー、まあ確かにその通りだね。

 最後の場面で、医師としてできることはあんまりないからね。

 でも死亡診断書書いたり、死亡確認しなければいけないから、医師は必要ではあるんだよね。


 じゃあ、質問を変えよう。

 実は、産まれてくる時と亡くなる時って似てるんだよね。

 産まれてくる時ってどんな感じ?」


研「えっと、お母さんが頑張って産みます。」


T「そうだね。

 産まれてくる時にはエネルギーが必要なんだ。

 赤ちゃんもお母さんも一生懸命頑張っているでしょ?


 実は亡くなる時もエネルギーが必要なんだ。

 本人も一生懸命、最期を迎えようとしているし、

 家族もそれを一生懸命支えてくれている。

 

 そして産まれてくる時、赤ちゃんの周りはどう?」


研「笑っていますね。」


T「そう。赤ちゃんは泣いているけど、周りは笑顔に包まれているんだ。

 いい看取りってそんな雰囲気で、産まれてくる時のように暖かい感じになるんだ。


 最期の場面でみんなが「いい人生だったね、ありがとう」って、

 笑顔でいられるのが、自分の中ではいい看取りだと思っている。


 もちろん、性格や病状とか、いろいろな要因があるから、

 笑顔でなんかいられない時もあるとは思うけど、

 理想はそういうあったかい雰囲気で、最期が迎えられたらいいなあって思っている。



 そこに気の利いた言葉なんで準備する必要はないんだ。

 大事なのは、その雰囲気や空気を共有すること。

 

 その場にいるだけでいいんだよ。

 気の利いたセリフなんていらない。

 

 最期は医師対患者の関係ではなく、人対人だから、

 亡くなった方やご家族との思い出やその時の思いを正直に語ればいい。


 語る言葉がなければ、それでもいい。

 そこにいることが大事なんだ。

 そしたら、ご家族の方から語りかけてくれる。」


研「なるほど、そうですね。

  ご家族との信頼関係はもちろんですけど、

  やっぱりその人の人となりを理解していないと、なかなか言葉は出てきませんよね。

 

  いい看取りにつながるように、その人を知る努力をします。」



T「そうだね。


 自分の看取りがいい看取りだっかなんて、毎回わからないよね。

 ご家族の方から、先生のおかげで母の願いは全て叶いました。ありがとうございました。

 って言われた時ですら、本当にこれで良かったのだろうか・・・と思ってしまう。


 看取りの時は、いつも思い出す言葉があるんだ。

 以前、自分の上司から言われた言葉なんだけど、


 今回の看取りが、〇〇さんにとっていい看取りだったかどうかはわからない。

 だから、いつか自分の枕元に〇〇さんがやってきて、

 「あの時は、本当は苦しかったんだぞー」って言われたり、

 「全然痛くなかった、苦しなかった。ありがとう」

 って言われたりするんじゃないかなって思ってる。



 っていう言葉が、自分にはとてもしっくりくるんだよね、

 なんでかというと、家族からのフィードバックももちろん、大事なんだけど、

 やっぱり最後は本人に聞いてみたいんだよね。」

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参考人:自分の上司の先生

    内藤いづみ先生

    →本当の緩和ケアがどういうものかを教えてくれた先生です

誰も教えてくれなかったコミュニケーションの話

※症例は架空です 勉強会終了後、看護師さんよりフィードバック 毎日のデイリーカンファは素晴らしいけれど、 患者さんに今日、何が行われるかとか、 話し合った内容が伝えられないことがある 家族にはしっかり面談をして、何が行われるか伝えていることが多いが、 患者さんが置いてきぼりになっ...

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