PCLD(Polycystic liver disease)は、
CT、超音波検査にて、15以上の肝嚢胞が確認されるもので、
肝内胆管の形成異常のため、発症する遺伝性疾患です
たまにやたらと、肝臓の嚢胞が多い人っていますよね
ただ、肝嚢胞があっても症状のない人が多いので、
偶然、健診や他の目的でとったCTでみつかることが多いかと思われます
そんな多発する肝嚢胞を見た時のまとめです
多発性肝嚢胞性疾患(PCLD)は、大きく二つあります
①肝嚢胞あり、腎嚢胞あり → ADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)
②肝嚢胞あり、腎嚢胞なし → ADPLD(常染色体優性多発肝嚢胞性疾患)
ADPKDは有名ですよね
遺伝性の腎疾患で最も頻度が多く、なじみがあるかと思います
頻度は3000人に一人と言われています
ADPKDも腎臓だけでなく、肝臓に多発する嚢胞を作りますが、
こちらは、末期腎不全で亡くなることが多い疾患です
一方、ADPLDは腎嚢胞はできませんので、
腎不全にはなりません
ADPKDとADPLDの違い
ADPLDは10万人に一人なので、ADPKDに比べれば、稀な疾患です
ですが、ADPKDは末期腎不全というゴールがあるため、
必ず腎臓内科の目に触れますが、
ADPLDは無症状であり、肝障害もほとんどないため、
生前には気が付かず、
亡くなってから見つかる人も多い疾患です
そのため、頻度はもっと多くなると思っています
ADPKDは、腎不全にもなりますし、
脳動脈瘤や大腸の憩室、心臓の僧帽弁異常をきたしますが、
ADPLDは、そういったことは起こしません
ADPLDの患者さんは、基本無症状ですが、
3%に重度な症状がでることがあります
肝嚢胞はどちらの疾患も、
女性がリスクファクターになっており、
エストロゲンが悪さをしているようです
経産婦やエストロゲン製剤を内服していると、
増大傾向になります
そのため、症状がある多発性肝嚢疾患の割合は、
圧倒的に女性に多いのが特徴です
腎嚢胞にはエストロゲンは関係しません
多発性肝嚢胞の分類
Giagot分類がよく使われますが、
他の分類もあります
Qian分類やSchnelldorfer分類が有用の時もあります
治療方針の決定にもなりますので、
Schnelldorfer分類が総合的で、よいかと思われます
Giagot分類
Schnelldorfer分類
多発性肝嚢胞疾患の治療
希少な疾患のため、疾患の自然史がよく分かっていませんが、
症状がなければ、治療しないというのは、ルールのようです
症状がある場合に限り、治療を行います
まずは、エストロゲン製剤を使っていれば、中止します
内服薬では、ソマトスタチンアナログ製剤がありますが、
保険適応外です
多発性の肝嚢胞は、動脈から血流を得ており、門脈からは血流はないので、
TAEで嚢胞の縮小効果があります
・遺伝性疾患であり、ADPKDとADPLDがある
→腎に多発する嚢胞があれば、ADPKD
頻度もADPKDの方が多い
・ADPLDは、脳動脈瘤や弁異常、大腸憩室は合併しない
→ルーチンでの検索は不要
・肝臓に膿疱が多発していても、ほとんど無症状
→症状がある時にのみ、治療する
参考文献:Journal of Visceral Surgery(2018)155,471-481
Aliment Pharmacol Ther 2011;34:702-713
多発性肝嚢胞ガイドライン
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