2019年6月30日日曜日

肝嚢胞をみたら

肝嚢胞はありふれています

よく出会うので、スルーすることが、

身に沁みついてしまっていました


とういうことで、一度しっかり勉強してみました

今回は肝嚢胞のまとめです



肝嚢胞の分類

いろいろありますが、

まずはで大まかに分かれます

PCLD(Polycystic Liver disease)は、CTや超音波検査にて、

肝内に15個以上の肝嚢胞が存在すること(20個といっている文献もある)

または、PCLDの家族歴がある場合は、4個以上の肝嚢胞が存在すること

診断されます


ということで、

たくさんあったら、PCLD

少数であれば、他と考えます


一番、よくあるのは、単純性の肝嚢胞です

これは大きくもならず、

悪性化もしないので、放っておいて問題ありません


私達が出会う肝嚢胞のほとんどが、


無症状で、問題ないものです


ですが、単純性でも大きくなると、

症状が出現する人がいます


そうなると、症候性となり、

治療適応があるかどうかを検討します


症候性の場合の治療は、

穿刺吸引だけでは、必ず再発するので、

硬化療法や腹腔鏡下での開窓術が必要となることが多いです



単純性の肝嚢胞はほっておいても問題ありませんが、

気をつけなければならないことが2つあります


一つは、先ほど述べた

「症状が出現してこないかどうか」です

しかし、症状と肝嚢胞の関連を決定づけるのは、

簡単そうで、難しい時もあります


なので、肝嚢胞以外に症状の原因がないと証明するための、

外堀を埋める作業が必要です


もう一つは、

がんとの鑑別です


特に、
粘液を産生する肝粘液性嚢胞腫瘍(MCN)との鑑別が必要です


これまでにも単純性だと思ってフォローしていたら、

実は、MCNだったという報告は多数あります

(11年間単純性嚢胞として治療された肝粘液性嚢胞性腫瘍の1切除例:
胆道 29巻5号 985-990(2015))

ということで、

MCNっぽければ、専門医に紹介しましょう

穿刺吸引での細胞診では、

陽性率が高くないことや播種の危険があるため、


本当に疑った場合は、

外科的に腹腔鏡下で手術が必要となります






肝嚢胞の画像まとめ

単純性の場合、大きさは不変であり、

壁は整で、内容物も一様です



一方、

肝粘液性嚢胞腫瘍の場合、

(1)壁在結節(乳頭状隆起)

(2)嚢胞壁の不整な肥厚

(3)嚢胞内隔壁

(4)多房性嚢胞

(5)穿刺吸引・硬化療法をしているにも関わらず増大傾向


といった特徴があります


肝嚢胞をみた場合は、こういったところに注目しましょう


MCNは胆管との交通はなく、卵巣用間質をもつという特徴があります


一方、MCNには、鑑別として、

IPNB(Intraductal papillary mucinous neoplasma)という癌もあります

こちらは、胆道系と交通があり、卵巣用間質がないということで、

MCNと区別されますが、

知らなくてもいいと思います


嚢胞を形成する癌があるということだけ、

知っておけばよいかと思われます





肝嚢胞のフローチャート


病歴や検査も重要ですが、

大事なのは、やっぱり画像でしょうか




肝嚢胞をみたら

・嚢胞がたくさん(15個以上)あれば、多嚢胞性肝疾患
→多嚢胞性疾患は、遺伝疾患



・少数であれば、単純性か、嚢胞腫瘍か
→多房性、壁在結節、隔壁、壁肥厚で鑑別
 穿刺吸引は、診断にはむいていない



・単純性であれば、症状があるかどうか
→症状と肝嚢胞を結びつける前に他の疾患
 (膵癌、胃潰瘍など)の除外を
 症候性であれば、治療適応があるか検討


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