2018年10月29日月曜日

結節性紅斑

目立つんだけど、大して鑑別が狭くならない症状ってありますよね

結節性紅斑はその代表です


両下腿前面に痛みを伴う、盛り上がりのある楕円形の紅斑を認めたら、

結節性紅斑を疑います

皮疹の名前自体は、有名ではありますが、

「背景の疾患、どこまで調べるんだ問題」が勃発します

原因は感染症からサルコイドーシス、IBD、ベーチェット病、腫瘍と多岐に渡ります

全部調べようと思ったら、

血培とって、便培とって、CTとって、

眼科にかけて、CFして、ブロンコして、

生検して、、、etc

と、きりがありません

そのため、結節性紅斑を見たら、まず、他に症状ないかを、確認します

ある程度、疾患の検査前確率を上げないと、

検査の嵐になってしまいますので、

皮疹以外の所見に注目しましょう


そして、色々調べてもわからん

という事もよくあります

なんといっても、原因不明が半分以上ですから仕方ありません


しかも、よくわからないうちに、消えていく事が多いので、

なかなか深追いする前によくなってしまう事もあります





原因がわかる事もたまにはあります

それは、もともと原疾患がわかっている場合です



この前は救急に、薬を飲み続けてもよいか

という主訴で来られた10歳男児が、母親ときました

問診票には、薬を飲んだら、皮疹が出たから、

薬(ゾビラックス)をやめたほうがよいか?

と書かれていました

そりゃあ、やめたほうがよいでしょう

と思いましたが、皮疹を見ると、

結節性紅斑でした

ありゃりゃ?と思い、

なんで薬飲んでいるのか、聞いてみると

ヘルペス歯肉炎のためでした

歯肉も確かに腫脹し、ヘルペスっぽくて、痛そうでした

という事で、この皮疹は結節性紅斑であって、

薬疹というよりも、ヘルペスによって起こった皮疹だから、

薬は関係ないと思いました

もちろん、薬でも結節性紅斑を起こしますが、

今日はじめて飲んで、今日、結節性紅斑にはならないだろうという事で、

薬は継続としました

その後、ヘルペス歯肉炎は軽快し、皮疹も軽快していきました


とまあ、たまには原因が明らかな事もあります

まあ、上記の場合はベーチェットを否定はできませんが、可能性は低いでしょう



原因が不明で、治らない、潰瘍形成している、

といった場合は、皮疹の生検を検討します







2018年10月20日土曜日

一酸化炭素中毒

一酸化炭素中毒

もうすぐ冬がやってきます

一酸化炭素中毒のことを、「冬のサイレントキラー」と勝手に名付けています

もちろん、冬以外に起こり得ますが、自殺をのぞけば冬に多い中毒です

冬にはインフルエンザや胃腸炎も流行しますが、

その陰にこっそり、一酸化中毒の患者がかくれています


一酸化炭素中毒はpit fallだらけで、一酸化炭素中毒には三回だまされます


①症状に騙される

症状から他の疾患と誤診してしまったり、もしくは原因不明になります


一酸化炭素中毒の症状は一言でいうと、

多彩です

これがあったら、一酸化炭素中毒!といえるものはありません

なので、冬の間は、体調不良で来た人全員に、
一酸化炭素中毒があるかもしれない

と疑うことが、見逃さないコツです


そうはいっても、頻度の多い症状から拾い上げることはできます

頭痛はもっとも多い症状なので、原因がよくわからない頭痛をみたら、
一酸化炭素中毒を疑いましょう


高齢者の場合、頭痛というよりも頭が重いとか、食欲がない
といった症状のことが多い印象なので、

食思不振の高齢者をみたら、ガスをとりましょう


ない症状を知っておくことも大事です
一酸化炭素中毒単独で、発熱はありません


下痢は意外にあります(矢吹先生に教えていただきました)













②検査で騙される

SpO2には誰も騙されないと思いますが、

一酸化炭素中毒では、SpO2は低下しません


騙されやすいのは、ガスのCOHbの値です

血中のCOは組織へと移行するため、血中のCO濃度だけでは何とも言えません


そして、

救急までくるのに、1時間

診察までの待ち時間に、1時間

検査までに、30分

とせっかく、一酸化炭素中毒を疑っても

ガスをとるまでに時間が経過してしまっていては、

COHbはどんどんと下がっていきます

ましてや、救急車で10L酸素を吸ってきた場合はもっと早く低下してきます


CO血中半減期は、

大気圧下で300分、高濃度酸素下で90分、100%の高圧酸素下で30分です


COHbがたいしたことない値だから大丈夫かな

と思ってしまいそうですが、

本当はもっと高かったかもしれません



組織に移行すること、時間と共に低下すること

2つの理由から一酸化炭素中毒の重症度は、COHbだけで語ってはいけません


脳神経の症状と心臓が障害されている証拠があれば、

それは重症と考え、高圧酸素治療を検討します








③一酸化炭素中毒の診断後に騙される

一酸化炭素中毒を見つけると、

診断がついた喜びで、思考がストップしがちです

ですが、一酸化炭素中毒は他の病気が合併していることがよくあります


・失神して運ばれてきた人が、急性一酸化炭素中毒だった

→後日、重症ASということが分かった


・火災から逃げきてきた人が、急性一酸化炭素中毒だった

→シアン中毒を合併していた


・意識障害で運ばれてきた人が、急性一酸化炭素中毒だった

→COHbの割に意識レベルが悪く、頭部CTをとると視床出血だった

 だが、なぜか炎症反応が高く、再度、診察すると右下腹部を痛がる
 
 腹部CTを追加すると、虫垂炎だった



というように、一酸化炭素中毒は身近な中毒であり、

たまたま他の疾患が合併していることもよくあります


なので、他の病気をみのがさないためには、

(1)なぜ、この人が一酸化炭素中毒になったかを考える

→脳梗塞になって、動けなくなったからかもしれない



(2)一酸化炭素中毒になって、
  二次的に起こったことを考える

→一酸化炭素中毒→食欲低下で薬(抗てんかん薬)のめず→痙攣発作



(3)一酸化炭素中毒でなかったら、
  どんな鑑別があるかを考える

→胸痛→一酸化炭素中毒はあるけど→心筋梗塞もあった



一酸化炭素中毒の診療には、オッカムだけではいけません

ヒッカムを忘れないようにしましょう



では一酸化炭素中毒の診療の流れです


一番のポイントは疑うことです

疑ったら、ガスをとること

そして、早めに酸素を吸わせること

そして、高圧酸素の適応があるか、検討すること




高圧酸素療法(HBO:hyperbaric oxygen therapy)は、

一酸化炭素中毒の有名な治療法ですが、

だれに、何時間、何気圧で、行うことがベストかは分かっていません

ですが、大気圧下酸素吸入(NBO:Normobaric oxygenation)よりはベターではないか

ということで、後遺症(DNS)が残りそうな症例には行われることが多いです

しかし、HBOを行ったら、NBOより後遺症(DNS)が減るかどうかも

まだ結論がついていません




分かっていることは、酸素需要を減らすために、安静がよい

NBOは早めにやったほうがよい くらい


NBOは何時間やればよいかはよくわからない

6-24時間といわれたり、

症状が消失するまでとか、COHbが10%以下になるまでといわれる


HBOは本当に意味があるかはわからないが、

これまでの知見を元に、ケースバイケースで考える

やるなら早い方がよいであろう



治療に関しては、上記のように混沌としていますが、

目の前の患者さんに後遺症やDNSが出てしまったら、

HBOしておけばよかったーと

後悔してしまいそうなので、HBOができる施設であれば、

時間とマンパワーの余力があれば、閾値低めにやっているのが、

現状ではないでしょうか


治療も大事ですが、

面談が何より、大事です

最初の時点で、後遺症については忘れないように説明しておきましょう




2018年10月5日金曜日

hoagland sign

EBVのIMの時に是非、気をつけてみてほしいところがあります


それは、顔です

Hoagland signというものがあります

是非、ビフォアーアフターで写真をとって、

nejmのイメージに載せてみてはいかがでしょうか


アンピシリン疹

自分ではない誰かが、EBVか溶連菌か迷った挙句、

エイや!!

とアンピシリンを出していて、

自分がフォローしないといけない状況になったとしましょう


では、EBVに入ってしまったアンピシリンの皮疹はいつ出るのでしょうか

あんまり勉強した覚えはないですよね

そもそも入れない事が原則なのだから、

入れた後の経過は国家試験には問われません


実はすぐに出そうですが、内服後すぐには出ません

7日くらい後に出る事が多いようです

なので、数日後にフォローして、

皮疹がでないから、やっぱり溶連菌で良かったのかな

という判断にはなりません

皮疹で確認するという手法はオススメできませんが、

もしその判断をするなら、10ー14日経って、皮疹がなければ、

EBVではなかったという結論に少し近づくかと思われます




昔は100%と言われていましたが、最近の報告ではそんなに高くないようです

ですが、だいぶ人種差もありそうです


誰もが知っている禁忌を、前向きに大規模に調べる事はもはや不可能なので、

今後も後ろ向きの研究がメインになってくるでしょう


ただ、とっても判断が難しい研究になります


なぜなら、皮疹が出たとしても、薬疹なのか、EBVの皮疹なのか、

EBVのIMの時だけ、皮疹が出るタイプの皮疹なのか

の判断が非常に難しいからです

一応、EBVとアンピシリン疹の鑑別の方法はあります

それは分布とタイムコースです







EBVの伝染性単核球症とアンピシリン

アンピシリンはEBVの伝染性単核球症には皮疹が出るから出してはいけない

というのは、学生でも知っていると有名な事です


学生時代に習った事は非常に大事な事が多いのですが、

残念な事に、whatだけ覚えていて、

Whyが抜けている事が多いです


なぜ、アンピシリンはEBVの伝染性単核球症には皮疹が出るから出してはいけない

という事が重要かというと、


アンピシリンが有効な溶連菌とEBVのIM(伝染性単核球症)は

非常に鑑別が難しい時があるからです


これは臨床にでて、そういう症例に出会わないと、

腑に落ちないでしょう


扁桃炎と微妙なリンパ節腫脹で、溶連菌の迅速検査が陰性で、

センタークライテリアの点数が高い時、

これはもう、人それぞれ言う事が違ってくる領域です


センタークライテリアとか、検査前確率とかは、

サイエンスの領域ですが、

扁桃の白苔のつき方や全体像とか言い出すと、

かなりアートな部分を含んでいます


なので、画一的な基準は作れずケースごとに

考えていかないといけません


採血や全身のリンパ節を触る、肝脾腫があるかチェックする、、、

しかし、どれも感度、特異度の問題もあり、

どちらとも言えない事があります


溶連菌を疑って、アンピシリンを出すか

EBVのIMとして様子をみるか

この問題はまだまだ臨床医にとっての悩みの種になるでしょう


しかし、時間のない中で、医師は究極の選択に迫られます

アンピシリンを出して、EBVのIMだったら皮疹が出てしまう

しかし、もし溶連菌だったら、リウマチ熱になってしまうかもしれない

どうしよう。。。


この時の医師の心情としては、

リウマチ熱のインパクトが大きすぎて、

このセッティングでは抗生剤が出る事が多い気がします


しかしリウマチ熱は非常に稀な疾患なので、気にしすぎるのもどうかと思います



日本人は副作用にとても敏感な人種で、

ビスフォスの顎骨壊死にとても敏感ですが、

海外だと稀すぎて、全然気にしていません



頻度が少なくても、インパクトの強いマイナスの事象は大きく見えるものです

なので、皮疹が出る事は、100%ですが、

リウマチ熱になる事もあたかも100%という錯覚に陥り、

皮疹をとるか、リウマチ熱をとるかで考えてしまいます


実際、リウマチ熱になる事は非常に稀であり、

(稀だからといって、目の前の患者に起きないわけではもちろんありませんが)

こういう時は抗生剤はぐっと我慢かなと

個人的には思っています


そして、よく使う手としては、「時間」に聞きます


世の中の一番の名医は、時間です

時間が解決してくれるとはよく言われる事で、

後医は名医になれます


なので、自分が後医になればいいのです


残念ながら、時間を使えるセッティングでない時もあるので、

そんな時はやっぱり悩みます









2018年10月3日水曜日

トキシドロームで気がつく

病歴不明でも、診察で何かの中毒だな

と疑うことはできます

トキシドロームは知っていると、とても有用です

あたかも、話せない患者の声を聞き取ることができるような感覚です



















農薬を飲んだかもしれない

農薬を飲んだかもしれない人が来たら、どうしましょう

やったー!

農薬飲んだ人みたかったんだよねー

となることは、まずないでしょう

みんな苦手です

救急医でない限り、あまり出会うことは少なくなってきました

他の人がもし担当していたら、チラ見して、経験値をあげておきましょう



でも、こういうニッチな所をまとめるのが面白いですね


大事なことは、

農薬といっても、実はとてもたくさんあるということ

そして、診療の最初は、飲んだものが何であるかは分からないこと

なので、中毒診療の原則は、

いきなり各論で考えない

総論で考えることです


農薬飲んだかも!?と聞くと、

頭には、有機リンだったら、何使うんだっけ?

PAMってどうやって使うんだー

パラコートの治療って、何だっけ!?

となりがちですが、大事なのはそこではありません


中毒の薬の拮抗薬はあるほうが珍しいです

つまり、各論から考えないことが大事です


農薬を飲んだというのは、結局中毒の一種なので、やることはあまり変わりません

中毒診療の原則は、下記です

1  全身管理、対処療法。つまり、ABCDEの管理。一番大事です。

2   吸収の障害

3   排泄の促進

4  拮抗薬、解毒剤

5  精神科的評価


でも実はこれには0があるということを、救急医に教えてもらいました

それは、自分の身を守ることです


農薬の混入事件に限らず、最近はテロもいつ、どこで起きるかわかりません

吐物や揮発性物質からの二次被害が多いので、

何かの中毒を疑ったら、換気をしっかりして、

防護服やゴーグル、手袋をしっかりつけましょう






















気腫性骨髄炎

 

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