2021年6月27日日曜日

朝カンファレンス 〜誰が何に困っているか?イシューからはじめよ〜

 今回の症例は病態も興味深いですが、

外来での考え方、鑑別疾患のあげ方について主に解説していきます




90歳女性の血圧が高い、脈が早いという主訴というか、

開業医の先生からの紹介ですね


ではこの情報だけで何を考えますか?





患者さん本人が血圧が高くて、心配で救急外来受診することはよくありますが、

血圧が高いだけで開業医の先生から紹介されることは稀です


これは「誰が何に困っているか」を考えた方が良さそうです


本人が血圧が高くて困っているのか

ショートステイの施設職員が、血圧が高くて困っているのか

開業医の先生が血圧が高くて困っているのか


まずは問題の本質がどこかを探さないといけません

まさに安宅和人さんが書かれた「イシューからはじめよ」ですね

みなさん読まれましたか?


簡単にまとまっています →  イシューからはじめよ まとめ



簡単にいうと、問題を見つけていきなり解決しようとしないことが大事です

問題の見極めからはじめます



この状況では・・・


高血圧が問題なのか?

脈が早いことが問題なのか?

開業医さんではできない検査をして欲しいのか?

それとも他に器質的な疾患(褐色細胞腫など)があることを心配しているのか?

それとも・・・・


という感じで、このケースの問題の本質を探ることが重要です



みなさん、プロブレムリストあげるようにトレーニングされていますよね

ですが、プロブレムリスト方式の弱点がここにあります


プロブレムリストをたくさんあげて、今後のプランを考えれば万事解決というわけでもありません


プロブレムリストにあがらないことの方が大事だったりします


例えば、

・家族の不安:一人暮らし大丈夫か心配

・薬をどうやって飲ませればいいか

・ショートステイに行くストレスや移動が大変

・開業医の先生の心配

・フレイル進行

・引きこもり


実はこういったニーズに応えることが救急や外来現場では求められています


恥ずかしながら、自分が研修医だった頃はそんなことは全くわからず、

とりあえず医学的に病気を診断して、治療することが絶対の正義だと思っていました


その考え方は間違いではないと思いますが、

今、考えればイシューの選択を間違っていたケースはたくさんあると思います


医学的なトラブルを解決することだけでは片手落ちで、

関係者が抱えている困りごとを解決しなければ、一人前ではないのだと今は思います



この紹介状だけでは本当のイシュー(問題、困りごと)が、どこにあるかわかりません

こういった場合は、話を聞いてみるしかありません


話を聞いた上で、何が最も重要な問題かを探ります



話を聞いてみると、どうやらacute on chronicな病態のようです


chronicな病態は、慢性心不全はありそうです

歩行障害や元気がないことからは、CSDHも鑑別になります


acuteな病態は、心不全の急性増悪なのでしょう

心不全の原因としては、腎不全や高血圧、Af、ACS、貧血などが考えられます






高齢者が具合が悪い時には、

薬剤による影響をまずは考えます


そして大事なことは網羅的に考えることです

心不全+貧血+甲状腺機能亢進症+CSDH+高Ca血症+腎不全など


病態は一つではないことがあります

そういった時の考え方ですが、獨協医大の志水先生が提唱していた

Horizontal-Vertical tracing というものがあります


この考え方は薬剤や疾患の鑑別をあげるときに有用です


薬剤の場合

水平の軸では、NSAIDsに潰瘍予防でPPIが入りますよね

垂直の軸では、NSAIDsで浮腫が出て、ループ利尿薬が入ります

そうするとさらに脱水や腎機能障害につながっていきます


こんな感じで芋づる方式でストーリーが出来上がります

そして高齢者の場合は、線が複雑に網のように絡まっています


臨床推論はこの網を解きほぐすようなイメージです



はい、では症例に戻って診察をしてみましょう





診察をすると、下腿の浮腫と労作時の呼吸苦があるようですね
歩行はwibe baseです

さて、診察した結果で皆様ならこの症例どうマネージメントしますか?




はい、ということで、心不全+αという感じですね
αは腎不全や甲状腺、電解質異常、CSDHなどなんでもありですね

一つの病態に絞らず網羅的に検査が必要な時もあります


その中でも特に見逃したくないのは、ACSやCSDH、頸椎症性頸髄症です


CSDHは高齢者が歩けなくなったり、食欲が減ってきた、
フレイルが進行してきたという多彩なプレゼンテーションできますので、
閾値低めに検査することをお勧めします


そしてCSDHまで思い浮かべたら、頸椎症性頸髄症も鑑別にあげてください

同じようなプレゼンで来ることがあります



いつの間にか転倒しているかもしれません
病歴で転倒歴がないからといって安心はできません

転倒がなくても、CSDHは発症します
特にこの症例はリクシアナ内服しており、硬膜外血腫もあり得ます



さて実際はどうなりましたか?


はい、ということで、
UCGでgranular sparkling signがあり、
そこからググッと心アミロイドーシスへと鑑別が進んでいった感じですね


granular sparkling signを見つけられたことは素晴らしいですね
ただし、心室中隔がきらきらしているように見えることはたまにあります

そして、きらきらしているかな?と思って、技師さんにエコーしてもらっても、
所見としてgranular sparkling signを拾ってもらえないこともあります


何が言いたいかというと、granular sparkling signはやや非特異的な印象を持っています

アミロイドーシスを疑ったのであれば、あとはやることは一緒です
何アミロイドーシスかを探ることです

これは教科書に書いてあるので、みなさん復習してください 笑



今回の症例で気になるのは、心嚢水が著明にあることです
心嚢水から心不全になる場合があり、心嚢穿刺が必要かもしれません


これこそ、「イシューからはじめよ」です

心不全はありそうですが、心不全の原因の根本的な問題はなんなのか?です

正直、心アミロイドーシスはできることが限られますので、早めに診断しても治療は難しいです
ただ、心嚢水による心不全は心嚢穿刺を行わない限り改善しません


今回の症例は、最初から最後まで
「イシューの優先度」つまり、
今、この人にとって何が一番の問題なのか?


ということを考えさせられる症例でした


人によって症例の見える風景が異なります


みなさんはどのような風景がみえましたか?



2021年6月23日水曜日

37歳女性の腹痛と大動脈拡張 〜ぶれない軸をもつ〜

今回の症例は大動脈炎や大動脈周囲炎のいい勉強になりましたが、

あまりお勧めしません 笑


オススメ度:★★☆☆☆

すっきりしない結末ですが、感染症が好きな方は読んでみてください


でもこれが本当の臨床です

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ポイント
・大動脈に炎症がありそうだと思ったら、大動脈周囲炎か大動脈炎かを見極める

 
・大動脈周囲炎の場合、IgG4や特発性が多く、ステロイド治療になることが多い


・大動脈炎の場合、感染から軸をずらさないことが大事





37歳の女性が腹痛と大動脈拡張の精査加療目的に当院搬送となった

患者は入院3週間前まで元気であった

入院3週間前、右側腹部痛が生じ、背中への放散痛も認めた

嘔気、嘔吐、発熱、悪寒等を伴っていた

約2週間前に、他院救急科を受診

身体所見では、腹部全体に圧痛があった

脈拍は正常で、血圧は両側上下肢間で差は認めなかった

WBC 9800/μl(4800〜10,000)、ESR 41 mm/hr(0〜20)、CRP 44.0mg/lで(0~10.0)であった

その他の検査結果を表1に示す。好気、嫌気性血液培養を施行した。


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コメント

これは難しそうですね 笑

若年女性が急性の経過で発熱や大動脈拡張を起こすとなると、


1に感染(血液培養で判明する)
2に感染(血液培養で判明しなかった:血液培養では陽性にならないもの、生えにくいもの)
3に高安動脈炎
4にベーチェット病
5にSLE
6にその他(マルファン、IgG4など)という印象です


今回は亜急性から急性の経過なので感染性動脈瘤からまずは考えます

当たり前ですが、血液培養が必須です
3セットくらいとってもいいと思います


感染性の動脈炎の原因微生物は、
サルモネラ、梅毒、結核、黄色ブドウ球菌が有名ですが、なんでもありです


梅毒は胸部の大動脈に多いです
サルモネラは大動脈と親和性が高く、古典的に有名な菌です


感染性大動脈炎にはジレンマがあります
抗生剤を早く投与したいけど、投与しにくいというジレンマです


感染性大動脈炎は放っておくと、大動脈瘤を形成し破裂の危険があります
そのため、いち早く抗生剤治療を投与したいのですが、
早々に抗生剤を入れてしまうと原因微生物が不明という事態になることがあります


エンピリックに投与すると、原因微生物が判明しないとde-escalationできず、
延々とゾシン・バンコみたいな点滴が続くことになります

感染性動脈炎の治療は、6週間を超える長期の治療になります
出来れば原因微生物はわかっておきたいですよね


感染性大動脈炎は血液培養で分かりそうですが、残念ながら100%ではありません
陽性率は50-85%とも言われます
報告によっては25%は陰性になります


血液培養が陰性の時が一番厄介です


血液培養は陰性だけど、やっぱり感染症だったということもあります


大動脈炎は他の感染症よりも特に、
絶対に感染かどうかを見極めたい + どの微生物か判明させたい のです


そのためには血液培養だけでなく、
抗体検査(コクシエラ、バルトネラ、レジオネラ)や
組織や血液以外の検体の質量分析(MALDI-TOF MS)、
16SrRNAを用いて網羅的に微生物を同定する必要があります


どうしてそこまでして、感染かどうかを見極めたいのでしょうか?


もちろん、非感染性の動脈炎の場合、ステロイドがメインの治療になるからです


感染症と真逆の治療になります


治療を急ぐ場合(動脈瘤が破裂しそう、症状が強い、他の血管が閉塞しかかっている)は、ステロイドや抗生剤をどちらも投与せざるを得ません

投与する前には、大量の血液を採取し、網羅的に出すものを出して、
結果を待つしかありません


大動脈のように生検がしにくい部位(他は脳の白質病変)はいつも困ります


残念ながら画像では、感染と非感染の鑑別は難しいこともあります






そして大動脈炎なのか、大動脈周囲炎の鑑別も難しいです

大動脈炎と大動脈周囲炎を厳密に画像だけで鑑別することは難しく、
結局は病理頼みになってしまうこともあります


そして、大動脈炎も大動脈周囲炎も長引けば、
動脈壁が脆弱化して、動脈瘤を形成することがあります


感染が原因で動脈瘤が起きた場合は感染性動脈瘤と呼ばれます
感染が原因でなければ、炎症性動脈瘤と呼ばれ、多くはIgG4関連疾患です


IgG4関連疾患は大動脈炎も大動脈周囲炎もどちらも起こします



ややこしいですね〜

一度、整理してみましょう

     





大動脈(ここでは主に腹部)に炎症がありそうだと思ったら・・・

①大動脈周囲がメインか、大動脈壁がメインか

大動脈周囲を取り囲むような軟部組織があれば、
大動脈周囲炎の可能性高いです
mantle signが有名ですね

動脈瘤がない場合は、後腹膜線維症や慢性大動脈周囲炎と呼ばれたりします



一方、大動脈の壁肥厚や周囲の脂肪濃度上昇、
造影にて外側の高吸収域(double ring like sign)を認めた場合は、動脈炎の可能性が高いです



ただし、クリアカットに分けられないことも多いです
分けられない場合は、どちらもあり得ると思いながらフォローすることが大事です











②大動脈周囲炎(後腹膜線維症)っぽい場合

特発性 VS    IgG4関連疾患 VS    結核 VS  リンパ腫 VS  その他の構図 です

一番ネックなのは、結核が鑑別に入ってしまうことです
画像だけでは鑑別できません





この症例は一見、特発性の後腹膜線維症と診断されそうですが、
よく見ると胸部でリンパ節が腫脹していました

その後、気管リンパ節の生検で結核が検出されました
後腹膜の検体はPCRは陰性でした


抗結核薬だけでリンパ節も後腹膜線維症が治ってしまっています・・・

著者たちは結核感染によって惹起された免疫反応に関連して
後腹膜線維症が発症したのではないかと推測しています



特発性というには、道のりは長いですね・・・



後腹膜線維症の場合はできれば後腹膜を生検して、
結核やリンパ腫の除外を行なってからステロイドを投与したいです

外科Drと相談が必要です


ステロイド投与前のIGRAが陽性の場合、さらに厄介です
「ステロイド投与と一緒にイソニアジドで治療していいのか!?」問題に発展します

今、結核がactiveと考えるのであれば、イソニアジド単剤は禁忌に近いです

他の施設ではどうしているのか(後腹膜線維症の場合、全例生検するのか?、IGRAが陽性だったら、どうするのか?)、聞いてみたいですね





後腹膜線維症をみた時にもう一つ、迷うのは、AAVかIgG4か問題です
AAVもIgG4もプレゼンテーションはそっくりなことがあります


IgG4関連疾患でもANCAが上がったり、
AAVでもIgG4が上がることもあり、どちらなのかを迷うことはあります

Int J Rheum Dis . 2019 Oct;22(10):1926-1932.  doi: 10.1




この文献では、AAVとIgG4関連疾患が合併した症例はなかったようです
他の文献では両方の疾患の基準を完全に満たした症例が2例ありました

IgG4とANCAがどちらも上がることはありますが、両者が共存することは稀だと思われます





このように、後腹膜線維症は悩みどころが多い疾患です



③大動脈炎っぽい場合

感染 VS   非感染の構図です

この場合は、感染から軸足をずらしてはいけません


ただ、若い女性の長引く不明熱で頸動脈や鎖骨下動脈に狭窄や炎症所見があれば、
血液培養陰性を確認し、ステロイド投与されるでしょう
典型的な高安病や高齢者のGCAの場合は、感染の可能性は低いと思われます


問題は中高年以上の腹部の大動脈炎・大動脈瘤の場合です

まずは感染性大動脈炎・大動脈瘤を起こす背景を考えます

・血管損傷:自傷、心臓カテーテル検査時、モニタリングのためのルート、CV
・先行感染:半数に他の部位の感染があります
      大動脈に直接波及して感染することもあります
・免疫抑制状態:ステロイド、抗がん剤使用中、DM、肝硬変、透析患者、  
        アルコール依存症、HIVなど
・アテローム性動脈硬化
・先天的な血管異常
・既存の動脈瘤


加えて、急性の経過で出現してきた症状や急激に増大傾向の場合は、感染性を疑います

画像では、
・嚢状の偏心性動脈瘤または多葉性動脈瘤  
・軟部組織の炎症
・血管周囲の腫瘤  
・壁内のガス
・血管周囲の液体貯留

があれば感染を疑います


感染が少しでも疑われれば、いつもに増して原因微生物を探す努力をします

血液培養は何度もとります

何度もとっても陰性であれば、
血液培養が陰性になるような菌の検索を検討します
Let's HACEK ABC(血液培養陰性のIEの時の鑑別で出てくるものたち)

Lesionella
Erysipelothrix rhusipathiae
Trepheyma whipplei
Staphylococcus epidermidis
Haemophilus spp.
Actinobacillus actinomycetem comitans
Cardiobacterium hominis
Eikenella  corrodens
Kingella kingae
Anearobes
Brucella,Bartonella
Coxiella burnetii,Chlamydia,Candida


これらの検出のためには、抗体検査や16srRNA、質量分析が必要になることもあります

感染性動脈炎も否定できず、早めに抗生剤投与が必要な場合は、
感染症の先生と相談しましょう

そして破裂リスクがあれば手術するか、血管内ステントを留置するか、心外と相談です
以前は手術しないと予後悪いと言われていましたが、
最近は血管内ステントでなんとかなる症例報告や研究も増えてきました

ただステント入れてもステント感染することもあり、
結局手術になる人もいます

ステントはあくまで応急処置で、そのまま治療完遂できたら、
ラッキーくらいの心づもりでいた方がよいと思われます


手術のメリットは検体を出すことで、原因微生物が分かるかもしれません
抗生剤入っていることが多く、培養で生えないこともあるので、
質量分析を提出することも検討されます


このように感染性動脈炎や動脈瘤は、
感染症科、リウマチ膠原病内科、心臓血管外科のコラボレーションになります

この3科が揃っている病院は、なかなかないので
大病院での治療が望ましいと思います








結局、今回の症例は・・・・


画像では
大動脈周囲炎にも見えますし、感染性動脈瘤にも見えますね・・・

この症例は血液培養だけ採取して、早々にステロイドが投与されました
それでも治らないということで、抗生剤が追加されました


抗生剤が追加された後も動脈瘤は拡大傾向でした
そのため、動脈瘤の破裂防止で血管グラフトが挿入されました

(以前は感染性動脈瘤は手術が原則でしたが、
最近はこのようにグラフトを入れて、抗生剤投与することも増えてきているようです
ただし、その場合、治療失敗することもあり、追加で手術が行われることもあります)

その後、残念ながら、グラフト感染(MRSA)を起こしてしまい、
血管再検術が行われました

結局、病理では高安動脈炎を示唆する炎症所見はありませんでしたが、
否定はできないとのことで、ステロイドは継続投与されているようです




この症例はややこしくて、最初から感染があったのか、
途中に入れたグラフト感染を起こしたのか、よく分かりませんでした


途中で質量分析を行なっていますが、できれば最初のステロイドを入れる時点で
質量分析を行って欲しかったですね・・・


最初から感染だったんじゃないか?と思ってしまった症例でした


やはり、感染の軸を簡単にずらしてはいけないという教訓的な症例でした


まとめ
・大動脈に炎症がありそうだと思ったら、大動脈周囲炎か大動脈炎かを見極める
→画像だけではどちらとも言えないことがある
 
・大動脈周囲炎の場合、IgG4や特発性が多く、ステロイド治療になることが多い
→どこまでやれば特発性と言えるのか?生検は全例にすべきか?結核、リンパ腫の否定はどのようにすればよいのか?(誰か教えて欲しいです)

・大動脈炎の場合、感染から軸をずらさないことが大事
→血液培養だけでなく、組織の質量分析や抗体検査を行い、原因微生物の同定に全力を尽くす
 安易にステロイドを入れない

2021年6月17日木曜日

昼カンファレンス 〜名言が渋滞中〜

今回の症例は救急外来での動き方がディスカッションポイントでした

終盤で怒涛の名言ラッシュがありました


 

83歳 女性 主訴:意識障害
(※症例は一部修正や加筆を加えてあります)

昼に救急車で来院された症例です

救急隊より
83歳 女性の方

嘔吐と意識障害の主訴で救急搬送お願いします

バイタルはBP156/84, P 120, SpO2 95%, T 38.8 JCS 1, RR 20です

昼ごはんは食べられたようですが、
昼過ぎからぼんやりしていて、嘔吐が2回ありました
訪問診療してくれた先生に相談があり、救急搬送となりました

10分後に到着予定です
家族が一緒に行きます
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救急隊からの連絡を受けて何を考えますか?
何を準備しますか?


まず、救急隊に絶対に聞いて欲しいことは、
当院受診歴があるか?かかりつけはどこか?です


当院受診歴があれば、来院までにカルテをチェックして、
どんな既往や薬を飲んでいるか、画像や検査データをチェックすることができます



当院かかりつけでない場合は、
かかりつけのDrに電話をして情報を得ることも時には必要です

特に心筋梗塞を疑う場合は、
過去の心電図を手に入れることが救急隊が来るまでのミッションになります


この方は1年前に脳出血で当院で治療歴があるみたいですね
水頭症になり、ドレナージが行われ、
そこからMRSEの髄膜炎になった既往があるようです

その後は近医の訪問診療を受けているという背景です



さて、意識障害があるようですが、どんなステップで考えますか?



意識障害の教科書的な記載としては、

①Do don't
②AIUEOTIPS

が書いてあることが多いのではないでしょうか


AIUEOTIPSは意識障害の最初の型としては重要な語呂合わせです
AIUEOTIPSを覚えた人は、次なるステップに進みましょう


「意識障害」と一言で言っても、
暴れていて混乱状態にある人も意識障害(意識変容ともいいます)です

逆にちーんと静かで傾眠の人も意識障害です


なので、意識障害の人をみたら、
暴れているのか、ちーんと静かな状況なのか分けてみましょう


暴れている系の場合は、足りない系のことが多いです
つまり血圧や血糖、酸素、薬やアルコール(離脱)が足りていないかもしれません


急に生きていくための何かが足りなくなった場合、落ち着いていられません
カテコラミンが出て、混乱・興奮状態になります


交通事故で大量出血している人を見たことがある人はわかると思いますが、
どんどん不穏になって暴れていきます
本当に怖いです


ある時、若い女性が統合失調症様の幻覚が見えて、
失禁して混乱状態で救急搬送されました

診断はCO中毒でした
酸素が低くて、頭がパニック状態になっていたのですね



ちーんと静かな人の場合は、何かが溜まっている可能性があります

臓器不全に陥ると、何かが溜まります
溜まったものによってnatural sedationがかかり、穏やかに亡くなっていきます

人間の体はよくできていますね

薬(麻薬、BZ)やアルコールが溜まってもちーんとなります


そのため、意識障害の人を見たら、
まずはトキシドロームの観点で診察を始めることをお勧めします


ポイントは瞳孔と脈と末梢の発汗です


瞳孔はルーチンでみていると思いますが、
瞳孔所見に救われたことがある経験ありますか?


自分が瞳孔所見に救われたことは、
pinpoint pupilだった時が多いです

pinpoint pupilがきっかけでコリナージッククライシス、麻薬中毒、CO2ナルコーシスを診断できたことがあります


意識障害の人はうまく病歴を話せないことが多いので、
口ではなく目に語ってもらいましょう




あくまで上記は傾向であり、逆のことももちろんありますので、過信は禁物です
どちらとも言えなければ、網羅的にAIUEOTIPSで考えてみてください



では意識障害の人の次のステップにいきます


③〇〇対応、〇〇チャレンジです

髄膜炎対応、tPA対応、セルシンチャレンジテストのどこに進むか検討します

片側の麻痺や脳神経の異常があれば、脳梗塞の可能性があり、
時間が許せばtPA対応が必要になります



意識障害の時に原因不明で落ち込んでいく先は、
NCS(非痙攣性てんかん)と敗血症性脳症のことが多いです

NCSは脳波でもとらえるのが難しく、
脳波のアクセスが悪ければ治療を優先しても良いと思います



今回の症例は発熱があり、髄膜炎対応をするかどうかが議論になります


では、髄膜炎対応ってなんでしょうか?



髄膜炎対応のポイントはできるだけ早く抗生剤を投与することです


抗生剤の選択に関してはNarrow is beautifulとよく言われますが、
敗血症診療において抗生剤投与は、The sooner, the betterです


重要度としては、The sooner, the better>>>Narrow is beautifulです



熱があってレベルが悪くて、バイタルも頻脈で呼吸数も早いので、
qSOFAで敗血症が強く疑われますが、
focusがわからないので、抗生剤投与を何にすれば良いか迷っています・・・

→なんでもいいので早く広域の抗生剤を投与してください 笑



でも、グラム染色まだなんです

→血液培養とれていればOKです
 忙しければ、検体のグラム染色は抗生剤投与後でいいです

 早急にグラム染色ができるのであれば、
 グラム染色の結果をみて抗生剤を選択できればベストです


忘れないで欲しいことは、

 診断がつかないと抗生剤を投与してはいけないわけではありません
 グラム染色しないと抗生剤投与してはいけないこともありません
 敗血症、特に髄膜炎においては、The sooner, the betterなのです



そういう意味では髄膜炎対応は最速です
いち早く抗生剤投与をすることができるのが最大のメリットです



ということで、迷ったら髄膜炎対応して良いと考えています
大は小を兼ねます


注意点としては、上記の髄膜炎対応でカバーできていない菌がいることは、
忘れないでください

ESBLや緑膿菌が疑われる場合は、CTRXをMEPNにしましょう
レジオネラやマイコを疑うのであれば、ジスロマックを使いましょう
リケッチアを疑うならMINOを使いましょう
脳炎を疑うなら、ステロイド投与するかは慎重に検討しましょう
脳炎疑いならアシクロビルは投与しましょう


というように、髄膜炎対応にはルーチンの抗生剤に加えて、
臨床状況に応じて足し算が加わります



皆様ならこの症例、髄膜炎対応しますか?





身体所見では傾眠傾向ですが、指示は入るようです

明かな麻痺はありません

会話もできます

頭痛はなくて、項部硬直もありません


診察上は明かな熱源もないようです


さあ、どうしましょうか?髄膜炎対応しますか?



自分ならしません

「発熱と意識障害」の段階で、髄膜炎対応するかどうかのスイッチが頭に浮かびます

ですが、そのスイッチを押すためのもう一歩がこの症例ではありません


ここは言語化が難しいところですが、

例えば、

・頭痛がある

・意識障害の程度が強い

・項部硬直がある

・免疫抑制状態である

・バイタルが悪い など


もう一押しがない気がします


実際はどうでしたか?

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発表者「はい、実際は髄膜炎対応をしました。

   自分としては既往に髄膜炎があったので、それを重視しました。


   自分が髄膜炎対応をしたのは・・・


  髄膜炎対応をするかどうかディスカッションするな。

  ディスカッションするべきところは、

  髄膜炎対応をした後の抗生剤をどう引くかだ!


   というM先生の言葉を思い出しました。」



T「髄膜炎対応の足し算と引き算ですね」



M「ちなみにここでどういう引き算のプランを考えていたの?


  自分がもしこの症例で髄膜炎対応をするとしたら、

  デカドロンもCTRXもVCMもビクシリンは入れますね。


  だけど、髄液検査で細胞数が上がっていなければ、抗生剤は中止します。

  他の熱源をみてCTRXだけは残すかもしれません。それ以外は全て中止します。


  おそらく、この症例は熱源が他にあって、

  熱せん妄で意識障害になっている可能性が高いと思います。

  なので、髄液の培養は待たずにビクシリンやVCMは中止します。」


発表者「僕も同じプランでした。

    おそらく、CTや血液検査、尿検査で他の熱源がわかるんじゃないかなと思っていて、

    他の熱源がわかればそれに応じた抗生剤にしようと考えていました。」



M「なるほど、気が合うね。笑」


発表者「あとこの時、N先生の言葉を思い出しました。


   髄膜炎対応っていうのは、下が声をあげて上が乗っかるもんだ!


   っていう言葉が頭にあったので、髄膜炎対応として進めていきました。」



T「なるほど〜、髄膜炎対応するかどうかは上が決めるもんじゃないんだね。


  上になると、なるべく楽な方、楽な方になりがちだから、

  研修医の先生から積極的に声を出してもらった方がいいですね。


  でも最初の抗生剤でビクシリンまで入れるか迷いますね」


発表者「その時、上級医の先生もCTRXとVCMでいいんじゃない?

    と言っていました。


    髄膜炎対応するにしても、ビクシリンまではいらないんじゃない?

    と言われました。

   

    その時には、T吾先生の言葉を思い出しました。」


笑


T「回想シーン多くない? 笑」


発表者「決まったお作法を崩す時には崩すだけの理由がいる。

   その崩し方にもお作法がいる。

   それを理解していないものにお作法を崩す権利はない。


    という言葉を思い出して、今回はお作法通りに投与しました。」



M「すごいね、名言が渋滞してるよ 笑」


M「この症例も髄膜炎だーと進んだわけではなくて、

  他の熱源だと思って進んで行ったんですよね。


  髄液検査陰性で髄膜炎対応を止めるつもりで進んでいったと思います。

  それはすごく安全で、とてもいいことです。」



T「その通りです。


  ですが逆はよくない。

  

  誤嚥性肺炎だと思っていたら、実は髄膜炎でした。だけは避けたい。


  髄膜炎対応は100発100中で当てるものではなくて、

  10回中1回当たればいいかな?くらいでやるものです。」

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経過


CTにて胆嚢腫大があって、血液検査で肝胆道系酵素が上昇していました

胆管炎と胆嚢炎の診断で、ERCPが行われました


診断:意識障害と高熱のプレゼンテーションできた胆石性胆管炎に伴う敗血症


名言まとめ

・髄膜炎対応をするかどうかディスカッションするな。

 ディスカッションするべきところは、

 髄膜炎対応をした後の抗生剤をどう引くかだ!  by M 


・髄膜炎対応っていうのは、下が声をあげて上が乗っかるもんだ!  by N


・決まったお作法を崩す時には崩すだけの理由がいる。

 その崩し方にもお作法がいる。

 それを理解していないものにお作法を崩す権利はない。  by T go  

  

誰も教えてくれなかったコミュニケーションの話

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