2022年3月16日水曜日

壊死性遊走性紅斑 〜考えることはグルカゴノーマだけでいいですか?〜

40代 女性 主訴:足に赤い皮疹ができた


Profile:生来健康


現病歴:数日前から足に皮疹ができたので、皮膚科受診

    皮疹は痒みはなく、軽度の痛みを伴っている

    他に症状はなく、関節痛や下痢もない


内服:なし 既往:なし 生活:アルコールなし


経過:皮膚科にて壊死性遊走性紅斑疑いで生検が施行され、壊死性遊走性紅斑と診断された

   グルカゴノーマ疑いにて血中グルカゴンが測定され、わずかに高値であった

   造影CTでは膵臓や肝臓に腫瘤は確認されず

   腸管は全体的に軽度壁肥厚あり、浮腫状 

   脾腫はなく、肝臓の形態も問題なし

   血液検査では肝胆道系酵素の上昇と鉄欠乏性貧血を認めた

   身体所見ではバチ指を認めた

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診断は?


Deficiency dermatitis



壊死性遊走性紅斑とはグルカゴノーマのデルマドロームです

国家試験で習いましたが、全く臨床で使えない知識でした 笑


医師になって一度も壊死性遊走性紅斑をみたことがありませんでしたが、

上記コンサルトを受けたので、調べてみました



まず「遊走性紅斑」と言えば、ライム病ですね


遊走性(migration)とは中心治癒傾向を示しながら、遠心性に拡大することを言います


しかし、この壊死性遊走性紅斑の遊走は、

「鱗屑痂皮を伴う紅斑が拡大と縮小を繰り返し、通常の皮膚に戻る」ということに由来します



壊死性遊走性紅斑(NME)


NMEは1941年に膵腫瘍に伴う特異疹として報告されました

1966年にMcGavranらにより、血中グルカゴンの増加と皮疹の関連が示唆されました

1971年にWilkinsonらによって、NME :Necrolytic migratory erythemaと命名されました

1974年にMallinsonらによって、グルカゴノーマ症候群という概念が確立しました


      



ですが、1995年頃よりグルカゴノーマ以外の壊死性遊走性紅斑の症例報告が出てきました

肝疾患や吸収不良症候群、慢性膵炎、アルコール多飲、消化管手術後、摂食障害などの

複合的な栄養障害で出現してくることが報告されています


症例報告では栄養障害からの壊死性遊走性紅斑の症例報告は多くはありませんが、

実際は検索せずに補充を行い、自然に軽快している症例がほとんどでしょう


現在では腫瘍そのものの存在が皮疹を誘発するのではなく、

グルカゴノーマで壊死性遊走性紅斑が出現する病態は、

アミノ酸低下であることが分かってきました




日皮会誌:127(6).1331-1337.


ですので、アミノ酸が低下する病態であれば、壊死性遊走性紅斑が出現します


壊死性遊走性紅斑をみた時のアプローチ


⓪他の皮疹と区別する

 結節性紅斑、梅毒、遊走性紅斑、T細胞性リンパ腫、乾癬、白癬、薬疹ではないことを確認

 できれば皮膚生検をするのが望ましい


①摂食障害やアルコール多飲、偏った食事がないかを確認する

 

②他の症状がないか確認する

 下痢、腹痛、貧血、関節痛、体重減少、血便など


③内服薬の確認

 オルメサンタンなどのARBはセリアック病likeの病態を引き起こす


④消化管手術の既往がないか確認


⑤血中のグルカゴン値の確認

 軽度の高値はグルカゴノーマでなくてもよくある


⑥アミノ酸や亜鉛、ニコチン酸の確認と補充

 結果を待たずに治療は開始してもよい

 ペラグラや亜鉛欠乏による皮疹と複合的に出現してくる


⑦造影CTにて膵腫瘍や腸管の確認


⑧大腸内視鏡検査にて腸疾患の確認





複合的な栄養障害で出現する皮疹はDeficiency dermatitisや栄養障害性紅斑症など多くの名称で呼ばれています


性行為感染症と同じで、一つの栄養障害を考えたら芋づる式に他の栄養障害も考えます


VB1は常識的に補充が行われると思いますが、
よくわからない皮疹があった場合は、アミノ酸や亜鉛、ニコチン酸の補充も行いましょう




まとめ
・壊死性遊走性紅斑はグルカゴノーマに特異的な皮疹ではない
→アミノ酸低下や亜鉛欠乏など栄養障害によって出現する皮疹

・壊死性遊走性紅斑をみたら、グルカゴノーマだけでなく、吸収不良症候群、肝疾患、腸疾患を検索する必要がある





2022年3月15日火曜日

意識障害のPSとSS

意識障害の場合、病歴が上手くとれないことがあります

例えば、独居の方で職場に来なくて、同僚が見に行ったら家の中で倒れていたパターンや
仕事から帰ってきた家族が帰ってきたら、家でおじいちゃんが倒れていたとか・・・

その場合、いつまで元気だったか?ということと発見時の状況しかわからないことがあります

そうなると、病歴に頼れず、身体所見に頼らざるを得ません

意識障害時の診察はJATECに似ていると思います



⓪まずは意識障害かどうか?です

失語や視野障害、半側空間無視、注意障害は意識障害と紛らわしいです


①意識障害のPrimary survey

大まかな診察を行い、Secondary surveyで何をするかを決めます


JATECではPSでGCSが8点以下なら切迫するDとして、SSでは頭部CTから行う
みたいな感じで、



意識障害のPSでSSで何を行うかを決めるイメージです


まずはバイタルの確認です
ABCに異常があれば、そちらからアプローチします


次にトキシドロームの確認です
交感神経賦活や副交感神経賦活、遮断、離脱などを考えます

    

ここで麻薬の加療使用があればナロキソンを検討することになります


次に協力のいらない神経診察を行います




そして項部硬直を行い、髄膜炎らしさを検討します


最後に血糖(やVB1)を測定します

アルコール多飲や食事摂取歴が不明であれば、VB1投与は治療的診断で行います


ここまでが意識障害のPrimary surveyです


     

②次に意識障害のSecondary surveyです




感染が併発しており、意識障害があれば髄膜炎対応するかを考えます

実際は高齢者が熱を出しただけで、熱せん妄で意識障害が出ることが多いですので、
全例に髄膜炎対応はしないと思います

敗血症性脳症や熱せん妄と髄膜炎のどちらの可能性が高いかを判断し、
しっかり髄膜炎対応でいくのか、なんちゃって髄膜炎対応でいくのかを検討します

      



意識障害にforcal signが加わっており、時間内であればtPA対応するかを考えます

大脳の広範囲の脳梗塞であれば、左右差があるはずなので診察でわかります

脳幹や視床の脳梗塞は、意識障害が目立ち脳梗塞らしさが乏しい時があります
top of basilerは後方循環系のトラブルなので、眼に注目しましょう



髄膜炎やtPA対応でなければ、てんかん発作として対応するか考えます
明らかに痙攣していれば、迷いませんが、
微妙に手足がぴくついているようなNCSを疑わせる状態の時には、迷います


NCSを疑ってすぐに脳波がとれる環境は恵まれています
多くの施設ではすぐに脳波をとることができないので、その場合は診断的治療を行います

セルシンチャレンジを行い、意識がどうなるか確認します

セルシンチャレンジは画像検査の後がよいと思いますが、
不穏で暴れて画像がとれなければ、先に投与するのも選択肢です



これらの〇〇対応のどれにも当てはまらなければ、検査の結果を待ちます

頭部CT、血液検査(NH3、電解質、肝臓、腎臓、脱水、血糖、CO2 、COなど)で引っ掛かるものがないかを待ちます




AIUEO TIPSの欠点は優先順位が不明な点です

このように意識障害のPSとSSを意識して診察すると、
検査の優先順位をつけられるのではないでしょうか?


まとめ
・意識障害の時には病歴が上手くとれないことは多々ある
→診察が重要な症候

・意識障害の鑑別は多岐(AIUEO TIPS)にわたる
→優先順位をつけて検査を組み立てる必要がある

・意識障害の際にはPSとSSの枠組みを意識する
→PSではバイタル、トキシドローム、神経診察、項部硬直、血糖測定
 SSでは髄膜炎対応、tPA対応、てんかん発作対応、それ以外

2022年3月8日火曜日

外来振り返り 〜One tract , one disease〜

 専攻医の先生たちと外来振り返りをしています

その中で印象的だった言葉を備忘録としてのせておきます


・花粉症にみえて、花粉症じゃないもの


80歳男性 主訴:鼻水が出るから花粉症の薬が欲しい


鼻水(鼻汁)ときたら、感冒かアレルギー性鼻炎か副鼻腔炎を考えます


熱や咽頭痛、咳がなく、鼻炎だけであれば、

花粉症、つまりアレルギー性鼻炎と即決してしまいそうですね


99%は花粉症であっていると思いますが、違和感を持って欲しいのは、

「片側だけの花粉症」「花粉症が続く高齢者」です


片側の花粉症といえば、群発頭痛を含むTACsが有名です

片側の目が充血し、涙や鼻水が出て、頭痛があるので、

鼻炎・副鼻腔炎と誤診されることがあります


他にもNK/T細胞性リンパ腫の初発症状も鼻汁のことがあります

血性鼻汁や鼻閉のこともあり、花粉症と誤診されることがあります


いつも片側の症状の場合は何かおかしいと考えましょう

片側の花粉症には注意が必要です



次に気をつけたいのは花粉症が続く高齢者です




80歳以上の疫学データはわかりませんが、

実臨床で超高齢者の花粉症を診断したことはほとんどありません

実際に年齢を重ねると、花粉症の有病率は減っていきます


そのため、超高齢者が「花粉症が治らないから薬を出して欲しい」という主訴できたら、

身構えるべきです


それは本当に花粉症ですか?と


喘息の時と同じで他の疾患(EGPA、癌など)が隠れている可能性を考慮します


こんな病気もあります




副鼻腔結核の症状は片側性の鼻閉・膿性鼻汁・ 鼻出血・頭痛・頭重感・頬部痛などが挙げられています


やはりポイントは片側性ですね



・One tract , one disease


one airway,one diseaseという言葉があります


1990 年頃から上気道 と下気道を統合した病態生理学を基本に、

上気道のアレルギー性鼻炎、下気道の喘息との関連が論じられ始めました

1997年にはJay Grossmanが「one airway, one disease」という総説を発表しています

Grossman J : One airway, one disease. Chest 111 : 11S―16S, 1997.


呼吸器や耳鼻科、アレルギー領域では有名な言葉です


これをもじったのが、One tract , one diseaseです


one airway,one diseaseの消化器バージョンです

FD(機能性ディスペプシア)とIBS(過敏性腸症候群)や慢性便秘は、

きっても切り離せない関係があります


機能性ディスペプ シア(functional dyspepsia:FD)と過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)はどちらも機能性消化管障害に分類されます

FDとIBSは合併しやすく、内臓知覚過敏や消化管運動異常、心理的要因の影響、

急性胃腸炎後の発症など病態生理の部分でも似通っています


当たり前ですが、消化管の下流に問題があれば、巡り巡って上流のトラブルとして出現するというのは想像しやすいと思います


実際に繰り返す誤嚥性肺炎の予防に便秘を治すという治療もあります


消化管のトラブルをみたら、一つの管として考える癖を持ちましょう

「One tract , one disease」と覚えておくとよいかと思います


・一番予後が悪いのはどういう状態?


糖尿病患者さんで予後が悪いのはどういう状態でしょうか?


 - HbA1cのコントロールが悪い

 - 血糖が乱高下するのは良くない

 - 1型DM

 - アドヒアランスが悪い


どれだと思いますか?



正解は医療機関に通院しなくなることです


たまにいませんか?


〇年前まで△△医院に通院中だったが、途中でdrop out

その後、内服しておらず、本日、発熱・意識障害で救急搬送・・・

HbA1c 18!


毎月のように、あるあるですよね



我々がアドバイスや行動変容させたい疾患は、

糖尿病、アルコール依存症、喘息やCOPDがある人の喫煙が多いのではないでしょうか


そんな時に行動変容に熱心な医者であればあるほど、患者さんはプレッシャーを感じます



塾に通っている子供が、毎回、テストの点数が悪くて、

塾で毎回、小言を言われるような状態と似ています


1回や2回の小言(アドバイス)であれば、我慢できますが、

3回、4回と続いていくと、だんだん嫌になってきます


最終的には「行くのやめた」という結末が待っています



HbA1cのコントロールが悪かろうが、薬の飲み忘れが多かろうが、

通ってくれているうちはOKです




アルコール依存症の方の場合は特に注意が必要です

まずは毎回、自分の外来に来てくれてありがとうという感謝から伝えます


アドバイスをするのは、関係性が良好になってからです

感謝の土台の上にアドバイスがあるイメージです


医師患者の間に良好な信頼関係がなければ、どれだけ的確なアドバイスも全く意味がありません


患者さんに陰性感情を持たせてはいけません

自分の陰性感情は相手にも伝播します

陰性感情がつもり積もると、いつかdrop outしてしまいます


そうなると、次に会うときは救急外来かもしれません


それが一番予後が悪いことは、救急に立ったことがある医師ならわかると思います


自分の思い通りにならないと陰性感情が湧いてくることが多いです

そういう時は目標を下げて、自分の外来に毎回来てくれることを目標にしてみましょう

そうすると、陰性感情はわかず、感謝の気持ちが湧いてきます



まとめ

・花粉症に見えて花粉症ではないものに注意

→片側の花粉症や高齢者の花粉症は身構える


・one airway, one diseaseならぬ、One tract , one disease

→FDの人はIBSを合併していることも多い


・一番予後が悪いのは、drop outされること

→drop outされた時が一番、振り返りとして重要です


2022年3月5日土曜日

痺れの結末 〜皆さんの外来にもいませんか?〜

症例:50歳 女性 主訴:痺れ(※症例は加筆・修正を加えてあります)


Profile:強皮症で定期外来通院中 

    強皮症による消化器症状(主にGERD)が強く、

    タケキャプ®︎、アルロイドG®︎、ガスモチン®︎を内服中

    PSLの内服はなし


現病歴:2年前くらいから手足の指先に痺れが間欠的に出現するようになってきた

    数分で治り、長くは続かない

    生活に支障はなし

    冬になると出やすかった

    お風呂に入る時のように温度変化があると手がギューっとなる感じがする

    足よりは手のほうがひどい

    振っても改善しない

    手足の動かしにくさはなし

    レイノーは寒い時にたまに出現


    半年前くらいから痺れが強くなってきた感じがする

   

    これまでの精査では頸椎MRIや腰椎MRIは問題なし

    VB12、葉酸、Cu欠乏なし、DMなし

    M蛋白なし、ANCA陰性


         慢性的にKは3.5前後を推移していたが、3ヶ月前より3前半になったため、

     グルコン酸Kを補充開始

     尿をみると尿中排泄亢進していた


ROS:時折、便秘と下痢、胸焼けが強い、レイノーあり

   腹痛なし、体重減少なし、頸部痛や腰痛なし、関節痛なし


内服:ポリフル®︎、タケキャプ®︎、アルロイドG®︎、ガスモチン®︎、グルコン酸K40meq、ユベラ®︎

生活:飲酒なし、喫煙なし


診察

神経学的には腱反射亢進・減弱なし

筋萎縮なし 筋力低下なし 

巧緻運動問題なし

振動覚10秒以上あり

歩行 安定 

ロンベルグ陰性

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診断は?


定期外来通院中のちょっとした症状はスルーしてしまうことが実際は多いです

全ての訴えを聞いていたら、プロブレムリストが#1〜#18とかになってしまいます

(余談ですが、最近の若者は#をみたらプロブレムリストではなく、ハッシュタグに見えるそうです 笑)


外来でのちょっとした症状(肩痛い、痺れ、めまい、動悸)はプロブレムリストとして格上げされず、

「まあまあ・・・そういうこともありますよね〜」とスルーされていきます


ただし、

日常生活に支障をきたす、患者さんの訴えが頻回・強くなってきたら、

プロブレムリストに格上げして、真剣に問題解決に取り組みます



今回の症状は2年前から間欠的に出現していた手足の指先の痺れであり、

生活にも困っていなかったため、スルーしていました


ですが、半年前くらいから痺れの訴えが強くなってきたため、

本腰を入れて調べ始めたという経緯です


痺れmapを描いてみると、両手掌側の全ての指先の痺れでした


血液検査や画像検査では原因となるものはなく、

あとは神経伝導速度や神経内科Drに診察を依頼しようかな・・・と思っていました



ですが、痺れをパラフレーズしてもらうと、

「手がこんな風にギューっとなるんです」ということでした


「手がギューっとなる???」



                         日内会誌 107:1365~1372,2018


え??


それって、テタニーじゃないか!?


急いで血液検査を見直すと、Caは正常


Mgは・・・


あ、Mgとったことありませんでした・・・


Mgを測定すると、0.6mg/dlと著明な低Mg血症を認めました


診断:低マグネシウム血症によるテタニー・痺れ

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原因は(2年越しに)わかりましたが、なぜ、これほどの低マグネシウム血症になったのでしょうか?


患者さんの前で考え込んでしまいました・・・


「原因はわかりましたが、

 なんでマグネシウムがこんなに少ないのでしょうね・・・うーん・・・」


わからないことは患者さんの前でも調べます


そうすると、すぐに答えがわかりました





「あーこれだー!」


もちろん、PPI内服で低Mg血症になることは知っていましたが、

実際、目の前の患者さんに出会うと想起できませんでした


いつも心に薬と結核ですね・・・

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マグネシウム


マグネシウムは消化管の小腸で吸収されます

体中のマグネシウムのほとんどが細胞内に入っています

血中のマグネシウムの調整を行なっているのは、腎臓です


低マグネシウム血症になるときは、

in不足(吸収不良、)かoutオーバーか、シフトの問題です


この方の尿中Mgを測定すると、0.1mg/dLでした

つまり尿からはMgは排泄されていない

必死に溜め込もうとしている状況でした



Mg欠乏の定番といえば、アルコールです


ですが、近年PPIの長期内服による低Mg血症の症例報告が増えています

そして今後はP-CAB(タケキャプ®︎)の症例報告が増えることが予想されます


PPIで低Mg血症になる機序は、胃酸分泌の抑制により腸内PHが上昇し、

腸内のマグネシウム輸送体のTRPM6/7の活性が低下するため、

マグネシウムの吸収が抑制されると考えられています



マグネシウムはすぐに結果が出ない病院もありますので、

測定が他のKやCaに比べてハードルが上がる項目です


だからといって狙って出すにしても、高Mgや低Mgの症状は非常に多彩であり、

症状から狙うと多くのMg異常を見落とします


自分なりにMgを測定するタイミングを決めておくのがよいかもしれません


CKD患者に酸化Mgを処方している時

アルコール多飲者

PPI長期服用者

症状で怪しい時

利尿剤を長期服用している人


などが考えられます


特にKやCaの低下は低Mg血症を想起するヒントになります


今回も低K血症の鑑別をきちんと行なっていれば、低Mgにも辿り着けたはずでした

ただ、強皮症による消化管の吸収不良もあるのであろう

という気持ちがあり、尿中のK排泄亢進パターンを無視してしまっていました


K補充に反応が悪い低K血症をみたら、低Mg血症を思い出しましょう



PPIを長期に内服している人は毎回、確認してもよいかもしれません


ただPPIを飲んでいる人全員が低Mg血症になるわけではありません

おそらく、薬の要因✖️人の要因が組み合わさった時に起こりやすいのだと思います


今回は強皮症があり、吸収不良が考えられます





最後に治療ですが、もちろんPPIやP-CABの中止とMg補充です

治療で難しいのは、低Mg血症の方を最初に気がついてしまい、
PPIが原因であることに気がつかず、
Mgの補充が開始されることが多いです

補充に満足して、肝心のPPIの中止が忘れられることがあります



まあ、補充すれば治るでしょう・・・と甘い気持ちでいると、治りません

PPI内服しているときはいくら補充しても治りが悪いということが知られています


なので、低Mg血症と聞いたらPPIもしくはP-CAB飲んでいないか!?
という思考パターンを作っておくことが重要になります


気がついたら治療は簡単ですが、気がつかなければ治療は難しくなります




皆さんの外来にもいませんか?
PPI長期内服していて原因のわからない
「こむら返り」や「手がつる」、「めまい」「痺れ」の訴えの人

Mgをチェックしてみると、何人かは原因が分かるかもしれません



まとめ

・患者さんの痺れはパラフレーズしてもらう

→今回はテタニーの症状が発見できた


・原因のよくわからない神経症状(痺れ、筋力低下、手足のつり、テタニー)をみたら、低マグネシウム血症を考える

→マグネシウムを測定する閾値は低くていい


・PPIやP-CABは容量が多ければ多いほど、長期であればあるほど、低Mgのリスクになる

→治療はPPIの中止・変更が大事、H2ブロッカーは低Mg血症のリスク低い

うっ血腎

 



AKI










 

2022年3月2日水曜日

透析の歴史


今の透析膜や機械の形は多くの先人の研究や試行錯誤の賜物の上に存在しています

自分が透析の機械を見たときから今の姿であったため、今の透析形態しか知りませんが、
この形になるまでは相当の歴史があったと思われ調べてみました


人工透析は数百年前からあったような医療ではありません
人工透析はこの100年で急速に進化を遂げてきました


その間に色々な透析機械ができては、廃れていきました
大きさはどんどん小さくなり、洗練されたデザインとなっています


2000年代からは自動プライミング機能が装備され、効率もよくなりました
2010年代からはオンラインHDFが主流となり、今なお進化を続けています




血液透析が現在の内シャント、4時間を週3回、透析液の組成、貧血対策、P対策、MBD対策に落ち着いてきたのは、ここ30年の間です

その間も輸血が行われなくなり、EPO製剤が当たり前になりました
アルミニウム製剤が使われなくなり、カルタンの地位が落ちたり、
透析診療もどんどん変わってきています



今後も新しい薬の出現によって、今の薬は使われなくなってくることが予想されます

最近ではロケルマやHIF-PH阻害薬の出現ですね
ロケルマは高K血症の治療を一変させてしまいました



自分たちが当たり前に思っていることは、
数年後には非常識なことなのかもしれません


今の状態が決してベストな透析や処方ではないと意識しつつ、
ベターな透析診療を続けていきたいと思います



まとめ

・透析機械はこの100年で急速に進化してきた

→先人の試行錯誤や研究の上に今の形や膜になっている


・オンラインHDFやI-HDFなど今なお進化し続けている

→それは透析関連疾患の治療も同じ


・自分たちが当たり前に思っていることは、数年後には非常識なことなのかもしれないと思って診療を続ける

→現状の最善がベターな診療

誰も教えてくれなかったコミュニケーションの話

※症例は架空です 勉強会終了後、看護師さんよりフィードバック 毎日のデイリーカンファは素晴らしいけれど、 患者さんに今日、何が行われるかとか、 話し合った内容が伝えられないことがある 家族にはしっかり面談をして、何が行われるか伝えていることが多いが、 患者さんが置いてきぼりになっ...

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