2023年5月8日月曜日

症例検討会の役割

症例検討会の役割



最近、臨床ではなく、

勉強会のカンファレンスをしていて思うことは、

間違えていい、バイアスにまみれていい、ということです


むしろ、そうした方がいい、とさえ思います


カンファレンスであれもこれも鑑別で、あれもこれも否定できないから検査を・・・

というのは実臨床っぽいのですが、

勉強会のカンファでは面白みが欠けます



実臨床では間違えてはいけないので、どうしてもマネージメントが限られます


当たり前ですが、臨床の現場は患者さんの安全やアウトカムが最優先です



ですが、症例検討会や勉強会のカンファは違います


自分磨き優先の場所です


最大限に自分の成長の場所として生かしても許される場所です


そんな場所ってあまりないですよね


ぜひ、症例検討会やGIMカンファでは失敗を恐れずに、自分なりの診断をつけてみましょう














2023年5月7日日曜日

視床梗塞を診断できるようになるために





症例振り返り


本日の症例は視床梗塞の症例でした

視床梗塞としては典型的な経過だったので、
視床梗塞のゲシュタルトを形成するためのいい症例だったと思います


脳梗塞では意識障害を来しにくいのが大前提ではありますが、例外もあります


意識障害が来る脳梗塞として

・広範な大脳半球の梗塞
・脳幹網様体賦活系(視床、内包膝部含む)
・島梗塞

+てんかん発作があります


脳梗塞らしくないけど、実は脳梗塞という場所は色々あります

島梗塞、側頭葉、後頭葉、脳梁、尾状核、視床、内包膝部・・・などです

一つのカテゴリーにできそうですね



診断できるようになるためには?



本症例を診断することは非常に難しいですが、誰でもいつかは診断できるようになります


どうやって勉強すれば、本症例を診断できるようになるかを言語化するのは難しいです

「勉強」というとちょっと違う気がします



あえていうならば、
疾患のゲシュタルトを自分の中に作っていくことで、
診断できるようになっていきます


ゲシュタルトというのは、疾患のイメージのようなのもです


疾患ごとにゲシュタルトができていくと、
あとはそのゲシュタルトに合うかどうかを当てはめる作業になります


ただ、疾患のゲシュタルトを作るのが大変です

同じ病気でもフェーズや重症度が異なると、
ゲシュタルトがかわります


解像度が高い疾患のゲシュタルトができるまでには、100例くらい経験しないと出来て来ないと言われていますが、



100例に全く根拠はないので、1例みるだけでも充分、ゲシュタルトはつかめます


ただ典型、非典型、色々なパターンを知っておく必要があります



現実は同じ疾患を100例も経験できないので、
症例報告やカンファで補うことができます
 

こうして自分の中にゲシュタルトが出来てくると、本症例も診断できるようになります



AKB48を見て、すぐにAKB48だとわかるように、
急にボソボソ話し出して意識障害のある患者さんを見たら、
すぐに視床梗塞だとわかるようになります


最初はAKB48って何?というところから、
何度も見たり聞いたりしていく上で、自分の中でAKB48というゲシュタルトが形成されていきます


別にAKBを勉強した記憶は皆さんにはないと思います 笑


でもAKBを認識できますよね(なんとなくでも)




そして皆さんはこう思うはずです

AKBって他のSKEやNMBやHKTとか色々あるけど、どう違うの?


これが鑑別疾患を思い浮かべるという作業です


診断の成長のステップとしては


1、鑑別疾患をあげることができる

 今回であれば、NCS、脳炎、肝性脳症、中毒、脳梗塞、電解質異常です

 

 この段階では、ほとんどの症候群は

 「語呂合わせ」「記憶術」「pivot and cluster」で対応できます


 意識障害:AIUEOTIPS

    咽頭痛:five killer sore throat

    市中の敗血症:5+1

 胸痛:five killer chest pain 

    ショック:SHOCK

    

といった具合です

これは記憶で対応できます


pivot and clusterとは、まず思いついたもの(AKB)をpivotとしておき、
鑑別すべきものをcluster(SKEやNMBやHKT)として考えます


この一連の流れは考えるというよりも、慣れれば自然に思いつくようになります



そして経験を積むと、鑑別疾患が広がっていきます



2、鑑別疾患を広げる

今回であれば、結核性髄膜炎、橋本脳症、中枢神経原発血管炎、CNSループス、APS、MS、傍腫瘍症候群などです


AKBでいうと・・・
どうやら坂道シリーズというのがあるらしい

乃木坂46、櫻坂46、日向坂46、吉本坂46も鑑別になるようだ



これが鑑別疾患を広げるという作業です
鑑別に上がらなければ診断はできませんので、できるだけ広く鑑別をあげられると良いです



3、優先順位をつける

疫学、文脈(病歴)、患者さんの背景、重症度、緊急性、治療可能性を考慮します
いわゆる3C(Common,Curable,Critical)です



本症例であれば、CSDHは頻度も多くプレゼンテーションが多彩であり、
治療が可能なため、まず疑いたい疾患です


髄膜炎や脳炎は重症度が高く、これもまた治療可能なため見逃したくない疾患です
首が硬かったようなので、早く診断・除外したいですね


一方、脳梗塞は?というと、頻度は多いですが、
tPAの時間を過ぎているのであれば、緊急で診断しにいく必要はあまりないと思われます

入院後の検査でもよいかもしれませんね



となると、頭部CT>髄液検査>MRIの順番になります


このようにその疾患の治療まで見越して、今すぐ診断すべきかどうか?を考えて、
検査の順番を組み立てる必要があります


除外すべき疾患は除外しつつ、同時並行に診断をつけにいきます



4、診断した後は、なぜその疾患が起きたか考える


診断がついたとしても、その疾患に至った原因を突き止める必要があります


例)誤嚥性肺炎がわかった
  誤嚥した原因はイレウスだった
  イレウスの原因は虫垂炎の穿孔だった


という感じで、一つの病気を見つけて満足してはいけません

本症例であれば、脳梗塞はあったが、なぜそれが起きたか?


IEや大動脈解離の可能性はないか?ということが大事です



5、診断がつかなかった時は、ゴールとなる疾患を思い浮かべる


 救急や初診の現場では、診断がつかないことも多いです


 その場合、症例の行き着く先(ゴール)を見据えると焦らなくてすみます



 ゴールになるような疾患群は、簡単には診断できません
 侵襲性が高い、時間がかかる、自施設ではできない、といった制約があります

 
 そのため、そこまで行かなければいいなあ・・・という思いで検査して、
 どこかで引っかかってくれ・・・という気持ちで検査を待ちます


 血液検査でわかるなら、高NH3か低Naかな
 頭部CTでわかるなら、CSDHかな

 といった具合で、期待しながら待つということが重要です
 
 どの検査でも引っかからなかった場合、目指す疾患がないと途方にくれてしまいます
 
 ゴールが定まっていれば、検査で引っかからなくても焦りません


 本症例であれば、MRIで何もなければ、てんかん発作や〇〇脳症が鑑別として残ります

 

2023年5月4日木曜日

ベーカー嚢胞破裂

 症例の解説です

   来院時、片側に強い浮腫と下腿後面の疼痛を認めており、

下肢静脈血栓症(DVT:Deep Vein Thrombosis)を疑いました



DVTは肺塞栓症を引き起こし、時に致死的な疾患であるため、

早期診断・早期治療が求められます



Well’ c score for DVTでは「下肢全体の腫脹」「脛骨粗面より10cm下の下腿周囲径が健側に比べて3cm以上太い」「pitting edema」の3点が当てはまり、

高リスクとなりました



World Journal of Emergency Surgery volume 11, Article number: 24 (2016) 



本患者はすぐに下肢静脈超音波検査が施行され、

左腓腹静脈の巨大血栓が確認され、DVTに矛盾ない経過と診断過程だと思われました


Dダイマーの上昇もあり、DVTの診断に疑問を持てませんでした



しかし、ADLは自立しており、

長期の臥床や既知の悪性腫瘍は指摘されておらず、

本患者になぜDVTが出現したかは疑問が残りました



そのため、入院当初はDVTの原因精査のため、

抗リン脂質抗体症候群やトルーソー症候群を含めた過凝固に陥る病態の検索を行っていました


振り返ってみるとDVTの診断自体に疑念を抱けず、

DVTの原因検索に躍起になってしまっていたことが悔やまれます


胸痛はなく、バイタルも安定しており、積極的に肺塞栓の合併は疑われず、

入院時に造影CTが撮られていなかったことも診断が遅れた要因と思われます



ただ、本症例はプライマリケアセッティングでも遭遇しやすい状況であり、

超音波でDVTの診断がつけば、入院や造影CTがなくてもDOAC(direct oral anticoagulant)で治療が可能です



そのため、超音波検査でDVTを診断しDOACを開始する際には、

本症例を思い出していただければ幸いです



Well’ c score for DVTを用いると容易に高リスクになってしまうことが多いです


ですが、重要なことは「診断がDVTらしくない」という-2点の項目です



つまりDVTと間違えてしまうミミッカーの存在に注意しなさいということです


DVTの鑑別としてBaker 嚢胞、蜂窩織炎、外傷、骨折、慢性静脈不全、

血腫、心不全、リンパ浮腫が重要です


中でもBaker 嚢胞は非常に厄介な存在です



Baker 嚢胞の破裂がDVT のミミックの

偽性血栓性静脈炎症候群(Pseudothrombophlebitis)になることもあれば、



Baker 嚢胞破裂による膝窩静脈の圧迫で本当にDVTを引き起こす

偽性偽性血栓性静脈炎(pseudopseudothrombophlebitis)こともあるからです


 

Baker 嚢胞(膝窩嚢胞とも呼ばれる)は半膜様筋腱と腓腹筋内側頭の間に生じる滑液包の腫脹です





Clinical Radiology (2002) 57: 681±691


増大すると圧迫感や膝関節可動域制限を認めますが、

無症状のことがほとんどです


膝窩囊腫としては,1840 年 Adams が初めて 報告されました


その後、1877 年に 英国外科医のWilliam Morrant Baker によって

疾患群として本疾患を報告してから、ベーカー嚢胞として広まりました



Baker 嚢胞は滑液増生を伴う変形性膝関節症や炎症性関節炎に続発し、

高齢者でよくみられます


小児でみられる場合は外傷が契機の場合が多いです




Baker 嚢胞が問題になるのは、多くは破裂した場合です


嚢胞の破裂は強力な膝関節伸展によって滑液包内の圧力が上昇して引き起こされると考えられています



Baker 嚢胞が破裂すると、内容物が筋肉間に流入し炎症を引き起こし、


結果として下肢の疼痛や腫脹、発赤がみられ、臨床症状はDVTと酷似します



身体所見では嚢胞は触知できず、Homan’s signが陽性になることもあり、

DVTとの鑑別が困難になります


唯一、診察で鑑別のヒントになるのは、crescent signです


J Gen Fam Med. 2019 Sep; 20(5): 215–216.



crescent signは漏れ出た滑液や血液がふくらはぎを通過し、

内踝に出現する出血班です


ただし、crescent signは全例にみられる所見ではなく、発症からしばらく時間が経ってから出現する所見であることに注意が必要です



 偽性血栓性静脈炎症候群(Pseudothrombophlebitis)


 

このように血栓がないにもかかわらず、腓腹部の圧痛と腫脹を示し、

あたかも下肢深部静脈の血栓性静脈炎に類似した症状、徴候を示す病態は

偽性血栓性静脈炎症候群(Pseudothrombophlebitis)と呼ばれています



偽性血栓性静脈炎症候群は1977年Katzらにより初めて提唱された病態で、

Baker 嚢胞の破裂は偽性血栓性静脈炎症候群の代表的な疾患です



古い論文ではありますが、偽性血栓性静脈炎症候群を呈した15人のBaker 嚢胞破裂症例のうち、検査前に73%がDVTと誤診され、抗凝固療法が投与されていたという報告もあります


本症例のようにBaker 嚢胞破裂に対して抗凝固療法を開始した場合、

出血が増悪しコンパートメント症候群に至る可能性があり、

DVTとBaker 嚢胞破裂の鑑別は重要です



抗凝固療法で悪化しますので、DVTをpivotにした場合、

必ずBaker嚢胞破裂の可能性を検討したほうが良いと思われます



こういう関係はよくありますよね


例)PMRと診断してステロイド治療する前に、IEを除外する

  急性期脳梗塞と診断しtPA治療する前に、大動脈解離を除外する


DVTと診断し抗凝固療法する前に、

ベーカー嚢胞破裂を除外する



 

このようにBaker 嚢胞破裂自体がDVTのミミッカーになりますが、

Baker 嚢胞破裂により膝窩静脈が圧排され二次性にDVTを引き起こすこともあります


これは偽性偽性血栓性静脈炎(pseudopseudothrombophlebitis)と呼ばれています



つまり両者が併存する可能性があるため、DVTとBaker 嚢胞破裂のどちらかを疑った場合は、もう一方が合併していないかを常にセットで考えるべきです




 臨床症状ではDVTとBaker 嚢胞破裂の鑑別は困難であるため、

超音波検査を行うことがファーストステップです



DVTの症状が急激に出てきた場合は、

依頼文に「Baker 嚢胞破裂も鑑別です」と記載するとよいと思われます



超音波検査でも本症例のように騙されることがあるため、

違和感のあるDVT(巨大すぎる、部位がおかしい)をみた場合は技師さんと

ディスカッションを行い、自分で超音波検査を確認することをおすすめします



造影CTが撮影できるのであれば、造影CTも検討します


そして超音波検査ではっきりしない場合は、

MRIという選択肢があることを頭の片隅に入れていただければ幸いです



 

Baker 嚢胞破裂には3回騙される

1:臨床症状でDVTだと思ってしまう

 →DVTはなくBaker 嚢胞破裂だった=偽性血栓性静脈炎症候群


2:超音波検査でDVTだと思ってしまう

→実はDVTはなく、Baker 嚢胞破裂だった=偽性血栓性静脈炎症候群


3:Baker 嚢胞破裂の診断後に

 →実はDVTも併存していた=偽性偽性血栓性静脈炎症候群

 


本当にDVTでよいでしょうか?


















































































誰も教えてくれなかったコミュニケーションの話

※症例は架空です 勉強会終了後、看護師さんよりフィードバック 毎日のデイリーカンファは素晴らしいけれど、 患者さんに今日、何が行われるかとか、 話し合った内容が伝えられないことがある 家族にはしっかり面談をして、何が行われるか伝えていることが多いが、 患者さんが置いてきぼりになっ...

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