今回の症例は病態も興味深いですが、
外来での考え方、鑑別疾患のあげ方について主に解説していきます
開業医の先生からの紹介ですね
ではこの情報だけで何を考えますか?
患者さん本人が血圧が高くて、心配で救急外来受診することはよくありますが、
血圧が高いだけで開業医の先生から紹介されることは稀です
これは「誰が何に困っているか」を考えた方が良さそうです
本人が血圧が高くて困っているのか
ショートステイの施設職員が、血圧が高くて困っているのか
開業医の先生が血圧が高くて困っているのか
まずは問題の本質がどこかを探さないといけません
まさに安宅和人さんが書かれた「イシューからはじめよ」ですね
みなさん読まれましたか?
簡単にまとまっています → イシューからはじめよ まとめ
簡単にいうと、問題を見つけていきなり解決しようとしないことが大事です
問題の見極めからはじめます
この状況では・・・
高血圧が問題なのか?
脈が早いことが問題なのか?
開業医さんではできない検査をして欲しいのか?
それとも他に器質的な疾患(褐色細胞腫など)があることを心配しているのか?
それとも・・・・
という感じで、このケースの問題の本質を探ることが重要です
みなさん、プロブレムリストあげるようにトレーニングされていますよね
ですが、プロブレムリスト方式の弱点がここにあります
プロブレムリストをたくさんあげて、今後のプランを考えれば万事解決というわけでもありません
プロブレムリストにあがらないことの方が大事だったりします
例えば、
・家族の不安:一人暮らし大丈夫か心配
・薬をどうやって飲ませればいいか
・ショートステイに行くストレスや移動が大変
・開業医の先生の心配
・フレイル進行
・引きこもり
実はこういったニーズに応えることが救急や外来現場では求められています
恥ずかしながら、自分が研修医だった頃はそんなことは全くわからず、
とりあえず医学的に病気を診断して、治療することが絶対の正義だと思っていました
その考え方は間違いではないと思いますが、
今、考えればイシューの選択を間違っていたケースはたくさんあると思います
医学的なトラブルを解決することだけでは片手落ちで、
関係者が抱えている困りごとを解決しなければ、一人前ではないのだと今は思います
この紹介状だけでは本当のイシュー(問題、困りごと)が、どこにあるかわかりません
こういった場合は、話を聞いてみるしかありません
話を聞いた上で、何が最も重要な問題かを探ります
話を聞いてみると、どうやらacute on chronicな病態のようです
chronicな病態は、慢性心不全はありそうです
歩行障害や元気がないことからは、CSDHも鑑別になります
acuteな病態は、心不全の急性増悪なのでしょう
心不全の原因としては、腎不全や高血圧、Af、ACS、貧血などが考えられます
高齢者が具合が悪い時には、
薬剤による影響をまずは考えます
そして大事なことは網羅的に考えることです
心不全+貧血+甲状腺機能亢進症+CSDH+高Ca血症+腎不全など
病態は一つではないことがあります
そういった時の考え方ですが、獨協医大の志水先生が提唱していた
Horizontal-Vertical tracing というものがあります
この考え方は薬剤や疾患の鑑別をあげるときに有用です
薬剤の場合
水平の軸では、NSAIDsに潰瘍予防でPPIが入りますよね
垂直の軸では、NSAIDsで浮腫が出て、ループ利尿薬が入ります
そうするとさらに脱水や腎機能障害につながっていきます
こんな感じで芋づる方式でストーリーが出来上がります
そして高齢者の場合は、線が複雑に網のように絡まっています
臨床推論はこの網を解きほぐすようなイメージです
はい、では症例に戻って診察をしてみましょう
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