2021年4月26日月曜日

昼カンファレンス 〜お腹いっぱい〜

今回は実際の流れとは別に自分の思考過程を開示しようと思います


 35歳 男性 主訴:食思不振(※症例は一部加筆・修正を加えてあります)

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はい、ほぼ同年代の人です

この年の男性が食思不振になったら、まずは胃潰瘍かなと思います

あとはメンタルの問題を考えますね・・・

なので早々に仕事や家庭の状況は聞いてみたいです

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Profile:10年前にサルコイドーシスを指摘されPSL7mgを内服中

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はい、この時点で考えることがガラッと変わりました

このようにprofileというのは非常に重要です


生来健康な35歳男性とPSLを数年飲んでいる35歳男性では考えることは違います


Profileは他の病院のカンファではあまり出てこないワードではありますが、

聞き手からすると、現病歴の前にProfileを聞けると、現病歴の聞き方も変わってきます

現病歴を長々と言われた後に、実はサルコイドーシスで・・・って言われたら、

早く言えよ!ってなります

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現病歴:3ヶ月前から食欲がなくなってきた

    2ヶ月前から食事回数が1回/日になった

    1ヶ月前から一度、下痢があった   

    その後、軟便(2回/日程度)になった

    徐々に何も食べることができなくなってきた

    来院当日、家族に連れられて外来受診

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はい、簡単な病歴は以上です


ただ、食思不振だけでは、全ての疾患(心も体も)が鑑別になります


食思不振は low yieldな所見であり、これだけは鑑別が絞れず診断をつけるのは一苦労です

そのため、high yieldな所見がないかを探しに行きます

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ROS

腹痛なし、頭痛なし、体重減少あり(10kg痩せた)、下痢なし(軟便程度)

血便なし、黒色便なし、関節痛なし、浮腫なし

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はい、体重減少だけでした

ですが、食事がとれていないので、そりゃ体重も減りますよね


他の病歴を深追いする前にサルコイドーシスと薬について深追いします

話はそれからです

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既往歴:サルコイドーシス(肺病変を生検されて診断確定)

    糖尿病、高血圧、脂質異常症

内服:PSL7mg、バクタ、カルベジロール、オルメサルタン、ジャヌビア、

   ボグリボース、フォサマック、アモバン、フルニトラゼパム、メトグルコ

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はい、サルコイドーシスは本物のようです

サルコイドーシスは全身の臓器に問題を起こしますが、起こりやすい部位もあります

そして、致死的になる臓器もありますので注意が必要です


起こりやすい臓器としては、ぶどう膜炎や肺病変(BHL)です

他にも皮膚にサルコイド結節ができたり、結節性紅斑ができたりします


致死的なのは心サルコイドーシスです(略して心サルと循環器Drは言います)

心サルがあるかないかは、非常に難しいです


ブロックで見つかることもありますが、心筋に炎症が広がり、心機能が低下する人もいます

PETやGaシンチ、心筋生検で診断することが多いですが、

最近は造影の心臓MRIでも診断ができるようになってきました


本症例では心サルがあるかないかは気になりますね

心サルによる心不全症状やLOSであれば、食思不振はあってもいいと思います


他にも気になる薬たくさん飲んでいますね


PSLが入ると副作用対策で、薬が多くなってしまうのは仕方がないのですが、

この年ですでにポリファーマシーです


薬をたくさん飲んでいる人が調子が悪くなったら、

まずは薬のせいではないかと考えるのが、得策です



この人の場合、ステロイドを内服しているので、副腎不全を疑います

ちゃんと飲めていたかはしっかり確認したほうが良いでしょう

残薬の確認をしたいところです


糖尿病がありますが、βブロッカーが入っていますね

こうなると、低血糖症状がマスクされてしまうかもしれません

食事が全然とれていないのに、しっかり糖尿病の薬を飲んでいたら、

低血糖になっていてもおかしくないですね


ボグリボースは消化器症状が出やすいので、いつから始まったかは気になります

腹部の手術歴がないかは確認したいです



メトグルコはVB12欠乏を引き起こす可能性もあり、食思不振が続いているので、

VB12は測定しておきたいです


オルメサルタンは強力なARBですが、オルメサルタン関連スプルーという副作用があり、

オルメサルタン服用中の人が、消化器症状や神経学的な異常を出したら、

一度は疑ったほうが良いです


VB1欠乏も引き起こして、いつの間にかウェルニッケ脳症になってしまうこともあります



〜本文より引用〜

患者の年齢は 60 歳代~76 歳だった.

性別は男性3 例,女性 1 例で,

すべての症例で体重減少を認めた.

Ueharaらにより,Wernicke 脳症を呈するほど重症化した症例が報告されている.

体重減少量は 12kg~23kg,オルメサルタン内服期間は 1 年 6 カ月~10 年,発症から診断までの期間は 2 カ 月~ 9 カ月だった.

オルメサルタン内服開始から腸疾患発症までに、いずれも数年が経過していた. 

そのため下痢の原因としてオルメサルタンを想起し難く,

診断に至るまで長時間を要していた.

内視鏡所見・病理組織像としては,十二指腸絨毛の萎縮をすべての症例に認めた.

〜引用終了〜


はい、ということでオルメサルタンは注意が必要な薬剤と覚えておきましょう

なので、自分はお酒飲みの人にはオルメサルタンは出しません

いつの間にかVB1欠乏が心配だからです


他にもBP製剤内服していますね

これは有名な食道炎の副作用がありますが、有名なわりに経験したことないですね


あとはアモバンとフルニトラゼパムを内服しています


アモバン飲んだことある人はあまりいないと思いますが、

アモバンは非常に苦い薬です

噛んだら最後、苦味がかなり残ります

普通に飲んでも苦味がすることもあります(注意:自分が飲んでいるわけではありません)


フルニトラゼパムは最近、みなくなりましたね

この薬は長時間作用するBZ系で、催眠作用が非常に強力です

そのため、犯罪や過量服薬に使われることが多く、

溶かすと青色になるように着色されました

なのでこの薬を舌の上に乗せておくと、舌が青くなります



睡眠剤をたくさん飲んだ人で、口をみて舌が青かったら、

フルニトラゼパムを大量に飲んだことがわかります


この方はBZを数年飲んでいそうなので、BZ依存症になっていそうですね



ジャヌビアは関節痛や関節炎の副作用が有名になってきましたが、
最近は水疱性類天疱瘡が知られてきましたね
水疱性類天疱瘡は、もちろん粘膜もやられるので、粘膜がただれてしまっていたら、
食事もとれないでしょう




とまあ・・・


薬の副作用の説明だけで、今回は終わりになりそうですね・・・


鑑別考える前に、薬でお腹いっぱいです

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結局、症例の結末は、

バイタルでやや血圧が低めであり、他に特記すべき所見はありませんでした

採血すると腎機能障害を認め、VB1や葉酸、亜鉛が低下していました

ランダムコルチゾールは正常値でした

CTでは特記すべき所見はありませんでした


入院にて副腎不全を疑いステロイドを少し増やして点滴を行い、

薬の調整を行なったところ、食欲は戻り元気になったという症例です

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結局、何だったのか???


こうなるきっかけは確かにあったのだと思います


例えば、感染性腸炎でも薬の飲み忘れでも抑うつ気分になったでもよいです

ですが、それはあくまで一時的なトラブルで、普通の人であれば回復したはずです


回復せず、その後の悪循環を形成したのは、薬が原因だったのだと思います


皆様はどんな仮説を思い描きましたか?


大事なのは、本当にこの病態の仮説が正しいか、正しくないか、

ではありません


病態の仮説を人に説明できるかどうか、が重要です


原因不明だった症例だとしても、病態の仮説を間違ってもいいので立てるべきです



その理由は3つあります


1、患者さんへの説明のため


患者さんや家族としては、どうして今回こんな状況になったのかを知りたいはずです

今回は薬が悪循環の原因だったかもしれないと伝えれば、

家族の協力が得られるかもしれません


仮説であっても原因不明よりはよっぽどいいです

どんな原因であっても、原因があれば安心できます



2、病態生理を考える癖をつけるため


どんなこじつけの病態生理でもいいので、

自分の中で患者さんの体の中で起こった物語を考える癖をつけましょう


それがマクロの視点になると、家族関係やライフイベントの問題で、

この症状が形成されているのではないか?と考えるのと同じです


この癖がないと、原因不明の症例が自分の中で多発します



3、仮説を立てることが次に進む羅針盤になる


今回の病態の仮説が正しければ、今後、薬の調整を行えば本症例は何も起きないでしょう

ただ、仮説が違って、実は潰瘍性大腸炎だった

とかであれば、また症状が出現してくるはずです


仮説を立てて時間を進めると、自分が思い描いていた通りに進んでいるか、

想定外のことが起きているかがわかります


想定外のことが起きれば素早く対応することができますが、

全く仮説がないと、何が起きているのかよくわかりません


病態の仮説を立てることは、経過観察の羅針盤になります



まとめ

・薬をたくさん飲んでいる人は、まずは薬で鑑別を立ててみる

→この薬が飲めなかったらどうなるのか、飲んでいたらどうなるかを考える

 

・オルメサルタンを長期で内服している人の消化器症状や神経症状には注意

→疑わないと絶対に診断できない「オルメサルタン関連スプルー様腸疾患」


・「原因がなんだったのかよくわからない」と言わないようにする

→なんでもいいので、自分なりの病態の仮説を立てる



2021年4月24日土曜日

読書感想文 〜ぶった斬り ダメ処方せん〜

 國松先生は本当に面白い本を書きますね

マンガのようにスラスラ読めました


テンポが良くて、次のページを読みたくなるような本でした

あっという間に読めますので、おすすめです



以下、個人的な感想です


この本を読んで欲しいのは、外来診療に携わる全ての医師です

特にこなれて、自分なりの「型」ができている人に読んでほしいです


臨床現場はエビデンスの有無で語られることが多いですが、

実際にエビデンスがあるもの(黒)とないもの(白)の間のグレーゾーンがほとんどです


臨床現場はそのグレーゾーンの中で一人一人の医者の色が出ると思っています

特に自分の色が出るのが、外来という場面だと思います


他の医師がどんな外来をしているか分かりませんが、処方で垣間見ることができます


本書でも書かれていますが、「ダメ処方はダメ診療」というのはその通りだと思います

処方箋を見れば、その医師の思惑や力量が透けてみえます


現実は数をこなすことに精一杯で、

自分の外来の良し悪しなど言っている場合ではないかもしれません



ですが、どうせやるのであれば、上手な外来を目指したくはありませんか?


本書の言葉を引用します


〜P187より〜

外来診療はどうすれば向上するかですが、とにかく1人でやらないことです。

これはon goingで誰かと一緒にやれという意味ではなく、

いわゆる「振り返り」をやるべきだと思っています。


一緒にカルテを見ながら振り返ってああだこうだ言い合う相手がいればそれでいいです。

可能な限り、どんな診療でもすべての患者のカルテを一緒に開いて、

一言言い合えればいいのです。


〜引用終了〜


本当にその通りだと思います。

自分の外来に自信がない人、向上したい人、不安な人は、

他の医師と振り返りをお勧めします。


自分は「振り返るな!前を向け!」と言われて育ちましたが、

裸の王様になりたくないので、日々の診療を振り返ることをおすすめします


王様になりたい人は、振り返る必要はありません

どうぞ自分流を貫いてください



以下は箇条書きで感想

・薬についてのリアルをここまで語ってくれる本はない、忖度いっさいなし

・自分の外来を見直すきっかけになる

 - 自分は何が苦手か

 - 薬の使い方のくせ

 - 思考のくせ

・鬼の解説に共感したり、ぼこぼこにされたり、読んでいて面白い

・患者さんの中で起こっているbiomedical(疾患・病態)なことと

 患者さんが感じている病いにバランスよく対応したアドバイスや処方の例をみることができた

・はじめて外来診療する医師はこの処方を守るだけで十分

 慣れてきたら自分の色を出せばいい

・教科書的な処方を提示するだけではなく、内服方法やタイミングまでかかれているので、とても実践的

・頓用処方についての考え方が変わった

・知識ももちろん得られるが、行動を変えてくれる本

・How to本でもありつつ、外来に対する姿勢を変えてくれる本


注意点

・自分の処方が「ダメ処方」の連続で、鬼にぼこぼこにされると、不快な思いになるかもしれません




2021年4月18日日曜日

新型コロナウイルスをのりこえるための説明書 〜ワクチン編〜




第4波はきついですね
それもこれも変異株のせいです


変異株は言われていたように、感染力強いですね


これまでのCOVIDのゲシュタルトが崩れて、
まだ前半戦なのに酸素が必要な方もおられます

後述のように変異型は重症化が早いのも印象的です


大阪は大変なことになっていますが、
手助けに行けないのが、歯痒いですね

当地は当地で大変ですので、自分にできることをするしかないかなと思います


医療従事者の方々のご無事をお祈りいたします



ワクチンができたと思ったら、今度は変異株・・・

抗生剤と耐性菌のいたちごっこを思い出しますね


はじめて食べるものは、警戒しますよね

それと一緒で、
ワクチンに何が入っていて、どういう効果があるかわかならければ、
打とうとも思いません


ワクチンを打つかどうかは一人一人の判断です

ワクチンのメリット、デメリットを知った上で、
打たないという判断はよいと思います


ですが、ワクチンについて知らない、
何だか怖いから打たないというのはもったいない気がします

食わず嫌いみたいなものですね


食わず嫌いをなくすために、ワクチンについてもしっかり知っておきましょう


ワクチンを打つまでの流れです

今回のワクチンは数に限りがあるので、
ワクチンの重要度が高い人々から順々にうつようになっています

5月くらいから本格的に65歳以上の高齢者の接種が始まると思います





次に基礎疾患を持っている人が優先されますが、
どうやって基礎疾患を持っている人を抽出するのか、よくわかりません

ただ、一斉にクーポン配って、基礎疾患のある人が優先的に予約が取れるのかもしれません




基礎疾患って何やねん
ってことになりますが、重症化しやすそうな疾患を持っている人たちと決まっております

ただ、かなり曖昧ですね

高血圧だけの人も大勢いるので、どうなることやら・・・


個人的には、基礎疾患だけでなく、
ヘビースモーカーの方も重症化するので優先的に接種して欲しいです



どこで打つかは、各地域で異なります

詳しくは送られてくるクーポン券やお知らせに書かれていると思います

ネットでも探せますが、あまり充実してはいません



こんな感じのワクチン接種の予診票が送られてきます

色々ポイントがあります
予診票のポイントを解説してあるものもあるので、ご参考ください




自分一人では分からなければ、主治医の先生にも確認することをお勧めします


ファイザー社製のワクチンの説明書です

よく読んで、接種するかどうかを決めてください

ただこれだけだと良く分からない人もいると思うので、
それぞれ詳しく解説していきます

この説明書には最低限のことしか書かれておりません

打つかどうか悩むポイントや心配事は人それぞれ違うと思います


自分事として心配なところだけ、つまみ読みしてください



血液サラサラの薬を飲まれている方へ


出血傾向の人や抗凝固薬を内服している人も普通に打って大丈夫です

ただ、2分間は最低、しっかり抑えてください

止血が甘いとその後、筋肉内血腫ができてしまう人がいます


例え血腫ができたとしても自然に治りますが、数日痛いかもしれません




妊婦さんへ

妊娠中の方はワクチン接種の研究段階で除外されていたので、
安全性や有効性の確認はできていませんでした


理論的には問題ないと言われていますが、心配になりますよね


その後、少しずつデータが出てきて、
妊娠されている方も副反応は他の人と同様で、
早産や先天性異常なども増えてはいないようです


ただ、ワクチン接種をしなくても一定の割合で早産や死産、先天性異常は発生しています

妊娠中にワクチン接種を行って、早産や先天性異常が発生した場合、
ワクチンが原因ではないかと考えてしまい、悩みや後悔を生んでしまう恐れがあります


そのため、ご自身の置かれている状況(感染リスクが高い職場や場所)や年齢、
基礎疾患などを考慮し、打つかどうか決めてください



もし、ワクチンを打たれるのであれば器官形成期(妊娠12週まで)は、
ワクチン接種を控えた方が良いのではないかと言われていますが、
これも根拠があるわけではありません


妊婦さんについての情報は時間が経てば経つほど、わかってくるので、
しばらく待つのも手だと思います


授乳中の方は特に問題なく、接種できます





リウマチ膠原病の患者さんへ

免疫抑制剤を使用している人が多く、
リウマチ膠原病の患者さんは、重症化しやすいと考えられておりますので、
ワクチン接種をご検討いただければ幸いです


生ワクチンは免疫抑制薬を内服されている方は接種できませんが、
今回のワクチンはmRNAですので、ワクチンを打ったからといって、
感染することはありません


生ワクチンは弱ったウイルスなので、免疫抑制薬を内服している人の場合、
本当にその病気を発症する可能性があり、接種はできません



懸念されることとしては、免疫を抑えている薬を飲んでいるので、
ワクチンを打ってもうまく免疫がつかない恐れがあります

ただ、今のところ、そのようなデータはないので、
普通に打ってもらって良いと思います



もう一つの懸念事項としては、
もともとの病気が悪化する可能性が0ではないといわれていますが、
こちらもそのようなデータはありません


メリットの方が、デメリットよりも大きいと思いますので、
接種をご検討ください


薬に関しては、ワクチン接種後に中止を検討した方が良いものもありますので、
主治医の先生と相談してください






がん患者さんへ


全てのがんが重症化のリスクではありませんが、
コロナに感染することで、化学療法や手術が延期になってしまうデメリットもあるので、
重症化以外にも様々な影響があります


抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬を使用している方は、
主治医の先生に接種すべきか、いつ接種するかどうかを相談してください





一度コロナに感染したことがある方へ


再感染する人も稀ではありますが、起こります

そのため、ワクチンは順番がきたら打っていただいて構いません
安全に接種できますが、若干副反応が出やすいかもしれません


接種のタイミングについては、よくわかりません

感染後、数ヶ月(90日)は感染リスクは低いとされていますので、
ワクチンの供給が少ない状況では、ワクチン接種を遅らせても良いと思います


今後はデータが揃えば、一回打ちで良いとなるかもしれません




どこに打つか?

三角筋の筋肉内です

筋肉注射は打った時に痛くないのが特徴です
皮下注射に比べて、免疫もつきやすいといわれており、
海外では筋肉注射がメインです


三角筋は腕を上げるのに使う筋肉です
打った数時間後や翌日には、筋肉痛で腕が上がらなくなることが多いですので、
利き腕でない方をお勧めします

打った日は、寝返りできないくらい痛いと思っていてください

2回目の同じ側でOKです


接種時の注意点は、
・肩までしっかりめくれるような服装で来てください
・いつものように手を腰に当てるのではなく、だらんと下ろしてください
・もまないでください




何を打つか?

ファイザーのコミナティ®︎です

今はこれしか認可されておりません


今後はモデルナやアストラゼネカのワクチンも流通する可能性がありますが、
アストラゼネカがどうなるかが注目ですね・・・

ヨーロッパの各国では一旦、アストラゼネカの予防接種を中止にしています



コミナティ®︎は、mRNAというプラットホームのワクチンです
このワクチンは新しいですが、不明なものではありません

以前から研究はされていました
機序については後述します

コミナティにはラテックスやアジュバンドは入っていません
コミナティで唯一、アレルゲンと考えられているのは、PEGです

PEGが使用されたワクチンはコミナティがはじめてです





PEGについて

ポリエチレングリコールは多くの医薬品に用いられています

このPEGにアレルギーがあるという人は、見たことありません


PEGと類似した物質でポリソルベートというものがあります
ポリソルベートは化粧品やワクチンなど、幅広く使用されている物質です


ポリソルベートはワクチンの中では、
シルガード、ガーダシル、プレベナー、インフルエンザワクチンなどに使用されいています

これらのワクチンでアレルギー反応がでたことがある人は、注意が必要です


ただ、ポリソルベートでアレルギーが出たとも限らないので、
結局は注意深く打つことになるのかなと思います



他のアレルギーがある人へ

喘息や花粉症、アトピー、口腔アレルギー症候群など、
他のアレルギー疾患のある人は普通に打ってもらってOKです

他の方と同様に接種後、15分経過観察です


何らかの物質でアナフィラキシーを起こしたことがある人は、30分の経過観察が推奨されています



ただ、喘息の方で以前に挿管されたことがある人やコントロールが不良で、
重症な方は、万が一、アナフィラキシーで喘息発作がでた場合、
重い発作が出る可能性があります


その場合は、主治医と相談して重症な喘息発作に対応できる施設で接種した方が安全かもしれません



以前に採血で具合が悪くなった人へ


ワクチン接種後に具合が悪くなってしまう場合、
アナフィラキシー以外にも血管迷走神経反射の可能性もあります


以前に採血時に気を失ってしまったことがある人は、
今回も気を失う可能性があるので、注意してください


これは血管迷走神経反射であって、アナフィラキシーではありません


血管迷走神経反射の特徴は、冷や汗・徐脈・吐き気・顔面蒼白です


アナフィラキシーは体が赤くなりますが、
血管迷走神経反射の場合は、顔面蒼白になります


血管迷走神経反射が起こりやすい人の場合は、横になって接種することも対応策の一つです


アナフィラキシーの多くは15分以内に起きます
長くても30分以内に起こる人が90%です

そして今回のワクチンでアナフィラキシーを起こした人の多くは女性です


なので最も注意しなければならないのは、
これまでにアナフィラキシーを起こしたことがある女性です



ワクチン前後の注意点まとめです

接種前に発熱や具合が悪い人は、打てません

打って良いのは、当日、体調の良い人です


1回目にアナフィラキシーを起こしたことがある人も打ってはいけません



接種後はお風呂には普通に入ってOKです
激しい運動や飲酒は控えましょう

発熱が出るのが嫌だからと、事前に解熱鎮痛剤を服用することは推奨されておりません
ただ、発熱が出たら内服しても良いとされています


僕も2回目の接種で高熱が出たので、アセトアミノフェンを内服しました



2回目の接種後はかなりの確率でだるさや熱が出ます
出るだろうな〜と思いながら、打ってください



ワクチン接種後に熱が出た場合、
ワクチンのせいなのか、違う病気なのかを見極めるのは、とても難しいです


ただ、ワクチン接種後の副反応ではない症状を知っておくと、
区別することができるかもしれません


例えば、血圧が低くなったり、意識が悪くなったり、呼吸苦が出たり、咳が出たり、
した場合は、ワクチンのせいではないでしょう

その場合は、迷わず病院に相談して、受診を検討してください





敵のおさらいです

新型コロナウイルスは、ウイルスです

ウイルスは自分だけでは増えることはできません

増えるためには、人の細胞に入り込み、
細胞に自分の複製を作らせる必要があります


体の中で増殖したウイルスに対して、免疫が作動します

抗体と呼ばれる飛び道具を作ったり、
直接感染している細胞を殺すような免疫が働きます




mRNAワクチンの仕組み


これまでのワクチンはウイルスを弱らせたり、不活化することで、
免疫細胞に練習試合を行わせ、免疫細胞にウイルスのやっつけ方を覚えさせてきました


弱らせたウイルスは生ワクチンと呼ばれ、
弱ってはいますが体の中で悪さする可能性を秘めているため、
免疫が弱っている人(免疫抑制剤を使っている人)には投与はできません

その分、強力な免疫(細胞性と液性の両方)をつけることができます


不活化ワクチンは、病原性を取り除いてあり、入ってきても体の中で悪さしません
その分、免疫がつきにくいので、アジュバンドといって免疫を刺激するようなものが含まれていることが多いです

主に液性免疫しか作動しません



インフルエンザワクチンは不活化ワクチンです
効果は50%ほどしかありませんが、目的としては重症化を防ぐことにあります



このようにウイルスを弱らせたり、不活化することで、
ワクチンを作り上げてきたわけですが、
そのためにはウイルスを人工的に増殖させなければなりませんでした



ウイルスを増やす技術は大変であり、
これまでのワクチンができるまでにはかなりの時間がかかっていました


そのため、今回も数年はかかるのではないか・・・と思われていましたが、
今回はたった一年で、mRNAという新しいワクチンが誕生しました


技術的には整っていましたが、実用化されたのは今回がはじめてです



何が一番、画期的かというとウイルスの抗原を増やすための工場を
人間の細胞にお願いしたところです


今までのワクチンは人間世界の工場で、せっせと弱ったウイルスを作っていました


今回はウイルスの設計図だけを脂質の膜の中に入れて、それを筋肉に注射します


体の中に入った設計図は細胞の中に取り込まれて、
細胞は設計図通りにウイルスのトゲトゲだけを作ります

そのトゲトゲを免疫細胞に提示して、
自分をウイルスっぽい状態にして練習試合をするようなイメージです



mRNAは不活化ワクチンよりも強く免疫がつき、
生ワクチンよりは弱いと考えられています


もっと詳しく知りたい人は、こちらをご参考ください

実はよくよく理解するのは、かなり大変です・・・




これまでのワクチンとの比較です


接種方法は、皮下注射ではなく筋肉注射です

筋肉注射は今回からというわけではないのですが、
多くの人にとってははじめてだと思います


筋肉注射の方が免疫はつきやすく、痛くもないです

日本で接種されているワクチンはほとんど皮下注射ですが、
海外では筋肉注射が主流です

詳しくは筋肉注射について 参照




ワクチンのメリット、デメリット

接種した人のメリット
・発症しなくなる
・重症化しなくなる
・感染もしなくなる
・人へうつすこともなくなる

当初は発症と重症化しなくなることがわかっていましたが、
少しずつデータが揃って感染もしなくなることがわかってきました

これなら国民の70%前後がワクチン接種すれば、集団免疫が獲得できそうです


接種した人のデメリット
・短期的に終わる副反応が出る
・今後、未知の副作用が発見される恐れ
→今のところファイザーワクチンでは報告なし
 時間が経てば経つほどはっきりします





副反応と有害事象について

ワクチンを打った後に起こった全ての好ましくない事象を有害事象と言います

これはワクチンが原因とは限らず、何でもありです


ワクチンが原因で起こった好ましくない事象のことを副反応と呼びます

プラセボ(偽薬)とワクチンを接種する人たちをランダムに振り分け、
その後、起こった有害事象を比較することで、
副反応かどうか、有害事象かどうかを見極めます



今回、わかっている副反応は局所と全身の二つに分けられます

局所の副反応は、打った場所の痛みや熱感、腫脹などが起こり得ます

全身の副反応は、発熱や悪寒、倦怠感などが起こり得ます



現時点では、アナフィラキシー以外に重大な副反応はわかっていません


ただ、リアルワールドで何千万人が接種すると、
数百万人に一人レベルのまれな副反応がわかってくることはまれにあります


例えば、今回はファイザーでは確認されていませんが、
ウイルスベクターワクチンのJ and Jやアストラゼネカのワクチンで、
脳静脈洞血栓症が確認されました


しかしこれは非常にまれな副反応であり、
今後どうなるか注目されます




コロナの怖いところ

ワクチンには、数字だけでは語れないメリットがあります

身体的にも精神的にも社会的にも辛い病気です


身体的には、コロナに罹ると、ロシアンルーレットのような感じで、
悪くなる人もいれば、改善する人もいます

元気だった人が亡くなる病気です

これが一番、コロナの恐ろしいところです



精神的にもきついです

他の人にうつしてしまっているのではないかという不安
差別や偏見を受けるのではないかという不安
これから自分はどうなってしまうのかという不安

一人一人で悩みは違います


これは感染してみないと、想像がつきません



感染するということは、心や体だけの問題ではないです
社会的にもきついです


仕事ができなくなります

進めていた仕事が滞ったりします

職場にこれない人が増えると、
残された人への負担が大きくなります


コロナに罹ることは、その人だけの問題ではありません
周りにも影響が出る病気なのです


こんな病気は他にありません


数字のメリット

発症リスクが20分の1になります
試験だけでなく、リアルワールドでのデータも出てきています


発症や重症化だけでなく、感染まで減らします


ただワクチンを打ったからと言って、最強というわけではありません

感染リスクは残りますし、
打った直後はまだ普通の人と同じ状態です


ワクチンのメリットを車で例えるのであれば、
ワクチンの効果がエアバックくらいの防御かと思っていたら、
実は自動ブレーキシステムまで搭載してくれていて、
事故まで減らすことができるようになっていた

といったイメージです


自動ブレーキシステムがあっても事故は起きますよね
引き続き、感染対策を行う必要はあります




話題のイスラエルのデータです

すごい効果ですね


わかっていること、わからないこと


新しいものの出始めはわかっていないことが多いです

時間が経てば経つほど、情報が増えてきます


最初は感染するかどうかはわかっていませんでしたが、
どうやら感染も減らすようです


感染しなくなるということは、周りにうつすこともないということです
つまり、このワクチンをみんなが打てば、集団免疫が作れそうということです


わかっていないこととしては、
変異株に対してどれくらい効果があるかです


変異株は今後も増えてきますし、ワクチンが効かない変異株もいつかは出てくるでしょう



巷で流行っているイギリス由来のものには効果あるようです

南アフリカ由来のものには、実験室レベルでファイザー製は効果が危ぶまれていましたが、
リアルワールドでは効果があるようです



効果がいつまで続くかは、とりあえず半年は大丈夫そうです
1年ごとのワクチン接種になりそうな気がしますね

ここもデータを待ちたいと思います



変異株

VOCの代表的な3つが、イギリス由来、南アフリカ由来、ブラジル由来のものです

イギリス由来の変異株、本当に嫌ですね


感染力が高いことはデータや実感としてもありますが、
どうして高いのかが知りたいですね


ウイルスを排泄する期間が長いとも言われています


あとは接触感染が強くなっているのか、
空気感染になっているのか、
なぜ感染力が高いかは明らかになっていません




変異株にワクチンが効くかどうか

これは一言では答えられません
データもあまりないので、今後も注目される話題でしょう



変異株に注意


重症化しやすく、感染力が強い変異株・・・
いやですね・・・



これまでは濃厚接触者と言われていた人も感染しなかった人はたくさんいましたが、
今回の変異株は濃厚接触者になった人は、みんな感染しているイメージです


ですが、濃厚接触者に該当しなかった人は、感染を免れている気がします


やはり、マスクは重要ですね
感染対策はそのままで良いと思います



コロナの情報はたくさんありましたが、
ワクチンが出てきてからさらに倍になった印象です

ワクチンだけでも情報が多すぎて、まとめるのが大変でした

上記の3つを読むだけで、ほとんど網羅できます





さいごに


大阪をはじめ全国の医療従事者の皆様が心配です
本当にご苦労様です

おそらく、身を削ってぼろぼろになりながら、
看護や医療を提供している方々がたくさんいるはずです


ですが、正義感や使命感に駆られての自己犠牲は考えなおしてください
今の働き方は続けられないと思ったら、働き方を変えるべきです


自分がいなくても、職場はなんとかなります
自分が思っているほど、自分しかできない仕事はないものです


自分が元気でないと誰も救えません

患者さんを守ることも大事ですが、自分を大事にしてください


病気で亡くなるのは、仕方ないことではありますが、
仕事で亡くなるのは、仕方なくないです

絶対にあってはならないことです



皆様、御身体をお大事にしてください



 

2021年4月14日水曜日

ボス回診 〜教育回診の心得〜

今年からボス 回診がなくなったので、引き継いで自分が回診をすることにしました


症例相談を受けることはこれまでもありましたが、この回診はとても難しいですね

ボスの凄さを改めて実感しました


ボスは自然とできるカリスマでしたが、

自分は違うので、努力と振り返りで頑張りたいと思います


回診・症例相談で気をつけたいことや言われたことを備忘録として書いておきます


・参加者の一人一人に気を配る:つまらなさそうにしている人はいないか


・症例の内容と同じくらいプレゼンを意識する:プレゼンテーションについてもフィードバックする

 「プレゼンは何のためにするかというと、相手を動かすためにする。

  プレゼンテーターの本気度で相手が動くかどうかが決まる」 by T.S


・全ての情報を鵜呑みにしない:内容は全て聞いているが、全ては信じない

 「君のことは信頼しているが、君がとった病歴や身体所見は信頼していない」by T.S


・誰が何に困っているかを間違えないようにする:研修医が困っていることと患者さん本人が困っていることは違うかもしれない

「誰が何に困っているか、それが重要なんだ」by T.S


・症例の全体像(時間軸・空間軸)を俯瞰するように把握する:チームのメンバーと同じ視点で考えても同じ意見にしかならない、別次元で考える癖をつける


・相談された症例の「アキレス腱」がどこかを探す:チームが進んでいる道とは別の道に答えがあるかもしれない


・teaching pointを探すが、話すぎないように、質問しすぎないように:何かを教えることが回診の目的ではない


・伝えたことは一回では伝わらない:頭でわかっていても、心からわかってはいない


「僕が今日言ったことは、よくわからないと思う。

 でも、次、同じ状況になったら、そのときにわかると思うよ。」by T.S


・自分の診療スタイルは見られている:患者さんへの立ち振る舞いは、研修医は上級医と似てくる


・回診で試されているのは、プレゼンターではなく自分自身

・参加者全員に話す機会を作る


・プレゼンしてくれた人、参加してくれた人に感謝を伝える



順番を間違えないことが大事ですね


研修医や専攻医の勉強のために回診をするのではなく、

患者さんのアウトカムが良くなるようにという思考で臨むことが大事そうです


そして、いろんなバイアスに負けないことも症例相談を受けたときには大事です


最後はやっぱり井上ひさしさんの言葉が一番しっくりきます


難しいことをやさしく、

やさしいことを深く、

深いことを面白く、

面白いことを真面目に、

真面目なことを愉快に、

愉快なことはあくまでも愉快に

2021年4月10日土曜日

東京GIM 〜いきなりALS〜

 本日の東京GIMは、呼吸困難の主訴で救急車で来院された60代男性の症例でした

今まで診断がついておらず、救急外来から入院となり、

入院後にALSの診断がついた症例です


今回は症例解説とは別で、身体診察の重要性について考えてみたいと思います

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今回のように「いきなり〇〇」という症例に救急外来で出会うと、

とてもびっくりします


救急外来で、

いきなりAIDS、いきなり進行した強皮症、いきなりALS、いきなりPOEMS、いきなりIVL・・・


診断がされていない慢性疾患の急性増悪パターンには常に注意が必要です


いきなり〇〇かも!?と気がついたら、

一度、立ち止まって考えることができます



いきなりALS症例に対して、挿管をしてしまってよいでしょうか?


あえてすぐにはしないという選択もあり得ます



「いきなり〇〇」という症例に出会うためには、

常に頭の片隅に鑑別疾患を立てておき、

身体所見をとる時にレセプターを生やしておく必要があります


身体診察の知識を知っているか、知っていないかの問題ではありません

レセプターを生やしているか、生やしていないかが問題です


病歴も重要ですが、なかなか病歴だけでは診断を確定することはできません

そもそも病歴がとれないこともあります

時間がなかったり、語れなかったり・・・


そんな時には、身体診察が非常に有用です


身体診察の名人には、病気が見えています

そういう先生に出会ったことがない先生もいるかもしれませんが、

本当にすごい先生は、次元が違います



身体診察は知識であり、技術であり、情熱と経験が必要な分野です

知識があってもこればっかりは難しい・・・


例を挙げます


甲状腺機能低下症で嗄声が起こることを知っていも、

目の前の患者さんの少しくぐもった声から甲状腺機能低下を疑えるでしょうか?


これまで一度でも、声で甲状腺機能低下を診断した先生がどれだけいるでしょうか?



MGで眼瞼下垂が来ることは学生さんでも知っていますが、

今、診察し終わった患者さんに眼瞼下垂があったかどうか、覚えていますか?



身体診察の名人と凡人の差はここにあります


身体診察はとりに行くものではなく、感じるものです


参考:身体所見


身体診察をとりに行っている時点で、ほぼ勝負は決まっています



ただし、狙ってとった身体所見で解釈が難しい時があります

それは、神経診察と皮膚診察です


この2つの診察を上達させるための一番の近道は、

自分が尊敬する人の診察風景を何度も目に焼き付けることです


身体診察の勉強は今も昔もベッドサイドにしかないと思います




身体診察をおろそかにしなければ、

患者さんに出会った瞬間に診断をつけられるという機会が増えていくと思います


そうすると、今回の症例のように「いきなり〇〇」という患者さんにも出会うでしょう



診断を早期につけられるようになれば、患者さんをより良い方向へ導いているはずです

それが、今回のように治らないALSだったとしても・・・

2021年4月9日金曜日

東京GIM 〜パズルのピース〜

3月のTGIMの症例はそんなプレゼンテーションあり!?という驚きの症例でした

心窩部痛の原因として鑑別にあげたことがなかったので、

とても勉強になりました


実際の流れとは少し違いますが、Clinincal Problem Solving形式でお届けします

コメントは自分の思考です

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50歳代 女性 主訴:心窩部痛(※一部、症例は加筆・修正を加えてあります)

Profile:20代で結核の既往あり

現病歴:入院3日前から心窩部痛が出現

    吐き気もあり

    食事摂取は難しかったが、水分摂取はできた

    入院2日前、近医を受診

    Xp、腹部US、胃カメラが施行されたが異常認めず

    入院当日、心窩部痛と吐き気が持続するため、紹介となった


心窩部痛について

O:徐々に出現

P:部位は心窩部、食後に増悪

Q:何とも言えず

R:なし

S:3/10の強さ

T:持続痛


ROS:吐き気あり、発熱なし、下痢なし、生ものや肉類の摂取なし

既往:20代で結核(4剤で半年間治療)

内服:なし

アレルギー:なし

生活:夫と二人暮らし

喫煙なし、アルコールなし

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コメント

結核の既往歴以外には特記すべき既往のない50代の女性です

来院の3日前から心窩部痛が徐々に出現し、吐き気があります

食事がとれず、少量の水分しかとれていません


急性の心窩部痛のcommonな病態から考えると、

虫垂炎や胃潰瘍、膵炎、胆嚢炎、感染性腸炎、胃・小腸アニサキスを疑います

消化器以外の以外を考えると、心臓由来や血管病変も鑑別にあがります


まず、病歴では食事歴を細かく確認する必要があります

食事歴は「生モノは食べましたか?」とさらっと聞くと、

「食べていません」と返事が帰ってきますので、

ねっとりと聞く必要があります


「食べてないです」と言われてからが始まりです

心窩部痛が出る直前の食事を一緒に、一つ一つ振り返っていきます

思い出せない場合は、こちらから食材を言っていきます

BBQ、焼き鳥、焼肉、鳥刺し、寿司、お刺身、唐揚げ、卵料理、餅・・・

といった感じで、挙げていくと「あ、食べました」となることが多いです


特に小腸アニサキスは数時間後に発症する胃アニサキスと違って、

5ー7日以内の摂取で起こりますので、さかのぼって聴取する必要があります


今回はすでに腹部USや胃カメラで問題がなかったので、

胆嚢炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍の可能性は低くなっています


病歴で気になるのは、食後に増悪するという病歴です

ここも実は深く掘り下げて聞いてみたいところです

「食べた後に痛みが強くなります」と言われてからが始まりです


詳しくは:腹部アンギーナ



失神は病歴が大事だと言われますが、腹痛も病歴がとても大事です

失神の場合はその情景を映像化できるまで病歴をとりなさいと言われます

一方、腹痛に関しては、グラフ化できるまで病歴をとります


できれば病歴をとりながら、患者さんと一緒に痛みの推移のグラフを作ります


もちろん、急性腹症を疑うような痛みの強い場合やバイタルが崩れている場合は、

そんな暇はありません

一般外来に歩いてきた腹痛の患者さんの場合に限ります


原因不明の腹痛

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身体所見

バイタル T 36.8、BP148/80、P 70、RR16、SpO2 98%(RA)

頭頸部 異常なし

胸部 異常なし

腹部 平坦 軟 圧痛なし 腸蠕動音亢進・減弱なし

四肢 浮腫なし

皮膚 発疹なし 潰瘍なし


血液検査

WBC 14000, Hb 15, Plt 80000

凝固 異常なし

生化 電解質異常なし、腎機能異常なし

肝胆道系酵素上昇なし、Bil上昇なし、CRP7

ACTH  2.7, コルチゾール 10


レントゲン

心拡大なし 肺炎像なし


造影CT 両側副腎に血流低下

         その他に特記すべき所見なし

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コメント


身体所見では心窩部に圧痛はなかったようです

腹痛の際には、自発痛と圧痛と最強点の圧痛は区別することが重要です


心窩部の自発痛はあるのに、

そこを押しても痛くないというのは、

実はそこに原因はないかもしれません


心臓由来や神経根痛、代謝、内分泌系、薬剤、偏頭痛、ポルフィリアなどを考慮します

頻脈や甲状腺中毒症の症状はありませんが、甲状腺はチェックしておきたいです


造影CTで両側の副腎の血流低下がありますが、

今回の病態にどう関わっているかわかりません


そもそも何なのかを放射線科の先生に相談したいです

副腎への血流低下ということは、副腎梗塞といった病態なのでしょうか


副腎梗塞が両側に起こるということは、かなり限られた状況です

両側の副腎出血の場合は、Waterhouse-Friderichsen 症候群が有名ですが、


両側の副腎梗塞はICUに入るような多発外傷でショックになる人で稀にみられます

まずうっ血が起こり、両側が副腎が腫大し、

その後、出血、梗塞を起こす人がいます


よーく見ると、なんだかボヤ〜っと腫大していることがありますので、

その目で見ることが重要です


副腎の解剖は面白いです

動脈は複数ありますが、静脈は1本です


そのため、副腎はうっ血しやすい臓器といわれています

静脈血流が障害されると、副腎はうっ血し腫脹します
うっ血が解除されないと、梗塞に陥り、出血します

      

副腎不全


副腎梗塞や出血は痛みが出現しますが、今回の腹痛の原因が副腎梗塞であれば、

なぜ、副腎梗塞が急に出現したのかが問題になります


結核の既往があり、副腎結核だとしてもこんなプレゼンテーションになるかは疑問です


APSや凝固系、過粘稠状態、背景に悪性腫瘍がないかの検索が必要になります


ただ一方で腹痛の原因検索も必要かと思います

副腎梗塞からの副腎不全の可能性はあり、副腎不全からの腹痛かもしれません


Lapid ACTH試験を行い、副腎不全の診断を詰めていくことになると思います

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経過

両側副腎梗塞の診断で入院


輸液とヒドロコルチゾンの投与が開始となった

入院5日目、CT再検されたが、

副腎の画像所見は変化なし


入院7日目、心窩部痛や吐き気は改善

食事摂取可能になり退院となった


ヒドロコルチゾン15mg内服継続し、外来で精査の方針となった


追加検査

ACTH負荷試験は正常範囲

APSのマーカーは陰性

ANA  >40

抗SSA抗体陽性、抗SSB抗体陽性


プロテインS、C活性や抗原 正常

IgG 、IgM、IgA  正常値

補体低下なし

ANCA陰性


フォローの外来では自覚症状なし

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コメント


両側副腎梗塞が痛みの原因だったのでしょうか・・・

あまり経験がないので、ゲシュタルトがつかめませんね


副腎不全としてステロイドが開始となっていたので、

副腎不全の影響もあったのかもしれません


心窩部痛は改善してその後も出現ないので、

めでたし、めでたし?


ただ、なぜ両側副腎梗塞になったかが不明のままです

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経過


退院2週間後、顔面・四肢の浮腫を自覚

倦怠感も出現


退院20日後、倦怠感が増悪

食思不振も出現し、精査目的に入院となった


ROS:顔面の浮腫あり、吐き気あり、食思不振あり

四肢の浮腫あり


めまいなし、視力低下なし、口内炎なし

嗄声なし、咽頭痛なし、甲状腺腫大なし、下痢なし

咳なし、血痰なし、呼吸苦なし、関節痛なし、レイノーなし



身体所見

バイタル T 38/0、BP110/80、P 110、RR18、SpO2 98%(RA)

頭頸部 顔面に浮腫あり

    頸部リンパ節腫脹なし

胸部 異常なし

腹部 平坦 軟 圧痛なし 腸蠕動音亢進・減弱なし

四肢 浮腫あり

皮膚 発疹なし 潰瘍なし


血液検査

WBC 6500, Hb 12, Plt 50000

凝固 異常なし

生化 電解質異常なし、腎機能異常なし

Alb 2.5と低下あり 

肝胆道系酵素 ALP 700と上昇あり、Bil上昇なし、CR30


造影CT  腹水あり、両側腋窩・鼠径LN腫脹あり 

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コメント

今回は心窩部痛ではなく、発熱、全身性の浮腫、血小板の更なる低下、Alb低下がみられています

CTでは腹水と全身のリンパ節腫脹があります


数日の急性経過で悪化しており、全身性の炎症が起こっています

それが感染なのか、自己炎症性疾患か、自己免疫性疾患か、腫瘍性か、アレルギー性かが問題です



感染であれば、急激に状況が悪くなっているので、敗血症になっていないかは心配です

感染症の原則に当てはまると、

宿主は? 30代で結核の既往のある50代女性


どこに? 

     フォーカスがはっきりしないので菌血症、IE

     IEに伴う心不全の可能性も否定できず、UCGやECGはすぐに行いたいです

     実はIEからの塞栓が副腎梗塞を起こし、

     その後、膿瘍形成していた可能性もありますので、

     その目で副腎をみる必要があります

     

     腹水が出現していることから、原発性の腹膜炎の可能性もあります

     実は前回も腹膜炎だったが、ステロイドで軽快したのかもしれません

 

    

何が?  

     いきなり菌血症でくるような、MSSAや連鎖球菌

     他には皮疹はありませんがリケッチア、レプトスピラ、

     肺炎があるかはわかりませんが、レジオネラ

     結核の既往があるので、粟粒結核

     HIVがあるかないかで鑑別が変わるので、

     HIVの有無はチェックしておきたいです


     全身性のリンパ節腫脹の鑑別で考えれば、

     EBV、CMV、梅毒、TBなども考慮します


治療は?

頻脈がみられており、消耗が強そうであれば、

血液培養を採取後、抗生剤投与を開始します



感染症は治療しないと命に関わるので、ワンサイドカットのため、

抗生剤は投与するかと思います



一方で、非感染症の可能性も考えます


自然免疫系の炎症であれば、

AOSD、ベーチェット病を疑います

AOSDはプレゼンテーションが多彩なので、鑑別に残ります


血管炎も考えますが、大血管らしくはないです

となると、PNか小血管となりますが、

紫斑や痺れ、関節炎、腎障害、間質性肺炎といった血管炎を示唆する所見に乏しいです

ANCAも陰性であり、積極的に血管炎は現時点では疑えないかと思います


SLEはこの症例でもあり得えると思います

血小板減少もリンパ節腫脹も起こり得ます

リンパ節を生検すると、壊死性リンパ節炎の所見が得られれば、SLEの可能性が高まるかと思います


SSA、SSB抗体が陽性であり、シェーグレン症候群が背景にあるため、

シェーグレン症候群に伴う血管炎や血小板減少の可能性もあります


悪性腫瘍であれば、MDSに伴う全身性の血管炎パータンは診断が非常に難しいです

悪性リンパ腫の中でも特にIVLは鑑別にあがります


骨髄穿刺や生検を行い、MDSやIVL、播種性結核の検索を行いたいです


ですが、これまでの検査はある疾患のお膳立てです

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経過


入院後、血小板減少進行あり

胸水も出現してきた

UCGではEF良好


追加検査

甲状腺機能 正常

RPR 陰性  TPAb陰性

HBs 抗原 陰性

HCV 抗体 陰性

HIV 抗体 陰性

CMV、EBV  陰性

T spot 陰性

HHV 8 DNA  陰性


骨髄穿刺・生検  芽球なし

リンパ節 生検  Paracortical hyperplasia with lymphoplasmacytic infiltration

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最終診断:TAFRO症候群


Thrombocytopenia

Anasarca(pleural effusion and ascites)

Fever 

Reticulin myelofibrosis

Organomegaly(Hepatosplenomegaly and lymphadenopathy)


2010年に日本で報告された全身性炎症性疾患で

頻度は、0.9-4.9人/100万人(日本)です


多彩な症状や所見があり、それぞれに突っ込んでいくと失敗する疾患です


こういった疾患は、パズルのピースを集める感じで診断します



診断はMajor categoriesから3つ、Minor categoriesから少なくとも2つですが、

最も大事なのは、他の疾患の除外が必要なことです


悪性腫瘍、SLE、シェーグレン症候群、AAV、リケッチア、ライム病、SFTS、POEMS、TTPなど


今回はSSAだけでなく、SSBまで陽性なので、

シェーグレンが背景にありそうですが、

どうやって除外するのか、除外する必要があるのか、よくわかりません


治療

キャッスルマン病に準じて治療

グルココルチコイド

治療抵抗例では、シクロスポリンAなどの追加を考慮

トシリズマブ、リツキシマブ


臨床で難しいのはいつTAFROとして治療に踏み切るかです

鑑別にはあがりますが、

実際にTAFRO Switchを押すのが、誰で、いつか?が問題です


一人では診断、治療したくない病気です

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TAFRO症候群と副腎梗塞


副腎梗塞を合併するTAFRO症候群の症例報告はあり

副腎病変(梗塞/出血)はTAFRO症候群の特徴的なCT所見




静脈、リンパ鬱滞により副腎梗塞が生じると考えられている



European Radiology (2020) 30:5588–5598



TAFRO症候群の病態

腎臓、副腎のリンパ管は大動脈へつながる

大動脈周囲の静脈、リンパ管排出が増悪し、鬱滞

大動脈周囲静脈、リンパ鬱滞が腎臓、副腎に波及し、梗塞

腎機能が増悪、浮腫が全身に波及し、臓器腫大


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まとめ

・診断困難症例では経過をフォローすることが重要

・副腎梗塞はTAFRO症候群の特徴的なCT所見

・血小板低下+副腎梗塞ではTAFRO症候群を鑑別に挙げる

2021年4月6日火曜日

Clinical Problem-Solving  〜Stalking the Diagnosis〜


直近のNEJMのCPSです

おすすめ度はそれほど高くないですが、
白質病変と戦ったことがある人にとっては、面白いと思います


オススメ度:☆☆☆(3/5)


神経内科目指す人むけです

コメントは自分の頭の中なので、
本当のコメンテーターの思考を知りたい人は、本文読んでください




 


N Engl J Med 2021;384:1262-7.


22歳 男性 主訴:進行性の神経異常


現病歴:1年前 痛みを伴わない視力障害が左目に出現し、

    右目にも出現してきた

    その後、4-6ヶ月で痺れや四肢の拘縮、体幹の筋力低下、失禁が出現した

    1年で体重が6.8kg減少した

    見当識障害が出現し、自分のことができなくなった


生活:発症の3ヶ月前にパキスタンからカリフォルニアにきた  

   配達の運転手をしていた

   喫煙なし、飲酒なし、違法drugなし


家族歴:なし


経過:

画像検査で脱髄を示唆する所見があり、MSと診断された

ナタリヅマブで治療が開始されたが、改善なし

IFNに切り替わったが、症状は進行していったため、紹介となった

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(自分の思考)

これはMSと思わせて、違う病気パターンですね


MSの診断は実はとても難しいです

典型的な所見やデータ、経過が揃っていれば良いですが、

画像で白質病変があるだけではMSと言い切るのは難しいです


MSのような白質病変をきたす疾患として、


NMOやサルコイドーシス、中枢神経原発悪性リンパ腫、原発性中枢神経系血管炎、

神経ベーチェット、神経sweet病、CNSループス、シェーグレン症候群、PML、

サルコイドーシス、神経梅毒、HIV感染、結核・・・というように鑑別は多岐にわたります


本当はMS以外の疾患を除外しなければなりませんが、

脳生検を最初から行うことは少ないと思います


そのため、今回のように経過や造影MRI所見、髄液検査所見を総合してMcDonald criteria

などを用いながら、診断・治療することが多いです


ただ、今回は治療がうまくいっていないため、MS以外の疾患の可能性が高い状況です

一番嫌なのは、結核ですね

アジア系の出身であれば、神経ベーチェットも気になるところです


脳だけにとらわれず、他の病歴や所見もしっかりとらなければならないと思います

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体温は36.9℃、血圧は102/55mmHg、脈拍は75回/分、酸素飽和度は98%

心臓、肺、腹部の診察は問題なし


神経学的検査では、開眼しており病院にいることは認識していました

都市名や日付は認識できず、簡単な命令には従えたが、発語は少なかった


瞳孔は正円同大で、対光反射はなかった

視力は両側とも重度に障害され、光と指の動きのみを認識していた


四肢の筋力低下や筋トーヌスの亢進があった

反射は全体的に3+で、バビンスキー徴候は両側に見られた


触覚の感覚は問題なかった

小脳検査の結果は正常でしたが、

患者は介助なしでは歩けない状態でした



頭部の磁気共鳴画像(MRI)では、脳室周囲の白質に広い範囲で信号異常が見られ、

脳室に結節や軟膜の造影効果が認められた

視神経路に沿って対称的な信号異常が見られた

造影脊髄のMRIの結果は正常であった

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(自分の思考)

MRIではやたら脳室周囲の異常陰影が目立ちますね


脳室周囲炎といえば、アクアポリン4に関わるNMOをまずは考えたくなります

他には髄液内に病原微生物や腫瘍が存在することで、脳室周囲に炎症を引き起こすこともあります


この画像からは、まだ鑑別疾患は絞られません

やはり、慢性髄膜炎を引き起こすような感染症をまずは念頭においた方が良さそうです


結核、クリプト、癌性髄膜炎(リンパ腫や白血病)、神経梅毒といった疾患は

鑑別に上がるので、髄液検査を行いたいです


HIVの有無は鑑別疾患を考える上で、非常に重要なので早々にチェックします



この中でも結核をどうやって除外するかは非常に悩ましい問題です

もちろん、培養やPCR、ADA、IGRAを提出することになりますが、

状態が悪ければ、抗結核薬で治療を開始することも選択肢になります


結核性髄膜炎の場合、ステロイドを併用することもあります

ただし、併用したステロイドで色々がマスクされてしまうため、

ステロイドを使う前には、血清で自己抗体のチェックや生検を検討します


実臨床では、あとで追加できるように血清保存をたくさんとっておくのが重要です

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全血球数と生化学は、ナトリウム濃度が148mmol/Lであったことを除いて正常であった


腰椎穿刺を行い、3本目の脳脊髄液(CSF)を分析したところ、

透明な液体で、白血球数は11個(基準範囲、6個未満)

そのうち94%がリンパ球、6%が単球で、赤血球数は5個

グルコース値は44mg/dl、タンパク値は110mg/dlであった

オリゴクローナルバンドが認められた

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髄液検査では髄液糖が低いですね

慢性的な炎症が起きている証拠です


やはり結核を軸に考えたいところです

オリゴグローナルバンドはMS含む脱髄疾患で見られることが多いですが、

非特異的な所見ですので、MSと決まったわけではありません


ここでは慢性髄膜炎として鑑別を進めていくのが良いと思われます


感染症:結核、クリプトコッカス、梅毒、whipple病、コクシジオイデス、アスペルギルス、ムコール

自己免疫性疾患:SLE、シェーグレン、ベーチェット、神経sweet、血管炎

腫瘍性:リンパ腫(IVL含め)、転移、癌性髄膜炎

肉芽腫疾患:サルコイドーシス、GPA、LYG


脳生検が最後の切り札になリますので、それまでにできる限りの検査を提出しておきます

血液検査や髄液検査でわかればよいですが・・・


脳生検のハードルが高いんですよね・・・

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血液と髄液の細菌培養,抗酸菌と真菌の染色・培養は陰性

髄液の結核菌のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査は陰性

髄液と血清のクリプトコックス抗原検査は陰性


単純ヘルペスウイルス,水痘・帯状疱疹ウイルス,西ナイルウイルス,デング熱,チクングニヤ熱,JCウイルス,ヒトヘルペスウイルス6の検査も陰性であった


上下部の内視鏡検査では腫瘍は見られず

内視鏡生検の結果、Tropheryma whippleiの証拠なし


抗核抗体,抗二本鎖DNA抗体,抗Ro(SSA)抗体,抗La(SSB)抗体

組織トランスグルタミナーゼ抗体,抗好中球細胞質抗体は陰性

アクアポリン-4に対する抗体も陰性であった

髄液の細胞学的検査およびフローサイトメトリー検査では異常認めず


硬膜、皮質、脳室周囲白質の生検が施行された

生検結果はマクロファージと散在するリンパ球を主成分とする細胞性の増加が認められた

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お〜

脳生検までやってますね


案の定、血液や髄液からは原因がわかりませんでした

残念です


髄液検査を繰り返し行うと結核やクリプト、癌性髄膜炎の感度が上がリますので、

脳生検の前には、髄液検査を繰り返すのも重要です


今回は脳生検まで行われましたが、肉芽腫や血管炎、腫瘍の証拠はなかったようです

困りましたね〜


せっかく生検したのに、こういうことがあるんですよね・・・


さて、どうしたものか・・・

やはり結核として治療せざるを得ない気がしますが・・・


それにしても、HIVやADAの話題が全く出てきませんね

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入院10日目にナトリウム濃度が急激に上昇し、165mmol/Lとなりました

1日の尿量は約3~4Lで、尿浸透圧は132mmol/kg(参考値、300~900)でした

プロラクチンは48μg/L(参考値、3.6~18.0)

コルチコトロピンは7ng/L(参考値、6~50)

卵胞刺激ホルモンは0.2IU/L(参考値、1~12)

黄体形成ホルモンは0.1IU/L(参考値、0.6~12.1)でした


コルチゾールは3μg/dl(基準範囲4~19)で、

合成コルチコトロピン投与後に12μg/dlまで上昇した


遊離サイロキシン値は8pmol/L(参考値10~18)でした

患者はヒドロコルチゾンによる治療を開始し、続いてレボチロキシンを投与しました

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なんと・・・下垂体までやられてしまいました


下垂体がやられる疾患と硬膜が肥厚する疾患は似ています

硬膜肥厚に加えて、下垂体病変があるだけでは決め手にかけます


下垂体の障害の分類は病態(原因)による分類、位置による分類、病理学的な分類があります


病態(原因)による分類

腫瘍:頭蓋咽頭腫、胚細胞腫、下垂体腺腫

炎症:神経サルコイドーシス、GPA、リンパ球性下垂体炎、IgG4関連

感染:結核、梅毒

浸潤:ランゲルハンス組織球症(LCH)、non-LCH

薬剤:免疫チェックポイント阻害薬


位置による分類

・漏斗神経下垂体炎

・汎下垂体炎

・腺下垂体炎


病理学的な分類

・リンパ球性

・肉芽腫性

・黄色肉芽腫性/壊死性

・IgG4形質細胞性

・腫瘍性


下垂体病変の原因を調べるには3つのアプローチが必要です


1つ目は下垂体を狙った造影MRIで所見を探すことです



本症例のMRIはこんな感じでした


2つ目は下垂体以外の+αを探すことです

・膝の痛みや骨硬化があれば、エルドハイムチェスターを

・後腹膜線維症があれば、IgG4やGPAを

・肺病変があれば、結核やサルコイドーシスを


全身性疾患の表現系の一つとして、下垂体がやられることがあります


3つ目は、やはり生検です

病理学的に特異的な所見を探すしかありません


さて本症例の結末はいかに・・・

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下垂体の経蝶形骨洞生検が行われた

生検標本の組織学的所見は,鞍部上の中枢神経系胚芽腫と一致した




CSFのヒト絨毛性ゴナドトロピン濃度は4.5IU/L(参照範囲1.1以下)であった

この患者は最終的に、下垂体性CNS胚芽腫と診断された


腫瘍性髄膜炎と実質的な浸潤性疾患を合併して重度の神経学的障害をもたらしたと推定されたが、

これらの部位における疾患の明確な組織学的または細胞学的証拠はなかった


患者はエトポシドとカルボプラチンによる化学療法を開始し、

続いて放射線療法を行われました


しかし、下垂体機能低下症は継続しており、

ヒドロコルチゾンとレボチロキシンの投与を受けています

また、神経学的にもかなりの障害があり、

日常生活のすべての活動において介助が必要となっています

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ということで、胚芽種(ジャーミノーマ)が最終診断でした


まさか、MSの鑑別にジャーミノーマがあるなんて、知りませんでした


ジャーミノーマは子供や若年者に起こる腫瘍で、

正中の構造物にできることは有名ですね


他にもジャーミノーマの面白い特徴がいくつかあります


・神経下垂体ジャーミノーマは、下垂体後葉炎やLCH、サルコイドーシスと間違いやすい


・ジャーミノーマの放射線感受性が高すぎて、

 生検前にCTを行うと、腫瘍細胞が消失してしまうことがある

 下垂体の中の小さなジャーミノーマの場合、CT撮影一回で消失してまい、

 生検を行なっても、リンパ球浸潤のみの病理となりうる


・脳室上衣に沿って、脳室壁に広範囲に浸潤する特徴がある(脳室上衣下浸潤)

 脳室壁に結節状の多発病変として抽出される

 →NMO含め脱髄疾患や慢性髄膜炎と誤診されることがある

  オリゴグローナルバンドも陽性になることがあるようです


 

・脳室上衣下浸潤は髄液播種ではないので、髄液細胞診では検出されない

 ジャーミノーマは脳室壁全体を侵す腫瘍である

 下垂体だけでなく、視床下部、松果体、大脳基底核にも起こる


・腫瘍マーカーがある

 血液と髄液のHCG-βとAFPを調べる

 血液中ではHCGは31%で上昇あり、髄液中では41%で上昇を認めたという報告あり


・治療は抗がん剤と放射線治療

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著者のコメント

この症例は、初診時の非特異的な所見と最終診断の稀少性のために、診断が非常に難しかった


討論者も治療チームも頭蓋内胚葉腫の存在を疑っていませんでしたが、

尿崩症の発症により下垂体茎pituitary stalkにたどり着き、最終的に診断を下すことができた


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