今週のNEJMは80歳男性の下垂足を契機に見つかった
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(facioscapulohumeral muscular dystrophy;FSHD)でした
なんじゃそりゃ 笑
っていうプレゼンテーションでしたね
下垂足は、腓骨神経麻痺とL5神経根症が重要になります
まれに脳梗塞でも下垂足は出ることがありますが、まさかの筋原性でした
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
(facioscapulohumeral muscular dystrophy;FSHD)
(臨床神経 2012;52:1154-1157)より
常染色体優性の遺伝形式を取り,第 4 染色体テロメア近傍に存在する 3.3 kb の
リピート 配列が短縮することが病態と深くかかわっている筋ジストロフィーである
FSHD の罹病率は世界各国でほぼ共通で、
人口 10 万人当り 5 人程度と筋ジストロフィーの中では頻度の高い疾患である
発症年齢は 0~65 歳と非常に幅広いが,思春期までに気付 かれることが多い
→今回の症例は80歳でした!
症状の進行は緩徐であり生命予後は良好である
筋萎縮・筋力低下の分布はその疾患名の示すとおり、顔面頬部,肩,上腕部に強い
初発症状は表情が乏しい、目 を開けたまま寝る、上肢の挙上困難、
翼状肩甲といった顔面筋あるいは肩甲帯の筋群の罹患を示唆する症状が
主訴となる場合が多い
一方、腰帯、下肢の筋は早期には比較的保たれていることが多いが、
進行すると徐々に障害がおよび、約 20% は 40 歳までに車椅子生活を余儀なくされる
→病名が「顔面肩甲上腕型」となっていますが、下肢の筋肉も進行すればやられます
筋障害は左右差 が目立つことが多く、FSHD の臨床的特徴の 1 つとされる
→これがキーワードですね!
神経性難聴および網膜症の合併も多く見られる
→本症例はありませんでした
本文(n engl j med 388;25 nejm.org June 22, 2023)より
FSHDは、筋強直性ジストロフィー1型に次いで
成人に2番目に多い筋ジストロフィーである
FSHDは優性遺伝またはde novo変異により発症し、
その発症率は15,000~20,000人に1人と推定されている
FSHD患者では、筋力低下の進行は通常、顔面筋から始まり、
肩甲骨周囲筋、上腕骨筋、腹筋、腰帯筋、
そして最後に下腿前区画の遠位筋へと順次進行する下行性パターンに従う
顔面筋の筋力低下は気づかれないことが多く、
最も一般的な症状は、肩より上に物を持ち上げることが困難なことである
これは通常、生後20-30年後に発症する
しかし、肉体的に負担のかかる仕事や趣味を持たない患者の中には、
肩甲挙筋の筋力低下が何十年もの間、
自覚症状や症状の代償がないために気づかれないこともある
このような患者は、本症例でみられたように、
下肢遠位筋の筋力低下が進行する人生の後半に発症する
→筋ジスの方は自覚症状が乏しいことはよくあるそうです
安定していた患者さんが、ある特定の筋群の筋力低下で
安定期が中断されることもある
→今回はそれが左足の前区画の筋群だったようです
若いころには気づかなかったかもしれないが、
長年の筋力低下があったかどうかを判断するために、
睡眠中に目を半開きにしたことがあるかどうか、
口笛やストローで飲み物を飲むこと、
肩から物を持ち上げること(例えば、キャビネットの上に手を伸ばすこと)、
腹筋をすることが困難であったかどうかを尋ねる
n engl j med 388;25 nejm.org June 22, 2023
今回の症例で学んだこと
・下垂足の鑑別は腓骨神経麻痺とL5神経根症、脳梗塞だけではない
→筋原性もありうる!
・自覚症状や訴えがなくても、網羅的な神経診察をすることで、
異常が見つかることがある
本人も気が付いていないこともある
→特に筋ジストロフィーの患者さんではよくあること!
・障害されている分布が神経症候学には超大事
→左右差が目立つ筋萎縮は顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(facioscapulohumeral muscular dystrophy;FSHD)を疑う
・時間経過で病態を推測できる
→慢性経過で悪化してくる場合、変性疾患や自己免疫性、脱髄、パラネオ、代謝、中毒を疑う
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