2020年1月16日木曜日

読書感想文 ~ERのクリニカルパール 160の箴言集~

時には読書感想文を。


医学界にはたくさんの良書がありますが、良書とはなんでしょうか


分かりやすい本?
明日から使える本?
エビデンスがたくさん載っている本?

自分の中では、この本が良書かそうでないかにはたった一つの基準があります


それはその著者に会いたくなるかどうかです


「ERのクリニカルパール 160の箴言集 岩田光永 医学書院」はまさしく良書でした


特に第一章にコミュニケーション・リーダシップを持ってきているところが秀逸です

第一章からの抜粋したパールです

パール①ERで笑うな

当たり前ですよね、でもできていないんですよね
・・・気をつけます


パール⑤すべての患者に治癒をもたらすことはできないが、すべての患者に親切にすることは可能である!

自分が親切にしたと思っただけではダメなんですよね
それが相手にも伝わっているかが大事な事ですね


パール⑥医療は正論だけでうまくいくとは限らない!

医者がすることは正論を振りかざして、患者さんを論破することでしょうか。
違いますよね


パール⑨ERでの情報遮断は命取り!

ERでの情報というのは生もので腐りやすいものです
ERでのトラブルの多くが、コミュニケーションエラーであることはよく知られています


パール⑩失敗は継ぎ目で起こる!

誰もが一度は経験済みなのに、何度も起きるんですよね
引き継ぎは毎回気を引き締めて行いましょう


といったように心にぐさぐさと刺さるようなパールがたくさん出てきます

本書でも語られていますが、これはエビデンスをベースにした本ではなく、
現場・実践・臨床をベースにして作られた本です


だからこそ、現場で働いている人の心に響きます

響かなかったパールはまだ経験したことがない項目なのだと思います


ただ、研修医の先生がこの本だけを読んで勉強するのは難しいかもしれません

本書の使い方としては、研修医の先生にフィードバックする時に、
ピンポイントで本書のパールを引用して使うと、説得力がでると思うので、
どちらかというと、専攻医や上級医向けの本だと思います

もちろん、研修医の先生が読んでも大変勉強になりますし、モチベーションを上げてくれる本です



2020年1月15日水曜日

症例カンファレンス ~3つのLifeを守れる医師に~

症例 75歳 男性 
主訴:手の使いにくさ、歩行障害

Profile:生来健康、電気工の仕事をしている

現病歴:数年前から両足先(右>左)に痺れを自覚していた
    来院の1か月前までは特に変わったことはなく、生活できていた
    運転や仕事も普通にでできていた

    来院の1か月前から仕事が忙しく、首を上にする動作も多かった
    来院の2-3週間前から、歩行のしにくさや手の動かしにくさが出現
    両側の手・前腕にかけて痺れが出てきた
    数日前から手の動かしにくさや歩行障害が悪化
    精査加療目的に入院となった

既往:特記事項なし、内服歴:なし
生活:ADLはもともと自立、飲酒は機会飲酒程度、喫煙なし
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ディスカッション①:手の痺れ

T「手の痺れがあるみたいだね。手の痺れをみたら、どんな風に問診する?」

学生「範囲とかを調べたいです」

T「そうだね、範囲は大事だね。でも、漠然とした範囲だけ聞くだけでは足りないんだ。
  コツとしては、その人の自覚している痺れを可視化できるくらいに問診することです。

  痺れの強さを天気図みたいな線でとらえるようなイメージだね

  自分は痺れmapと呼んだり、痺れの天気図と呼んでいます

  痺れの天気図の良い所は、痺れの範囲がくっきりした境界ではなく、
  ぼんやり描けるということです

  みんな経験があると思うけど、足痺れた時って、
  痺れの範囲が明確に、ここからここ!って言えないよね。

  それを天気図だったら良い感じに表現できるのです!」


学生「なるほど」

T「痺れの強さを調べる方法としては、を利用します。

  まずは一番痺れが強い所を確認します。
  
  次に、1指と5指側のどちら側が強いかを確認し、
  手掌側、手背側のどちらか、
  右手と左手のどちらか
  前腕と手のどちらか・・・

  といった感じで痺れの強さを見極めます。

  痺れの強さや範囲によって、

  ○○神経という名前のついた神経の領域なのか、
  神経根の範囲なのか、
  末梢に強いような手袋靴下型なのか、
  口と手に痺れがあるような、手口症候群なのか、
  
  といったことを見極められるヒントになります。


  あとは、運動と腱反射と感覚である程度部位を特定できます」


T「足も同じです」

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痺れの診察

手の痺れは両手にみられるが、右手の方が強い
右手が10の痺れなら、左手は7の痺れ
右手の指先に強く、全ての指で痺れがある
1-5指で強弱はなし
手掌側と手背側で強弱はなし
前腕にも痺れはあるが、手や指先の方が強い

→分布としてはC6-8領域?

足の痺れは右足の指先(1-5指)にあり
かかとにはなし
左も同部位に痺れはあるが、右で強い

→一見すると手袋靴下型のようにも見える
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ディスカッション②:運動機能

T「この人は手が使いにくそうだね、どうやって問診で聞きだす?」

研修医「例えば、ボタンをつける作業とか、字を書くとか、箸を持つのが大変とかでしょうか?」

T「そうだね、手の巧緻運動障害を見る時は、そういった問診をするのがいいね
  
  コツは生活動作で聞くこと

  それによって、今の症状がどれくらい生活に影響を与えているかが分かる

  例えば、年末にやる手を使う作業というと・・・?」


研修医「年賀状ですか?」


T「そう!年賀状をかけたかどうかはとても意味がある質問です
  
  なぜなら、症状が出ていた時期まで知ることができる

  字はだんだん書けなくなってきました、だけだと、

  いつから?ってことになるよね。


  患者さんとしては、いつからって言われてもなあ・・・ってなってしまう。

  だから、

 生活動作から一歩進んで、症状がでた時期を推定できる質問、
 つまり、季節や節目のイベントに絡んだ質問がよい問診になります。

  例えば、畑している人なら収穫の時はどうでしたか?とか、
  毎年、お餅をつく人なら、今年はお餅はつけましたか?とか。


学生「なるほど」



T「神経内科の問診はかなり、生活動作に密接にからんだ質問をします


  学生さんに知っておいてほしいのは、
  いろいろな科があるけど、科毎で重きを置いているLifeが違うという事です

   膠原病科や神経内科、整形外科は同じLifeを大事にしている。

   Lifeの3つの訳を聞いたことはありますか?」


学生「人生、生活、命ですか?」


T「その通りです!

  膠原病科(特にリウマチ)や神経内科、整形外科は生活を非常に重要視している科です。だから、生活にからんだ質問が多くなるのは当然です。

  救急やICUはを重要視しています、老年医学や緩和ケアは人生ですね

  当たり前ですが、どの科も他のLifeのことも考えていますが、
  あくまで、重きをどこに置いているかということです。
 
  自分はこの3つのLifeを守れる医者になりたいと常に思っています。」

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運動機能

12月は年賀状を書くことができなかった
今年に入り、手の複雑な動作が出来なくなってきていた
手は動くことは動くが、動きが鈍い

右利きだが、右手の開閉運動が遅い
筋委縮はなし
split handなし

腱反射をとってみると、
上腕二頭筋腱反射や腕橈骨筋反射で、指が屈曲する反射が出現する
上腕三頭筋や指屈曲の反射は亢進

左は清水反射が亢進

下肢 膝・アキレスともに亢進
バビンスキー反射やチャドック反射は陰性

下顎反射陰性、口輪筋反射陰性、眼輪筋反射陰性
クローヌス陰性
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ディスカッション③:腱反射の意味は?

T「興味深いね。inverted reflex(反射の逆転)や清水反射が陽性だね。

 まずはinverted reflexについてだけど、
 上腕二頭筋や腕橈骨筋反射がでず、指屈曲反射が出ている。

 これはC5/6レベルの脊髄病変を示唆している所見だ。

 この所見は、C5~6レベルの病変が腕橈骨筋反射(下位運動ニューロンの支配下にある)を消失させて、指屈曲反射(C8)を含めて、それ以下のレベルの反射(上位運動ニューロンの支配下にある)をすべて亢進させていることで起きます

 腕橈骨筋への叩打刺激が機械的に伝導されるためです。

 だからinverted reflexがあったら、病変は頸椎だ!
 さらに、頸椎の○○に病変があるに違いない!

 ということを示唆する非常に重要な所見です。

 これを見つけることができれば、自信をもって病変は頸にありますということができます」


研修医「あんまり見た事ありませんし、意識したこともありませんでした
  
    多分見ているでしょうけど、何か変な手の動きだなあで終わっているかもしれません」

T「そうですね、一見すると何か変な動きに見えます。
  なので実際の動きをみると、忘れませんので一度見てください。
  →Positive inverted supinator sign and Hoffmann reflexでyoutubeで検索を


T「もう一つ知っておくべき、反射があります。

 それが清水反射です。
 この反射が亢進していれば、病変はかなり上位ということが分かります。

 清水反射はC3椎体レベルを含むそれより頭側の上位運動ニューロン障害を反映する、
 現段階における最も高位髄節に中枢をもつ四肢筋伸張反射です。


 自分の経験で、この反射が陽性になったことがある人は、
 関節リウマチの環・軸椎亜脱臼の人と、
 歯突起周囲のCDSの人で石灰化が腫瘤を形成していた人です。


 この反射が今回陽性だったということは、
 横隔膜までやられうるため、非常に危ないという事です

 病変が進行すると、一気に呼吸が止まる可能性をはらんでいます」




学生「右と左で症状や所見に差があってもよいのでしょうか」

T「それはよくあることですね、圧迫の具合などでやられ方は必ずしも左右対称ではありません」
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これまでの診察を念頭に頚椎症(頸髄症)が強く疑われ、MRIを撮影した

MRI

C3-6領域まで脊柱管内は高度狭窄していた
C3-5に脊髄内に信号変化を認め、頸椎症性脊髄症の診断で整形外科コンサルトとなった
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ディスカッション④:頚椎症について

T「有名な5Dを知っていますか?」

学生「先ほど、5Dを教えてもらいました」

T「そうですね、以前は5Dでした
  あと二つ追加して頸椎症の7Dで覚えておいてください
 
  頸椎の数は7つですよね、だから7つと覚えましょう。

  今回の症例は頚椎症を学ぶ要素の全てが詰まっています。
  非常に勉強になる症例でした。」



 本症例は頸椎症性のmyelopathyの症候がそろっていた

Discrete movement(手の巧緻運動障害)
Delayed opening(手の開閉運動の遅れ)
Discrepancy(ある反射誘発手技でその反射が出ずに、別のレベルの反射が出現する)
Distant effect(推定される髄節障害より、実際の感覚障害レベルが下方に出現する:足の痺れ)
Disturbance of gait(歩行障害)

が今回みられた症状であった

※Discogenic painは椎間板の変性で起こる痛み
 神経根症でも神経根痛(Radicular pain)はよく起こるが、
 神経根が圧迫されていなくても椎間板の変性によって起こる関連痛(Referred pain)が、
 Discogenic painと呼ばれる

 神経根痛は後根の支配領域だけでなく、頸部や肩甲骨周囲、上肢、前胸部でみられる
 
 痛みの分布から神経根痛か、関連痛かを見極めるのは難しいが、
 痛みの訴えが痺れに先行し、痛みが強い時は神経根症>脊髄症の可能性が高い


極論をいうと、救急外来に肩甲骨の痛みで来る人は頸椎症性の神経根症の可能性が高く、
上肢の痺れや動きの悪さを主訴に来る内科初診の人は頸椎症性の脊髄症の可能性が高い
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この症例は一歩間違えれば、完全な頚髄損傷で四肢麻痺になっていたかもしれない危ない症例です。
一度、転んだだけで、手足が完全にマヒして寝たきりの人生や下手したら亡くなる可能性もありました


頚椎症の頻度はとても多いですが、見逃しが多く軽視されがちな疾患です

ですが、

頚椎症性脊髄症は、3つのLifeすべてを失う可能性を秘めた重要な疾患です


7Dや痺れの診察に強くなって、3つのLifeを守りましょう


まとめ
・痺れは天気図をかけるように問診や診察を行う
→痺れを可視化できるようなイメージで


・頚椎症による神経根症や脊髄症を疑ったら、7Dでスクリーニングを
Discrepancy(inverted reflex)を探そう


・清水反射があれば、C3より上位の脊髄病変が疑われる
→危険、危険、危険!


・3つのLifeを守れる医師に

2020年1月10日金曜日

ボス回診 ~自分が診断を間違える時~

専攻医「よろしくお願いします。
    コンサルテーションポイントとしては
    腎盂腎炎を疑っていますが、尿のグラム染色で菌がいなかったので、
    その場合にどう考えるかです」

ボス「了解。お願いします」
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症例 80歳男性 主訴:食思不振

Profile:前立腺がんで泌尿器科通院中、高血圧・DMで近医通院中
   ADL 歩行はよたよたではあるが、可能  
   食事は自力で摂取できていた

現病歴:入院二日前に下腹部痛と食思不振が出現
    入院前日に吐き気と嘔吐あり、下腹部痛もあり
    救急受診し尿閉がみられたので、導尿で対応
    導尿後は症状軽快したため帰宅
    しかし、入院当日、食欲不振と倦怠感あり、内科外来受診

既往:前立腺がん、糖尿病
内服:ハルナール、カソデックス、ベルソムラ、カナグル、カンデサルタン
→自己管理、食事がとれない時は糖尿病の薬は飲んでいない

バイタル問題なし、発熱なし、頻呼吸なし
見た目 顔が赤ら顔、ややぼんやりしている
家族からみても、いつもより受け答えが遅い

口腔内 舌乾燥している 総入れ歯
呼吸音 清、腹部 圧痛なし
CVA叩打痛なし
女性化乳房あり
関節炎なし

血液検査 WBC上昇あり、CRP軽度上昇
     血糖450、HbA1c 15、Cr 2.2

CT 尿閉あり、左水腎症あり
  他に熱源になりそうな部位なし

尿検査 ケトンなし、膿尿あり、細菌尿±、グラム染色 菌いない

~経過~
上司より電話
「前立腺がんにともなう腎後性腎不全+腎盂腎炎(±前立腺炎)+著明な高血糖」
で入院お願いします

すでに血培、尿培採取され、尿カテが挿入され、抗生剤投与された状態で引き継ぎ
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専攻医「という症例です。
    腎盂腎炎を疑っていますが、尿グラム染色で菌がいなかったので、
    診断がどうなのかなと思っています。
    
    ただ他に明らかなfocusもないので、まずは暫定的に腎盂腎炎疑いで、
    抗生剤を継続する予定です」

ボス「了解。
   ちなみに血液ガスは?」


専攻医「・・・ですよね、プレゼンしていてガスの所見ないなあと思っていました。
    引き継いだ時点でなかったので、抜けていました。
    すぐにガスとります。」


ボス「そうだね、この症例はDKAかもしれないから、ガスは必要だね。
   Ⅰ型DMではないけど、Ⅱ型DMでもDKAになる時がある。
   
   SGLT2阻害薬飲んでいるよね。
   
   この症例は血糖あがっているけど、
   SGLT2阻害薬内服中の時は、血糖正常のDKAがあるから注意が必要だね

   尿のケトンは出ていたのかな?」


専攻医「尿からはケトンは出ていませんでした。
    でも、DKAでは最初は尿中から検出されないので、否定にはなりませんね」


ボス「そうだね。
  
   この症例は何らかの感染症を契機に糖尿病のコントロールが悪化しているね。

   糖尿病のコントロールが悪いと、細菌感染症を起こしやすいのは当たり前なんだけど、 
   よくクイズみたいな感じで出てくる糖尿病特有の感染症があるよね

   知ってる?」


専攻医「えっと、DMfoot、気腫性○○、悪性外耳道炎、ムコール、壊死性筋膜炎とかですか?」




韓国から実習に来ている学生「クレブシエラもでしょうか?KLAを起こすタイプの」


ボス「その通りだね、よく知ってるね。さすが韓国!

   KLAの症例の多くは韓国や台湾からのレポートが多いよね。

   もちろん、日本にもあって、
   東アジアに多い強菌株で、粘調性が高いことが特徴だね。」


学生「韓国ではしょっちゅう見ます、common diseaseです。」


専攻医「そんなにみるんだ(笑)
    というか、本当によく知ってるね。」


ボス「もちろん、市中の感染で敗血症を来すような
   5+1(皮膚軟部組織感染、髄膜炎、肺炎、胆管炎、尿路感染症+IE)には注意が必要だけど、
   
  お作法的に糖尿病特有の感染症にも注意しなければならいね。


  じゃあ、見に行ってみよう」
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ボスの診察(数秒)


ボス「・・・確かに、顔赤いね。
   

   ・・・・・・・・
   

   えっと・・・・・丹毒じゃない?」


専攻医「えっ!?
    でも、両側の顔面が赤いですし、こういう顔かなって思っていました。」


ボス「うん、まあ確かに正面からみると、両側の頬が赤いように見えるね
   
   でも発赤は左右でつながっているよね、熱感もあるし、
   皮膚が張っている感じもある。
   
   痛みはなさそうだけど。」


自分「確かに・・・

   女性化乳房もあったので、肝硬変とかホルモン系の異常かなと
   漠然と流していました。

   言われてみれば、確かに真っ赤ですね。

   でも本当に丹毒ですかね?

   まだわからないと思います。」

   
ボス「いやいや、ほらここみて。

   顔は確かに両側だけど、耳介は右耳だけ真っ赤だよ。 
   厚ぼったいし、餃子みたいに腫れているでしょ。

   Milian's ear signだね。


   左の耳は全く赤くないから、これは丹毒だね。

   腎盂腎炎はなくて、丹毒単独じゃない?(笑)」


自分「(おやじギャグはつまらないけど)・・・・確かにそうですね」


専攻医「さっき、学生さんに顔赤すぎませんか?って言われたんですけど、
    まあ、そういう人もいるよね、って流してしまいました。

(→こういう状態はconfirmationという認知バイアスです
  仮説に適合する事実のみをさがして、不適合な事実を無視することです)

最初に考えた仮説に固執するanchoringバイアスも働いています)
 
 

自分「引き継いだ時点で腎盂腎炎といわれ、
  (overconfidenceバイアス:他者の仮説をそのまま受け入れる)

   まずカルテを読んで、データをみて、画像をみて、
   確かに尿閉に伴う腎盂腎炎で矛盾しないな。

   と自分の中でストーリーが出来てしまいました。


 患者さんに会う前から診断名を決めてしまっていたんです。

 それが一番の失敗です。


 自分が診断を間違える時は、いつも、
 患者さんに会っていないのに
 診断をつけてしまう時です。


  ・・・反省です。」



専攻医「僕なんてこの前、皮膚軟部組織のレクチャーしたばっかりですよ。

    Milian's ear signどや顔でしゃべってますからね(笑)

    お恥ずかしい。」


ボス「学生さんからはどうやって勉強すればいいですか?ってよく聞かれるんだ。
 
   感染症のレクチャーのために勉強したり、
   病気のことを教科書を読んで、知識をつけることはもちろん大事だけど、
   
   それをしたからといって、今回みたいに病気を診断できるわけではない。


   もっと大事なことは、

   ベッドサイドにいって患者さんに会って診察をすること、 
  そしてベッドサイドで得た情報をもとに、
  ディスカッションをすることなんだ。


   臨床の答えはベッドサイドにいけばあるし、ベッドサイドにしかない。

   教科書やカルテや画像の前にはないんだ。

   
   それを意識して、勉強してね。」


学生「ありがとうございました。勉強になりました。」

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まとめ
・糖尿病特有の感染症を知識として知っておく
→気腫性○○、悪性外耳道炎、鼻脳型ムコール症、壊死性筋膜炎


・自分が陥りやすいバイアスを知っておく
→アンカリングが多い


・自分が診断を間違える時を知っておく
→患者さんに会う前に診断名をつける時


参考文献:日内会誌 106:2559~2561,2017
     Hospitalist VOL.6No.2 2018.6

2020年1月9日木曜日

野兎病 ~いつか出会う忘れられた疾患~

野兎病について、どういうイメージがありますか?

名前は聞いたことがあるけど、臨床で出会わないし、
鑑別にも上がらないから、考えた事もあまりないのではないでしょうか?


自分もそうでした

この症例に出会うまでは・・・
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19歳 女性 不明熱で入院中(※症例は修正・加筆してあります)

もともと生来健康で元気な大学二年生
周囲ではインフルエンザが流行中

入院の二日前から頭痛、発熱、悪寒があった
近医でインフルエンザのチェックをされたが、陰性
アセトアミノフェンを処方され帰宅

入院当日も発熱あり、近医を再診
インフルエンザのチェックが再度行われたが、陰性
原因精査目的に紹介となった

ROSは頭痛あり、倦怠感あり、食欲不振あり
それ以外に全く症状なし

内服なし、既往なし

暴露としては、飼い犬にかまれまくっている!
飼いネコとも触れ合っているが、かまれたり、ひっかかれてはいない
性行為はなし、海外渡航なし

バイタルは39度の高熱、脈は90-100前後、血圧や呼吸状態は問題なし

意識は清明、苦痛様ではない、見た目は元気そう
項部硬直なし
頭頚部 眼球結膜充血なし、咽頭発赤なし、扁桃腫大なし、齲歯なし、口内炎なし
副鼻腔の叩打痛なし
両側頸部(胸鎖乳突筋の裏)と両側腋窩のリンパ節が0.5-1.0cm大で数個腫れている
圧痛はみられない
鎖骨下、滑車上、鼠径は腫大なし
頸動脈雑音なし、頸部の痛みなし
心雑音なし、呼吸音 清
皮膚 両手や右上腕に噛み傷が多数あるが、周囲の発赤や圧痛、熱感はみられない
塞栓徴候なし
関節腫脹や圧痛なし
脊柱叩打痛なし、CVA叩打痛なし

血液検査 WBC上昇なし、異型リンパなし、NET優位
     Plt減少なし、肝酵素上昇なし、腎機能正常、CRP 10
尿検査 膿尿あり、細菌尿あり、G染色では菌いない
CXR  肺炎像なし

経過①
食事とれていないので、入院加療となった
膿尿の所見から腎盂腎炎として、スルバシリン開始
犬にかまれていることから、そちら(カプノサイトファーガ、パスツレラ、H.シネジー)のカバーも行う目的でスルバシリンを選択

しかし・・・

抗生剤投与し、1週間たっても解熱得られず39度前後を推移
幸い頭痛は無治療で軽快し食事もとれるようになってきた
症状は何もでてこない
所見としては、頸部のリンパ節が若干触れやすくなってきた

データはほとんど変化なし
造影CT施行するも、膿瘍や大動脈壁肥厚はみられず
肝腫大はなし、脾腫がみられた
腹部のリンパ節がわずかに腫大あるが、有意かは微妙なところ
USでは頸部のリンパ節腫大は反応性との評価
血培は陰性、尿培も陰性

血培が陰性であることを確認し、抗生剤は中止した
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ディスカッション①:さて次なる手は?

ボス「サイトメガロでしょ?待てばいいんじゃない?」

自分「ですよね、待ちます」
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経過②
抗生剤中止後、2日目に四肢末端からmaculopapular rashが出現
徐々に広がり、多型滲出性紅斑になった
粘膜疹なし

データとしては若干の肝酵素上昇出現、Eo上昇はなし
EBVは既感染パターン、CMVは未感染パターン
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ディスカッション②:皮疹が出てきました、どうしましょう?

自分「薬疹ですかね。
   抗生剤はとめていますし、他に何も薬使っていないので、待ちますね。」

ボス「そうだね、待つしかないね」


自分「ただ、発熱に関連している皮疹と考えると、
   マイコプラズマ、菊池病、リンパ腫とかですかね?」

ボス「そうだね、そういう考え方もしないといけないね。」


自分「このまま熱が出続けたら、やっぱりいつかはリンパ節とらないといけなくなりますよね。
   狙うとしたら、菊池病かと思っています。だいぶ非典型的ですけど。
   もちろん、第一候補はCMVなので待とうとは思っています。

   全身状態も良好なので。」


ボス「そうだね、CMVが一番可能性としては高いと思うよ。
   でもここで、忘れてはいけない疾患があるんだ。」


自分「なんですか?」


ボス「野兎病だよ」


自分「野兎病?????

   野兎病って、まだ日本でみることあるんですか?
   ウサギと接触していないですけど?」


ボス「猫からでも犬からでも、野兎病はありうるよ。もちろん僕もみたことないけど。
   
   野兎病は不明熱の原因にもなるし、リンパ節も張れる。
   野兎疹といって、途中で皮疹がでることもあるんだ。

   治療がストレプトマイシンやゲンタマイシンだから、
   疑ったら即治療というのは、難しい。
   
   だからペア血清をとるために、最初に血清保存しておくことが大事だよ。」


自分「そうなんですね、知りませんでした。
   ペア血清のために血清保存はしてあります。」

自分の心の中(・・・野兎病なんて、そんなrare diseaseのわけないだろう。
       でもよく知らないなあ・・・調べてみよう・・・)
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自分の心の中(確かに・・・勉強すればするほど、チフス型の野兎病に見えてきた・・・
       あれは野兎疹だったのかもしれない・・・
       
       でも疫学は大事にしたい
       小児の不明熱では、圧倒的にネコひっかき病による不明熱の症例の方が多い)
       →「ネコひっかき病」参照
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経過③
ネコひっかき病による不明熱の疑いで、アジスロマイシン処方
その後、解熱得られCRPも改善

抗体の結果まち
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ディスカッション③

自分「野兎病ではなく、ネコひっかき病だと思います。」

ボス「???ピンとこないなあ。CMVでしょ」


自分「でも、小児の不明熱ではネコひっかき病が多いんですよ!
   少なくとも野兎病よりは!」


ボス「(カチン)
   頻度の問題じゃないんだよ。野兎病は必ずいつか出会うし、
   僕たちが見逃しているだけなんだ。
   
   この領域の感染症は治療が少しずつ違うから、
  戦略をもって検査や治療をしないといけないんだ!

   適当に抗生剤出したら治りました、じゃダメなんだよ。」


自分「(カチン)
   ネコひっかき病は放っておくと、視神経網膜炎になるんです!
   IEにだってなりますし、もし合併症が起きたら治療期間がとてつもなく長くなります。
   動物との濃厚な接触歴があり、不明熱を呈しているのであれば、
   ネコひっかき病をまずは疑って治療すべきです。
   
   もちろん、抗体は提出しています!」


ボス「・・・まあCMVでしょ」


自分「多分、そうだと思いますが・・・」

→結局、CMVは未感染パターン、バルトネラも抗体上昇みられず
 ジスロマックでCRPは陰性化した
 本当に野兎病だったのか・・・
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まとめ
・野兎病は昔の疾患ではない
→必ずいつか出会う疾患:ペットブーム、海外渡航増加、検査の発達


・野兎病のゲシュタルトは、ネコひっかき病と似ている
→動物暴露(±ノミ、ダニ)+リンパ節腫脹+インフルエンザ症状や不明熱


・動物暴露がある時の不明熱は、戦略をもって検査と治療に踏み切る
→適当に抗生剤出してはいけない、感染症専門医と相談を
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参考文献
N Engl J Med 2010;363:1560-8. ←飼い猫に噛まれて起きた野兎病の症例
               (面白いし勉強になる、本症例に近い
                何の検査を出すべきか、参考になる)
The Pediatric Infectious Disease Journal  Volume 29,Number 2,February 2010←小児のアウトブレイクまとめた症例、野兎疹が52%に出現
Lancet Infect Dis 2016;16:113-24 ←ヨーロッパの野兎病の状況が分かる
International Journal of Infectious Disease 71(2018)56-58 ←日本のチフス型の症例
化学療法の領域 Vol.29,No.2,2013
化学療法の領域 Vol.33,No.3,2017
小児科臨床 Vol.70 増刊号2017
臨皮,35(12);1155-1160,1981←弱ったうさぎ捕まえてはいけない
日本臨床微生物学雑誌 Vol.26 No.3 2016. ←大原先生の妻りきの熱意がすごい




2020年1月5日日曜日

火災現場からの搬送

最近、ニュースで火災のニュースが目立ちますね
いつ自分の病院に運ばれてくるか分かりません

火災現場から搬送された人は何に気をつければよいのでしょうか?
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56歳 男性  主訴:喉が痛い

救急隊より
独居の男性宅の風呂場から火災あり
火を消そうと水をかけたときに、暑い水蒸気が出て、
水蒸気や煙を吸ってしまった
今は消防隊が消火活動中

住人の男性は外へ逃げた後、喉の痛みあり、救急車要請

気道熱傷疑いで救急搬送となった
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ディスカッション①:到着までの数分間

上級医「火災現場からの患者さんだね、何に気をつける?」

専攻医「気道熱傷ですか?」

上級医「そうだね、今回は気道熱傷疑いとすでに救急隊からいってきてるしね。
    あとはどうかな?」

研修医「一酸化炭素中毒ですね!」

上級医「そうだね。一酸化炭素中毒の可能性は大いにあるね。
    だから酸素化がよくても、
    ガスの結果が出るまでは、しっかり酸素を吸わせておくことが大事だね。
    
    一酸化炭素中毒ときたら、もう一つ気をつけるものは?」


専攻医「えっと、わかりません」


上級医「一酸化炭素中毒ときたら、必ずセットで考えないといけないものがあるんだ。
    
    それはシアン中毒だよ。
    一酸化炭素中毒の割に代謝性アシドーシスが重度であったり、
    乳酸値がやたらと高かったら、強く疑う根拠になるね

    シアンの血中濃度を普通の病院ではすぐには測れないから、
    臨床状況と血ガスの所見で判断するしかないんだ。

    だから今回、ガスは絶対にとる必要があります。


    シアン中毒は一酸化炭素中毒より怖いよ。
    カーペットやソファー、断熱材などがある室内の火災で、
    シアン化水素が発生して、それを吸入するとシアン中毒になる。

    コナン君によく出てくるアーモンド臭で有名な青酸カリと同じだからね。

    火災現場からの搬送でよくあるピットフォールです。」
                         JJAAM. 2014; 25: 797-803

専攻医「なるほど、わかりました。」

上級医「じゃあ、ガスをとって一酸化炭素中毒とシアン中毒を見極めるとして、

    気道熱傷はどうやって評価する?

    気道熱傷が疑われれば、挿管する?

    うちの病院で見ててもいいのかな?」

専攻医「う、どうやって評価するんでしょうか。
    鼻毛が焦げているかどうかとか、呼吸苦があるかとかでしょうか」


上級医「そうだね、その所見もチェックはするけど、それだけで見極められるかな?

    ガイドラインには気管支ファイバーで確認するのが、
    多くの専門家にとってゴールドスタンダードであると書いてあるね。

    救急の場で即、気管支鏡ができる病院はかなり限られるから、
    疑った時点で熱傷専門施設や三次救急に行ってもらってもいいんだけどね。
   
    ま、まずは喉頭までファイバーでのぞいてみよう。」
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来院時、バイタルは安定しており、意識も清明
発語は明瞭で、嗄声もなし
呼吸苦はなく、落ち着いて呼吸できている状態
Spo2 100% (15Lリザーバーマスク)

症状は少し喉がいがらっぽい感じがするのみ

口腔内にススはなし
鼻毛は少し焦げている
Crackleやwheezes、stridorなし

右の下腿に手掌大の大きさの二度熱傷あり 

喉頭ファイバー所見は鼻粘膜はやや腫脹し、ススが付着していた
咽頭、喉頭にもわずかにススが付着
喉頭に浮腫状変化なし

CXR  肺野の透過性低下なし 浸潤影なし

血ガス  COHb. 5%    乳酸上昇なし
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ディスカッション②:さてどうする?

専攻医、研修医は外傷のショックの対応へ行ってしまった。。。

1人取り残された上級医


上級医の心の中
    
    「上気道は今のところ、しっかり開通している。
     嗄声やstridor、呼吸苦もない。

     ただ喉頭にススがあったし、若干ひれつ部が浮腫状だった気もする。

     あんまり積極的に気道熱傷ですぐに挿管!って感じではないが、
     気管支鏡で確認はしてないから、実際どうなのかはわからない。

     気道熱傷が疑わしければ、挿管した方がいいのは自明の理だ。

     この症例に挿管が必要かは、もう少し評価が必要だろう。

     やっぱり、気管支鏡してもらおう!」


ということで呼吸器内科の先生を呼び出して、気管支鏡検査をしてもらった。

気管支鏡所見としては、気管支にススの付着は所々に見られたが、
気管支壁の肥厚や発赤、分泌液、閉塞はみられなかった

結局、気管支鏡検査の結果からは積極的に気道熱傷は疑わないという結論になって、
そのまま厳重に経過観察目的に入院となった。
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火災現場からの救急搬送


火災現場からの救急搬送されて来る患者さんをマネージメントするのは、とても難しいですが、基本に立ち返り、まずはJATECの流れに沿って考えていきましょう

とはいうものの、

普段のJATECとはだいぶ考えることが違うので、
火事場から搬送された患者さんver.のABCDEをみていきましょう





気道熱傷が主にかかわるのは、AとBです

まず気道"熱傷"という名前がよくないです

熱傷というと、ただ気道がやけどしたのかなあと思いきや、
熱による損傷だけではなく、化学物質や有毒なガスで下気道も障害されます


そして、CO中毒や低酸素血症といったものもすべて含めて、気道熱傷と言います

なので海外では、burnではなくinjuryです


気道熱傷で一番悩むところが、

①まず気道熱傷があるかどうか

②そして、挿管が必要かどうか

です

決まった基準がありそうで、実はないんです

明らかに気道狭窄している所見があれば、簡単ですが
現実は微妙な症例が多いです


極論、気道熱傷が強く疑われた場合で、怪しければ挿管してしまえばよいです


しかし、挿管も侵襲的であり、できれば必要ない挿管は避けたいものですよね
ということで、
現場ではこの葛藤が毎回繰り広げられます



でも考えることは単純で、

①まず想起し、気道熱傷かもしれないと疑います
疑う所見としては、鼻毛が焦げていることや口腔内の煤
嗄声や顔面・頸部の熱傷です


②疑ったら、挿管が必要かどうかの評価を行います
すぐに局所をみることも大事ですが、
実は全身を見ることも大事です

つまり、熱傷面積がどれくらいか、重症かどうか、

というのも、実は気道熱傷で挿管が必要かに関わる因子なのです


③挿管すべきと評価が下れば、挿管します

顔面や頸部、体幹にかけて広範囲な熱傷の場合、換気困難になる症例も多いので、
なるべく自発呼吸を温存した状態で挿管が望ましいとされています

気管支鏡で評価しつつ、気道熱傷が強く疑われればそのまま挿管の流れになります


喉頭ファイバーであまり喉頭をみなれていないと、
浮腫んでいるのかどうかわかりにくいので、
見慣れている人と一緒に判断しましょう



気道熱傷を3つの酸素化障害という別の切り口でまとめてみました

普通の呼吸は外呼吸と呼ばれます
気道熱傷で上気道や下気道がやられれば、外呼吸の障害がおきます


AとBに問題ない場合、酸素は肺から血液(赤血球)へ受け渡されて、全身にわたります

赤血球が酸素を上手く運ばれないと、運び手の問題で、
全身の細胞は酸素欠乏に陥ります

その病態が一酸化炭素中毒です


細胞まで酸素はいきわたったけど、細胞の呼吸(内呼吸)が障害されてしまうのが、
シアン中毒です


シアン中毒は非常に危険であり、治療法も複雑なので一度確認しておきましょう


このように火災現場から逃げてきた人は、AやBの評価だけでなく、
3つの酸素化障害が起きていないかを確認しましょう



Cの評価では血圧も大事ですが、全身の熱傷範囲の評価が必要です

熱傷範囲の推定を行わないと、専門施設に送ったほうがよいかの判断や補液量が決められません

熱傷の重症度は三次元的に考えましょう
つまり、深さ×広さ×時間です



最後にABCDEが落ち着いたら、どうして火災が起きたかに頭を使いましょう


病歴を詳しくきいて、物語に腑に落ちないことがあれば、あとは想像力で原因を探ります


まとめ
・火災現場から搬送されてきた患者さんのABCDEは特殊
→普段のJATEC対応+気道熱傷の評価や熱傷の体表面積を計算する


・気道熱傷はInhalation injuryといい、ただの気道のやけどではない
→3つの酸素化障害(外呼吸・運び手・内呼吸)が起こりうる


・気道熱傷疑いの患者さんがきたら、①想起、②評価、③挿管の順で考える
→局所×全身の評価を行い、迷ったら他のDrとも相談し決める

参考文献:uptodate
     Intensivist VOL.11 No.4 2019-10 ←よくまとまっている
     N Engl J Med 2016;375:464-9.  
     日気食会報,66(3),2015 pp.203-207
        JOHNS Vol.33 No.3 2017
      J Burn Care Res 2012;33:65-73 ←気管支鏡検査のgradeで予後予測ができると報告



2020年1月4日土曜日

まとめ法〜Good Note4 ver.〜

医学は急速な勢いで進歩しています
自分の記憶だけでは、とても太刀打ちできない情報量です


どの科でもそうですが、いかにこの膨大な情報をまとめ、
素早く取り出せるかが大事になってきています


情報をまとめ、引き出すことができる能力は、
臨床力に直結します


勉強した内容を今後につなげていくためには、
一つの媒体にまとめていくのがいいと思います


ですが、ここで注意点がいくつかあります


①手描きのノートへまとめるのは、とてももったいないです

誰もが経験あるのではないでしょうか?
せっかくメモしてもどこにいったか分からなくなってしまったことや
結局、一度も見返さなかったこと

自分も何冊もノートを持っていましたが、どこかへいってしまいました

こういったことを防ぐために、
Ever noteでも、One noteでも、good noteでも
何でもいいとは思いますが、電子媒体にまとめましょう

すでにまとめているノートは写真で撮って保存しておきましょう


自分が使いやすいものでいいと思いますが、個人的にはGood noteがアクセスが早く、
自由度が高く、使いやすいです

4と5がありますが、個人的には4が好みです

5は検索機能が凄いのが特徴です



②教科書や雑誌を読みっぱなしにすることも、とてももったいないです

読んだら必ず、写真に撮って保存しておきましょう
でないと、どこかで読んだけど忘れてしまったということになりかねません

情報を一つにまとめることが重要です




③レクチャーを聞きっぱなしにすることや資料を貰いっぱなしにすることも、とてももったいないです

これもですが、電子媒体に保存しておきましょう
基本は紙でもらった資料はその場で写真に撮って、紙はすぐに捨ててしまいます



一つの例として、
自分なりのまとめを公開します

自分はipad miniを用いて、情報を集めてコントロールしています
ほとんどがGood Noteに入っています


まとめ法〜Good Note4 ver.〜


①調べたいものを検索する

臨床現場での疑問は大きく二つあります
Background question(背景疑問)とforeground question(前景疑問)です

学生や初期研修の間は、背景疑問だらけです
背景疑問とは、知らない分野で最初に突き当たる疑問です

例えば、AKB48について全く知らない人が、
AKB48って何?
総選挙って何?

みたいな感じです


前景疑問は、背景疑問が解決(その分野の全体像が掴めてきた)した後に、
その隙間が気になるようになって生まれてくる疑問です


AKB48の例ですと、
総選挙で1位になるために必要な要素は何だろう?

という感じで、

背景疑問は調べて情報を得れば解決できるものですが、
前景疑問は調べた結果を元に決断する疑問です


この前景疑問を解決する方法が、いわゆるPICOで構造化されたものです

PICOで構造化された疑問の検索方法や解説は沢山の本が出ていますので、
ここでは述べません


ここでは背景疑問についてのまとめ方を解説します


例えば、気道熱傷疑いの患者さんに出会ったとします  

まずはgoogle scholarや普通にyahoo!やgoogleで「気道熱傷」を検索します

最近はいいブログが多いので、ブログから攻めるのも効率がいいです

調べた文献がPDFで開けるのであれば、Good noteに保存します
PDFで開けないのであれば、スクリーンショットで写真として保存します





②Good note内でのまとめ方

Good noteの中のカテゴリの分け方ですが、
なかなか自分の思い通りの順番に並べるのが大変なので、コツは数字をつけることです
これで思い通りに並べる事ができます


最初はいい感じの文献をひたすら集める事から開始します

日本語での文献は日本語だけで、英語での文献は英語でまとめるのがいいと思います


気道熱傷についてほとんど知識がないため、まずは全体像をつかむ努力をします
いくつかの日本語のレビューのようなものを読めば、全体像がつかめます

全体像がつかめたら、英語のものも読めたら読みます

気道熱傷は、Nejmの2016年にレビューがありました



③文献を読み終わったら、自分なりにまとめる

これをするかしないかで、記憶の定着率が全然違います

自分で手書きでまとめるのは、手間ですし時間がかかりますが、
この方がはるかに効率がよいことにようやく気がつきました


理想はこの後、誰かにプレゼンします

読む⇨まとめる⇨プレゼンする

この一連の流れをこなすと、一生ものになります

知識が知恵になる感じです


勉強する意味は、次につなげるためですので、
知識のままでは大して使えません

いつでも取り出せる知恵として残しておく事が大切です




④まとめ方のコツ

どこかに長々と書いてあることを手書きで書く必要は全くありません

そんなのは切り貼りでいいです


どこにも書いていない自分なりの頭の中のまとめを書きます
自分はロジックツリーやマインドマップ的にまとめるのが好きです

フローチャートとは違い、次に何をすればいいかまでは示していませんが、
もれなく、全体像を見渡せる事がメリットです

あとは、
自分が経験してその時、考えていた思考過程とか、
その時の失敗を書くといいです


文字ばかりだと読む気をなくすので、絵は多めにします

絵を描くことで、解剖が頭に入るメリットがあります
患者さんへの説明も上手になります


慣れないうちは、どこかの図をトレースして、
描いた所をコピーするだけで、上手に描けます





こんな感じでひたすら調べたことを自分なりに解釈して、
まとめていくと自分専用の教科書が出来上がります

まずは綺麗でなくていいので、とりあえずはじめてみましょう
だんだん慣れてきて、自分なりのスタイルが見つかります


情報の波にのまれず、情報をまとめ使いこなすことで、臨床という荒波を楽しみましょう

2019年12月31日火曜日

ネコひっかき病

ネコひっかき病の知識をupdateする時代にきたようです


誰もが、そのキャッチ―な病名に耳を疑い、
一度は鼻で笑い飛ばしたことがあるのではないでしょうか

「ネコひっかき病って・・・(笑)」


そして、興味本位で少し、ネコひっかき病を調べてみると、

①ネコにひっかかれる
②同部位に皮疹ができる
③その後、所属リンパ節が腫れる
④無治療でも次第に軽快する
⑤治療するなら、アジスロマイシン、クラリスロマイシンなど


というのが、古典的な症状でとても覚えやすく、
臨床では、片側のリンパ節腫脹の鑑別で出てきます


ですが、それで終わってはいけないのが、ネコひっかき病です


伝えたいのは、ネコひっかき病と呼ぶ時代は終わったという事と非定型的な症状が意外に多いという事です


ネコひっかき病の原因微生物は、
Bartonellaであり、多くはB.henselaeです

B.henselaeはネコノミがベクターとなって、ネコからネコへ感染伝播します

そして、ネコからネコノミを介して犬にも伝播するため、
ネコひっかき病は、ネコからに限った感染症ではありません

ネコひっかき病、つまり、
B.henselae感染症は犬からも発生します

そして、ひっかかれて感染することが多いですが、
かまれたり、触っただけでも感染することがあります


名前のインパクトが強過ぎて、
ネコにひっかかれていなければ、除外している可能性もあるため、
そろそろネコひっかき病という病名は変えたほうがいいと思います

普通にB.henselae感染症と呼んだ方がよい気がします
(今回は一応、ネコひっかき病で押し通します)


B.henselaeは小型のグラム陰性の単桿菌です
発育が極めて遅く、培養はとても難しく、
臨床では、抗体価やPCRで診断することが多いです



ネコひっかき病の古典的な症状と非定型症状

古典的な症状に、非定型症状が加わることもあり、
播種性とか、全身性とか、合併症といわれます

ただし、古典的な症状が有れば診断は容易ですが、
古典的な症状、つまりリンパ節が腫れることなく、
非定型症状だけでくることもあり、その場合は診断が難しくなります




非定型的ネコひっかき病

Atypical CSDで調べると、山のように報告例が出てきます

中でも注意が必要なのが、CSD-FUOです

なんと、ネコひっかき病は不明熱の原因になります


特に小児領域では、不明熱の感染症の中では、1番頻度が多いともいわれます
(国や時期によって異なります)

小児は古典的な症状を示すことなく、非定型症状で発症することも多く、
有熱期間が長いといわれています


そのため、不明熱の人でネコに接触する頻度が多い場合は、
積極的にネコひっかき病を疑いましょう!

診断は抗体で行われることが多いですので、最初はわからないことが多いです

そして、不明熱なので諸々検査が進み、最初の診断は悪性リンパ腫になることが多いです
理由は体重減少や寝汗、リンパ節腫脹、肝脾腫が見られることが多いからです


CSD-FUOの1/3の症例で侵襲的な検査がされていますが、
これは致し方ないことかと思います

疑ったら、抗生剤治療を行ってもよいと思いますが、気をつけなければならない点があります


①熱はすぐに下がらないかもしれない

 抗生剤の投与にて、有熱期間が短くなるかはわかりません
 平均3ー4週間続くといわれています


②抗生剤を使わなくても自然軽快する

 じゃあ、放っておけばいいじゃないか、

 とはなりません
 視神経網膜炎という合併症があるので、
 CSD-FUOを強く疑った場合は治療した方がよいでしょう

 視神経網膜炎の予後は悪くはないのですが、治療期間が長かったり、
 ステロイドが入ったり、ややこしくなるので、発症しないに越したことはありません


 高齢者の不明熱でよくある巨細胞性動脈炎による失明と対比して、
 小児の不明熱のCSDによる視神経網膜炎という病態を覚えておきましょう


 抗生剤入れて何だかわからないけど、治ったね。とならないように、
 必ず抗体のチェックはしましょう
 コツとしては、はじめの時期に血清保存しておいて後に出せるようにしておきます


③抗生剤のレジメンや治療期間が定まっていない

 少数の症例報告レベルであり、どの治療が最適かはわかっていません
 なんせ、自然軽快するような病気であり、
 CSDの不明熱といっても、プレゼンテーションが山のようにあるため、
 最適な治療法は不明です

 一つの参考としては、
 uptodateの著者はしっかりレジメンや治療期間を推奨していますが、
 強いエビデンスはありません

 なかなか、見切り発車でこの治療はできないのが現状かと思います
 単一血清でかなり疑われる状況であれば考慮してもよいかもしれません



ネコひっかき病による不明熱患者66人のレビュー







まとめ
・ネコひっかき病はネコにひっかかれなくても起こる
→触っただけでも発症することもあり、犬からも発症することがある

・古典的な症状と非定型症状があることを知る
→特に小児の不明熱では代表的な疾患である

・CSD-FUOを疑ったら、眼科Drにみてもらう
→無症状のこともあり、所見が有れば診断に迫れる

参考文献:
Cat scratch disease presenting as fever of unknown origin is a unique clinical syndrome
2019. Nov.Infectious disease Society of America
小児科診療 2017年 9号(23)1055
J Jpn Soc Pediatr Radiol 2019;35(1):61-65
モダンメディア 第50巻 9号 2004年 猫ひっかき病
感染症誌 84:292〜295,2010
大塚薬報 2012年5月号(No.675)
AFP Volume 83,Number 2 January 15 ,2011






皮疹の見方

皮疹の見方 皮疹の見方と言っても状況によって考え方が異なる。 皮疹だけをみてどう考えるかだけではなく、 どんな文脈で皮疹が出てきたか、 が重要である。 我々が皮疹に出会う状況は皮疹と全身症状のバランスによって3つに分けられる。 ① 全身症状がメイン(発熱、関節炎、ショックなど)だ...

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